安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、親の信仰によって深刻な被害を受けてきた「宗教2世」の問題に
社会の目が向くようになった。キリスト教系新宗教「エホバの証人」の信者だった大阪市の50代女性は
息子に「むち打ち」をしたことを今も悔やむ。「幸せになりたくて信じた宗教で、結局虐待もして人生を台無しにした。
私のように愚かな経験をする人がいなくなってほしい」

◆ものさしや電線で尻を…
 「むちを控える人は子供を憎んでいる」「子供を愛する人は懲らしめを怠らない」。1990年代に入信した女性は
教団で渡された聖書の内容や集会での教えを通じ、むち打ちが子どもに必要なことと刷り込まれた。
入信時に2歳前後だった息子が小学校高学年になるまで手を上げ続けた。

 集会で行儀よくできなかったり、伝道活動に同行させた際におしゃべりをしたり?。いつもきっかけはささいなことだった。
自宅や集会会場の別室で尻を出させ、他の信者から譲り受けたものさしやガスホース、電線を力強くたたきつけた。
 周囲からはむちが足りないと迫られることも。「どうか神が喜ぶように静かにして」。息子が泣いて暴れれば必死に回数を重ねた。

◆外出時は首に輸血拒否カード
 実家との関係が悪く、元夫の暴力に悩んでいた女性にとって、教団は救いの場だった。息子には伝道活動や週3回の
集会への参加はもちろん、教義に従い、外出時には必ず「輸血拒否」の意思を示すカードを首に掛けさせた。
 だが女性はハラスメント被害などを機に、次第に教団への不信感を抱くように。息子も中学生になると宗教活動を拒み始め
2010年代までに親子で教団から離れることを決めた。
 これまで息子には、過去の体罰や信仰の強制を何度も謝罪した。息子に責められることはないが
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の宗教2世による安倍元首相銃撃事件を機に、交流サイト(SNS)で多くの
宗教虐待の被害者の声に触れ、女性は後悔の念を一層募らせている。