作家別爆発音スレ
>>184
まともな感覚
「驚いて振り返った」だよな、人並みの文章力があれば 魔夜峰央
爆発音がした。
ロンドン大使館の決算報告書をチェックしていた若手武官が、操作していたPCのキーボードに突っ伏しながら、恐る恐る首をねじ曲げ音の聞こえた方向を振り返った。
「1号!6号!」
この部屋のもっとも奥まった位置にある少しばかり大きなデスクで、並んで決済待ちの書類の山と向かい合っている二人の武官に震え声で呼び掛けた。
「うん?」
1号と呼ばれた年長の方がおもむろに顔を上げた。
年齢と威厳と、何よりこの部隊のリーダーを長年勤めてきたことによる心労の深さがそのまま目尻の皺となって刻まれている。
「なんだ新入り君。下読みは終わったのか?」
爆発音など皆目意に介していない落ち着きぶりである。
「いや、だって今の音!」
「6号」
1号が傍らに座って黙々と書類に目を通している、やや年下らしい同僚に声をかけた。
「なんだい」
「いま殿下は何をやってる?最近古巣の陸軍に出張ってたから顔を見てないんだが」
嘆息しながら彼らの主人の動向について尋ねた。
「最近は…そうそう、例の“20ミニッツ”か、あれを改良したいらしい」
「改良?」
「と言ってもスペックダウンしたいらしいけど。今のままじゃ使いづらいからってね」
「確かにあのままじゃ殿下も含めて誰も得しないしな。せめて7デイズくらいにしないと話にならん」
新入りの恐慌をよそに話し込んでいる。
「あ、あの!」
「なんだい」
1号6号が声を合わせステレオで応えた。
「その、さっきからおっしゃってる20ミニッツって何なんですか?それが爆発したんでしょうか?」
「大丈夫だろう」
もはや爆発音そのものには何の関心も持たない様子で、書類に視線を戻して1号が答えた。
「全人類を20分で滅亡させる大量殺戮兵器だ。それが爆発していたらこうやって仕事はしてない」