作家になりたい、詩人になりたいというのは、
なんとなくわかるようで、実をいえばわたしにはよくわからない。
わたしは「才能」など信じていない。強いて言えば、わたしにはよくわからない。
少なくともわたしはそういうことを真顔でいう人間とは一秒でも対座していたくない。
わたしは「才能」など信じていない。強いて言えば、書きたいと思いつづけることが才能だろう。

      ―116回文學界新人賞 松浦寿輝評