中瀬ゆかりが若手の作家の小説を読んですぐに大江健三郎の万延元年のフットボールを読んだら、
あまりに文体に癖ありすぎて最初の数ページで読むのやめたんだってな。
結局数年後に再読して良い小説だと認識を改めたらしいけど、その時は酷い文章でとても読み進められなかったって。
中瀬ゆかりは本読みのプロだし大江健三郎もノーベル賞作家であるのにこんな事が起こる。
これが新人賞の応募作と下読みならもっと極端にいろんな不幸な事が起こると思うわ。
下読みがそれまで読んできた比較的ノーマルな文体の流れに、いきなり癖の強い文体が来ると激しい拒絶感が出てシャットアウトとか。
あと数十ページ読み進めてくれたら文体にもなれていろんな仕掛けにも気づいてくれるのにって願いも空しく一次落ちって。
だから一次落ちのすべてが本当に救いようのない欠陥作品ばかりとは思わないな。
下読みは神じゃない。あくまで人間。同じ作業を延々続けていたら感覚も麻痺するしアンテナもにぶる。