精神の排泄物

心の中のきたない ものたちよ おまえは常に ふりつづけ
私の心の奥底に 雨がふるように 雪がつもるように
ふりつづけ そして私の精神の
深いところに 澱をなし
やがて流れる年月の あまりの取り返しの つかなさに 恐怖し驚愕し
ふるえる心をつつみこむ 布切れ一枚もっていず
どこへ行けばいいの かも 何をすればいいの かも わからなく
いろんなことを思い いろんなことを行ない 心をあたためようと
してみたけれど 私の心が流す鋭利な 涙はちくちくと
私の眼球の奥底に つきささり 明日に向けて手をのばしても
まだうつくしい 遠い過去を見つめても
ただげきつうがはしり 世の中のいろいろないたみ どめをのみ
世の中のいろいろなほうたい をまき いろいろな人の話をきき
世の中のいろいろな ものごとに目を向けて
変わらぬいたみに ぜつぼうし 心が流す鋭利な血が
身体を破壊し 精神を破壊し
私を人間たらしめている あらゆるものを破壊して 人ではなくなった存在の
かすかな命を摘もうとす 命をうしなったわたくしは 流れる時をともなって
あとはくさって くちていく 恐怖やいたみも今はなく
たださびしさだけが みちている 私は明日をあきらめて
私の心のきたないものを 手ですくう
それはずっしりと 重くもあり 空気のように軽くもあり
白くもあり 黒くもあり 光を吸い込み 光沢を放ち
さらさらとして どろどろとして とてもうつくしい
私のすべてを破壊した きたなくてうつくしいもの
おまえを捨てられないのは きたなくてうつくしい おまえがいとおしいから
私の心が涙を流せど いとしいおまえを 捨てられず
私は命をうしなった
私の心は言っている 命のないままでは 生きられない
うつくしいきたない ものを排泄しなければ ならない
いとしいものよ 私はおまえを排泄する 私は死んだままでは 生きられない
私がきたないものを 排泄すると 命がもどり恐怖がもどり いたみがもどり明日がもどった
きたない世の中で いとしいおまえたちが またふりつもる
排泄したおまえたちは 今どこにいる 私はここで生きている