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斎場を後にして、私は目的もとくにないまま、ふらふらと自宅近所を歩い
ていた。どうしてもまだ、ねこのいない家に帰る気が起こらなかったのだ。
近くのコンビニでワンカップを買い、公園のベンチでちびちびと酒を飲む。
休日を遊び倒す元気な子供たちの声にいたたまれなくなり、すぐに公園を後
にして再び道を歩く。ふと、側溝から私のねこに似た猫が飛び出してこちら
を見てきた。

「チッチッチッ」

試しに猫を呼んでみたが、プイと何処かに走っていってしまった。いつかは
人に譲ろうと名前を付けずにおいた私の「名無しのねこ」。道を歩けばどこ
にでもいそうな、普通の雑種の猫。それでも私が呼べば寄ってくる、ただ一
匹だけの猫だった。当たり前の事実ほど、失うまで気付けないものなのかも
知れない。そう思うとまた淋しさが込み上げてきた。