菅氏、中小企業の再編促す 競争力強化へ法改正検討
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63502940W0A900C2EA2000/
 菅義偉官房長官は5日の日本経済新聞のインタビューで中小企業の統合・再編を促進すると表明した。中小の成長や効率化の阻害要因とも指摘される中小企業基本法の見直しに言及した。アベノミクスの継承と同時に、グローバル市場における日本経済の競争力強化に政策の照準を定める。(中略)
 中小企業については「足腰を強くしないと立ちゆかなくなってしまう」と訴えた。
 日本の中小企業は現在、小規模事業者を含め約358万社あり、企業全体の99.7%を占める。
 中小企業白書によると従業員1人あたりの付加価値額を示す「労働生産性」の中央値は大企業の585万円に比べ、中規模企業は326万円、小規模企業は174万円にとどまる。企業規模が小さくなればなるほど生産性が下がる傾向がある。(後略)』

 中小企業の生産性が低い(=従業員一人当たりの生産量、あるいは粗利益が小さい)ことは確かです。
 とはいえ、これは別に「中小企業が多すぎる」ためでも、「中小企業の経営者や従業員が怠慢」なためでもなく、単純に「仕事が少ない」ためです。厳密には、安定的で拡大する需要がない、になります。

 まずは「定義」が重要なのですが、生産性とは、
◆ 生産性=粗利益(あるいは生産量)÷従業員数
 と、なります。

 実質賃金は生産性と労働分配率で決定します。従業員一人当たりの粗利益(あるいは生産量)が増えていけば、労働分配率を引き下げない限り、実質賃金は必ず上昇します。

 逆に言えば、現在の日本国民の実質賃金が下落していっているのは、生産性が低迷しているためです(及び労働分配率の引き下げ)。

 ところで、なぜ「粗利益(あるいは生産量)」なのかと言えば、粗利益は物価の上昇のみで拡大する可能性があるためです。というわけで、生産性は定義的には「従業員一人当たりの生産量」になります。

 もっとも、製造業はともかく、サービス業の「生産量」は統計が困難なので、金額で見ています。 

【日本の企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移(万円)】


http://mtdata.jp/data_71.html#seisannsei

 図の通り、確かに中小企業の生産性は低い。とはいえ、中小企業が地方経済の担い手になっているのは間違いありません。

 東京一極集中にストップをかけなければならない我が国で、地方経済の中心である中小企業について、平気で「再編」だの「グローバル市場における競争力強化(要は価格競争力の強化)」を言い出す時点で、菅官房長官の国家観はおかしい。

 さらに、中小企業だろうが、大企業だろうが、生産性は、総需要(厳密には潜在的な総需要)が供給能力を上回るインフレギャップの状況で、投資が行われなければ上昇しません。

【インフレギャップとデフレギャップ】


http://mtdata.jp/data_46.html#Gap