血液型

 また例によってマイが動物モノの番組に夢中になっている。今日は定番のサバンナ物語だ。大体知っている動物の生態や、初耳の事実もあり、俺も楽しんでいた。
 そこへお約束のド定番、インパラの子供VSチーターが始まった。この手の勝負は五分五分だ。捕らえられるか逃げ切るか、ここはマイの為にも逃げ切って欲しい。何故なら。
「ああ、危ない、きゃあ! 振り切ってぇえええ!」
 前のめりになって拳を握りしめている。しかし野生は残酷だ。100分の1秒にも満たない判断ミスで捕まってしまった。首をがっつり咥えられてブラブラと揺れるインパラの子供を見てマイもダラリと頭を垂れた。
「テラヒドス……」
 俺はマイを慰めた。
「これも摂理だよ、今に始まったこっちゃない」
 するとマイがガバッとこちらを見た。
「それにしたって、あんなちっちゃくて可愛いやつじゃなくて大人でいいじゃん!」
「大きいのは足が早いし体格もいいから厄介だ、小さいのなら簡単だ」
 マイの顔色が変わった。しまった、言葉のチョイスを間違えた。マイが歯を食い縛って唸った。
「てめえの血はなに型だぁあああ!」
「……A型だけど」
 一瞬時が止まったが、マイが再び唸った。
「俺はAB型だぁぁあああ!」
「知ってるよ」