0585この名無しがすごい!
2020/05/23(土) 11:30:28.52「赤竜の谷近くの砂漠地帯で、盗賊団の襲撃を受けたらしくてね」
「なっ」
「三十人からの隊商が、ほぼ全滅だ。妻の遺体も……後で発見された」
既に死んでいたのか。
「もちろん、部族は報復攻撃もしたし、生存者を探しもした。だけど、娘は見つからなかった」
「見つからなかった、だけだろう? もしかしたらどこかで」
「当時の娘は、まだ二歳くらいだ。それが、魔物の出る砂漠の真ん中で……生きているはずがない」
言葉もない。
彼が本当に守りたかった「愛」は、既に失われていたのだ。
「僕が……行かせなければ。それでなくても、せめて傍にいれば。助けられなくても、一緒に死ぬことができた」
「そんな」
「だから、せめて妻と娘のためにも……この世界に、何かを残したかった」
こんなことってあるか。
必死に生きた報いが、これなのか。