1年戦争外伝、−HAPPY WEDDING−
第2話 「二人三脚」

 昨日も、今日も、おそらく明日も、トオル君の奮闘は続く。
転校生、セリカ・ナーレッドに勝つための、無駄な努力という名の奮闘が。

 ドッジボールの授業、セーフティエリアにはすでにセリカ一人、しかし四方からの球を
まるで全て予知してるかのような彼女の動きに誰一人命中させられない。
やがてボールを奪われると、やはり相手側で唯一人セーフティにいるトオルに四方から攻撃が来る。
持ち前の運動神経でボールから逃げつつ、カットする機会を伺う・・・が、
セリカの「カットすれば至近距離の私に当てられるよ」とでも言わんばかりの位置取りに
欲を出して無理に捕ろうとしたボールをこぼす、試合終了。

 写生遠足の水彩画、ほとんどの絵が教室の後ろに張り出されているが、トオルの絵は職員室の一角に
数枚の絵とともに掲示されていた。
で、セリカの絵だけは校長室の応接椅子の上にあり、来客者を驚嘆させていた。
ニュージーランド遠足、ほとんどの生徒がナウルホエ山を描いてたのに、セリカだけはキゥイ鳥の絵
躍動感のあるその絵は数ある山の絵を圧倒していた。

 水泳の時間、今度こそ勝つ!と息巻いているトオルだが・・・
水着姿のセリカは、森の妖精から水の妖精に早変わりしたような見事なしなやかな泳ぎを見せ
皆を魅了していた。まぁ元々カナヅチのトオルに勝ち目はなかったわけだが。
結局、雪辱を果たせないまま6year(6年生)に。ご丁寧に今年も同じクラスだ。

 トオルが「それ」に気付いたのはそれから1か月たった頃だった。
休み時間、セリカの周囲には誰もいなかった。あれ、取り巻きどこいった?
相変わらず彼女はスーパーガールっぷりを発揮しているし、それをハナにかけることもなく、愛想もいい。
むろん森の妖精のような美貌も変わることは無い、じゃあ一体なぜ?