日本語版ハリー・ポッターの不思議 part22
ハリー・ポッター日本語版を読んでいて「なんだか読みにくいな」
「どうしてこんな訳になったのかな」と不思議に思うことはありませんか?
原書を先に読んだ人からは、日本語版は登場人物などのイメージが違う、
誤訳珍訳があるようだという話をよく聞きます。
このスレは原書読者と日本語版読者が情報交換して、疑問点を話し合い
日本語版を読んでいるだけでは味わえないハリー・ポッターシリーズの
深い魅力について語り合っていくのが目的です。
翻訳者や出版社を叩くのが目的ではないので、その点をしっかり留意し、
単なる叩き・煽りを目的とした非建設的書き込みはしないようにお願いします。
また万が一、そういった書き込みがあっても軽くスルーするようにしましょう。
ハリポタの翻訳と原書を肴にマターリ話し合いましょう。
不思議な邦訳の原文が知りたい人は、原書読者が調べやすいように
ページ数だけでなく、何巻何章のどのようなシーンかもなるべく書いてください。
前スレ、関連スレ、よくでる問題などは>>2-10あたり □関連サイト
J・K・ローリング・オフィシャルサイト(英語・日本語訳あり)
http://www.jkrowling.com/
Harry Potter books from Bloomsbury(英語・イギリス版元)
http://www.bloomsburymagazine.com/harrypotter/
Scholastic Harry Potter(英語・アメリカ版出版社)
http://www.scholastic.com/harrypotter/home.asp
静山社
http://www.sayzansha.com/jp/
□便利サイト
歴史魂(英語・the Harry Potter Lexicon)
http://www.hp-lexicon.info/index-2.html
利器鍋(英語・the Leaky Cauldron)
http://www.the-leaky-cauldron.org/
回転発言アーカイブ(英語・Accio Quote!)
http://www.accio-quote.org/
DictJuggler.net 文章に携わる人のための辞書・検索サイト
(翻訳訳語辞典・類語玉手箱などが便利)
http://www.dictjuggler.net/ 以下、週刊文春2008年7月10日号より抜粋
>「『ハリー・ポッター』シリーズ日本語版は、第一巻発売当初から
誤訳珍訳が多く、我々翻訳家の間では物笑いの種になっていました」
>「この作品は二十世紀末の英国が舞台で主人公のハリーをはじめ、
ティーンエージャーが主人公なのに、『手水場』『下手人』『旅籠』など
まるで時代劇のような言葉が頻出するんです」(ベテラン翻訳家)
>日本語訳では、会話文と普通の文章がごっちゃになっていて読みにくい。
看過出来ないところがあります。
>原書では、魔法学校で飼育学を教えるハグリッドは"I'm on probation"
つまり『観察、猶予期間におかれた』と語っています。この言葉を語った後も
彼は学校で働き続けていますから『停職』は明らかに誤訳。」
(翻訳家の明治大学教授)
>その他、camp out (=転がり込んだ)を「キャンプした」(第五巻)
omniscient(=千里眼)を「博識」(第六巻)、misry eyes(=潤んだ瞳)を
「霧のような瞳」(第一巻)などなど、誤訳、珍訳の類は枚挙に暇がない。
>また、フクロウが「傍受」(第五巻)されたり「脅し文句」を「殺し文句」と
表現したり、日本語がおかしい表現も多数指摘されている。 2. 名付け親問題
「男の子だ! ドーラの父親の名を取って、テッドと名付けたんだ!」(下巻p191)
「君が名付け親になってくれるか?」ハリーを離して、ルーピンが聞いた。(p192)
7巻に上のようなわけのわからない記述が出てくるのは
godfatherを安易に「名付け親」と訳したため。
ルーピンがハリーに頼んでいるのは「後見人」(まさかの時の保護者役)
godfather(parents)はもとは宗教関係の教育をする人という意味で
代父、教父、後見人、保護者代理、名付け親などの訳語がある。
「名付け親」というのは古い訳語。原則godfatherは名前をつける人ではない。
3巻でシリウスがハリーを引き取ろうとしていたり、保護者代理として
ホグズミード行き許可証にサインしたりしていたのは「後見人」だから。
ハリーに名前を付けたわけではないということは当時から言われていた。 3. ハーマイオニーの「マーリンの猿股!」(上p327)
魔法界では驚いたとき、Merlin's beard!(マーリンのヒゲ!)という。
これまでは「おどろき桃の木」「おやまあ」などと訳されてきた。
7巻でハーマイオニーは、Merlin's pants!(マーリンのパンツ!)と言って
驚いており、この訳がなぜか「マーリンの猿股!」になった。
先にロンがマーリンのパンツが出てくるふざけた言い回しをしている。
愛するロンの影響?で、慣れない魔法界の慣用句を口にしようとした
ハーが変なことを言ってしまったという感じで面白い場面だが
ロンの言い回しは「おっどろき、桃の木、山椒の木」と訳されたので
ハーのセリフは意味も事情もわからない唐突なものになった。 4. スネイプの「僕を……見て……くれ……」(下p404)
原文は" Look ... at ... me ..."
死ぬ前にリリー譲りの緑の目を見るため、ハリーを振り向かせようと言った。
あたりまえに訳せば「私を…見ろ」「こちらを…向け」のようになる。
次の文に「緑の目が黒い目をとらえた。」とあることからわかるように
この言葉でハリーは振り向き、最期に一瞬だけふたりの目が合っている。
スネイプが普段の意識で「僕」というのは考えられないため、邦訳の彼は
朦朧としてリリーの面影に語りかけたように感じられ、最期の最後に
緑の瞳をしっかり見て逝ったという原書の演出がぼやけてしまった。
もちろん解釈は読む側の自由なので、スネイプのキャラクターや
この言葉の真意について、あれこれ思い巡らすのは読者の勝手。
しかし邦訳は一人称を「僕」にすることで「少年時代の意識でリリーに懇願した」
という特殊な解釈のみ押しつける形になっており、問題がある。
※スネイプが直前に「記憶」を渡しているので、それを「見て欲しい」と
いう意味だと思った人もいるようだが、"Look at me."は原則としてその場で
相手の視線や意識を引く言い方なので、そういう意味にはならない。 5.冒頭のエピグラフ(引用)の訳が抜けている件
献辞(訳あり)の隣に原文のままで載せられている。
上はアイスキュロスのギリシャ悲劇オレステイア三部作の「供養する女達」から。
英雄アガメムノンの息子オレステスが父の敵討ちを決意する場面で
冥府の神に勝利を祈る合唱隊の歌の一節。
(物語に惨い戦いが出てくることを示唆? 心の準備を誘う)
下は民主主義の先駆者ウィリアム・ペンの格言集「孤独の果実」(1682年)から。
友は死すとも友情と団結は死せず…のような感じの文。
(これも登場人物の死を暗示するが、こちらはかなり救いになる)
どちらも作品の一部のようなもので、読めると読めないとでは
作品の印象も違う。訳さない、説明もないというのはずさんな手抜き。
テンプレ以上
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