侮辱罪は、刑法231条で定められている罪で、「公然と人を侮辱した場合」に成立します。侮辱罪の要件である「公然」とは、他の人に広まる可能性があることをいいます。たとえば、職場で他の同僚もいる前で侮辱された場合や、CCに多数の関係者を含めたメールで侮辱された場合などが該当します。

「侮辱」とは、言語や動作によって、相手を軽んじたりはずかしめたり、名誉を傷つけたりすることです。具体的には、「バカ」「クズ」「ゴミ」といった誹謗中傷、「ハゲ」「チビ」「デブ」など身体的特徴を馬鹿にする発言などが侮辱となります。また、事実が不明瞭な状況で「ブラック企業」「悪徳商法」などと企業を批判することや、芸能人に対してSNSで「死ね」「消えろ」「放火してやる」といった過激なコメントをすることについても、侮辱罪が成立する可能性が高いといえます。

「匿名だから」「みんな書き込んでいるから」といった軽い気持ちで過激なコメントをするのは危険です。匿名であっても、しかるべき手順を踏めば、特定することは難しくはありません。また、コメントを削除したとしても、スクリーンショットなどが保存されていれば、罪に問われる可能性があります。

侮辱罪とよく似た罪に、名誉毀損罪がある。名誉毀損罪は、刑法230条で定められている罪で、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合」に成立します。侮辱罪との大きな違いは、「事実を摘示」しているかどうかです。「事実を摘示」とは、具体的な事実に言及していることをいいます。たとえば「不倫している」「お金を盗むのを見た」「前科がある」「麻薬をしているに違いない」といった発言が「事実を摘示」に該当します。なお、その事実が真実であっても嘘であっても、名誉毀損罪は成立することがあります。