冒頭ですみません。評価お願いします。視点があっているか……

差し出されたお茶に手をつける事なく、女は身を潜める様に応接室のソファーに座っていた。

担当が間も無くやって来ますから。

事務員の声に返すことなく、うつむいたまま出されお茶を興味無さげに見つめているが、手にした封筒を胸に抱える様固く握りしめる様に女の緊張を見てとる事ができた。

歳は三十半ばであろうか、少し厚めの化粧が生気の乏しい女の顔には不釣り合いに見えた。若いころは美しかったのだろう。歳を重ねることに対する女の反抗が、バランスを欠いた女の容姿にもの悲しさを添える。

「お待たせしました」

若い男が入室するなり、名刺を差し出して一礼をした。名を相田と名乗った。
相田は、立ちあがり一礼を返そうとする女を制し、自らも対座するソファーに腰をかけて女に茶を促したが、女はやはり軽く頷くだけであった。
「弊社のクライアントの菅井様からのご紹介と言うことで、私どもの事業内容についてはご存知かと思われます。
けれども一応ご確認と言うことで、お話させていただいてもよろしいでしょうか」
「よろしくお願いします」
女はようやく言葉を発した。言葉を発声することにより人は緊張の度合いを弱める。相手に言葉を発声させるには「はい」か「いいえ」で答えることができる質問をするのが一番の近道である。女が封筒をローテーブルに置き視線を少し上げたのを確認すると、相田は一呼吸間を置いて会社の業務内容を話し始めた。

「まず、弊社の事業の目的はクライアントの指定する対象に『気づき』を促すことにあります。
その内容は問いません。例え対象に『気づき』を促すことにより、結果、相手が深く悩んだり、傷つくことが予想されるような内容であったとしても、私どもはご要望どおり仕事を遂行いたします。
けれども……この線引きが難しいところなんですが……」

相田は一旦話を区切り、お茶で口を湿らせてから再び続けた。

「ベクトルの方向は厳正に審査をしてをしております」
「ベクトル……ですか」
「そう。ベクトルです。思いの向きと言い換えてもいいでしょう。つまり、クライアント様がどのような動機をお持ちか、ここを重要視しております。
端的に言えば『復讐の代行』はお断りさせていただいている、ということです」