【裁判】ハーグ条約「子の返還拒否は著しく違法」最高裁初判断
(毎日新聞 2018年3月15日)
https://mainichi.jp/articles/20180315/k00/00e/040/320000c

■人身保護請求の上告審判決 審理は名古屋高裁に差し戻し

国境を越えた子の連れ去り防止を定めたハーグ条約を巡り、米国在住の父親が、
息子(13)を日本に連れ帰った母親に子の引き渡しを求めた人身保護請求の上告審
判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、「父親の請求は認めるべきだ」
として、父親側の敗訴とした名古屋高裁金沢支部判決を破棄し、審理を名古屋高裁
に差し戻した。

最高裁は判決で「条約に基づく裁判所の命令に従わず、子を返還しない場合は、
特段の事情がない限り著しく違法な(身体)拘束に当たる」との初判断を示した。

判決などによると、今回の裁判は米国で暮らしていた日本人夫婦が争っている。
母親は夫婦仲が悪化した2016年に息子を連れて帰国。米国に残った父親が
子の連れ去り防止の原則を定めたハーグ条約の国内実施法に基づき、東京家裁
に息子の返還を申し立てた。 家裁は返還を命じたが、母親は応じず、強制執行の
ため執行官が自宅を訪れた際にも息子の引き渡しを拒んだ。

これに対し、父親は息子の引き渡しを求めて人身保護請求の裁判(2審制)を起こした。
1審の名古屋高裁金沢支部は昨年11月、「息子は自らの意思で日本に残ることを選択した」
として父親側の敗訴としていた。

ハーグ条約は、親の一方が相手に断りなく16歳未満の子を国外に連れ出した場合、
残された親の求めに応じ、原則として子を元の国に戻さなければならないとするルール
を定める。 日本は14年に加盟し、昨年10月時点の加盟国数は98カ国。【伊藤直孝】

[図解] ハーグ条約実施法に基づく子の返還手続き
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