>>510

人混みの内を歩いていると、妙に騒がしい一角があった。
どうやら斧彦が屋台の男と一騒動起こしているらしい。

『さぁ…熱〜いチュウをしましょっ!』
『うっ、うわぁ!誰か、誰か助けてくれぇ!』

太田斧彦は極度の接吻魔であり、好い男を見つけるとすぐに接吻しようとする癖がある。
体を見て分かるようにかなりの力もあるため、よりタチが悪いのは言うまでもない。

『ま、ほっといても害はねぇやな…』

ここで斧彦の世話をして、厄介事に巻き込まれたくはない。
屋台の男には申し訳ないが、と米田は心の中で合掌し、足を進めた。