エルヴェ・ルソー『キリスト教思想』(文庫クセジュ)
先に読んだ八木雄二『中世哲学への正体』は、ほぼドゥンス・スコトゥス中心の入門書だったが、こちらは西欧キリスト教思想に関する通史になっている。
神学のみの歴史というわけではなく、神学と哲学が相互に影響を与えあいながら発展していく過程を描いている。特に「啓示」と「理性」の関係を軸に据えて記述されている。
著者自身も神学と哲学の中間に身を置いていて、信仰に対しては、神学ほどには接近せず、哲学ほどには離れずといったスタンス。
第一章では、ユダヤ教の中からキリスト教が誕生してから、15世紀くらいまでの全般的な流れをたどる。
ヘレニズム文化・ギリシア思想との関係、布教におけるギリシア語やラテン語の問題、グノーシス主義との対決、啓示とロゴスの問題、
神の本性の問題(神は感覚や感情を持たないのか)、三位一体論争、肯定神学と否定神学、などの話題が雑然と提出される。