顔面に覆われた白帯からわずかに覗くその眼は、人斬り鬼と呼ばれるふさわしい鋭さがある。

対峙するHの眼には、そのような鋭さはない。だが、怯えもない。澄んだ眼でKを見る。
「ヒトノシゴトヲジャマスルナ」
低く、機械的な声が響き渡る。
「無差別に人を斬ることが仕事か?」
Hは刃先をKに向ける。
それに反応し、Kも鞘から刀を引き抜く。
「ジャマナモノハスベテキル」
向かってきたKの刀に、何とか間に合わせた。両者の刀が共鳴する。
すぐにHは後ろに退き、Kとの間合いをとった。
「なんだ……こいつ……」
今の一撃でHの手にかなりの痺れが伝わる。これまでの刀戦でこんな経験はない。
刀を握る手に自然と力が入る。
「ヨクマニアッタナ。キサマ、フツウノニンゲンデハナイナ?」
Kは刀を指先で弄ぶ。
「我は、剣客」
Hは低い位置から刀を構え、踏み出した。
Kは仁王立ちし、未だに指先で刀を回している。
HはKの正面に入り、左上方へ振り抜いた。
血しぶきがHの眼前に舞う。
振り抜いた左腕には、過去の刀傷とは比にならない横一線が描かれていた。刀を握る力が弱まる。
正面のKは、刀を指で回したまま、Hの前に立ちはだかる。胸元の服がわずかにめくれた程度で、Kは無傷だった。
「ワタシノフクマデカタナガトドクノハヒサシブリダ」