北海道新幹線も同様の発想でしかない。元々、北海道は150年前からずっと国策に従って開発されてきた。私自身、明治期に三重県から十勝岳の麓に入植し、
原野を開撃した曾祖父らの末裔だ。だが、北海道の開拓は、アメリカのような自主独立型のそれとは訳が違う。そんな北海道だからこそ、
旧来の発想を切り替えて、自立を考える時期に来ているのではないか。全国の他の地方も超少子高齢化が進み、経済的に衰える状況は同じだ。景気のよい話が少ない中で、
新幹線のような国の大型事業が目の前にあれば、「取り敢えず乗っておく」というのも北海道だけの話ではない。だが、異郷と言えるほどの
独特の地理的環境や広大な自然、そして豊かな資源のある北海道ならではの方策はきっとある筈だ。もう国策に引きずられることなく、
“脱昭和”の夢作りを目指すべきである。

菊地正憲(きくち・まさのり) ノンフィクションライター。1965年、北海道生まれ。国学院大学文学部卒業後、『北海道新聞社』に入社。2003年にフリーに。
著書に『もう一度学びたい日本の近現代史』(西東社)・『なぜ結婚できないのか 非婚・晩婚時代の家族論』(すばる舎)等。
2016年2月号掲載