北海道新幹線は、採算が合わないことが分かっているのになぜ開通させたのか?
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/04/post-13.php

現時点において北海道新幹線の収益性が低いことは、特に驚くべきことではない。函館(新函館北斗)が発着駅という状況では、そもそも大きな需要が見込めないからである。函館は観光都市ではあるが、ビジネス用途の乗降客はそれほど多くない。北海道最大の拠点である札幌のビジネス客が新幹線を利用するためには、在来線を使って函館まで移動する必要があるが、乗り継ぎが面倒である。

 しかも、函館から先で乗降客が多い都市は仙台と東京しかなく、両都市には、札幌から多数の飛行機が飛んでいる。多くのビジネス客は、新幹線開業後も引き続き飛行機で移動する可能性が高いだろう。現時点では観光目的の人と、青森−函館を移動する人が利用するのみという状況であり、需要は限定的とならざるを得ない。

 北海道新幹線が函館から札幌まで延伸されるのは15年後の2031年の予定だが、200万人近い人口を抱える札幌まで延伸されれば状況は好転するのかというと、そうでもなさそうだ。

 高速鉄道は所要時間が4時間を超えると飛行機に対抗できないといわれており、有利な状況で競争できるのは3時間以内というのが定説となっている。現在の北海道新幹線の所要時間は、東京−函館間が約4時間、仙台−函館間が約2時間30分である。

 札幌まで延伸された場合には、これに45分から1時間がプラスされるため、最短でも東京−札幌は4時間45分、仙台−札幌は3時間15分かかってしまう。東京−札幌間は4時間を超えているので基本的に飛行機には対抗できず、仙台−札幌も3時間をオーバーしてしまうため、新幹線の圧倒的優位性は消滅する。

 では、JR北海道はこうした状況を想定できないまま新幹線を開業させたのだろうか。もちろんそうではない。札幌まで延伸されたとしても十分な需要がないことは、当初から想定されていた。それでも新幹線のプロジェクトが進められたのは、整備新幹線という国策が存在するからである。