石川幹人『人間とはどういう生物か』(ちくま新書)。著者は認知情報学・人工知能の専門家。
「意味」や心の謎について考察。著者は人工知能開発の困難に直面し、コンピュータは「意味」を持てないと結論している。
フレーム問題などを指摘し、「意味の全体論」を唱えている。このあたりの考察には特に目新しさはないが、
自動翻訳機開発の難しさなど、技術者としての実感から論じているのは貴重かもしれない。
将棋ソフトやクイズに答えるコンピュータについての技術的な話は面白い。
「コンピュータは意味を解さない」という説の論拠として「中国語の部屋」の思考実験を考えた哲学者サールの立場に近いようだが、サールへの言及はない。