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差し出されたのは小鉢の枝豆とビールの入ったジョッキだった。一口飲んで、枝豆を頬張った。ママは妙齢で、30代前半に見える。
奥のテーブルでおしぼりを巻いているホステスの女の子は20代前半に見える。二人の関係は?と言う所にも興味があったし、最近はパソコンとスマホにのめり込んで生きていたから、女性との会話が新鮮だった。
なのでカウンター越しのママからまず話しかけてみた。
 「ママ?名前なんていうの?」
と軽く名前を聞いて見た。ママとおぼしき女性は右手を腰に当てて、笑顔を含ませて言った。
 「私の名前はとりあえず店ではあんず。そっちの女の子はトモ。姉妹なのよ」
 「へー姉妹でやってる店か。いや、最近女性と口聞く機会無くて新鮮だよ」
 「あら、彼女とか居ないの?」とお通しを作りながら、目線はこっちに投げかけて、あんずママが言う。俺は見栄を張る訳にもいかないので、正直に答えた。
 「 いや、一年前に痛い失恋してから、女性には興味無くて。仕事に打ち込んでいるんだよ」
 「あら、いい男なのに、もったいないわね。どんな失恋?」
 「そうそう、どんな失恋?」といつの間にかトモちゃんが隣の席に座って、会話に入って来た。