冥府城
獄門島からの帰路、汽船に乗り合わせた鵜飼青年の悄然とした姿を見かねた金田一は立ち
寄る約束をしていた久保銀造邸へと鵜飼を伴う
金田一の連れということで銀造からも歓待を受けた鵜飼は心を開き、ある告白を金田一に
した
継母との折り合いが悪く但馬の実家を飛び出したというお志保に語った話は口実だった。
自分の実家への婿養子入りを強要する継母との不仲は嘘ではないが、本当は故郷の明布村
に伝わる言い伝えが恐ろしくて獄門島に逃げていたのだと
かつて天正年間に但馬を支配した羽柴長秀、後の大納言豊臣秀長は兄秀吉にも劣らぬ手腕
で但馬の豪族を戦わずして服属させ一国を電撃的に制圧する中、ただひとつ明布城だけは
頑強に抵抗したが衆寡敵せず陥落、その際に城主の寵愛した小姓が城の城壁から身投げを
して命を絶った
明布城が破却された跡には新田開墾村の明布村が作られたが、その村に見目麗しい若者が
生まれると必ず若くして自らの命を絶つというのだ
興味を引かれた金田一は、特に予定もなく、また早苗への思いを断ち切るために何か事件
に取り組みたいという気持ちから、鵜飼の帰郷に同行することに

などという未発表原稿が見つからないかな