「やめてくれませんか」アントワーヌが耐え切れないように怒鳴った。「なんですか、その口笛は」
「用事はなんでしょうか」ジルベールが圧し殺した声でいう。その声も微かに顫えていた。
「……恋人がサンタクロース……本当はサンタクロース……」日本人が陰気な、ほとんど聴きとれぬ低い声で囁いた。「僕はこの曲が好きなんです」
「ユーミンなんかどうでもいい」アントワーヌの声はまるで悲鳴のようだった。「あんたはなにしに来たんだ」