何十年かぶりに「アラビアンナイトの殺人」を再読。第一部の「奇商クラブ」風のファンタジーは
前より楽しく読めた。第二部も快調。イリングワース博士の冒険はもちろん、後半の尋問も
悪くない。第三部はまあこんなもんだろう。問題はフェル博士の解決が蛇足以外の何物でも
ないことと、「気づかないほど愚かではないはず」とか「屋上屋を架すような工作はおかしい。
何かある」とか「お前が言うな」の一言がふさわしい部分が多いこと。創元版に図面が
ないことは別に問題ない。この時期のカーは愛読者には熟読させるだけの筆力がある。
図面が不可欠なのは「三つの棺」と「夜歩く」の二つぐらい、「死時計」はほとんど忘れたから
判断できない