俺が書いてみた。

・まず藤波と星崎はそれぞれ別の思惑でもってマラソン大会に参加してる
・藤波は星崎を意識してない
・星崎は藤波を意識してる
・だから星崎はゴールしたあと藤波に声をかけた

あと1人。
2人の間の距離はほんの数メートルだった。
その距離が徐々に縮まっていく、そして2人の肩は並ぶ、時間にしてほんの1秒か2秒並走していたがとうとう1人が抜け出した。
観客からワーワーという歓声が湧いた。
後ろから追いかけてきた生徒が校庭のトラックで先頭にいた生徒を追い抜いたのだ。
校内マラソン大会は20kmの距離を600人の全校生徒が走る。
毎年晩冬に行われる末広中学校の体育行事である。
そして全校生徒が参加するので毎年大きな盛り上がりを見せる。
今年も生徒の家族や友人、近所に住む人など、大勢の人が観に来ていた。
1位の生徒がゴールテープを切ったあと、
ほかの生徒達も続いてゴールラインを踏んだ。
藤波はゴールした直後に地面に倒れこむように手をついた。
苦しく息を弾ませて、熱くなった息を白い煙のようにして吐き出していた。体中が熱い、脚も痛い。
周りにいる他の生徒達も皆白い煙を吐いて地面に這いつくばっていた。ゴールした1人の生徒が藤波に近づいてきて声をかけた。「藤波くん」
藤波は四つん這いの姿勢からぐっと体を起こしてその生徒を見た。
「星崎か・・なに?」
藤波はなかなか息切れを収められず唾を飲み込むようにしてから返事をした。星崎も息を切らしていた。
「なんで・・そんなに最後・・思いっきり走れるの?」
言い切ったあと星崎はじっと藤波を見た。藤波は星崎の質問をいぶかったのか眉をひそめた。
星崎はそんな藤波の表情を気付かないのか意に介さないのか、ただ藤波の返事を待った。
「5位・・5位以内に入りたかったから」
藤波の言葉に意表を突かれたのか星崎は初めきょとんとした顔をしていたが、次第に笑みを浮かべ、とうとう口を大きく開けて笑いだした。