読者を内容に没入させるほどの面白さがあったら重大な欠陥があっても受け入れられると思うけど。

小説じゃないし、ミステリーでもないけど、大ヒットして社会現象にもなった「君の名は。」はおかしなところや突っ込みどころが山のようにあった。
突っ込みどころはいろいろあったけど、そのひとつに何百年も前に日本に衝突した彗星がまた日本に衝突するのはどう考えてもあり得ない。
だって彗星が地球に衝突したのならその時点でもう彗星そのものがなくなっているはずなのだ。
これに対して「昔の彗星じゃなくてまた別の彗星が現れて衝突した」とか「彗星そのものじゃなくて彗星の一部が欠けて衝突した。残った部分の彗星がまた地球にやって来た」
とかいろんな考察がされたが、いずれにせよまったく同じ場所に彗星が衝突する可能性は限りなくゼロに近い。わざわざ計算している人もいたな。
「フィクションなんだから野暮なこと言うんじゃない」という声も多かったがさすがに物語の根幹に関わるような欠点は見逃せない。

……はずなのだが、そんな突っ込みは「感動できる」「面白い」という感情の前では多くの人が気にしなかった。
というかそもそも「おかしい」「変だぞ」と気付かせなかった。
「この映画ここが変だよ。あり得ないよ」と指摘しても「野暮なこと言うな」で一蹴された。
人の気持ちや感情をガッツリ掴むことができるなら「ここがおかしい」はすべて「野暮」で終わってしまう。
でも逆に言うと、人の心を掴むことができなければ「おかしいだろ」と突っ込みの嵐にさらされるんだけど。