待てよ。

そもそも次元ってなんだ。
平面は二次元、立体的なものは三次元、四次元ポケットは不思議なところ。
その程度の認識しかない。
もしかしてこれを理解したら、さらに飛躍できるのでは。
さっそく僕は、Wikipediaで調べてみた。
・・・ダメだ、さっぱり分からん。
辛うじて読み取れたのは、数学や物理の分野で扱う用語であること。
とあらば、ここは大介さんの出番だ。

ふと耳を澄ますと、遠くの方から聞き慣れた排気音が。S14シルビアだ。
近くの空き地に車が停まり、アポ無しでインターホンが鳴る。

「あれえ、大介さん、今日はどうしたんですか。」

訳を訊ねると、オイル交換しようとスタンドへ向かっていた途中、警察に職質を受けた。
整備不良の疑いで停止させられたが、基準値は満たしていた。
キップを切られることはなかったものの、すっかり萎えてしまった。
そこで予定を変更し、気分転換に僕のアパートへ来た、とのこと。

「ちょうどよかった。実は僕も、大介さんに教えてもらいたいことが。」

炬燵テーブルをはさみ、向かい合わせに座る。
僕は、次元についてストレートに質問してみた。
すると大介さんはしばらく考え込んだのち、「結論から言うと・・・」。
「ストップ!」
僕は片手をつき出し、大介さんの言葉を遮った。

工学部らしい合理的な言い回しだと思うが、こういうテーマは先が見えない方がよい。
一から順に会話のキャッチボールを楽しみ、最後にオチが来るといった流れが面白いに決まっている。
法学部の僕のセンサーが、そう判断した。