歴史修正主義という言葉が使われる経緯
物語られた歴史historyは,見直し=修正revisionの可能性につねに聞かれている.
見直し=修正を拒否する歴史は,イデオロギー的に絶対化された歴史である.
だから,修正主義revisionismという言葉も,かつては必ずしも悪い意味ではなかった.
ところが近年では,「歴史修正主義」という言葉はほとんどいつもネガティヴな意味で使われ,
批判の対象に付けられるべき名前となった.「ホロコースト(ナチス・ドイツによる
ユダヤ人大量殺戮)などでっち上げ」「ナチ・ガス室はなかった」などと主張するホロコースト否定論者たちが,
みずから歴史修正主義者revisionistを名乗って活動していることが大きい.
1990年代後半の日本に,「自虐史観」批判を掲げて登場し,「日本軍〈慰安婦〉問題は
国内外の反日勢力の陰謀」「南京大虐殺はなかった」とまで叫ぶに至った勢力が,
「日本版歴史修正主義」と呼ばれるようになったのも,この連想か働いたためである.

「歴史/修正主義」(高橋哲哉・岩波書店)p.iiiより。

佐藤さんの使い方も概ねこの線でしょう