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思い起こせばひとには「こんな日がくるとは思わなかった」という瞬間が多々あるのではないだろうか。
それは晴天の霹靂が如く思いも寄らぬ形で訪れるのではない。こころの内に予感をして置いて、いざ実感をすると感嘆符の様に頭を巡る言葉であるのだろう。
思いも寄らぬはその中身ではない、時期なのである。

 そんな、去年とはひと味違う私の誕生日が過ぎると、間もないまま盆がやって来た。まとまった休みを取り親子3人で妻の実家に帰省するのが私たちの毎年の恒例である。
妻の実家は私の住む街から3時間程車を走らせた山あいにある田舎町だ。それが盆と重なると5時間もかかる。億劫と言えば言えなくもない。
けれども日々の生活に追われる私たちには盆と正月くらいしか帰る機会を得ることができない。先方も楽しみにしているし、第一に私には私の目的もあった。車中に菓子を持ち込み旅行気分でいれば悪くはない5時間だ。