>>749続き)

ここで議論したいのは、「多くの作家は、サイン本屋さん(買われ続ける仕組み)を持っていない」ということです。
彼らにとっては、新作を出版した直後がセールスチャンスで、そこに(広告費などの)コストを集中します。
「本屋さんで平積みされている間に、なるべく売っちゃえ」という考えです。

もちろん一理も二理もあるのですが、ですがそれは、
「肉」や「魚」といった賞味期限がある商品の届け方の基本姿勢であって、
書籍(時事ネタ本を除く)には、賞味期限などありません。
星新一のショートショートは今読んでも面白いです。

考えなきゃいけないのは、「1冊の本が10年、20年、30年売れ続ける仕組み」で、その為に、
どういったバリューをのせて、どういった形態で販売すればいいのか?を模索しなければなりません。
『キンコン西野のサイン本屋さん』にしたって、永遠ではありません。
僕の影響力が落ちたり、僕が死んだら終わってしまうわけですから、次の打ち手を考えなければなりません。

ちなみに…
僕が寿命を迎える直前に、頑張って100冊の絵本にサインを入れて、1週間に1冊限定で販売して、
1冊売れるほどに、本の単価を(複利3%で)上げていくようにスタッフに伝えようと思っています。
『最後の100冊キャンペーン』です。
売り上げは全額絵本の寄付に使ってください。

モノ作りの現場にいると、『作品を作る』というところに力を注いでいる人はよく見ますが、
『作品を育てる』というところに力を注いでいる人はあまり見かけません。
『新作』が過剰評価され、『育てる』が「怠慢」や「いつまでも、過去作に“しがんでいる”」といった感じで
ネガティブに捉えられているようにも思います。

ですが、エンタメの歴史を見ると、「王者」となっている作品(チーム)の戦い方は、
刹那的なヒットではなく、ロングテール(長く届ける)です。
参考までに、ミュージカル『キャッツ』の初演は1981年。
とっくに猫の寿命を超えています。