横溝正史ははっきりは言ってないけど、クイーンや
ヴァンダインの、事件が起きました、関係者から
聴取しました、犯人を指摘しましたというだけの
「コネコネクチャクチャ小説」を心底嫌ってたと思う

本格推理の論理性、伏線を置く構成の美は大好き
だったけれど、でもあの無味乾燥な、読み物として
全く面白みのないシロモノなんかこの俺が書けるか!
という気分は、横溝のいくつかの文章から読み取れる

横溝正史がカーから学んだのは、オカルトとかトリック
よりも、「面白くてワクワクする物語の中に伏線を置き、
論理的な帰結がドラマチックなエンディングを生む」
という「面白い本格」という二律背反をまとめあげた
スタイルだったんだろう
(最初に読んだ「帽子」も「黒死荘」もラストがいかにも
「絵になる」ドラマチックなシーンだし、戦前の横溝の
探偵奇譚に似ている部分がある気がする)

「本格にロマンはない」という思い込みをカーによって
一度取り払われたら、あとは書いていくうちに次第に
横溝自身のクリスティ式体質が表に出てくるわけで