【創作】このタイトルで小説を書きましょうスレ2
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
私がタイトルお題を出します。それをタイトルに使って(多少の改変は可とします)小説を執筆してください。その作品に私がここで感想を書かせて頂いたり、作者の方々同士で作品への意見を述べ合うスレです。
⚫︎対象:作家を目指してる方・趣味で書いている方・創作に興味のある方
⚫︎制約:荒らし・誹謗中傷は禁止。
⚫︎ルール:ここで出されるタイトルを用いたら、必ずご報告ください。
直接このスレへ書き込むのもOKですし、Web小説でもOKです。
Web小説として書かれた場合、作品タイトルの下にこれをお願いします。
【URL】 小説のURL
【指摘点】 特に意見が欲しい点。「なんでも」もOK
【感想希望】 甘口か辛口か
ルールは以上です。優しい心を持ってレスしましょう。
⚫︎前スレ
創作 このタイトルで小説を書きましょうスレ
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bun/1645816570/
⚫︎関連スレ
【創作】三つのお題で小説を書きましょうスレ
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bun/1646163913/385-n
VIPQ2_EXTDAT: checked:vvv:1000:512:: EXT was configured できなかったら『延期』と一言書きます。規制のせいです。
できればそうならないようにしたいのですが……。 おはようございます。
「数日で治る」という規制がたったの一日で治ってしまいました。なんだかよくわかりません。
ので、延期を取りやめ開催いたします。非常に勝手ではありますが……。
お題発表は六時です。 色々ハプニングがあり混乱してしまったことをお詫びします。
改めまして、今日から第三弾S祭り開催します!
【S祭りのルール】
私がお題として出すタイトルを使って、小説を書きましょう。
掌編でも短編でも長編でも可です。
【参加方法】
直接レスとして貼り付けるのもいいですし、投稿サイトに投稿しURLという方式も可能です。投稿サイトの場合は誰でも読めるようにしてください。
【参加資格】
誰でもOK コテ・トリップをつけた方が認識はされやすくなります。
【審査資格】
コテ・トリップのある皆様(私も含め)
【審査方法】
自分の作品以外に票を投じます。一番良いと思った作品に三点、二番目は二点、三番目は一点と加点します。そして得点の多い人が優勝となります。
【募集期間】6月11(土)〜6月18日(土)
【審査時間】6月19日(日) 午前0時〜午前九時まで
ルールは以上です。
では、お題発表。 ⚫︎お題タイトル
・『雨空に祈る幸せ』
・『白銀の奇跡』
・『死にたがりヒーロー』
・『殺人姫(さつじんき)』
・『人ならざるものに愛を寄せて」
これらを使って、小説を書いてください!
皆さんの作品を心よりお待ちしております。 さらに追記:
〆切は正しくは18日土曜日の午後九時までです。 おはようございます。
S祭り二日目、皆さんの作品をお待ちしております。 では、最初は私が投下しちゃいます!
【タイトル】 人ならざるものに愛を寄せて
【URL】 https://ncode.syosetu.com/n5337hr/
【指摘点】 なんでも
【感想希望】 辛口気味 【タイトル】 人ならざるものに愛を寄せて
待ち焦がれた休日、僕は君と部屋に籠もる。柔らかいベッドで共に寝転がり、白磁を思わせる艶やかな君をいつまでも撫でていたい。実際、一日の大半を一緒に過ごす。それを無駄な行動とは思わない。君にはそれだけの価値がある。
あの日、僕は街中で君を見かけた。一目惚れだった。身分違いの恋と似ている。君は高嶺の花で瞬時に諦めようと思った。一度、下げた頭を勢いよく引っ張り上げる。心を奮い立たせて胸中で誓う。君に相応しい男になって戻ってくると。
その日を境に僕は変わった。嫌々していた仕事に本気で打ち込み、ようやく戻ってきた。君と横に並んでも引けを取らない人物となって部屋に迎え入れた。望外の喜びもあって感情を上手く表現できない。蜜月の始まりに目が潤んで心が震えた。
僕は満たされた。穏やかでいて甘い日々は永遠に続くと信じてやまない。君を手に入れたあとも身を粉にして働いた。稼いだ金を惜しみなく捧げた。
別れは突然にやってきた。
「終わりだよ」
感情の籠らない声が漏れる。自分でも驚く程に心は冷え切っていた。
僕はベッドにいる君を見下ろす。右手にはハンマーを握り、脅すように軽く振り下ろした。
君は怯えた素振りを見せず、円らな瞳で僕に微笑みかける。白くて艶やかな表面の一部が僅かにくすんでいた。撫でた結果とは言え、意識すると妙に腹立たしい。この白豚に僕はどれだけ愛情を注ぎ、貢いできたのか。思い返すと怒りでハンマーが震える。
今こそ、全てを終わらせる時だ。僕には新たな君がいる。こんな不自然極まりない白豚とはまるで違う。ほんのりと桜色に染まった全身が好ましい。こびへつらうような笑みは一切見せない。それもまた自然体で僕を夢中にさせた。
大きな一歩を踏み出し、ハンマーを高々と振り上げる。白い豚の貯金箱に容赦ない一撃を加えると粉々に砕けた。惜しみなく入れた五百円玉が溢れるように流れ出た。落ちた何枚かを拾って新たな君に捧げる。
「もう君を離さないよ」
僕はピンクの豚の貯金箱にそっと口付けをした。 おおお、この文字数でさすがっ。
この結末の意外っぷりが読んでいて爽快でした。自分との実力を感じさせられます。
ありがとうございました。 祭り五日目! 今まで寄せられた作品のまとめです。
・人ならざるものに愛を寄せて(S)
・人ならざるものに愛を寄せて(だるいねんさん)
皆さんの作品お待ちしております! あっという間に六日目突入!
時が経つのが早すぎる……。 いよいよ締切近づいてきちゃいました。
おはようございます、S祭り七日目です。 いよいよ最終日! 最後の駆け込みを期待したいところです。
作品お待ちしております! S祭り三作品目です。
小説雑談スレの方でしか書き込めない方がいらっしゃったので、代わりにこちらに貼り付けさせて頂きます。 5104962022/06/18(土) 08:49:23.29
その村は今雨季だというのに長い間雨が一滴も降っていない。
村人はみんな困っていた。そこで生贄を捧げることになった。
「白羽の矢の儀式を始める」
村長がそう言って弓矢を構えた。そして力一杯放つ。この弓矢が突き刺さった家の娘は生贄になる。
そして選ばれたのは百姓の家の娘ドゥロだった。「ドゥロよ出てこい」
家の中からボロボロの服の娘が飛び出してくる。彼女はわんわん泣いていた。
「やっぱりわたしだあ。いやあだ。死にたくない」
でも抵抗はできない。ドゥロの両親もなんとか娘を助けようと村長に物申したが聞いてもらえず。
「ともかく決まったことなのだ。早速準備するぞ」
5114962022/06/18(土) 08:49:46.16
用意は整った。ドゥロは両手を縄で縛られて池の前に立たされている。
彼女は間も無く突き落とされる。そして殺されるのだ。
「さあ落とせ」
数人の男たちが娘の背後に集結した。軽く祈祷してからドゥロは生贄として捧げられる。
しかし。
「なんだ?」
祈祷が始まる直前に空に暗黒の雲が広がった。それはみるみる広がっていき。
「あ、雨だあ」土砂降りの雨を降らせ出せたのである。
村人たちはみんな動揺した。すぐに雷鳴が鳴り出して雨はさらに強まっていく。
ドゥロは呆気に取られて何も言えない。今から祈りのために殺されるはずだったのにその前に雨が降るなんて。
「何事だ?!」
みんな天を見上げた。ドゥロもそうした。
ただただ黒い雲の陰はまるで泣いているかのように大雨を降らせ続ける。すっかり生贄の儀式など意味がない。
「救われたんだ」
「ドゥロ!ドゥロ!」
ドゥロの両親は大喜びして娘の縄を解く。
それを止める者は誰もいない。そもそもドゥロの存在を気にしているのは彼女と彼女の両親くらいなものだ。
その時雷鳴が轟いて雷が降り注いだ。悲鳴が上がる。見るとそれは村長に直撃しておりすっかり死んでいた。
「きっと天罰が当たったんだ」
ドゥロはなんだかいい気味だった。自分を生贄に捧げようとした男が神様の怒りに触れて殺されたのだ。
村人たちは揃って大笑いした。もしかするとドゥロと同じ気持ちだったのかも知れない。
村長の死を悲しむことなく全員が天を見上げ続ける。ふとドゥロが言った。
「神様にお礼をしなくちゃあ。天に祈ろうよ」
気づくとみんなが膝をついていた。そして笑顔で雨空に向かって祈り出す。
降りしきる雨はまるで神の涙のようだ。それはしばらくの間流れ続けやがて泣き止むことだろう。
ドゥロは雨空に祈る。どうか私を幸せにしてくださいと。
その村にはそれ以来極度な旱魃が起きていない。
神様がドゥロの願いを叶えてくれたのかして彼女は長老の孫と結婚して幸せになりましたとさ。 コメディーチックな作品ですね。
結構すらすら読めます。面白かったです。
……でも、村長があっさり死んだりそれを誰も気にしていなかったり、そういう点がちょっと引っかかってしまいました
ご参加、ありがとうございます。 「人ならざるものに愛を寄せて」
それは僕が紫陽花の写真を撮りに行ったせいだと思う。
あの時僕は、久しぶりに連休が取れたので七不思議伝説のあるお寺に行き、時期的には早かったが紫陽花の写真を撮った。
シーズン前というのもあり、人影もまばらなその境内でまだ新芽とも呼べる淡い色彩の紫陽花と若い葉を爽やかな太陽の日差しを浴びながら撮影をした。
思ったよりもいい写真が撮れたことをよく覚えている。
自宅に帰り写真を確認していると、何枚かの写真に浅葱色の着物を着た女性が写っていた。
何処と無く上品なその女性に僕は全く記憶がなかった。
いくら撮影に夢中だったとはいえそのような女性がいればすぐ目に付くはずだし、場合によっては写真のモデルをお願い出来たかもしれない。一期一会で。
それでも気が付かなかったのは夢中になり過ぎたせいなのだと思い自分を納得させた。
それからしばらくして別の場所で撮影をした時に、またその女性が映り込んでいた。
狙った被写体からはわずかに離れていたため少しぼやけていたが間違いなく浅葱色の着物を着た女性だった。
もちろん撮影している時にはその存在には気付かなかった。が、何枚かの写真に確かに彼女は写っていた。
不思議なことに同じ構図で連写しているのに関わらず、写っている物といない物があった。
そして肉眼で彼女を見かけた事は一度も……ない。
なんとなく薄気味悪さは感じてはいたが、カメラを持ち出すたびに写るっている訳でも無く彼女は存在を忘れた頃にまた写っている。
ある時は夕暮れの街で雑踏の中、ある時は朝靄のかかった地方の蕎麦畑であったりと、規則性は無かった。
いや、気づいては無かったが間違いなく規則性はあった。
後から考えれば至極単純なことだ。良い写真が撮れた時に浅葱色の着物を着た女性はどこかに映り込んでいたのだ。
それに気づいた僕は彼女が映り込んだ時の写真をフォトコンテストに応募してみた。もちろん彼女が映り込んでいないショットで。
答えはすぐに出た。今まで悉く落選してきたフォトコンテストに入賞出来るようになった。確信に変わった。
恐らく彼女は僕にとって写真の妖精か女神であると。
それから僕は幾度となく彼女が写り込んだ場所に向かったが、同じ場所で彼女は二度と写り込むことは無かった。二匹目のドジョウなんていないと。
それからは今まで訪ねた事のない場所を選び僕は写真を撮りに出かけた。
ただ一度もそれらしき姿は僕のフレームには訪れなかった。
僕はすでに彼女を捉えることを目的に写真を撮りに出かけていた。
会えないと分かれば分かるほど焦燥感に駆られる。酷く苦しい時間だった。
あり日の仕事帰りに改札を出た時だった。ほんの十数メートル先に浅葱色の着物を着た女性が歩いている。僕は足速に彼女を追う。
少しづつ距離が縮まる。あと数メートルの所で左の路地に入る。
僕は走り出し路地を左に曲がる……
が、すでにそこには誰もいない。忽然と、まさに忽然と姿を消した。
初めからそには誰も存在していなかったように。僕はしばらくそこから動くことができなかった。
ただじっと路地の先を見続けるだけだった。逃げ道など存在しない袋小路の先を。
それが最後だった。
そして僕は今日もカメラを片手にいろんな町出かける。浅葱色の着物を探しに。 拝読いたしました。
写真の女神様、どうしてお姿を消されてしまったんでしょう……。
浅葱色の着物を求めてしまう『僕』の心とは裏腹に遠のいていってしまう彼女。何だか少し寂しいような、そんな気もしました。 さて、今までにお寄せくださった作品のまとめです。
・人ならざるものに愛を寄せて(S)
・人ならざるものに愛を寄せて(だるいねんさん)
・雨空に祈る幸せ(名無しさん)
・人ならざるものに愛を寄せて(Rさん)
〆切は午後九時ですので、駆け込みもOKです!
私は今日のところはこれで。おやすみなさい。 527 名無し物書き@推敲中?[] 2022/06/18(土) 18:05:01.94 ID:
人ならざるものに愛を寄せて
「……」
黒い瞳がまばたく。首をひねり、何度も見返した。だが、やはり目の前に置かれた事実は変わらない。
「これ……」
黒地の服に白いエプロン。いわゆるピナフォアを着せられた少女が、ゴミ捨て場に打ち捨てられている。
いや、少女というべきではないのだろう。だって、人間ではないのだから。
が、よくよく観なければ判別がつかないほどだ。強いて言うなら、某国が偽造するドル紙幣のような精巧さ。
とはいえ、エルフやフェアリーの類でもない。
(これは……)
背中をおおうほど長い黒髪に象牙色の肌。小柄で細くしなやかな肢体。幼げな顔立ち。
ついスカートを捲くると、太ももにはバーコードみたいな識別番号が印字されていた。
(ホムンクルス……なんだよな?)
青年は首をかしげ、訝しむ。いや、よくあること――たびたびテレビや新聞で取り上げられるニュースではある。
曰く、『造られたとはいえ、彼らには感情があり、心があるのです。命に対する責任を!』とのこと。
そう……彼、または彼女たちに、人権はない。犬猫以下の扱いだ。文字通りの現代に現れた奴隷とすら言える存在。
時々心無い人が虐待したり、要らなくなったホムンクルスを捨てることがあるという。
でも、まさか現実にそれを目の当たりにするとは、思ってもみなかった。
「……」
しばし無言で少女を見つめ、彼はふと思う。
(これって、ゴミに出したってことなんだよな……?)
換言すれば、所有権を放棄したと同義。つまり、今そこには、人権のないホムンクルスがいる。
首筋に触れると脈を感じ、口元に手をかざせば息でこそばゆい。それは生きている証。
再び、彼女を一瞥した。
顔立ちは……好み。少し幼げではあるが、もう少し育てば理想の美女になりそうだ。
(そりゃゴミは分別されるよ? 勝手に漁るのはよくはないだろうけど――)
しかし行政はいう。命に対する責任を、と。
捨てられたホムンクルスはどうなるか?
運がよければ、新しい持ち主が見つかる。が、そうでなければ殺処分を免れないだろう。そしてほとんどの場合は後者だ。
「……」 528 名無し物書き@推敲中?[] 2022/06/18(土) 18:05:05.78 ID:
だから青年は自分へと言い聞かせた。
(この子を救えるのは……俺しかいない!)
普通なら一体○十万はする。自身の月給でいうと数ヶ月分に相当する額。
(む、昔から言うじゃないか。義を見てせざるは勇なきなりって!)
古人の言葉を盾に、抱いたヨコシマな感情にふたをして、のどを鳴らす。
そして――彼はホムンクルスの少女を拾った。
「ん……」
だが――
彼女を持ち帰り、数日。青年は異変に気づく。
(どういうことだ、これは!?)
少女はずっと、眠ったままだったからだ。
なぜ? そんな疑問が頭を悩ませ、胸を痛める。
しかし現代は情報化社会。ネットを調べれば、ある程度まで知ることができる世の中。
「……」
スマホを片手に、彼は検索し――すぐに恐るべき事実を知るにいたった。
――虐待を受けたホムンクルスは、心を守るために冬眠することがあります。
どうも臨床例には事欠かないらしい。いやな世の中ではあるが、そこに彼女を救うヒントがあるはず。
――眠ってしまったホムンクルスを、再び目覚めさせるために必要なのは……
「……」
何か? その答えを固唾を呑み、読み進めていき――目をむく。
――無条件の愛です!
「ふぁっ!?」
ふざけてるのか? 訝しみ、何度も読み返す。違うサイトの記述も読んでみる。
しかしやはり同じ結論が、そこには記されていた。
愛――愛とはなんぞ?
それが分かるなら、誰も苦労しない。 529 名無し物書き@推敲中?[] 2022/06/18(土) 18:05:09.34 ID:
愛のつく単語には何があるか?愛犬、愛馬、愛鳥、愛人……愛国。
どれもあやふやで、イマイチピンとこないものばかり。
愛鳥や愛馬と、愛人は違う使われ方だし、愛国にいたっては次元が異なる。
そもそもとして、愛とは目上が目下に対し使う言葉。
その意味で前者四つは正しい用法だが、最後だけが誤用だろう。
いや、そうではなくて!!
彼は考えていく。
古来より、愛とはハート。つまりは心臓にあるとされる。ならば、胸に刺激を与えれば?
チラリと少女を一瞥し、生唾を飲む。幼げな風貌。小柄な肢体。やはり変に意識してしまう。
(いや、これはAEDなんだ!!)
救命措置と思えば、多少の後ろめたさも薄まるはず。
「――」
だけど……できない☆
そんな、女の子の胸を見るなんて! 罪悪感が容赦なく襲ってくる。
つんだ――絶望が彼の心を蝕んでいった。
が――
「っ!?」
あることに気づく。そう、いわゆるスリーピング・ビューティー。眠る少女の目を覚ますのは、王子様のちゅーだ。普通なら犯罪だが、彼女は人間でなく、また人権もない。
何よりも人工呼吸は立派な救命措置だ。
後ろめたい気持ちが、レイピアのように心を突き刺してくる。だけど――
(救えた後でなら、いくらでも地獄を見てやる!!)
意を決し、青年は少女と唇を触れた。すると、ぴく……彼女の指がわずかに動く。
効果あり!! なら――そして再び迫った、その時。
ぱちり……ビスクドールみたいな目が開き、こちららを覗きこむ。
「「……」」
わずかに沈黙が流れ――がぶっ!! 盛大に噛まれた。
……それが青年と少女の、初めての出会いとなったのだ。
雨空に祈る幸せ
「あした、雨だったらいいね」
小学生になったばかりの妹は、明日は家族でピクニックだというのにそう言った。
窓から見える天気は晴れ。清々しい程の青が空に広がっている。どう見たって明日雨が降りそうな雰囲気では無い。
「……明日は快晴だよ。天気予報で言ってた」
「かいせいって?」
「すごくいい天気の事。絶好のピクニック日和だよ」
「雨ふれば良いのに」
「……駄目だよ。だって、最後なんだから」
私は目を閉じて、自分に言い聞かせるように呟く。
「これが、家族で行く最後のお出かけなんだから」
雨が降っても延期にならない。正真正銘の最後のピクニックだ。
私たちの親は契約結婚の様なものだった。祖母達がすごく仲が良くて、いつか子供達を結婚させたいとよく言っていたそうだ。両親達もしょっちゅう互いの家に行き合う祖母に連れられて遊んでいたそうで、小さい頃からとても仲が良かった。2人とも優しい性格で喧嘩もなくすくすくと成長していった。結婚させたいという祖母の戯言も、2人の様子を見ているうちに本気で結婚させたいというものに変わっていった。2人の間にあったのは愛ではあるけど、決して恋では無かったのに。
両親が20を過ぎた頃、母方の祖母が病気になった。既にボケも入り始めていた祖母は持って数年と告げられた余命宣告に気が急いたのか、早く結婚して子供を見せて欲しいと両親にせがんだ。優しいが推しに弱かった両親は結婚式を見せるくらいならやってあげようと身内だけの結婚式をあげた。幼なじみと言うには近すぎた2人は、母の日にプレゼントを贈るような感覚だったそうだ。困ったのは子供だ。結婚して一緒に暮らしてもルームシェアのような感覚。それでも祖母を喜ばせたい一心で私を産んだ。この頃の両親は子供の頃から言い聞かされてきた祖母の夢を実現してあげなければと妙な強迫観念があったらしい。優しいと言えば聞こえがいいが、その実態は自分が無くイエスマンだった。
私が生まれてとても喜んだ母の祖母はそれから近いうちに亡くなった。思い残すことが無くなったのだろう、安らかな死だったそうだ。
優しい両親は私をとても愛してくれた。私から見ても両親は仲が良かった。でも今から思えば、友達の兄弟のやり取りを見るのと、感覚的には同じだったように思う。結局、家族ではあれど夫婦では無かったのだろう。
私が小学四年生くらいの頃、妹が生まれた。何も知らない私は喜んだ。私と妹は父と母と、よく遊びに来るようになった母の会社の友人だという男の人と一緒に成長していった。
幸せだった。でも実はとても歪だった。その事に気付けなかったのは、ここに確かに愛はあったから。 それから時が経ち、私は高校生になり妹は小学生になった。
先日父方の祖母が無くなった。
そして、この歪な楽園は終わりを告げた。
高校生の私に両親は全てを話してくれた。
二人の間に愛はあっても恋ではなかったこと。家族ではあったが兄妹の様な感覚だった事。そして、母はよく遊んでくれた会社の友人の男性と恋仲で、澪はその人との子供だということ。それを父は了解した上で、それでも家族であったこと。
父はむしろ母がちゃんとした恋愛が出来たことを素直に喜んでいたみたいだ。
もちろん、父も母も母の恋人も、皆本当に私と妹を愛してくれていた。優しい記憶しかないほど、私たちは疑いようもなく幸せだった。
でも、二人の祖母が死んで、両親を縛る最大の鎖が無くなった。
2人はよく話し合った結果、離婚することに決めた。私は父に引き取られ、母は恋人と結婚し、妹を引き取る。喧嘩別れではないから、祖母が両親をいつも一緒に遊ばせていたように、私達もいつでも遊びに連れていってくれるそうだ。私と妹には本当に申し訳ないと思っているみたいだけど、一つのけじめとして離婚は必要だそうだ。両親は家族では無くなるけど、私たちを愛してることには変わらないと言ってくれた。
そして明日、最後の家族の思い出としてピクニックに行くことに決まった。
妹には離婚する事だけは伝えている。離婚しても変わらず愛してることも、いつでも遊びに来ていいとも。「今のままじゃだめなの?」と泣いた妹に、いつも優しい両親はごめんね、と困ったように笑ってただ抱きしめるだけだった。
ピクニック当日は清々しい快晴だった。
父と母と妹と私。父と母はいつも通り優しく、私たちを見る目には愛が宿っている。妹は幼いながらも離婚という意味を感じ取っているのか、無理やり明るくはしゃいでいる。私は走り回る妹に手を引かれて一緒に走った。ぎゅっと握られた手はとてもキツくて、まるで行かないでと言っているように感じた。私もぎゅっと手を握り返し、こぼれ落ちそうになる涙を笑顔で隠した。
母と妹の引越しの日は、ピクニックの時に妹が切望した様な雨模様だった。
雨でも引越しが延期することはなく、離婚届も既に受理されてもう家族でない事には変わりはない。
母は私を、父は妹をぎゅっと抱きしめて最後のお別れをした。妹は両親を困らせないようにぎゅっと唇を噛んでいた。また会える、愛してると慰められているが、だったらなんで離婚するの!と叫ぶような視線は雨と一緒に地面に落とされていて両親には届いていない。
母の新しい夫が車で迎えに来て、いよいよ別れる時が来た。車に乗り込む姿を私は父とじっと見ている。父は優しい笑顔を浮かべていた。母の、母の家族の新しい門出を祝うかのように。
私は涙が零れないように雨空を見上げた。
愛はあった。ちゃんと愛されてはいたんだ。ただそれが、本当に家族愛なのかは分からないけれど。
まだ幼い、本当の愛で生まれた妹だけはどうか幸せでありますようにと、降りしきる雨空に私は祈った。 >>336-339
作者の方、ご参加ありがとうございます。
ホムンクルスと人間の青年の愛の物語、この後どうやって展開されていくのでしょう。
愛を探し、愛を与えて目を覚まさせる。恋物語的で面白かったです。 >>340-341
じーんとなる話です。
契約結婚でも愛し合う家族、しかしその形はどこか歪んでいて。
愛人を許す夫、そして愛人と母との間に生まれた妹を抱える姉。
最後のピクニックは、きっと悲しくて楽しかったのでしょう。
報われないような、それでいて幸せなような。
とても素敵な作品でした。 応募作品のまとめ
・人ならざるものに愛を寄せて(S)
・人ならざるものに愛を寄せて(だるいねんさん)
・雨空に祈る幸せ(名無しさん)
・人ならざるものに愛を寄せて(Rさん)
・人ならざるものに愛を寄せて(名無しさん)
・雨空に祈る幸せ(名無しさん)
以上、六作品となりました。 では、私なりに順位づけをさせていただきます。
1:人ならざるものに愛を寄せて(名無しさん)
ホムンクルスの少女と主人公の未来を想像させられる愛の物語、とても良かったです。
2:人ならざるものに愛を寄せて(Rさん)
浅葱色の女性が一体何者で、どこへ消えていってしまったのか。
情景が美しい作品でした。こういうの好きです。
3:雨空に祈る幸せ(名無しさん) ※六番目の作品の方です
円満離婚の家族。姉と妹の関係性が切なくて、良かったです。 おはようございます。
S祭り参加の皆様お疲れ様でした。
今回名無しの方も多く
審査資格保持者も少ないため
審査をする意味に疑問も残りますが
おこがましいと思いつつも
自分なりの順位をつけさせていただきます。
一位
>>340-341
雨空に祈る幸せ
二位
>>336-338
人ならざるものに愛を込めて
三位
>>324
人ならざるものに愛を込めて
以上です。 おはようございますRさん。
審査必要なのかなーって疑問はかなーり残りますが……。
では、今のところの結果をまとめさせていただきます。
S:0pt
だるいねんさん:1pt
名無しさん@:0pt
Rさん:2pt
名無しさんA:3+2pt
名無しさんB:3pt 一位は>>340-341やな。話は纏まってはいるんやが内容は駆け足やな。部分的に回想録に見えるわ。
二位は>>333やろな。あんま深く考えて作ってないところが自然に思えたわ。創作としてみると物足りへんが、まあええか。
三位は>>336-338や。ゴミ捨て場に捨てられたホムンクルスの持ち帰りは占有離脱物横領罪に問われそうに思えるんやが、未来ではどうなんやろな。
こんなところやろな(´・ω・`)今日も忙しいねん ワ……じゃなかった、だるいねんさん、ありがとうございます。
では集計結果の発表です。
S:0pt
だるいねんさん:1pt
名無しさん@:0pt
Rさん:2+2=4pt
名無しさんA:3+2+1=6pt
名無しさんB:3+3=6pt
ということで、名無しさんA・Bさん(便宜上勝手につけましたが)の優勝です! おめでとうございます。
コテ組の方がこれ以上いらっしゃらないので、以上で審査は終了です。 第三弾S祭り、これにておしまいです。
皆さんお疲れ様でした。素敵な作品をありがとうございました。 Rはコテとちゃうん?
順位は確定とちゃうやろ(´・ω・`)出かけるわ Rさんもうなさいましたよ?
順位は確定のはずですが……? 集計がちょっと間違ってますね。
Sさん : 0pt
だるいねんさん:1pt
名無しさん①:0pt
R : 2+2=4pt
>>336-338
名無しさん②:3+2+1=6pt
>>340-341
名無しさん③:1 +3+3=7pt
なので
一位
名無しさん③
二位
名無しさん②
になるかと思います。
レスアンカー多すぎって怒られたから
必要最小限にしたので少し分かり辛くなりましたけど。 ほんとだ……。申し訳ありませんっ。
名無しさんBの優勝でした。頼りない運営者でごめんなさい! 知ってた?
この投票形式、投票しない奴が有利なんだぜ
だから投票してない奴が勝っただろ 知ってましたよ。
まあでも参加者を増やす意味で名無しさんの参加は必要でしたし……。
まあ平等と言える投票方法にはなっていませんね。 申し訳ありません
寝坊しました
離婚の雨空に祈る幸せを書いた名無しです
もう終了してしまって意味は無いかもしれませんが、私的順位を書かせてください
一位 人ならざるものに愛をよせて(カメラの方)
二位 人ならざるものに愛をよせて(だるいねん様)
三位 人ならざるものに愛をよせて(ホムンクルスの方)
昨日の朝このスレを見つけて勢いで書いて初投稿させて頂きました
感想嬉しかったです
貴重な経験をありがとうございました >>358
完全新規の方でしたか。
ご参加ありがとうございます。雨空に祈る幸せ、とっても良かったです。
順位づけはちょっと締め切ってしまいました。すみません。
優勝おめでとうございます。 >>348
ワ……だるいねんさんありがとうございます。
さすがですね。
3回位書いて途中で行き詰まって、最初から書き直して
開き直って深く考えずになんとか完走できたので投稿した事を
全てお見通し! 参りました!
油断した訳では無いですが
毎回本当に勉強になります。
ありがとうございました。 祭り終了翌日であり、非常に勝手なのですが。
私、スレ主を卒業します。
のでここのスレは、使いたい方がいらっしゃったらご自由にどうぞ。譲渡します。
今までありがとうございました。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています