○ 国家とは神話を土台とする幻想的な共同を始まりとして発展してきたものです。

丸山を批判した人には、マルクス主義者から新左翼(?)に転向することになった吉本隆明がいる。
丸山は国家というものを社会契約説的に基づく擬制的な物だとみなしたが、
吉本はそれに対して、国家というのは神話を土台にするような幻想としての共同体があり、
それが発展してきたものだ。大衆の土着的な生活様式支えられている事を理解していなと批判した。

同じ考えはマルクス主義そのものにも向けられた。経済的問題によって国民の意識が規定されてるのではなく、
土着的な共同幻想によって支えられてるのであるならば、マルクス主義の理論は空虚な物になると。

こうした吉本の批判は、未だマルクス主義運動が盛んだった68年の『共同幻想論』によってまとめられたが、
それからマルクス主義が空虚な存在になったのも、吉本の指摘が正しかった部分があるからだろう。