2021秋学期「計量社会学」の講義資料(村瀬洋一)
https://www2.rikkyo.ac.jp/web/murase/metsoc.html

多くの社会学は、測定や分析に失敗しているので、あやしげな質的調査や、直感での分析、構築主義などの解釈や印象批評に逃げてしまっている。

多くの記述的社会調査(質的社会調査)は、データの偏りが大きく「木を見て森を見ず」の不適切な研究となる。
また、的確な測定法と分析法がないままに研究している。分析法といっても、深く解釈しましょうというくらいか、分類のみである。

これでは、不適切な分析結果を見抜き、現実の大規模な社会現象や格差問題を扱うこともできない。
分析法なしのいい加減な研究は、社会学の信用を落とし、学問に対する負の貢献となってしまう。
学生が卒業後に、学問の成果を生かすことも難しい。このような低レベルな学問から脱却することは、社会科学全体の緊急の課題である。

適切なデータがないからといって、いいかげんなデータをもとに研究してはいけない。
計量分析ができないから質的研究に逃げる人が多いことも事実だが、そのような姿勢が正しいわけではない。

計量社会学は、米国や世界の多くでは、社会学の中心的手法である。日本では普及が遅れているが、米国社会学の雑誌は、7割が計量の論文である。

米国や国際的な社会学会では、質的調査は既に流行が過ぎ、適切な分析法の開発に失敗したため評価は低い。
調査したが分析できない、ということでは研究にならないのである。