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0252ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 1ad2-OMPP)
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2018/11/06(火) 18:23:59.76ID:T/pq6Qnt0
今回は以上です。
予想以上に長々と、そしてゴチャついた投下になってしまった・・・・・・

冒頭で述べた通り、これらは作中内で紹介しきれない、バックグラウンドを構成するものであって必読ではありません。
ただ、せっかく新型のデスティニーやらフリーダムやらを考えたのですから、それらの諸元を知って貰いたいと思い、このような形で設定集を投下させて頂ました。
こんな設定の羅列でも楽しんでいただける方がいれば幸いです。
0254ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:40:20.37ID:MT8pB/3O0
――艦これSEED 響応の星海――


『ビームキャノン! 鈴谷はビームキャノン希望しまーす! ズバーッて照射できるやつ!! あと勿論レールガンも外せないしカタパルトもリニア式とか超ロマンだよねーあでもそれは空母級に譲らなきゃかー
そうそうゴテゴテな追加装甲もイカすよねあとは――』
『ワタシ達金剛型戦艦には超長射程なRail GunをPleaseネ!! 高性能なRadarもお願いしマース!!!!』
『ミサイルだ。ありったけのミサイルを寄越せ。重雷装巡洋艦にはミサイルが必要だ』
『――それだぁ! 鈴谷の強風改にもぜひ空対空ミサイルを!!!!』
『鈴谷さんったら欲張りすぎっぽい。・・・・・・夕立にはビームサーベルが似合うっぽい?』
『いやウチに訊かれても』
『私と瑞鶴は装甲甲板をフェイズシフト製にしてもらえたらって思ってるの。長所を伸ばす方向で』
『ドッペルホルン連装無反動砲か・・・・・・。いいね。ボク、あれが気に入ったよ』
『ガトリングくれ!! この摩耶様にもガトリング!! マシマシで!!!!』

あれは音の洪水、欲の洪水だった。

『えぇと・・・・・・まぁその、追々に、順番にね?』
『はいはい要望はこの用紙に書いて提出してくださいねー。一度に言われたって無理ですからねー』

圧倒的圧力。明石が助け船を出してくれていなかったら、そのまま呑み込まれていたキラであった。
11月12日のお昼過ぎの、福江基地工廠でのこと。
佐世保からのストライクの移送をつつがなく終え、350mm大型レールキャノン・ゲイボルグ縮小化等の兵装コンバート実験を成功させ、呉のシン・アスカが西太平洋戦線の窮地を覆したとの速報が入り、
ビスマルクら出向防衛組の残留が確定すると、満を持してキラの艤装強化アンケートは実施された。
実施されて、お祭り騒ぎとなった。
例えその実現が遠かろうと、そんな事は些細なもので。
同時に行われた、特装試作型改式艤装Ver.1.2の響によるデモンストレーションの効果も絶大であったのだろう。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、
次々と艦娘用にコンバートされたC.E.製兵器を操っていく少女の姿が皆の闘争心に火をつけた。
MSのパーツを取り込み再構築した特装型改式艤装なら、誰でもC.E.製兵器が使用可能となる。この日々の延長線上にその日が在る。その事実だけでテンションがうなぎ登りになってしまうのも、致し方の無いことなのだ。

『あともう一回言っとくけど、あくまで優先すべきは艦隊の防衛能力の強化なんですからね。今回のアンケート結果が実現されるのはかーなり先の事だかんね』
『僕らとしては、とりあえず当面は響にいろんな装備を実験してもらって、それから実装プランを考えようかと』
『えー、響ばっかりずるいっぽい』
『そうだそうだー』
『エコヒーキだー』

なにせここ最近、良いニュースが殆どなかった佐世保艦隊である。
ちょっと振り返ってみよう。
0255ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:43:15.42ID:MT8pB/3O0
まず、例の隕石落下と電波障害と【Titan】のせいで鎮守府陥落寸前まで追い詰められた。最終的にキラと響が囮となってくれたおかげでなんとか持ちこたえられたが、
何かが少し違えば九州地方壊滅一直線となっていた地獄の一週間があった。
その後は一週間かけての鎮守府復旧作業に従事して、慣れない肉体労働に悪戦苦闘。打ち上げとして食事会を開催したが、全体会議も兼ねていたので実はあんまりハメを外せなかった少女らである。
そして突然降りかかった、痛み分けで終わったナスカ級防衛戦と、偵察衛星撃墜事件。再びの復旧作業と孤立の危機。敵は依然として目と鼻の先にいて、しかも【軽巡棲姫】をはじめとする強敵が数多く控えている。
それでいて状況の根本的解決は、程遠く。持てる全てを発揮して、辛うじて破滅を先送りにしているような。
客観的に大局的に見れば、よくもまぁ意地と根性だけで諦めずに戦ってこれたものだと感心するしかない悪夢的な日々だった。
主観的に局所的に見れば、響のちょっとしたパワーアップだとか仲間の絆が深まったとかあったが、だからどうした言ってしまえばそれまでのことで。

『いや、それはなし崩しというか、もうフォーマット出来てるから組み込みやすいってだけで。けっしてエコヒーキとかじゃ』
『愛ゆえに、だよね?』
『鈴谷さん茶化さないでキメ顔しないで。・・・・・・響、しばらく戦闘に主計課に僕らの手伝いにって大変だと思うけど・・・・・・よろしくね』
『大丈夫、問題ないさ。私なんかでもみんなの役に立てるのなら嬉しいよ。・・・・・・、・・・・・・例えなし崩しでも、ね?』
『・・・・・・え、あ。ち、違うよ響? 変な意味じゃなくてね・・・・・・?』
『Я это знаю。冗談だよ』

それがここにきて、艦隊全体の戦闘力強化の告知。
反撃の術はまだこの手の中にあると、確定した未来として皆に伝えられた。しかも強化内容は自分で選べるというオマケつきで。
朗報に継ぐ朗報。お祭り騒ぎにならないわけが無かった。

『二人から感じるこの波動・・・・・・! やっぱ鈴谷の勘に間違いなしじゃーん。ぜったい愛だよねー?』
『ねー?』
『ああもう鈴谷さん勘弁してくださいって。榛名さんも、ねーじゃなくて』
『よぉーしお前ら、オレ達もいつまでも三人ばっかりに甘えられてはいられないよなァ? 佐世保艦隊の総力を挙げて明石達をサポートするぞ!!』
『おー!!!!』
『みんなー、お昼ごはんおまちどーさまさまでーす! 雷特製カレー、たーんと召し上がれっ!』
『イヤッフゥーーーー!!!!!!!!』

この空気感は大凡、2日間も持続した。
というのも、時折デュエルのセンサーが接近する敵航空戦力を捕捉、スクランブルで迎撃戦が勃発こそしたものの、この日と翌13日は珍しく全体的に平和そのものだったからだ。
0256ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:46:06.89ID:MT8pB/3O0
余裕のある戦力と万全になりつつある索敵システムのおかげで、かなり効率的に敵小規模偵察部隊の撃退が可能となったのだ。
受動的な専守防衛などもう真っ平御免で、全戦力のローテーションで積極的能動的に平和を勝ち取るという強気な方針が功を成した。忙しいことに変わりはないが、
ここ最近ではもっとも物質的にも精神的にも余裕のある2日間だった。
ただ、だからこそのちょっとした波乱があったりもしたが。
例えば。
幾つかの偶然が重なり合って小一時間程、キラと響と瑞鳳がストライクのコクピットに閉じ込められたり。
荒れ放題だった宿舎の大掃除をしている最中に何故だか、瑞鳳と木曾がメイド服を着るハメになったり。
それを激写した鈴谷が基地敷地内を逃げ回った末にキラと衝突して、ちょっとオトナな下着を晒しちゃったのにキラの反応があんまりにも薄いものだから逆ギレしたり。
金剛主催のお茶会に招待された暁型姉妹が、洋酒入りチョコ菓子で面白愉快なことになったり。
とか、なんとか、その他色々諸々と。こんな感じの姦しくも穏やかなイベントがあった。「恥ずかしかったり怒ったりもしましたケド、割と楽しかったです」とは後の榛名の談。


そして迎えた11月14日。その早朝、運命の分岐点。


「よぉーし調整完了、我ながら素晴らしい仕上がり・・・・・・! さぁて響、キラ、今日は模擬弾使用の演習で最終テスト。いつものトコでデータ取りよろしく! 瑞鳳は立会人引き受けてくれてありがとねー」
「現場での索敵は私の艦載機が引き受けるから心配しないでねっ」

とある少女にとって、最も過酷な戦いが始まる。

「響、了解。まさか師匠と戦う前にキラと戦うことになるとは思ってなかったけど・・・・・・やるからには全力全開でいくよ」
「僕はデュエルに乗るから被害ないけどさ、ペイント弾かぁ。これ目とか口に入ったら痛いんじゃ? 髪も服も汚れちゃうし」
「昔っから艦娘同士の演習で使われてるモノだから問題ないよ」

平和な時間をフル活用してようやっと完成に漕ぎ着けた数々の試作兵装を実戦形式でテストすべく、響と瑞鳳、そしてデュエルを駆るキラが福江基地から出撃した。



《第15話:値価の来未たげ繋》
0259ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:51:10.33ID:MT8pB/3O0
福江基地西方3マイル先の、彼女ら三人にはすっかりお馴染みになった演習用海域。
朝焼け滲む空の下、演習を始めようと体勢を整えたその矢先。
瑞鳳の艦載機が、突然の乱入者を捕捉した。少女の叫びが、異常事態の始まりを告げた。

「演習中止、演習中止! 方位2-4-7、距離10に敵影を視認! 艦種わからないけど数10、水雷戦隊!!」

響は瞬時に緊急事態を意味する信号弾を打ち上げると、急ぎ模擬弾から実弾に換装しつつ、偵察機で得た情報を分析する瑞鳳の元に駆けつける。
同時に、デュエルがスラスターを噴かして跳躍、デュアルアイを煌めかせて周辺海域をスキャン。数秒の滞空を経て着水すると、少女の情報を裏付ける報告を水柱と共に上げるなり腰部からビームライフルを取り出した。

<こっちでも捉えたよ。でもこの時間にこの位置・・・・・・なんでこんなに接近されて・・・・・・いや違う、誰か追われてる人がいる!>
「追われてるって、どういうこと?」
「あれって利根隊じゃない! 負傷してる子が複数、航行速度もだいぶ落ちてるみたい。このままじゃ・・・・・・!」
「加勢しよう。ほっとけないよ、そんなの!」
<うん! 行こう二人とも!!>

結論から言えば。
その戦闘自体は特に特筆することなく終わった。
敵の戦力はまずまずのもので、哨戒活動中に不意打ちの長距離雷撃を喰らってしまった利根隊は負傷者を多数抱えての防戦に徹するしかなく、なんとか福江基地周辺まで後退してきて今に至るとのことだった。
敵小規模偵察部隊としてはなかなかにデキるヤツとは、瑞鳳に促されて海域を離脱した利根の評。

『我輩としたことが面目ない・・・・・・。すまぬ、ここは任せたぞ!』
『任せて。送り狼は一匹も通しやしない』

しかしいざ響達が両艦隊の中心に割り込むと、敵水雷戦隊は何故か反転して逃走開始、その2分後には全滅した。逃げに専念する敵艦相手に少々骨が折れたが、三人の圧勝であった。
何かがおかしいと感じた。

「・・・・・・・妙だったね」
「うん。勝つには勝ったけど・・・・・・ちょっと裏があるかも。追加で偵察機を発艦してみるわ」
<やっぱりそうだよね。こっちも全センサー、レーダー最大出力で調べてみるよ>
「キラ、瑞鳳、データリンク機能を試してみたい。情報をこっちにまわして」

手応えがなさ過ぎる。
鹿屋の精鋭部隊の一つである利根隊をここまで追い立てたというのに何故連中は逃げ出したのだろう。まともに戦っても結果は同じだったが、それにしたって。
有象無象のイロハ級が死を恐れるわけがない。
深海棲艦は通り一辺倒の突撃だけが脳のイノシシではないが、総じてその行動原理は人類への凄まじい敵意だ。
0260ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:54:07.69ID:MT8pB/3O0
この2日間で、連中はモビルスーツの巨体と対峙しても畏れず、あらゆる戦術を以てして果敢にデュエルへ挑んできたこともあった。ソレほどまでの攻撃衝動の塊が、深海棲艦という存在だ。
なのに。
まるで攻撃の意志を感じられない水雷戦隊の動きに、三人は戸惑った。
これは普通じゃない。
何か見落としている。
敵が予想外の行動を採ったとなると、作戦の一環と考えればしっくりきた。

(データリンク起動、システムオールグリーン・・・・・・、・・・・・・対水上電探、対空電探、ソナー共に反応なし、大口径砲射程圏内に敵影なし。機雷の可能性もない。デュエルと瑞鳳でも見つけられないなら、他に何が?)

これが榛名や木曾だったらすぐ論理的に敵の狙いを看破できるのだろうが。生憎と響にそんな頭脳は無く、キラと瑞鳳にも適性があるとは言い難く、僅かに得た直感を足がかりに一つ一つ推察していくしかない。
考える。
見渡す。
見渡して、ようやっと気付いたことがあった。

(だいぶ基地から離れてしまってる。意識してなかったけど、かなり南下してたみたい・・・・・・、・・・・・・まさか?)

まさか、誘い込まれた?
遅まきにして、自分達が初歩的なミスを犯してしまったと気付く。慢心していたつもりはないが、一時的にでも己の現在位置を見失っていたとは。今敵に襲われたら救援は期待できない。
ならば先の水雷戦隊は罠か囮か。狙いは自分達三人か。だが・・・・・・その先は?
少なくとも今現在、周辺に響達に干渉できる動体反応は存在していないと、少女が新たに装備するヘッドギアが教えてくれている。観測できる範囲では、三人の安全は保証されていると言っていい。
ならば尚のこと、狙いがわからない。
いや、そもそも。

(希望的観測は厳禁だけど、ただの考えすぎ・・・・・・なのか?)

仮に敵の策に嵌まっていたとして、こんな都合良く展開が進むのか?
考えすぎなだけじゃないか?
だって自分達は演習の為に出撃して、利根達を助けるべく勃発した戦闘は偶然の産物だ。
【軽巡棲姫】は、そこまで読めるものなのか。読めるとしたら、今の自分達の状況に説明がつかない。だって空母とモビルスーツの索敵能力を欺ける存在など、
聞いた話では、この世にシン・アスカのデスティニーだけしか居ないのだ。
そう考え込んでいると、瞳を閉じて意識をいっそう集中させていた瑞鳳が声を上げた。

「・・・・・・ッ!? 方位0-9-6に大型の機影1! あれはヴァルファウ!! 距離は――」
<来たんだね。そろそろ来る頃合いだって木曾さん言ってたけれど、本当に・・・・・・>

回答は予想外のベクトルから割り込んできた。
0261ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:56:47.27ID:MT8pB/3O0
大気圏内用大型輸送機・ヴァルファウの襲来である。
基地の南西に位置する響達から遠く離れた、南東からのルートで基地に向かっている模様。この時間にあの位置と高度であれば、哨戒中の【阿賀野組】が既に捕捉している筈だとキラが付け加えた。
福江基地は今頃てんやわんやだろう。

「急いで戻らなきゃ!」
「だね。私達が遅刻したせいで準備が台無しになっちゃ・・・・・・、・・・・・・いや。それが狙い、だったのか?」
<可能性はあるよ。現に僕達はこうして、敵から一番遠いところにいる>

目的は、デュエルの隔離か。
佐世保艦隊がこうも後手に回ってしまっている原因の一つが、あの輸送機だ。
過去に二度決行した空挺降下によって、二度も辛酸を舐めさせられた。しかも、此方はヤツに掠り傷の一つすらも負わせられなかったのだ。
戦艦の砲は長射程といえど高高度を高速かつフラフラ飛ぶものを狙撃できるようには造られておらず、ヴァルファウも長きにわたる戦いで此方の射程圏を把握している深海棲艦が操っているだろうから、
必然の結果だったのかもしれないが。
逆に言えば、敵はそれだけの実績と確信を持っているということだ。空母級だろうが戦艦級だろうが、艦娘はヴァルファウに攻撃できないと。
けれどその実績と確信は、キラの操るモビルスーツには通用しない事は明らかだ。
ビーム兵器やレールガンの射程と威力なら、届く。今までとは逆に、一方的に輸送機への攻撃ができる。この事実は【Titan】を運用している深海棲艦達も重々承知だろう。
だからこそ、こうして水雷戦隊を囮にして三人を誘い出したのかもと、響は悟った。
偵察機によって確認できた敵戦力は、深海棲艦をしこたま積載しているであろうヴァルファウが1機と、ナスカ級争奪戦時の3倍に値する規模の水上打撃部隊と空母機動部隊、そして【Titan】5体を含む水雷戦隊。
加えて十中八九、更に【Titan】数体と潜水艦部隊、そしてスカイグラスパーを伏せていると見るべきか。
遂に敵の本気、様子見も出し惜しみも一切無しの侵攻部隊が、真っ正面から堂々とお出ましというわけだ。
デュエルさえいなければ、障害は存在しないと。

(・・・・・・いや、でも・・・・・・?)

対ヴァルファウ戦自体は、これから起こりうる大きな危機の中でも、特に高い確率で発生するだろうと考えられていた。むしろ、艦隊首脳陣はそろそろ【軽巡棲姫】が痺れを切らす頃合いだと踏んでさえいた。
佐世保艦隊はこれを待っていたと言ってもいい。
既に対抗策は編み出している。実施したアンケートとは別途に、全員で準備を進めた仕掛けがあるのだ。まだまだ完全とは言えないが、厄介な輸送機や巨人を撃退する計画が。
その計画の主役は、デュエルではない。
計画の要点は、別の存在が担っている。
とはいえ三人が不在では、事が想定通りに進まなくなる。それぞれに別の、重要な役割があるのだから、響達が参加しなければならない事に変わりはない。
こんなところで油を売っている暇はない。
急いで艦隊に合流しなければ。
0263ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 22:58:22.11ID:MT8pB/3O0
<二人とも手に乗って。開戦には間に合わないかもだけど、デュエルの速力ならまだなんとか・・・・・・>
「あ、ちょっと待って。先に天山と烈風改を発艦しちゃうから。少しでもみんなのフォローしなきゃ!」

デュエルが腰を屈めて、二人の少女に両手を差し出した。
エールストライク程ではないが、キラ仕様に装備を整えたこの機体なら艦娘の航行速度よりもずっと速い。ロスは幾らか軽減できるだろう。
なんとしても計画の歪みは最小限に抑える。

(違う。違う感じがする。本当にこれで、敵の作戦が・・・・・・?)

無数の艦載機を発艦させる瑞鳳の傍らで、響は違和感を覚えた。
確かに【軽巡棲姫】からしてみれば、キラとデュエルの存在は特別視すべきものだ。艦隊から隔離させようとしたのは順当と言えるし、実際のところ効果的だ。
でも、と思う。
でも、これだけなのか?
0264ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:01:19.91ID:MT8pB/3O0
これでは片手落ちではないか。策に疎い響でさえ、自分だったらここで戦力を投入すべしと思うのだ。あの奸計に秀でた敵が、こんな各個撃破のチャンスを見逃す筈がない。
隔離するだけで済ませる理由がない。
違和感。
敵は、来る。
来なくてはおかしい。
ここは、危ない。
再び周囲を見渡す。
何もない。
けれど絶対に、ここは危ない。


だってほら、こんなにも殺気を感じるんだ。


ゾワリと首筋に冷たいものを感じて、響は咄嗟に叫ぼうとした。
だが遅かった。
本当に遅かった。
何故ならば、少女らは海に出た時点で敵に漁(すなど)られていたからだ。

「ッ、ソナーに感! ――真下!?」
<レーダーに反応! ――真上!?>

同時に響く、真逆の声。
真下からは、一つの影。
真上からは、一つの光。
そして真下から二つの光が生まれて。
そして真上から二つの影が落ちてきた。



0265ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:03:36.86ID:MT8pB/3O0
「――この感じ、もしかして・・・・・・? でもこのイヤらしいプレッシャー・・・・・・アイツ、本当にしつこいっぽい!!」



0266ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:06:11.82ID:MT8pB/3O0
<二人とも避け――くぅッ!?>
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!??」
「ッぐ、あぁぁぁぁああぁぁ!!!!」

軽空母瑞鳳、右舷艦尾に被雷、右舷スクリュー喪失、大破。
駆逐艦響、左舷中央部に被弾、増設装甲及び第一装甲貫徹、中破。
艦娘である少女達だが、通常艦艇に例えると被害はこのようになる。
では現実はどうか。
二人の少女と、彼女達の傍らに待機していたモビルスーツは、どのようなダメージを負ったのか。


瑞鳳は、真下から突然出現した魚雷をまともに喰らい、右脚の膝から先を持っていかれ。
響は、天から降り注いだ荷電粒子ビームによってPS製大型シールドごと左腕を貫かれ、喪った。
そしてデュエルは、海中から飛び出してきた無数のミサイルで吹き飛ばされ、背部スラスターユニットを大きく損傷していた。


完全な、完璧な奇襲。
艤装のダメージ分散処理能力を超過した一撃に、実害以上の致命傷をもらった。
ほんの一瞬の出来事で、頭が追いつかない。けれど染みついた戦士としての本能は、殆ど自動的に傷ついた躰を振り回して少女に倒れるだけの余裕を与えなかった。響が意識を取り戻した時には、
既にその身はうずくまる瑞鳳へ肩を貸そうとしていた。
全身を支配しようとする喪失への恐怖は、必死に押し殺す。

「瑞鳳! 大丈夫!? 返事をしてくれ!!!!」
「な、なんとか・・・・・・痛ぅ! ・・・・・・でもちょっと、無理っぽいかも。航行できないよ・・・・・・」
「ダメージコントロール、応急処置を・・・・・・! 私が曳航する、走るよ!!」

脚部スラスターのみで跳躍したデュエルを傍目に、響は常備している特殊な包帯を取り出し、右手と口だけで素早く止血を行う。
これまでの戦争で、艦艇であった第二次世界大戦期と同じように大破と出撃を繰り返してきた【不死鳥】にとっては、久々だが手慣れたものだ。
それにしたって四肢の一部欠損なんて本当に久しぶりで、大口径砲の直撃クラスのダメージでもなければ滅多に起こることではない。それがこうも、容易く。己の勘の悪さを反吐が出る。
が、一撃で轟沈しなかっただけマシだ。
自分の左肩と瑞鳳の右膝への処置を終えると、続けていつもの大型錨の鎖を瑞鳳のお腹に巻き付けていく。

「曳航って、どうやって・・・・・・――駄目!! そんなことしたらっ」
「質量制御でギリギリまで重量抑えて。キラが時間を稼いでくれている内に、早く!」

瑞鳳の極常識的な指摘を一蹴し、響は青ざめた顔のまま必要な作業を全てこなした。
0268ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:08:31.45ID:MT8pB/3O0
通常、駆逐艦単艦で空母を曳航なんて不可能だが、そこは不思議存在たる艦娘、少女としての重さと艦艇としての重さを使い分けることなど朝飯前だ。勿論、響にはかなりの負担が掛かるが一刻の猶予もない。
機関全開、最大出力で航行開始。鎖がピンと張り詰めて、艤装がギギギッと悲鳴を上げて、響は片足だけの瑞鳳を曳航する。自身も隻腕であるのでバランスは悪く、速度は常の半分程度まで落ち込んでいた。
それでも一緒に動かなければ。逃げなくては。
響は、一体何が起こったのかを全て理解していた。全ては敵の策、【軽巡棲姫】の罠にまんまと嵌まってしまったのだと。
敵は少なくとも3体存在し、すぐ近くにまで迫っている。響がビームに灼かれる寸前に見えたモノが、見間違えでなければ――

<響、瑞鳳!! 早く逃げるんだ! デュエルじゃ抑えきれない・・・・・・!!>

切羽詰まった青年の叫びと、海が裂ける音。
振り返れば、海上に叩き落とされたデュエル目がけて空中から6発のミサイル、海中から4発の魚雷が疾る様が見えた。幾つかは頭部近接防御機関砲で撃ち落とすが仕留めきれず、3発被弾。
爆炎に包まれ蹌踉けたデュエルは、間髪入れず飛び込んだ【軽巡棲姫】の膝蹴りで弾き飛ばされる。
勿論、そこに他2体の追撃も殺到する。

「キラッ!!!!」
<ちぃ! やらせてたまるかァ!!>

ビームサーベルを抜いたデュエルに襲いかかる、見慣れぬ漆黒の機械人形――全体的に直線で構成された、スラッとした四肢に、複雑な面構成のボディ、アンテナとゴーグル付きの頭部を有した、約18mの鋼鉄の巨人。
背に大型水平翼を装備したそのシルエットは、エールストライカー装備型ストライクと酷似していた。
同じくビームサーベルを抜き、水平翼からミサイルを放って突撃するソイツに対してキラはあえて前進、懐に潜り込みシールドバッシュで突き飛ばすと反転、振り向きざまの横凪一閃でダーツ状の砲弾を切り払う。
更にもう一回転、体勢を崩した漆黒の巨人に回し蹴りを喰らわせようとしたところ【軽巡棲姫】の牽制射撃で断念し、代わりに左手の115mmレールガン・シヴァで海中に潜むもう一機を狙撃するが、それも避けられた。
ギリギリのところで海上に飛び出して砲弾を躱したソレは、全体的に曲線で構成された約20mの鋼鉄の巨人。漆黒で彩られた非人型な流線型のフォルムには、まるでイカのような愛嬌があった。

「【姫】と、モビルスーツ!!」
「二機もいる・・・・・・! それにアレ、もしかして水中用なの!?」
<ウィンダムに、グーンなんて! なんでこんな機体がッ>

【GAT-04 ウィンダム】と【UMF-4A グーン】。
片や旧地球連合がC.E.73に製造した、カタログスペック上では【GAT-X105 ストライク】と同等の性能を持つ汎用主力量産機。ジェットストライカーを装備したウィンダムの戦闘力はエールストライクを完全に凌駕する。
片や旧ザフトがC.E.70に製造した、その水中での高い機動性を活かした対水上艦戦と対潜水艦戦を得意とする水陸両用量産機。水中巡航速度50ノット以上と通常水上駆逐艦よりも遙かに高速で、攻撃能力も潜水艦以上だ。
どちらもこの世界の、この時代の兵器では勝負にならない程の性能を持っている。
0269ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:11:09.17ID:MT8pB/3O0
その上、深海棲艦に侵蝕されたことで基本スペックが断然向上しているようだった。
例えば本来ウィンダムの装甲は【ZGMF-X56S インパルス】の20mm機関砲で貫通できる程度だったというのに、今ではデュエルの75mm機関砲の直撃もノーダメージである。
そして【軽巡棲姫】。
腰部に大型スラスターユニットを増設し、機動性を大幅に強化した【姫】が、二機の漆黒のモビルスーツを従えていた。

「そんな・・・・・・どこから・・・・・・? あんなの全然、見つけられなかった・・・・・・」

数で言えば3対3。
ただし、今の響達が三人がかりで戦ったとしても、たった1体相手に生き残れるか否かといったところか。
もう一度確認しよう。
響は左腕を喪い、瑞鳳は右膝から先を喪い、デュエルは背部スラスターユニットに損傷を負った。
戦闘続行困難なレベルの損傷だ。
対するウィンダムはコーディネイターのエースが操っているのかと錯覚する程に機敏に飛び回り、機動性を喪ったデュエルにビームの嵐を浴びせかけていく。
とんでもないスピードで水中を泳ぐグーンは常にデュエルの背後をマークし、両腕の対潜・対空両用ミサイルとフォノンメーザー砲でもって三次元的な攻撃を仕掛けてきてきた。
追加装備で水上艦最速となった【軽巡棲姫】は、人間大という小柄な体躯を活かして悠々と懐に飛び込んでは次々と拳や蹴りを繰り出している。
馬鹿げてる。
絶望の文字がそのまま具現化したようだった。これまでの戦いが全て茶番に思えるような、圧倒的戦力差。
響は右手の13.5cmライフル型単装砲を構えると、呆然と呟いた瑞鳳に力なく応えた。

「迂闊だった・・・・・・伏せられてた、網を張られてたんだよ」
「え?」
「狙いは私達だったんだ。さっきの水雷戦隊もヴァルファウも囮で、向こうはずっとこの機会を伺っていた」

殆どのケースで、絶望的な状況というものは突然やって来るものだ。
しかし予兆はあったのだ。あったのに見落とした。響達は、三つのミスを犯した。
一つはこの2日間で、テストの為とはいえお馴染みと言える程に演習用海域へ出撃したこと。敵が観測してない筈が無かったと、今なら解る。此方の索敵範囲まで見抜かれていたのだ。
二つ。期は熟したと言わんばかりに利根隊を襲った水雷戦隊の不審な動きを、早々に見抜けなかったこと。
三つ。自分達の索敵能力を過信したこと。敵は透明化していたわけでも、ワープしてきたのでも無い。ウィンダムと【姫】はずっと索敵範囲外の高高度で待機していて、
グーンはソナーに反応しないようにずっと水中で息を潜めてたのだ。此方の死角を突くカタチで、完全かつ完璧な奇襲を成功させる為に。
忘れてはいけなかった。
時間は万物に平等であるという、普遍的で絶対的な事実を。
3日間で艦隊全体の強化を図った佐世保と、極端な一人狙いを謀った深海棲艦との差がこれだ。
結果、福江基地から遠く離れたこの海域で。今更信号弾を打ち上げたところで援軍の到着までは軽く30分かかる距離で、連中と相まみえることになった。
0270ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:14:11.43ID:MT8pB/3O0
そもそも全員が対ヴァルファウ戦に集中している筈だから、三人の危機に気付いていない可能性が高い。

「でもだからって、はいそうですかってやらせるものか・・・・・・!」

現状はよくわかった。
冷静に考えるまでもなく勝算は皆無で、詰んでいる。逆転は万が一にも有り得ない。
認めなければならない。響達は戦略でも戦術でもまた敗北を重ねたのだ。しかも今度は、本当に致命的な。
自分達はここで沈むかもしれない。少なくとも、背を見せたら一瞬だ。
巫山戯るな。
だとしても最後まで抗ってやると、響は拳を握る。
キラが危ない。
瑞鳳が危ない。
やっとちゃんと二人と仲良くなれたのに、自分だけなら兎も角、大切な人達までも死なせてしまうなんてことは到底我慢ならない。

「このままじゃ逃げられない。瑞鳳、飛んでるヤツを牽制してくれ!!」
「う、うんっ! やってみる!!」
「キラは海のヤツを抑えて! 私達じゃ無理だ!」
<響と瑞鳳だけでウィンダムと【姫】を!? 無茶だ!!>
「やらなきゃならないだろう!!!!」

戦え。
逆転は万が一にも有り得ないが、億に一つになら在るかもしれない。言葉遊びでしかないが、ソレを戦って掴み取らねば生存は有り得ない。
信じろ。
自分達三人なら絶対に大丈夫。いつだって祈りは届かない、こんな無情な世界だけど、強い祈りは今を生きる糧となる。
想いを糧に、今を生き抜く為に戦え。抗え。
0271ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:17:14.65ID:MT8pB/3O0
そうでなきゃきっと、生きてる意味なんてない。

「ここを切り抜けて、ヴァルファウ戦にも合流する。そして勝つ。それ以外の未来はいらない」

3分も持ちこたえれば勲章モノ。
かくしてここに誰も認知し得ない、三人だけの、絶望との戦いが始まった。


「――夕立、参上っぽい!!!! 状況はよくわかんないケド、あのオンナの相手は任せて!!」
「し、師匠!!??」
「ヘェ・・・・・・キタノネェ・・・・・・、・・・・・・ユーゥーダァ・・・・・・チィーーーー!!!!!!」


訂正。
頼もしい味方が一人、雰囲気をブチ壊しにして【軽巡棲姫】にドロップキックをかました。

「だから師匠呼びはやめ・・・・・・、・・・・・・どーやらふざけてる余裕はないっぽい?」
「うん」
「ぽいー・・・・・・あと15分耐えれば榛名さんの射程に入る。それまでアイツは抑えるから、なんとか生き延びて。・・・・・・夕立の弟子に手を出したこと、死ぬ程後悔させてやる」

構図は三つに分かれた。
キラVSグーン。夕立VS強化型【軽巡棲姫】。響&瑞鳳VSウィンダム。
目指すは15分の生存。ただし援軍が来ても状況は好転するとは限らず、むしろ被害が拡大する可能性も大いにあり得ることを重々留意されたし。
そして最後一つ、忘れてはならない事が、もう一つ。


絶望は、少しだって薄まってはいないという目の前の事実を、現実を、忘れてはならない。
先に断言しておこう。この戦いに、奇跡は有り得ない。
0272ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 5aad-AIgs)
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2019/01/01(火) 23:20:12.77ID:MT8pB/3O0
今回はいつもより短めですが、以上です。
いつまでも成長してませんが、今年もよろしくお願いいたします。



ところで三流氏や彰悟氏はいずこに・・・・・・
0273三流ry (ワッチョイW b34b-Oc2E)
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2019/01/03(木) 08:20:00.12ID:8NW52usn0
あけまして乙です。
私は完全にネタ切れですよ、構想が浮かぶと一気に完結まで持っていくスタイルですから。

読んでる最中は「木曽が偽物(スパイ)じゃ?」とか勘ぐってましたが
外れましたね(笑)
降ってわいた絶体絶命、さぁどうなるやら。
冒頭の武器争奪戦、さすが女性はバーゲンセールに強い。
この分だと立派なオバサンに、おや誰か来たようだ。
0275通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 13ad-5YLt)
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2019/01/03(木) 21:03:49.88ID:leY65Acf0
艦娘の誕生日が史実の艦艇の進水式と同じとすれば、登場人物のほとんどがオバ……ゲフンゲフン

誘き出し作戦はそれこそ偽物や戦果誤認ネタとかでスマートに演出したかったのですけど、実力と想像力不足で今回のような感じになりました。
0277ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:01:21.09ID:aWXdpYKm0
――艦これSEED 響応の星海――


第二次世界大戦期の潜水艦、つまり原子力エンジン等の非大気依存推進機関を採用していなかった潜水艦の実態は、未だ可潜艦であった。
潜れるだけの艦艇。短い潜行持続時間、遅い水中航行速度。基本的に水上を移動し、必要とあらば潜って隠れたり攻撃したり。
一般に想像されるような潜水艦同士の水中雷撃戦なんて不可能で、まだまだ発展途上で未成熟な艦種。
それでも潜水艦は、水上艦艇の天敵だった。
戦後の原子力潜水艦よりずっと低スペックだとしても、艦砲よりも魚雷よりも航空機よりもずっとずっと脅威だった。
その特徴と関係性は当然、艦娘と深海棲艦にも引継がれている。それぞれ独自の改修により欠点を補いつつ長所を伸ばした潜水級は常に、両陣営にとっても最大警戒目標の一つとして認識されている。
最大警戒目標の一つだからこそ、見敵必殺。発見すれば真っ先に対抗戦力を投入し、見失う前に魚雷を放たれる前に無力化すべし。
当然これまでの佐世保艦隊の戦いでも、防衛戦でも争奪戦でも、スポットライトが当たらなかっただけで対潜戦闘は行われていた。
故に艦娘達は大規模な敵水上戦力に対抗できたし、響やキラも目前の戦闘に集中できたのだ。対潜戦闘員もまた戦場の主役なのである。
つまり可潜艦レベルであっても昔も今も、潜水艦はそれだけの戦略的価値がある存在ということだ。
だというのに、この漆黒のグーンときたらどうだ。

「速い! このスピード・・・・・・やっぱり後期型!!」

水中を自由自在に、鋭角も鋭角に機動する【UMF-4A グーン】のスピードはまさしく戦闘機級。
コイツに比べれば水上の艦娘達は勿論、水中に潜ったデュエルも止まっているようなもので、コクピットにて操縦桿を握るキラが呻く。彼が操る機体はアサルトシュラウドの追加装甲を殆どパージし、
デフォルトよりも運動性と機動性を向上させた現地改修機なのだが、それでもまったく追い切れない。

「どうする。どうすればコイツを止められる!?」

戦闘機並の機動力に、戦車並の装甲、戦艦並の火力、そして人間並の汎用性を求めた有人対艦兵器。それがC.E.におけるモビルスーツの開発コンセプトだ。
祖たる【ZGMF-1017 ジン】から始まったMSの進化と細分化は、あらゆる特化機や万能機を多数世に生み出したが、地上特化でも宇宙特化でも対MS特化でも、
いずれもその根底には当初のコンセプトが変わらず息づいている。
なかでもとりわけ、グーンはその血が色濃く出ている機体だった。
後にロールアウトされたゾノやアッシュ、アビス等が対MS格闘戦を想定して設計されている反面、グーンは純粋な対艦兵器として完成していると、陣営問わずモビルスーツ開発者は口を揃えて言う。
0278ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:03:47.47ID:aWXdpYKm0
戦闘機並の機動力に、攻撃手段が限られる水中という環境下での分厚い装甲、対潜と対空を両立させた戦艦並の火力を、
人間並の汎用性をある程度捨てて採用されたイカのようなシルエットによって存分に発揮する初代水陸両用量産機。
それがグーン。
【軽巡棲姫】は少々過小評価してしまったようだが、デュエル撃破に拘ったあまりに冷静な分析ができなかったようだが、単騎で佐世保艦隊を壊滅できる程のスペックを持つ機体なのだ。
第二次世界大戦期の水上艦艇――日本最速の駆逐艦島風ですら最大40ノット前後――と、C.E.70の水陸両用対艦機動兵器――巡航速度で50ノット以上――なんて、相性最悪なんてものじゃない。


逆説的に【姫】がデュエルを狙ってくれたおかげで、佐世保は命拾いしたとも言える。もしも優先順位が逆だったらと考えるだけで背筋が震えた。


少女達に対抗手段は無い。
コイツを放置すれば、キラが敗退すれば間違いなく艦娘達は全員、何が起こったか知る事もないまま。直上で奮戦する三人は真っ先に狙われる。
最悪の未来を回避するには、キラがグーンを無力化し、かつ今も空中を飛び回るウィンダム――【GAT-04 ウィンダム】も対MSを重視しているが立派な対艦兵器の一端だ――を墜とすしかない。
夕立が【姫】を抑えている間に、負傷した響と瑞鳳がやられてしまう前に。
しかし、このままでは。

「このままじゃ、僕が一人目だ・・・・・・!」

デュエルに搭載されたソナーが新たな突発音を拾い、コンソールに無数の光点が灯される――グーンの両腕から射出された対潜・対空両用高誘導ミサイルだ。
予期していた攻撃パターンに応じてキラは素早く正確にフットペダルを蹴り込み、スロットルを目一杯上げる。遅れてモニター一杯に迫る、無数の弾頭。
――やはり躱しきれない!
全身いたる所に搭載された高出力スラスターを全開で噴かしても、強大な水の抵抗に機動性を殺されては射線から逃れられない。最初の対MS用MSとして開発されたデュエルも人型である以上――仮に万全の
フリーダムを駆っていたとしても同じだったろう――どうしようもない現実だった。
被弾。
水中での1対1に持ち込んでから、4発目の直撃。ただでさえ水圧のストレスに晒されているPS装甲が、遠慮容赦なくバッテリーからエネルギーを吸い上げていく。

「!」

防御。
確信をもって構えたアンチビームシールドが、ギリギリのところで直上からのフォノンメーザー砲を遮る。当たればビーム兵器同様、一撃でPS装甲は貫かれてしまう。これだけはなんとしても防がねばならない。
0279ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:06:12.96ID:aWXdpYKm0
だから、ミサイル相手にシールドは使えないのだ。衝撃がモロに伝わる水中では数発防いだだけで壊れてしまう。
敵もそれを理解しているのだろう。防御した一瞬の硬直をついて更に背後に回り込んだグーンが、更に立て続けにミサイルとフォノンメーザーを放つ。

「仕方ない!」

やむを得ず、アサルトシュラウド装備として左肩に残していた220mm径5連装ミサイルポッドを解放、メーザーは防御しつつ敵ミサイルを相殺した。
これで遂にデュエルの射撃装備が底をつく。
C.E.で普及している対潜自己推進弾頭でも命中率は低いというのに、そもそも通常弾頭しか装填してない頭部機関砲とレールガンは使い物にならず、ビームライフルは論外。
ライフル下部に装備していた175mmグレネードはとっくに海の藻屑になっている。350mm大型レールキャノン・ゲイボルグがあればと歯噛みするが、あれらは手元に無い。
グーンを倒すには、もうレールガン・シヴァを接射するしか道が無い。
しかし。
どうすればいい。
勘違いしてはならないが、グーンは、水中での機動射撃戦に限定すれば対MS戦でも有用であることだ。
かつてキラはストライクの格闘装備でグーン2機とゾノ1機を墜としたことがあるが、あれは敵パイロットに対MS戦の経験がなかったからこそのビギナーズラックだった。
水中用MSの格闘能力はあくまで同じ水中用MSとの戦闘を想定したもので、本来デュエルやストライクのような汎用型相手には無用の長物なのである。水中用の機体はただ、相手の攻撃圏外から撃つだけでいい。
現にグーンはこれまでずっと距離を保って射撃戦に徹している。背部メインスラスターを損傷したデュエルでは近づけず、回避も儘ならぬままいたずらに装備とエネルギーを消耗して今に至る。
敵は機体のスペックと、採るべき戦術を熟知しているのだ。
今の装備とコンディションでは、到底太刀打ちできない。
このままでは真っ先に自分が死ぬと、キラは改めて悟る。
どうすればいい。
なんとしても状況を変えなければならない。
なんとしても生きて、響達を助けてみせる。
その為に、具体的にどうすればいい?
諦めないと口で言うだけなら容易い。けれど、力の伴わない想いは現実を変えられない。

「だけど、手間取ってる場合じゃないんだ!! 僕が・・・・・・護るんだ!」

ソナーが再び、新たな突発音を拾ってコンソールに光点を灯した。その数8発。
フェイズシフトダウンまで、あと5発。
0280ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:10:02.92ID:aWXdpYKm0
《第16話:ちいさなてのひら》



海中でキラが苦戦している頃、海上で【軽巡棲姫】を相手取る夕立も、かつてない逆境に見舞われていた。
奇しくも二人の状況は、とても似通っていた。

「ユウダチィ! キョウコソ・・・・・・オトス!!」

通常の三倍のスピード。腰部に増設した大型スラスターユニットから青白い炎を吐き出して、非常識な勢いで滑走する仮面の美女の拳が、轟と大気を切り裂いて夕立の頬を掠める。
刹那の、三重のフェイントの末に放たれた右ストレート。
対して、五重の誘いを織り込んだバックスピンターンで応じていなければ顔面を潰されていたかもしれない一撃、それが掠めただけで、たったそれだけで少女の小さな身体は弾き飛ばされた。ピカピカと視界に星が舞う。
単純な物理学、重量差と速度差の暴力だ。
強引に後方宙返りをうって体勢を立て直し、着水してはサイドステップで砲弾と魚雷の射線から逃れる夕立だが、しかし。軽巡洋艦程度の質量にとって、
一度は沈んだナスカ級両弦スラスターのパワーはオーバースペック。瞬時にして【姫】は滞空中の少女の懐まで、それこそ砲弾のように突撃してきた。

「このッ・・・・・・調子にのんなァ!!!!」

今更言うまでもなく艦娘は空を飛べない。
ならばと渾身のミドルキックを相手の肩口に叩き込む。人間の日常生活で例えれば、高速走行中の大型トラックか電車を蹴るようなものだ。ヒットしたそばから靴が破れ、皮が裂け、
骨が軋むがお構いなしに一瞬の接点を支点とし、むしろ重量差を活かし自ら横方向へ弾き飛ばされるようにして正面からの激突を回避。
生き延びる。
代償は右脚の激痛と、再びの滞空時間。
紙一重で九死に一生を得たが、未だ渦中。再び体勢を崩した獲物めがけて、口端を吊り上げた【軽巡棲姫】は再び執拗な突撃を仕掛ける。

(流石にこれはヤバいっぽい。パターン単純だから躱せるケド、先に夕立の船体に限界がきちゃう)

これが幾度も、幾度も。
先程から夕立は、まともに動くことができずいた。
オカルトじみた完全回避能力を持つ彼女ですら見切れなかった初撃で宙に浮かされてからというものの、あらゆる角度から変則的に繰り出される【姫】の攻撃に、戦技の要たるフットワークを、機動性を封じられているのだ。
全てのスペックが己より高く、しかも徹底的に此方のスタイルを研究してきている敵相手に本領を発揮できない。
【姫】は夕立になにもさせないまま勝負を決める腹積もりだ。少女が出来ることといえばせめて、空高く打ち上げられないよう自ら浅い角度で跳ぶぐらいしか。高高度で無防備になったら本当にお終いだ。
反撃の隙はなく、直撃を叩き込まれて死ぬか、それとも、追い立てられ自由を奪われるかの二択。
0282ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:11:15.76ID:aWXdpYKm0
そんな展開がずっと続いている。
なんとか対処できているのも、体力に余裕のある今だけのこと。

(でも)

そもそも続ける気は毛頭もない。
もう間合いは見切ったっぽいと、金髪黒衣の【狂犬】は犬歯をむき出しにして嗤った。まだまだ戦闘は始まったばかりで雌雄を決するには早過ぎる。
そもそも夕立は響達を助けに来たのであって、さっさとコイツを倒して死ぬ程後悔させて、空飛ぶウィンダムとやらも撃退しなければならないというのに。
タイムリミットは近い。
ちらりと一瞬、高速で流れる視界の中、ぐんと引き延ばされ速度を落とした時間の中で、護るべき愛弟子達の戦いぶりを確認する。
鎖で繋がった二人は健在。
響は装備していたアンチビーム爆雷と大型斬機刀グランドスラム改で、瑞鳳は残り少なくなった艦載機でなんとか漆黒のウィンダムを退けている。

(まだ粘ってる。安定してる。でもやっぱりアレじゃ保って1分が限度。キラさんもなんか大変そうだし、ここは夕立が切り拓くしかないっぽい)

しかし爆雷は持続も弾数も有限で、敵ビームライフルの連射力に対応仕切れていない。刀身に施された対ビームコーティングも過信できないと聞いた。
そして残念ながら「烈風改」は機銃とビームで七面鳥撃ち(ターキー・ショット)の如くだ。
思い知る。
艦隊の弾幕と連携を用いてようやく対抗できる【Titan】は所詮、間に合わせの戦力でしかなかったと。巨人よりも格段に動きも性能も良い機械人形相手に、負傷した響達が勝てる道理はない。
そこをわきまえている響は堅実な防御に徹しているがそもそもの地力が違いすぎる。無理だ。
海中のキラ含め、ここには苦戦と絶望しかない。
一番マシなのは自分。
早く駆けつけねば。ならここいらで一つ、賭けにでることにしよう。
先の争奪戦で仕掛けた奇襲攻撃は、結果としては失敗に終わったもののタネはまだ割れていない筈。あれを再現して今度こそ成功させて、決着をつける。

「シズメッ!!!!」
「芸が、なさ過ぎるっぽい!! いつまでもそうやって――」

一世一代の大博打。
スペックで負けても夕立には、彼女と共に技を研鑽した川内と江風、そして響には、とっておきがあった。
勝利を確信して突っ込んでくる敵に叫び返し、トレードマークの白いマフラーをしゅるりと解いては投げ捨て、

「――やれると思うなァ!!!!」
0283ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:14:08.83ID:aWXdpYKm0
着水間際、迫る足裏をあえて、右腕に装備していた連装砲で受け止める。
鋼鉄の砲塔がひしゃげ、砕ける。装填済みの弾薬が飛び散る。右腕の中から、バキりと嫌な音がする。けれど腕が完全に壊れてしまう前に、質量制御。限界まで重量を抑えた夕立の身体は【姫】の想定よりもずっと遠くまで、
それこそホームランボールのように飛ばされた。
驚愕の気配が、仮面越しに伝わってきた。さぞ予想外、不可解だろう。殺すつもりでいたが、回避されることも見据えていたが、まさか真っ正面から防御してくるとは思わなかったとか、そんなところか。
そんなんだから川内や神通、そして自分達に遅れをとったのだと内心で罵る。
ともあれ。
その硬直が、この距離が欲しかった。でもまだ足りない。
我に返った【姫】が放った砲弾を左の連装砲で撃ち落としつつ、続けて連射。砲身をオーバーヒートさせる勢いで連射。12.7cm砲故に有効打になり得ないが足止めも兼ねて、反動で更に距離を稼ぐ。
ここでようやく、遅まきにして両腰部スラスターでロケットダッシュする【軽巡棲姫】。しかし、この時点で非我の距離は、一瞬で詰められない程にまで開いていた。
ここからだ。

(間に合えッ)

夕立自身が着水するまで1秒。【姫】に追いつかれるまで3秒。その間こそが勝負の分かれ目。
空中にて両大腿部の61cm四連装酸素魚雷発射管から3本ずつ、計6本を引き抜いて全力投擲。狙いは突っ込んでくる敵の鼻先で、当然、【姫】は迎撃すべく直ぐさま魚雷全てに弾丸を叩き込んだ。
爆発。
計4.680 kgの炸薬が、弾ける。
海面が大きく波立ち、大気が震える。灼熱の爆炎が黒々と世界を覆い尽くす。
しかし、直撃ではない。
流石の【軽巡棲姫】も圧されて速度を緩めたが、ノーダメージのまま黒の世界へと突き進む。奇しくも先日、彼女の水雷戦隊に大損害を与えた銀髪の駆逐艦と同じような恰好で。
――この世界を超えた先に、夕立がいる・・・・・・!
意趣返しのように仮面の美女は嗤った。
決死の反撃は失敗に終わった。あの駆逐艦は爆圧に吹っ飛ばされて、無防備で無様な姿を晒しているに違いない。勝利は目前だ。
これまでの借りを倍にして返してやる。
そう思考を流して、遂に黒の世界を抜けた【姫】が見たものは。


実に穏やかな、なにもない大海原。


なにもない。誰もいない。
夕立は、忽然と姿を消していた。

「・・・・・・!?」
0284ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:17:27.73ID:aWXdpYKm0
どこに、いった?
ビクリと動きを止めてしまった【軽巡棲姫】は周囲を、上空含めて慎重に見渡す。
重ね重ね、艦娘は空を飛べない。
爆発が起こった時は丁度、夕立は着水した瞬間で回避など出来る筈がない。【姫】の船体すら揺らがした爆圧に、駆逐艦が耐えられる筈がない。消し炭になったのでなければ、何処かにいなければ。
まるであの時の再現だ。
いない。
銀髪の駆逐艦に気を取られてまんまと背後からの奇襲を許してしまった、あの時のように。
どこへ消えた?
そうだ。そもそもあの時だって、夕立はどのようにして消えて、現れたのだ。あの大胆不敵な駆逐艦はこれぐらいの事ならサラリとやってのけるだろうと深く詮索しなかったのが仇となった。二度目は無いと思っていたから。
直感する。
これは、あの時の再現だ。
なら考えられる可能性は。
その思考が結論を導く前に。

「――」

突如海面より現れた、ちいさなてのひら。
それが、愚かにも静止してしまった【軽巡棲姫】の足首をむんずと掴んだ。
奇しくも先程、響達に奇襲を仕掛けたグーンと同じような手口で。

「――・・・・・・ナ、ニッ!?」

少女の手。
爆発に呑み込まれてボロボロになった、けれども賭けに勝って獰猛な笑みを浮かべる、夕立の左手。

「捕まえ、たァ!!!!」

とっておきとはつまり、なんてことはない。ただの体術である。
今を生きる己のカタチ、人型として全てを利用することである。
単純な格闘技能だけの話ではない。
身のこなし、所作。ただただ艦艇の感覚のまま航行し砲撃し雷撃するだけの者には決して到達できない、鍛えに鍛えた体幹だけが制御できる『動』の境地。
極めるべきは全身の重心及び慣性の制御を意識し、体裁きに反映させる技術。あらゆる環境下で、あらゆる手段で敵に肉薄し、必中の一撃を叩き込むための技術。
他の艦娘達が一辺倒に重視する艦艇として能力と、人型としての汎用性の融合。
夕立や響が得意とする格闘技能とはつまり、結局のところ、その技術の副産物でしかない。彼女達にとっても接近戦は護身用、最後の手段だと言われている理由だ。
0285ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:20:08.36ID:aWXdpYKm0
サーベルを持つ木曾が良い例で、ただの接近戦自体は特別なことでもなんでもなく、普通の艦娘でもやるときはやるものだ。


神髄は、身体制御と質量制御を積極的に用いた体術に依る、絶対回避と必中必殺。
人型として全てを、利用すること。
人型としての汎用性は、万能性だ。


そこへ川内が初めて踏み込み、先天的に相手の意識外へと切り込める夕立が極め、その二人に命を救われ憧れた響が受け継いだ。会得できた者は未だ少なく、だからこそ彼女達は特別になった。

「アリエ、ナイ・・・・・・ッ!!??」
「ありえないなんてこと、ありえないっぽい!!」

駆逐艦夕立は、可潜艦ではない。
しかし少女としての夕立は、海に潜ることができた。人間は泳ぎ、潜ることができるから。それに少女達は毎日お風呂にだって入るのだから、艦娘全員は本来、基礎能力として水への浮き沈みをコントロールできるのだ。
ただそれを戦場で行おうとする発想自体が、自殺行為に等しいのだが。
しかし通常でも尋常でもない【狂犬】は、勝つ為なら自殺行為でもなんでもやる。
故に、艤装を一時機能不全として決行した二度目の秘奥義、隠れ身の術。水中の艦は、水上艦艇の天敵だ。
これを起点に。
掴み取った、敵の足首を支点に。
両足を蹴上げて倒立した夕立の全身が、蛇のように鋭く複雑に【軽巡棲姫】に絡みつく!

(川内さんは言った。人型は万能だけど、決して完璧なんかじゃないって。艦艇よりもずっと歴史のある人体の限界を知ってこそだって!)

勢いそのまま敵を腹から海面に叩きつけ海老反りにし、4の字に固定した敵両脚の中空に敵右腕を通して極めれば、完成するはアドリブ複合関節技・逆結び目固め。
人型である以上その関節は共通。体格と体重に差があっても、スペックに差があっても、極めてしまえば動きを封じつつ目標を破壊できる関節技(サブミッション)こそ王者の技!

「コンナ・・・・・・コンナモノデェッ!!!!」
「無駄よ、貴女に抜けられる道理はないの。これで終わり」

関節技という概念自体を知らない深海棲艦相手には、特に有効だ。生きる世界の情報量の差がモロに出る。
あっという間の、あっけない逆転劇。
屈辱的な恰好で四肢を封じられた【姫】を見下し、夕立は両大腿部の61cm四連装酸素魚雷発射管を駆動させた。
0286ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:23:18.80ID:aWXdpYKm0
安全装置を解除した九三式魚雷三型。これを全力で、艦艇としての質量全てを注ぎ込んだこの魚雷を喰らわせれば。
遠慮容赦無く、効率的に。
淡々と素早く、後悔させる暇も無く。
終わらせる。


そうするつもりで、そうなる筈だった。


突然、海が大きく、不自然に傾いだ。
波ではない。海中で大きな爆発があったのだと悟る。

「なっ!?」
「!!」

悟ったところで手遅れだった。体勢が崩れ、束縛が緩む。無理な負荷を掛け痛んだ手足が、意志を裏切った。
その後。
たった数コンマだけの差で。
夕立の魚雷が届くよりも先に、【軽巡棲姫】の砲弾が少女の身を貫いた。



0287通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 82ad-ME8i)
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2019/02/08(金) 20:23:45.62ID:aWXdpYKm0
回避
0288ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:24:21.74ID:aWXdpYKm0
「師匠!?」

出来の悪いアニメーションフィルムのような光景だと、響は思った。
間延びしていて、脈絡がなくて、全然現実感がない。
絶対無敵だと思っていた夕立が、被弾して、血塊を吐いて、爆炎の中へと消えた。たった2発の魚雷が、いつもよりも無駄に巨大で鮮やかな爆発を生んで、縺れあう二人の身体を完膚なきまでに覆い尽くしてしまった。
その瞬間が、見えてしまった。見てしまった。偶然にも、運悪く。
出来の悪いアニメーションフィルムで、あって欲しかった。

「――響!? まえッ!!!!」
「・・・・・・え」

茫然自失としていた響の身体が、どん、と突き飛ばされた。
瑞鳳に突き飛ばされた。
普段の彼女にはありえない暴挙だが、その表情と状況を考えれば、否、考えなくても理由は解る。でもそれじゃ足りないと、響は二人を繋ぐ鎖を思いっきり引っ張ろうとする。しかし、それでも足りなかった。遅すぎた。


迫る。
大凡10mに及ぶ灼熱の光刃。
ビームサーベル。


強力な電磁場を用いて荷電粒子を刃状に固定した必殺兵器。威力はかつて隣で戦ったキラが散々証明している。戦艦の装甲さえ熱したバターを切るかのようにして、容易く貫徹してしまう光の剣。
ウィンダムの握るそれが、迫る。
なんの抵抗もできないまま、響の左脚と、鎖と、瑞鳳の両腕を斬り落とされた。続けてサーベルが海面に触れて大規模な水蒸気爆発を引き起こし、二人は襤褸切れのように吹っ飛んだ。
別々の方向へ。四肢の大半を喪って。
あのままボーッとしていたら間違いなく二人は死んでいただろう。しかしそもそも爆発に気を取られていなければ、こんなことには。
痛恨のミス。普段なら絶対にありえない、己の精神性を疑うミス。
チェックメイト。
あっという間に均衡を崩されて、あっけない幕引きだ。

「嘘だ」

こんなのってない。
這いつくばって血と涙を流しながら、無意味に呟く。
絶対に護ってみせると誓った瑞鳳に護られて、彼女にはもう左脚と数少ない艦載機しか残っていない。
【軽巡棲姫】と相打ちになった夕立の安否は、不明。
海中でグーンと戦っている筈のキラも同じく、不明。
0289ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
垢版 |
2019/02/08(金) 20:27:44.74ID:aWXdpYKm0
救援は来ない。夕立が告げた時間まで10分以上ある。
右脚だけでは、まともな航行なんてできない。
右手に握った大太刀では、自らの身を守ることしかできない。
ライフルはついぞ一発も当てられないまま破壊された。
空飛ぶ相手に魚雷なんか当りっこない。
他の試作兵装はシールドと共に海へ消えた。
両肩の機銃が、アンチビーム爆雷しか装填していないグレネードランチャーが、錨を喪ったただの鎖があって、なんになる。
どうしようもない。
人型の万能性が聞いて呆れる。しかし本当にどうしようもないのだ。なにもできない。なにもかもを無駄にしてしまった。
冷静に考えるまでもなく勝算は皆無で、詰んでいる。逆転は億が一にも有り得なかったのだ。開戦時に発した精一杯の強がりも、こうなっては笑い話にもできやしない。
これでは瑞鳳を、護れない。
自分の喉から今まで聞いたことのない、ひび割れしゃがれた音が絞り出された。

「うそだ・・・・・・」

白濁にぼやける視界の中、空中に留まる漆黒のウィンダムが悠々とビームライフルを少女に向けた。
死ぬ。
殺される。大切な人が殺される。
これまで幾度も、響が見てきた光景と同じように。
開戦当初の佐世保の海で、一時的に所属した横須賀の海で、あの戦争で幾度も目にした命の果てと、同じように。
どうしてこうなったと、響は自問した。
強くなれたはずだ。
皆で研鑽し作り上げた、力を手に入れたはずだ。
喪失への恐怖を超える、福音を手に入れたのだ。
諦めないし、無理をする覚悟だってあったんだ。
なのに。
なのにどうして。
自分が死んではもう誰も護れなくなる。瑞鳳が、まだ生きているはずの夕立が、キラが、死んでしまう。
どうしてこうなった・・・・・・!!

(私が、不甲斐ないせいで・・・・・・)

己への絶望に、少女は打ちひしがれる。
これまでずっと諦めずに戦ってきて、諦めないと強がりを口にして、戦ったぶんだけ何かが変われたような気がして、その終着点がコレだ。何も変わっていない。全てが幻、無駄だったのだ。
仮に生き残れたとして、私はもう戦えないだろうなと、自嘲する。
0290ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:30:37.28ID:aWXdpYKm0
すると不意にウィンダムが、何故か手にしたライフルを在らぬ方向へ向けた。少女らが蹲る下方向ではなく、同高度のものを狙うように。
発射。
二発、三発と放たれた光の矢が東北東へと迸り、ナニかを灼いた。ここからでは見えなかったが、きっと佐世保の誰かが飛ばした偵察機かなにかだろう。目撃者は消すということか。
次は自分達があのビームに灼かれる番だ。
ほんの僅かな執行猶予。先延ばしにされたトドメの一撃。
これを最後の好機と動く者がいた。

「――諦めないで、ひびきーーーー!!!!」
「ッ、瑞鳳!? なにを・・・・・・!」
「私には、瑞鳳にはまだ・・・・・・翼があるんだからぁ!!」

ウィンダムが背負っているジェットストライカーがいきなり火を噴いた。
響からは見えなかったが、ずっと上空に待機していた最後の「烈風改」がエンジンを停止させ、重力に引かれるまま特攻したのだ。動きを止めたウィンダムのセンサーの死角を突いた、見事な奇襲だった。
あんなズタボロになっても、目を覆いたくなるほど悲惨な姿になっても瑞鳳には、まだ闘志がある。かつて日本国最後の機動部隊の一員として戦った末に、ただの囮としてエンガノ岬沖に沈んだ彼女には、まだ。
執念と言うべき胆力でもって、最初で最後の好機をモノにした。

「っく、この・・・・・・動け! 動けぇ!!」

敵は体勢を崩し、海面に不時着しようとしている。
ここで攻撃しなければならない。急げ。彼女がせっかく繋いでくれたのに、護ると誓った己が勝手に萎えていてどうする!
動け、この躰。
攻撃を。
左腕と左脚を失い、残るは右手に握った大太刀のみ。これだけでどうにか、攻撃を!

「う、おおおぉあッッ!!」

投げる。
投擲する。
慣れ親しんだ動作だ。これまで幾つもの危機を打破してきた、響の最も信頼する技。
キラから預かった、これまで身を守るためだけに振るってきたグランドスラムを、投げる。
しかし流石に分が悪い。バランスが充分に取れず、焦りから狙いもブレた。乾坤一擲の一撃はウィンダムのシールドを断ち割り、左肩部装甲に弾かれ宙に舞った。
――まだだ!
歯を食いしばって内心で絶叫。
今度は冷静に、錨を喪った鎖を同じように投擲する。先端に重りがない分不安定で速度が出ないが、今度こそ神懸かった力加減で鎖の軌道をコントロールし、見事グランドスラムの特徴的な柄に絡みつかせた。
0291ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
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2019/02/08(金) 20:33:18.40ID:aWXdpYKm0
即席の大型鎖鎌である。
これで、本当に今度こそ。一旦鎖をブン回して遠心力をため込んで、胴体を真っ二つにしてやる。
そう気合いを込めた少女の瞳が、見開かされた。
まずい。
敵のビームライフルが、瑞鳳を狙っている。
否。
もう、狙った後だった。

「やめろ」

ヴァシュウッ! と、特徴的な擦過音が、最近は毎日のように聞き、今日だけで何十回と聞いたソレが耳を打つ。
一条の閃光が、煌々とまっすぐに。動けない瑞鳳に向かってまっすぐに。

「やめてぇ!!!!」

超高熱のビームは海面に着弾すると同時に、水蒸気爆発を引き起こす。
遅れて、加速したグランドスラムがウィンダムの胴体を目論見通り、真っ二つにした。
だが少女の瞳は、意識は、既にそちらには向いていない。
散々響達を苦しめた機械人形の爆発が、海面を赤々と煌々と照らす。残酷なまでに真実を、現実を照らす。思わず伸ばした少女の腕の先を、照らす。
底意地の悪い、最後の抵抗であるかのように。

「あ・・・・・・ぁあ・・・・・・うああああぁッ・・・・・・」

轟沈。
響の目前で、あっという間に、あっけなく今、沈んだ。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
嫌だ。

「瑞鳳ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

目一杯伸ばした、ちいさなてのひら。
その先にはもう、誰もいなかった。
0292通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
垢版 |
2019/02/08(金) 20:37:19.62ID:aWXdpYKm0
今回は以上です。
普通に考えて汎用型が水中型に勝てるわけないし、艦艇が機動兵器に勝てるわけないんですよね。
0294通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 82fb-WZHJ)
垢版 |
2019/02/10(日) 00:30:04.93ID:Rd7O3K3L0
ちいさなてのひら、だんご大家z、うっ、頭が・・・

投稿乙でした。苦戦継続中ですな。
ここからどう巻き返すかも見物ですが、気になった点が一つ。

仲間の心配もいいけど、戦いという割に相手を見てないのが気になります。
「姫」の「夕立」に対する「想い」みたいなのが、艦娘達の深海側に対して
希薄なことが不利な状況を生んでるような印象です。

実際にミートさんがそのつもりで書かれてるのかも知れませんね。
0295通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 82ad-Ctdi)
垢版 |
2019/02/10(日) 05:32:39.22ID:YAoZtYtQ0
お二方感想ありがとうございます。
>>294
>仲間の心配もいいけど、戦いという割に相手を見てないのが気になります。
「姫」の「夕立」に対する「想い」みたいなのが、艦娘達の深海側に対して
希薄なことが不利な状況を生んでるような印象です。
流石に鋭いですね。
そこは実は仕様です。そこを語れるのはこのペースだとマジで何年後になるか自分でもわからないですが、彼女達の【起源】に直結することなので・・・・・・
長い目で見ていただければと。「あの」ガンダムSEEDのパロディとして、自分がこれから書くことも含め、でお願いしますハイ
0296ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
垢版 |
2019/03/31(日) 22:43:46.80ID:mgTOe+I+0
平成最後の投稿になります。
今回は溜め回ですので物語は進みませんが、これで世界観や技術等の説明はしばらく打ち止めになってくれると思います。てかそうしたいです。
0297ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
垢版 |
2019/03/31(日) 22:45:58.00ID:mgTOe+I+0
――艦これSEED 響応の星海――


そういえば、前にも似たようなシチュエーションがあったと瑞鳳は思い出した。
あれは戦争が始まった年の晩夏。軍令部の命により、やむを得ず嵐の海に出撃した艦娘達が行方不明になった事件でのこと。当時まだまだ弱っちかった瑞鳳と響が編入された捜索隊は艦娘を見つけることができず、
代わりに難破した深海棲艦群と、それを救助しに来たであろう深海棲艦水雷戦隊とかち合ったのだ。
今なら鎧袖一触で撃退できる雑魚もとんでもない強敵で、追い詰められていくうちにパニックを起こした二人は捜索隊とはぐれて孤立した。いつも暁達の後ろに隠れていた響が、
泣きべそかきながらも全艦載機を喪った瑞鳳を庇うように前にでて連装砲を構える響の姿が、とても印象的だった。
夕立に助けられたのはその時だった。行方不明になっていたはずの横須賀の夕立と川内に、逆に助けられたのだ。
そっくりだ。とてもよく似ている。
響が横須賀へ行くキッカケとなったあの時の自分達と、今ウィンダムにやられそうになっている自分達は、ほとんど同質だった。
でもあの時とは決定的に違っているものがある。
夕立に助けに来てもらってもなお、絶体絶命であること。そして、瑞鳳にはまだ一機だけ艦載機「烈風改」が残っていることだ。

「私には、瑞鳳にはまだ・・・・・・翼があるんだからぁ!!」

わざと大きな声で叫んで、雲に隠していた最後の機体で特攻をかける。
その本懐を果たせず自由落下する「烈風改」には、申し訳ないけれど、贅沢を言えばウィンダム本体に当たってほしかったけれど、ちゃんと役目を果たして敵の飛行能力を奪ってくれた。
目論見通り、敵の意識を瑞鳳へと向けてくれた。
これでいい。
最後の最後に囮として、響が反撃できる隙をつくれたのだから上出来だ。彼女なら絶対に見逃さないし、ちゃんと生き延びてくれる。あの娘だけでも絶対に、生きて帰してみせる。
無力なりにできることは、最善は尽くした。
そういえば、と、そこでまた思い出す。
かつて日本国最後の機動部隊の一員として戦った末にエンガノ岬沖に沈んだ時も、艦載機を全て喪い、囮として振舞ったのだったなと。どうやら瑞鳳という存在は、そういう星の下に生まれたらしい。
そして少女の意識は一度、一瞬、暗転した。

『瑞鳳ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!』

本来なら聞こえるはずのない、そのあまりにも悲痛に過ぎる叫びを聞いて、意識が再起動する。うっすらと金糸雀色の瞳をあけて、自分がどうなってしまったのか自覚する。
ならあの、ゆらゆら揺らめいている綺麗な光は、海面だろうか。
ならこの、ぷかぷか昇っていく大小様々な泡は、己の身から出ているものだろうか。
0298ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
垢版 |
2019/03/31(日) 22:48:58.91ID:mgTOe+I+0
何故かそれらが、命の鼓動そのもののように思えた。不安定で、揺蕩っていて、でも美しく高みを目指している、命そのものに見えた。
どんどんそれらが、遠ざかっていく。冷たくて動かない自分は、真逆、昏くて揺るぎのない闇へと墜ちていっている。
ここは碧色の世界。
つまり海中で、つまり沈んでいる。順当といえば順当な、当たり前の結果。

(ああ、しまったなぁ)

こうなってしまったらもう、どうしようもない。
左脚しかない躰はまるで全神経が抜き取られてしまったかのように、身動ぎ一つすらできやしない。
泳ぎ方なんて知らないけれど、平時であれば、十中八九徒労に終わるものだとしても脚一本でほんのちょっと未来を先延ばししようとする意志を見せたことだろう。しかし、
そもそも轟沈するほどのダメージを受けた艦娘は、たとえ五体満足であろうとも浮上することは叶わないのだ。
マッチングエラー。艤装が完全に破壊されて魂と躰のリンクが途切れ、全身不随になってしまっては技法も意志もなんの力にもならない。
加えて、艦艇としての質量が文字通り重石になり、少女としての、人間としてのなけなしの浮力さえ殺してしまっている。
開戦してからの通算で、決して少なくない数の艦娘が犠牲になったが、その原因の大半がこの現象に依るものではないかという推測を聞いたことがあった。そして、
艦種問わず轟沈した艦娘のサルベージは、未だ成功例が無いことも。
どうしようもない。今日だけで一体何回このフレーズが脳裏を過ぎったか。きっとこれが運命というやつなのかもしれない。
どうしようもない。即死を免れたこの身は、意識のあるままジワジワと死に侵蝕されていき、深海にて朽ち果て消えるのだ。

(これから、どうなるんだろう)

恐怖はない。
代わりに後悔と懸念、そして未練と罪悪感に満ちていた。
無力なりにできることは、最善は尽くしたけれど。逃れられないことだったけれど、他に選択肢がなかったけれど。それでもこんなのは絶対に、絶対に、最善なんかじゃない。
ああ、そうだ、そうだとも。彼女に――響に、悪いことをしてしまった。
よりにもよって私は、響の目の前で。

(・・・・・・どうして、こんなことになっちゃったんだろう)

キラと夕立の安否もわからず、目前で己が沈んだのでは。まるであの戦争の再現のよう。
船の【響】の経歴を、あの娘の過去を、あの娘の想いを知っている瑞鳳としては、この状況こそなんとしても避けねばならなかったというのに。
0299ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
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2019/03/31(日) 22:51:33.46ID:mgTOe+I+0
なのに彼女を癒やしたいと願った己が、先日ようやく念願叶って彼女と仲直りできた己が、よりにもよって最後の最後にこんなので、いたずらにあの娘の心を傷つけただけじゃないか。トラウマを抉っただけじゃないか。


今度こそ彼女は、壊れてしまうかもしれない。


こんな酷な仕打ちはない。馬鹿な話じゃないか。
前よりもずっと近くなって、一緒にいるようになって、実験に居合わせるようになって、結局足手まといになって。当初の予定通りに響とキラだけで出撃していれば、
この戦いに自分が居なければ、身軽で自由に戦える響ならもっと上手くやれてたはずなのに。
だから瑞鳳の心は後悔に染まった。
結局やることなすこと全てが裏目に出て、逆効果にしかならなかったじゃないか。
これが運命だとしたら、神様はどこまでいじわるなのか。再び閉ざされていく意識の中で少女は、せめてもの抵抗として、最後まで瞳は閉じずにいようと決めた。

(・・・・・・響、祥鳳、キラさん、みんな・・・・・・ごめんね・・・・・・――)

その時だった。
見上げた光の天井から、一つの影が落ちてきたのは。

(――なんで。ダメだよ響、こんなところに来ちゃ)

響だ。
落ちてくるというよりかは、突き進んでくる。残った右腕と右脚を懸命に動かして、酷く苦しそうな貌をして、瑞鳳を目指して一直線に潜水してくる。
追ってくる。まさか、サルベージしようと?
不可能だ。自殺そのものだ。夕立の弟子として泳法をマスターしていたとしても、負傷した躰で海に入ってしまえば、響単独でも戻れなくなってしまう。
師匠に似て通常でも尋常でもなくなったあの娘も、目的の為なら自殺行為でもなんでもやるが、はなから出来ないことを考え無しにやる馬鹿ではないと瑞鳳は知っている。
贖罪の為に生きて、最前線で戦い続けて、わざと命をすり減らすような戦い方をする彼女なら絶対に、自殺なんて選ばないことを瑞鳳は知っている。
なのに、追ってきた。心中するかのように、自ら死地へやって来た。
つまり、響の心はもう壊れてしまって、自暴自棄になってありもしない救いを求めて、死を選んだのかもしれない。少女にとってそれは悪夢だった。

(なんで、なんでなのよぅ・・・・・・。・・・・・・やだ。こんなのぜったいやだぁ・・・・・・!)

遂に響が瑞鳳の元へと辿り着く。
0300ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
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2019/03/31(日) 22:56:46.50ID:mgTOe+I+0
その時にはもう瑞鳳の瞳はなにも映していなかったが、動かない身体は水の冷たささえ感じなかったが、か細い右腕だけで抱きしめられる感覚だけは、心で感じることができた。
海に溶けて消えるはずの、大粒の涙が頬に当たったような気がした。なにか暖かいものが流れ込んでくるような気がした。
この感覚を最後に、意識は途絶える。
そして海中で抱き合う二人の少女は、大きな黒い影に包み込まれ、消えた。
0302ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
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2019/03/31(日) 22:58:05.76ID:mgTOe+I+0
《第17話:事象の水平線に阻まれて》



デュエルをピンポイントで狙った【軽巡棲姫】とウィンダム、グーンとの戦い。運命の分岐点。
その戦いで何があったのかを、佐世保艦隊が知ることはなかった。一方的な虐殺のような戦いがあったことを、当事者以外はただただ推測することしかできなかった。
何故ならつい先頃に、当事者達――響、瑞鳳、夕立、キラ――の四人が揃ってMIAに認定されたからだ。
Missing In Action(戦闘中行方不明)。事実上の戦死を意味しているその文字列は、漆黒のモビルスーツに撃墜された偵察機の情報を元に、榛名と木曾と鈴谷がヴァルファウ迫る戦場を放棄してまで懸命に、必死に、
約束した期限ギリギリまで周辺海域を捜索した末に導かれたものだった。
経過も詳細も一切不明で、ただ四人の行方が知れないという現実と、敵がモビルスーツを使役しているという事実だけが、残された佐世保艦隊の知る全てだった。鈴谷がたった5秒だけ垣間見た視覚情報だけが、全てだった。

「・・・・・・もっと早く、夕立さんを追いかけていれば・・・・・・もっと早く榛名が決断できていれば・・・・・・」
「死体が増えただけでしょ」
「・・・・・・ッ鈴谷!」
「事実でしょ、あんなん相手に鈴谷達が敵うわけないじゃん。・・・・・・今は戦闘に集中してもらわないと、今度はこっちが瑞鳳達の後を追うことになるんですけど」
「そんなの言われなくたって!!」

11月14日の、11時16分。
らしくなく辛辣な鈴谷の態度と言葉に、目元を真っ赤に泣きはらした榛名は恥も外聞もなく怒鳴った。だが、それでも視線と砲塔は敵に向けたままだから、彼女はまだまだ正気だと木曾は判断する。
むしろ、唯一敵の姿を知る鈴谷のほうが重症だ。付き合いは短いが、こんな風にすげなく当たり散らす少女ではないと知っている。この二人の精神状態をどうにかしなければ、それこそ本当に後追いになりかねない。
響達三人のいない第二艦隊一番隊に、戦闘中に後悔や感傷に耽っていられる余裕なんてない。
これより開始される戦闘も言うまでもなく、熾烈を極めることになる。
感情論抜きで単純な戦力だけで考えても、佐世保鎮守府最強クラスがごっそりと居なくなった損害は大きく、仲間を喪ったからと腑抜けてはいられないのだ。
艦娘というヒトデナシな存在にとって人類を護るという行為は、求められたものであり、求めたものであり、存在意義だから。自分達で選んで繋げたこの道こそが世界の応えなら、どうあっても止まることはできなかった。

「お前らそこまでだ。敵の射程に入るぞ、切り替えろ! 生き残れなきゃ弔うことだってできないんだぞ!!」
「!」
「オレが前に出るから支援任せるぞ鈴谷! 榛名は狙撃に専念してくれ」

エンゲージ。
対ヴァルファウ迎撃戦を経て、再び機能不全に陥った福江前線基地を守る為でなく、討ち損ねた敵を追撃する為の戦場に、木曾達は雰囲気最悪なまま足を踏み入れる。
0303ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
垢版 |
2019/03/31(日) 23:00:17.22ID:mgTOe+I+0
「・・・・・・すみません木曾、榛名がしっかりしないといけないのに・・・・・・」
「言うな、オレも大概情けねぇよ。だが・・・・・・鈴谷も、わかってるな?」
「っ――オーケー。舐めた態度とったのは後で謝るとして、鈴谷もやることやるよ」
「よし。響達の想いも連れて、行くぞ」

踏み入れて、突破して、更にその先へ。
目指すは沖縄。
仇敵を討つべく、自らの活路を拓くべく、第三艦隊三番隊【阿賀野組】を除く佐世保全艦隊は南へと舵を取る。



0304ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
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2019/03/31(日) 23:03:13.01ID:mgTOe+I+0
ここまで時系列を整理しよう。
ことの始まりは早朝、響達が特別演習に出撃してしばらく経った頃だった。
夜間哨戒から戻ってきたばかりの夕立が突然「響達が危ないっぽい!」と言って再出撃したのだ。確証もなにもなく勘だけで、丁度その場でミーティングをしようとしていた榛名達に「手伝ってほしい」とも言い残して。
夕立の勘は未来予知染みたところもあって信用に足るものであり、ならば駆けつけるべきと急いで榛名達は艤装を準備したが、その直後に問題が発生した。
哨戒に出ていた【阿賀野組】からヴァルファウ接近の報が上がったのだ。
対ヴァルファウ戦自体は、これから起こりうる大きな危機の中でも、特に高い確率で発生するだろうと考えていた。むしろ、提督と木曾に至ってはそろそろ【軽巡棲姫】が痺れを切らす頃合いだと踏んでさえいた。
まだまだ完全とは言えないが、既に厄介な輸送機や巨人を撃退する策は編み出して、虎視眈々と準備を進めていたのだ。
しかし。
第二艦隊一番隊【榛名組】全員と夕立を欠いた艦隊では、作戦決行は難しいと言わざるを得なかった。
しかし。
危機に直面している響を、瑞鳳を、キラを放っておくことはできない。夕立が危ないと言ったからには、手伝ってほしいと言ったからには、真実なのだ。誰かが助けにいかねばならない。
だから。
若干の作戦の変更を、決断した。ほんの数分だけ、貴重な時間を割いて、彼女達は金剛達と協議した。【榛名組】不在という陣容でも致命的な問題が発生せぬよう、作戦を修正した。
戦場で阿吽の呼吸の如く意志疎通できる彼女達でも、若干の犠牲を強いるこの修正内容で本当にいいのかと逡巡した。
だから。
間に合わなかった。ほんの数分だけ、貴重な時間を割いたから、間に合わなかった。救うべき者達がそこにいたという痕跡さえ、見つけることができなかった。
仲間の行方はおろか、敵の行方までも。


なんの成果も得られなかった榛名達が、金剛ら佐世保艦隊本隊と合流した頃には既に、戦況は小康状態となっていた。


艦隊に損害はなく、逆にヴァルファウと【Titan】数体を墜としていた。
少し前までは想像もできなかった驚異的な戦果だが、カラクリは至って単純。壊れたナスカ級を陸上砲台に改造し、元々船体中央部に装備されていたビーム砲とレールガンを使用しただけだ。
艦首120cm単装高エネルギー収束火線砲と艦橋下両舷66cm連装レールガンなら、一方的に攻撃できる。
最大攻撃目標であった輸送機は初撃で右翼を貫かれ、沖縄近海へ不時着。巨人達も続け様に狙撃されてはその戦闘力を発揮できず、撃墜。突然の大損害で出鼻を挫かれた敵艦隊は浮き足立った。
本来であれば完封勝利を見込めた迎撃作戦の序盤は、ほぼ完全に艦娘達の思惑通りに進行したのだ。これでナスカ級は敵の最大攻撃目標になるだろうから、
すかさず響と夕立とキラを突撃させ、アンチビーム爆雷と戦艦級の弾幕で護りを固め、瑞鳳ら空母級が制空権を獲ればそのまま勝てると考えていた作戦の、序盤は。
しかし現実の佐世保艦隊には要となる少女らがいない。防御と攻撃の両立ができない。守勢に回れば負ける。
0305ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-twBZ)
垢版 |
2019/03/31(日) 23:06:15.17ID:mgTOe+I+0
ならば致し方ないと、【榛名組】不在という陣容でも致命的な問題が発生せぬよう修正した作戦は、ナスカ級および福江基地の損害を前提として組み込んでいた。
結果として、10時頃になると敵残存勢力は沖縄方面へ撤退し、迎撃戦は終わった。


残されたものは、完全に破壊されたナスカ級と、大半が更地になった基地、そして響達がMIAに認定された現実と重苦しい空気。真っ白な顔で蹲る暁達。


考え決断しなければならない事が、たくさんありすぎる。
木曾と金剛は一度基地内で唯一無事だった工廠に戻り、二人だけでこれからについて話し合うことにした。他の者達には頭を働かせられる余裕はなさそうで、せっかく復旧した有線通信もまたダメになってしまっていた。
今はこの二人しか、気丈に振舞ってその実当たり前のように憔悴している二人しか、決断できる者はいなかった。

『・・・・・・木曾。榛名の様子は?』
『完全にふさぎ込んじまってる。その内立ち直るだろうが・・・・・・時間が必要だな。榛名だけでなく、皆』
『Sorry。本当は木曾も、辛いでしょうに』
『お互い様だろう。それにオレ達までダメになったら誰が艦隊を支えるんだ。これまで艦隊の方針を決めてきて、こうも後手にしてしまったオレ達だからこそ、最後まで諸々の責任を果たさなきゃな』

ヴァルファウを放置すればまた復活するだろう。
沖縄周辺まで、ヴァルファウを追撃するか否か。
追撃するとして、傷ついた基地はどうするのか。
響達を探し出すべく、捜索隊も結成しなければ。
キラがいないのなら、強化計画はどうするのか。
そもそも、今の佐世保に敵を倒す力があるのか。
また、再び長崎に接近してきているらしい嵐のことも考えなければならない。嵐が来れば艦娘も深海棲艦も身動きできなくなる。どうすればいい。もう後がない。
状況は完全に、金剛達のキャパシティを超えていた。しかし提督の判断を待ってはいられない。
工廠が沈黙に呑まれる中、やがて木曾は凜として告げた。

『追撃しよう。福江基地には最低限の守備隊を残し、全戦力で徹底的にヤツを潰す。今攻勢に出なければ死を待つだけだ』

もう後がないなら、進めるところまで進め。生か死かという二択を背負い、進め。
この時期に珍しい二度目の嵐がくるのなら、まだ神様には見捨てられていないと木曾は言う。
艦娘も深海棲艦も等しく身動きできなくなるのだから、いっそ嵐に基地と鎮守府を守ってもらうのだ。
その間に佐世保全艦隊は南進、鹿児島の鹿屋基地にも再度協力を要請し、嵐が五島列島を抜けるまでに不時着したヴァルファウを破壊して帰投する。
ハードな強行軍になるが、これをクリアできなければそもそも佐世保鎮守府に未来はないし、今にも精神的に完全崩壊しそうな佐世保艦隊には進撃(仇討)という麻薬が必要でもあった。
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2019/03/31(日) 23:10:03.10ID:mgTOe+I+0
また、響達の捜索については、完全に人間達に任せることにした。生きていればきっと福江島周辺にいるはずで、彼女らを探すなら哨戒艦や鎮守府陸上部隊のほうが適任だ。艦娘は完全に戦力として運用する。

『夕立達が戦ったっていうMobile Suitsはどうするつもりデス? 真相不明のまま放置したらまた同じことがRepeatヨ』
『そうだな。オレ達は響達も、響達を襲った敵も、見つけられなかったからな。正直判断に困るってのが本音だが』

もっともな指摘に木曾は一度大きく頷くと、無人となった工廠を見渡した。
痛いほど静かな、ごちゃついた空間だ。奥には主不在のストライクが鎮座していて、喪った存在の大きさを改めて突きつけられているような気分になる。
今になって思えば、一瞬で過ぎ去った福江基地での生活は常にこの工廠が中心だった。
ここに少し前まで、キラと響と瑞鳳と明石は入り浸っていた。他の仕事の合間に、戦闘の合間に顔を出し、意見を交わしながらあれよこれよと楽しそうに作業していた。
己も含めて他の少女達も時折手伝いに来ていたが、ここはやはり彼女らの居場所になっていた。
しかし今、ここには誰もいない。
皆の修理に奔走している明石以外の、ここの主と化していた四人のうち三人は、夕立と共に何処かへ消えてしまった。客観的に、死んだと見るべきだろう。
いなくなったとわかって木曾は改めて、ここ最近はずっと戦闘も日常も、彼女らに頼りっぱなしだったことに気付く。

『・・・・・・しかし実際問題、響達が本当に死んでいて敵も健在だったのなら、艦娘が束になったところで勝ち目はないだろう。
モビルスーツの力はお前も把握してるだろ? 佐世保鎮守府どころか、全人類そのものの危機だ。その可能性は考えるだけ無駄だ。だからオレは――』

あの防衛戦以来、戦闘の度に「これしか手はない。やるしかない」と何度も何度もそう思い、己に言い聞かせ決断してきた。
他の者達は気付いていなかったようだが、あの小さな駆逐艦娘とその相方の技量をアテにした強攻策で以て苦難を退けてきたのだ。
参謀役が聞いて呆れる。酷いザマだ。戦闘の度に恩や借りを感じて、返そうと思って、しかし次の戦闘でまた頼って。
この基地で過ごした短い日々でだって、響とキラの仕事量は増える一方だった。積極的に手伝っていた瑞鳳だって相当根を詰めていた筈だ。でも彼女達なら大丈夫だろうと、その行動を容認してきた。
結果がこれだ。
試作兵装実験の為の演習だからって、自分達は他にやるべきことがあるからって、あの三人に単独行動させなければこんなことには。せめて目の届くところでと制限していれば。
恩や借りを返すべき相手を失った。頼りきりだったから失った。
だからこそか。

『――オレは響達が生きていて、敵も退けてるって都合の良すぎる可能性を信じる。今までアイツらに頼りきりだったからこそ、最後までそう信じる。信じてるから、オレ達は進むんだ』
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2019/03/31(日) 23:11:13.58ID:mgTOe+I+0
最後まで信じてやらなければ嘘だ。
結局ただの考え無しで無責任なだけかもしれないが、己が信じたアイツらが生きている前提で動く。そう言い切った。また会えたら今度こそアイツらの助けになるのだと誓って、金剛も静かに頷いた。
方針は定まった。
だから無茶でもなんでも、やってみせる。
響達の分まで自分が艦隊を支えてみせる。
今までのように受け身でいればこの果てない逆境と絶望の連鎖は断ち切れない。だから断ち切る為に、木曾達は自ら敵地へ攻め込む道を採択したのだ。

『今度こそ本当に、もう深海棲艦どもの好きにはさせない。オレがさせない』
『DEAD or ALIVE and GO デスカ・・・・・・OK、久々の殴り込みネ。これでFinishって気概で、ケド続いていくワタシ達の未来の為に』
『責を果たすぞ、金剛』

最後に木曾は、ストライクを一瞥して工廠を出た。
まだ修理の終わっていない人型機動兵器、その瞳が一瞬おぼろげに煌めいたような気がしたが、錯覚だと切り伏せた。



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2019/03/31(日) 23:15:44.71ID:mgTOe+I+0
そして佐世保艦隊は沖縄へと向かった。
同時刻、呉鎮守府。
シン・アスカはまだ、キラ達がどうなっているのか知らなかった。というのも、今現時点で佐世保の二階堂提督と呉の提督とで情報整理をしている真っ最中なのだから、
シンのみならず所属艦娘全員がその現状を知るまで、まだ幾ばくかの時間が必要だった。
ウェーク島救援作戦を成功させた支援部隊が昨夜ようやく凱旋したことも相俟って、まだまだ呉の雰囲気は平穏そのものだ。

「あれま、シンじゃん。一人でご飯とか珍しいね〜」
「・・・・・・なんだ北上か。なんか用かよ?」
「ぼっちメシでふて腐れてる英雄様の為に、このハイパー北上さまが昼食をご一緒させてしんぜよう」
「ふて腐れてねーよ。つーかその英雄様ってのヤメロ」

工廠の隅っこで一人、デスティニー修理部隊御用達の円卓にてわざわざ食堂から持ち込んだ肉うどんを啜っていると、どういうわけか北上と同席することになったシンがいた。
お気楽マイペースな球磨型重雷装巡洋艦三番艦の北上。佐世保所属の木曾の、姉妹艦の一人。
ナイーブでつんけんしてる彼にとっては少々苦手なタイプであるところの三つ編み少女が何故か、トレイに特盛ミックスフライ定食を載っけて工廠にやって来た。

「ねー、天津風とプリンツは?」
「艤装修理中だよ。あんたこそなんでここに・・・・・・大井と阿武隈は一緒じゃないのか?」
「大井っちも同じく修理中で阿武隈は出撃中ー。私の艤装修理はもうちょい先なわけだから、少し寂しいよね。とりあえず隣を失礼しますよ〜っと」
「ちょ、おまっ、結構強引なのな」

いつも大井か阿武隈と一緒にいるこの少女は、イヤな相手ではないのだが、話をしているとどうにも調子が狂ってしまう。
そう、例えるなら掴所のないクラゲ。のほほんとしたクラゲが同意も得ずに隣に座ってきて、どこか居心地悪そうに身動ぎするシン。
そんな青年とは対照的に、弛緩しきった北上は早速とばかりに揚げたてコロッケに箸を伸ばす。
かと思えば。

「ほいコレあげる」

食べかけのうどんへ、ポンっと無造作にIN。
哀れ、さくさく衣が売りのコロッケはみるみるうちにスープの海に沈んでヘニョヘニョになっていく。なんということだ。いとも容易く行われた取り返しのつかない行為に、思わず真顔になった。

「・・・・・・なんのつもりだ?」
「テレビで知ったんだけど関東のほうにゃコロッケ蕎麦なる文化があるみたいでさー。汁吸ってぐずぐずになったコロッケもまた美味しいらしいねぇ。・・・・・・うどんで代用できるかは知らないけど」
「そうなのか。いや、そうでなく」
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2019/03/31(日) 23:18:02.51ID:mgTOe+I+0
「お近づきの印と、お疲れさま&ありがとうの第一弾ってことで。おかげで無事に帰ってこれたわけだからね、私は」

なるほどそれが本題か。いきなりなんだコイツと思ったものだが。
よかった、無駄に犠牲になったコロッケはなかったんだ。

「ああ、そうか。あん時ウェーク島にいたんだっけか、あんたは」
「呉艦隊主力の、ミッドウェー包囲網の一員として丁度ね。いやーマジでもうダメかと思ったわ。そしたらあのロボット・・・・・・ディスティニーだっけかがカッ飛んできて? そりゃ英雄様と言いたくなるもんですよ」
「デスティニーな。俺はアイツらを運んだだけだぞ」
「まさか。【姫】級と【要塞】級を炭にしといて」

先日11月11日に決行したウェーク島救援作戦での顛末を思い出す。
この世界でのシンの初陣は、実に単純なミッションだった。馬車役となったデスティニーで天津風ら支援部隊を詰め込んだコンテナを運搬し、後退中の西太平洋戦線を支援するだけ。
その際に邪魔になりそうな深海棲艦を何体かビームライフルで焼き払ったりしたが、それがまた効果覿面で、艦娘達はあっという間に勢いを取り戻して戦況を拮抗させた。
すると横須賀からの援軍も間に合い、墜とされた偵察衛星の代わりに大量の水上偵察機を動員させて、辛うじてウェーク島は陥落の危機から脱する。
翌日になると事態を把握したアメリカとロシアが動き出し、他の戦線を後退させてでも援軍を出してくれたおかげで逆襲に転じ、肝心要のミッドウェー包囲網維持を実現したのだった。
それを見届けたシン達が小笠原諸島沖に待機していた輸送船と合流し、呉へと帰還したのが昨夜のこと。
懸案事項としては、デスティニーを目撃した他鎮守府の艦娘が上へと報告しないでくれるかだが、そこはもう口約束と義理人情を信じる他ないだろう。

「【姫】級と【要塞】級? ・・・・・・妙に目立つのがいたけどアイツらってやっぱ、かなりの強敵だったのか?」
「ラスボス並。おかげで【姫】のほうはこの元祖重雷装巡洋艦北上さまが魚雷全弾命中させて、大和と共同で撃沈した扱いになってましてねー。【要塞】はビックセブンズと一航戦の戦果になったんだっけか。
あれでライフルの威力とか、じゃあキャノンを使ったらどうなるんだって私としては興味津々なわけですよっと」
「・・・・・・正直言うけど、もし万全だったら単騎で制圧できてたんじゃねーか」
「次元が違うわー。対艦兵器モビルスーツの最新型たるデスティニーさんは超戦略級機動兵器(ワン・マン・フォース)でございますか。ウチの提督が隠したがるわけだねぇ」

それほどのパワーを秘めているからこそ、デスティニーの存在は未だ呉鎮守府関係者しか知り得ない最高機密となっている。
なにせ、兵器なのだ。異世界の地球人類が純然たる科学のみで建造した、個人用の機動兵器なのだ。それはつまり、ボタン一つで誰でもコントロールできることを意味する。
正確に言えば【GRMF-EX13F ライオット・デスティニー】はシン・アスカの生体認証がなければ戦えないのだが、雑に動かすだけなら遺伝子操作を施していないナチュラルでも可能だ。
そんな物騒なものを、まだこの世界に広く開示するわけにはいかない。
何故なら。
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2019/03/31(日) 23:21:09.59ID:mgTOe+I+0
「そりゃ隠さないとマズいことになるって俺でもわかるさ。戦力を艦娘に依存しきっているこの世界の軍にとって、モビルスーツなんて喉から手が出るほどだろうしな。
正直なとこ、ここに保護されてなかったらと思うとゾッとするよ」

この国の上層部にも勿論、艦娘を私的に利用しようとする者がいるからだ。
単純に私兵として己が権力を絶対のものにしようと目論む者、逆に支援の名目で媚びへつらい己のイメージアップを狙う者、或いは唯オンナとして欲望の捌け口にしようとする者など。そして誰もが口を揃えてこう嘯くのだ。
「君達の苦労は理解している。だがこれは未来の為に必要なことなのだ」と――
人間社会として実に当たり前のことで、揺るぎようのない現実。どんなに真面目で潔白な者が頑張ろうと、これだけは絶対に防ぎようのない現実。不逞の徒の暗躍は古今東西、実在する。


故に、シンとデスティニーは呉鎮守府で活動していても、公式には「いない者」として扱われている。


おかげで愛機から遠く離れないよう行動範囲を制限され、常に艦娘の護衛がつくようになったが、そうでもしないとシンの身が危ないからと呉の提督が計らってくれた経緯があった。
実際、シンに対する軍令部からのちょっかいは提督が防いでくれているのだ。もしもウェーク島で会った艦娘達との口約束を反故されて、デスティニーの存在が正式に他鎮守府提督ひいては軍令部の耳に入れば、
間違いなく面倒なことになるだろう。
単純であったシンの初陣にも実は、そのようなリスクがあったのだ。
余談だが、11月21日に予定していた佐世保行きの件にもこの問題が深く関わっている。訳ありVIPのシン・アスカが呉から離れるには愛機と一緒でなければならず、となると輸送船で海路を進まねばならず、
どの道護衛が必要になるからこそビスマルクら出向防衛組と入れ替わりでという面倒な条件が出されたのだ。尤も、状況がこうも混乱しては予定なんぞとっくに白紙に戻っているが。
更に余談だが、呉のデスティニーと違って、佐世保の【GAT-X105 ストライク】と【GAT-X102 デュエル】の存在は既に軍令部へ報告されている。
鎮守府の一戦力として運用しているからそもそも隠しようがなく、またキラ自身が艦娘と同じようなヒトデナシになっていることもあって、いっそ公式に艦娘と同一なる存在として登録しているらしい。
こうなると逆に、艦娘に戦ってもらうことを第一としている軍令部は手出しできなくなるから安全なのだとか。だからこの世界では、異世界からの漂流者はキラ唯一人だけということになっているのだ。

「人類から艦娘を護るのが提督の仕事って言ってたな、あの人は」
「いつの時代も、この混迷する今を切り抜けた先にある輝かしい未来ってヤツを独占したがる野郎はいるもんだからねー。度し難いですよホント・・・・・・ほいご馳走様でしたっと」

纏めるようにそう言ってから北上は定食を平らげたが、席を立つ様子はない。まだ聞きたいことがあると真っ黒な瞳が物語っており、シンもぐずぐずになったコロッケを咀嚼しながら、観念して付き合うことにした。
さて、と青年は思う。
これまであまり接点があったとは言いづらいノンビリのほほんとした風情の少女は、己に何を求めているのだろう。いや、改まって考えるまでもないのだ。
柄ではないが彼女の言動を元に、次に彼女が切り出すであろう話題を予測してみる。
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2019/03/31(日) 23:24:21.98ID:mgTOe+I+0
「でさぁシン、私的にはこれが一番訊きたかったんだけどさ――」
「先に言っとくけど、デスティニーはもうホントに動かないぞ。どうやったって完全修復は無理だ」
「――あら、見え見えだったのね。・・・・・・うひー。まぁ、しゃあないのはわかってますけどさぁ」

その質問が間違いなく来るだろうなと予測して、というかそれしか思い当たらなくて、
間髪入れずに現実を突きつけてやると北上はぐんにゃりと円卓に伏した。「もうちょっとぐらい夢見させてくれてもいーじゃなーい」と小さくぶーたれる。
気持ちはよく分かる。立場が反対ならシンだって同じ楽観的希望を持つことだろう。

「あのな北上。俺だってデスティニーが直らないと困るんだっての。つーか死活問題だ」
「あーなんだっけワルキューレだかなんだか、シンは元の世界に帰らなきゃいけないんだもんねぇ。・・・・・・そーいやもうすぐ佐世保からモビルスーツ届くじゃない。それ使ってニコイチとかは?」
「無理。インチとセンチみたいなもんで規格が全然違うからな・・・・・・そもそも研究と増産の為に送られてくるんだから勝手に使えねぇよ」
「世知辛ーい」

たとえ「いないもの」扱いでも、現実問題として、デスティニーが艦娘達と戦線に与えた影響は絶大極まりない。
たった一機の、その一端だけであろうとも戦局を一変させる力が実在するのだとしたら、誰だってそれに縋りたくなるものだ。
それが「もう壊れました無理です」と言われて素直に納得できるかと言われれば、難しいと答えるしかない。
けれど本当に直しようが無いのである。
デスティニーは単騎での戦場制圧を望まれるGRMF-EXナンバーの最新型で、故郷のC.E.ですら規格外の存在だった。使用しているパーツも技術も旧世代機のものとは一線を画し、当然互換性は一切無い。
現状、心臓部たるUC型デュートリオン核融合炉が完全にダウンしてしまった愛機が復活する可能性は、殆どゼロである。
この世界に来た時点でかなりガタついていたが、ウェーク島救援作戦での戦闘いよいよ力尽きてしまった。それに見合う戦果は挙げたし後悔もしてないが、これからのことを考えると気が重くなってしまうシンである。
仮にデスティニーを完全に稼働させるには、絶対条件として、他のGRMF-EXナンバーからパーツを拝借しなければ。そんなものは考えるまでもなく、そんじょそこらに転がっているものではない。

「・・・・・・ニコイチ、か」
「? どったのシン?」

GRMF-EXナンバーはそんじょそこらに転がっているものではない。
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2019/03/31(日) 23:26:15.78ID:mgTOe+I+0
しかし。
しかしシンには一つだけ、他の誰にも明かしていない心当たりが、一つだけあった。愛機が復活する可能性は殆どゼロであるが、殆どということはつまり、そういうこと。
この時空間転移の原因がヴァルキュリア‐システムだとして、その発動時の状況が、位置関係が記憶している通りなら。

(この世界にヴァルファウとナスカ級が来てるってんなら、間違いなくアレも何処かにある筈なんだよな)

佐世保からの報告にあった大気圏内用大型輸送機・ヴァルファウはきっと、ナカジマ隊のもの。宇宙用モビルスーツ搭載型高速駆逐艦・ナスカ級はきっと、ラドル隊のもの。
そう仮定して、時空間転移に巻き込まれた範囲を試算すれば。
必ずアレも、この世界に来ているのだ。


【GRMF-EX10A エクセリオン・フリーダム】。


キラ・ヤマト本来の機体。デスティニーと同時期にロールアウトした、名実共にC.E.最強のモビルスーツ。
この世界の何処かに、確実に存在する。所在はわからない。
小惑星基地が台湾周辺に落着したのにキラが長崎県沖で、シンが高知県沖で発見されたように転移先の座標は割とバラバラなのだから、フリーダムがどこに落ちたかなんて見当もつかないし、
もしかしたら壊れているかもしれないし、深海棲艦に鹵獲されている可能性もある。
とても探し出せるものではないし、もし敵として現れたら人類絶滅一直線だ。そんなフリーダムを運良く手に入れられたらデスティニーは修理できるかもしれない。
口外すれば無駄に恐怖心を煽るだけの、その程度の心当たりがシンにはあった。

(考えたって意味ないな。とりあえずデスティニーは思い切って、バッテリー駆動仕様に改造してみるしかないか。これから送られてくるザクのバッテリーぐらいなら私用に使っても大丈夫だろ、たぶん)

上手く事が進めば、スペックダウンした愛機で小一時間程度の戦闘なら可能になる。まずはそれを目指してまた整備を頑張るかと青年が決心したところで、なんとなく北上の言ったニコイチという単語が気になった。


ニコイチ。複数の個体から一つの個体を構成すること。


さっきはすげなく無理といったが、ザクのバッテリーをデスティニーへ移植ぐらいはできる。完全修復が不可能なのに変わりないが、過酷な現場ならツギハギで兵器を応急処置することはザラ。というか戦場の常だ。
だというのに。

「北上。そういやちょっと疑問なんだけど」
「んー?」
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2019/03/31(日) 23:29:48.21ID:mgTOe+I+0
シンは歴史に疎いし、更には第二次世界大戦以前の軍事なんぞまったくもってからっきしだが。
だが旧ザフトのアカデミーで、教官のコラム(趣味話)として、過去にイギリスの艦艇がニコイチで修復されたことがあると教わったことがあった。
イギリス海軍のトライバル級駆逐艦ズビアン。艦首を喪った九番艦ヌビアンと艦尾を喪った十二番艦ズールーを合体させて爆誕した世にも珍しいパーフェクトニコイチ艦艇だとか。また最近知ったことだが、
他にも艦艇時代の【天津風】も艦首を喪ったことがあって、一時期ツギハギの仮艦首で活動したのだという。【響】も大破の常連で、軽度のツギハギ修理なら艦艇でも珍しいことではなかったそうな。
だというのに、そういえば、艦娘がニコイチで、ツギハギで修理したという話はまったく聞いたことがなかった。
例えば目前でうだーっとだらけている北上は修理待ちで、現在修理中の大井は球磨型重雷装巡洋艦四番艦、つまり姉妹艦で艤装にも共通点が多い。
ミッドウェー包囲網が維持できてるとはいえこの切羽詰まった戦況、呉主力の二人を順番にノンビリ修理するより、ニコイチでどちらかを早急に戦線復帰させたほうが良さそうなものだが。

「艦娘の艤装ってニコイチとかしないのか?」
「無理」

今度はシンがすげなく即答される番だった。

「なんで。あんたと大井ならできそうじゃないか」
「その発言、大井っちが狂喜乱舞するから二度と言わないように。これ以上愛が重くなったら流石の北上さまも持て余しますよ」
「はぁ?」

珍しく真面目くさった貌をする北上だが、正直意味がわからないシンである。眉根を寄せる男に対して少女は「なにか勘違いしてるみたいだけど」と前置きをしてから、
出来の悪い教え子に言って聞かせるように姿勢を正して言う。
その内容は確かに、シンの常識から大きく外れたところにあった。

「私ら艦娘の本体は、艤装なわけですよ。元々艤装って単語は、容れ物たる船体に搭載される機関や武装一式のことを指すものだけど・・・・・・艦娘の場合は因果関係が逆でさ」
「?」
「艤装があって初めて、意志総体を宿す肉体が顕現するの。艤装こそが魂であり心臓。艤装ありきで、私らの船体、肉体が構成される関係なのですよ」

装着は自由だけど、艦娘としては装備している状態こそが自然体のソレ。
艦艇の砲塔や艦首等を模し、艦娘の躰と密接にリンクしている摩訶不思議な存在である艤装はただの兵器・機械ではなく、現人類が思い描く物理法則がまったく通用しない原理原則で動いている。
艦娘の意思一つで空間を超えて自動的に装着することや、砲弾が腹部や頭部に命中したとしてもダメージの殆どを艤装に引き受けさせることだって可能にする。
艦娘は多少の被弾じゃ怪我をしないし、仮に四肢を喪っても活動することができる。でも完全に破壊されてしまえば魂と躰のリンクが途切れて全身不随になってしまうし、最悪、肉体が消滅してしまう事例も確認されている。
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2019/03/31(日) 23:33:05.10ID:mgTOe+I+0
艦娘はヒトデナシ。
沈んだ艦艇と搭乗員の記憶をベースに魂を構成し、肉体を構成し、生まれながらにして戦う力を備えた超常の少女達。厳密には物理的な肉体を持たない、生まれてから死ぬまでずっと同じ姿形を保ち続ける霊的存在。
この世に生まれた直後は、戦い方を記憶として知ってるから戦い、時間が経てばお腹が減ることを記憶として知っているから食事を摂り、睡眠の必要性を記憶として知っているから眠るという、
それこそ本当に人間とはいえない哲学的ゾンビそのままだった少女達。
艤装に大規模な改装を施せば、比例して容姿までもが変わってしまう少女達。
それもこれも、艦娘の躰が艤装から生まれ落ちた存在であることの証左だった。そんなものを、ボタン一つで誰でもコントロールできる普通の兵器と同じように扱うことはできない。

「魂をニコイチしたら、どうなると思う? というか、できると思う?」

魂の統合は、意志総体と肉体にどのような影響を与えるだろう。
容姿と人格が混ざり合うのか、二重人格のようになるのか、片方が吸収されて消えるのか、拒絶反応が起きて二人諸共崩壊してしまうのか、それともまったく新しい魂が生まれるのか。

「・・・・・・実験したこと、あるのか?」
「ないよ。でも想像つくでしょ、誰でも。・・・・・・そんなの私らにとっちゃ恐怖でしかないって」

艦娘をニコイチする実験が行われなかった理由は三つある。
一つは、艦娘に依存して艦娘に戦ってもらうことを第一としている軍令部は、当の艦娘が拒否することを強行できないこと。
二つは、ただでさえ少ない貴重な艦娘の頭数を減らしたくないという現実的な判断から。
三つは、そもそもニコイチしなければならないほど重症を負った艦娘が、二人以上同時に帰還してきた試しがないことだ。艦種問わず轟沈した艦娘のサルベージは、未だ成功例が無い。
結果として艦娘ニコイチ修理論は、実験することなく不可能として結論づけられた。

「・・・・・・軽はずみな質問だったな。悪かった」
「ま、私個人としちゃ学術的興味はあるんだけどね〜。たぶん明石も夕張も、たぶん天津風も」
「おい」

あっけらかんと北上は言う。

「私も一応、艦艇時代は工作艦やってた時期もあってさ。流石に明石大先生とその弟子達ほどの腕じゃないし、今じゃ天津風のほうが実力あるけどねー。
でも普通の艦娘よりかは詳しいつもりだし、ニコイチしたらどうなるかってのは知りたいところだねぇ」
「さっきと言ってること違うじゃないか!」
「勿論実験するつもりはないよ? でも結果は気になるじゃない」

怖いもの見たさというか、技術者の血というヤツだろうか。脱力してズルリと椅子から落ちかかったシンである。
お気楽マイペースな北上はそんなリアクションを無視して、実にイイ顔で言葉を紡いでいく。
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2019/03/31(日) 23:36:28.36ID:mgTOe+I+0
「明石と天津風は、拒絶反応で崩壊説を推してたっけ。一方夕張は人格統合説で、私も二重人格説でイケなくはないんじゃない派」
「いや訊いてねぇよ。つーか明石と夕張って誰だよ」
「明石は艤装修理の第一人者でスペシャリスト。夕張はその弟子1号で2号が天津風ね。ちなみに最近3号候補が見つかったとか」
「どうでもいいっすー」
「拒絶反応もわかるけどね。でも艦娘同士の相性によっちゃ馴染んでくれると思うんだよねー、私は。例えばとんでもなく自己否定してる娘と、とんでもないお人好しの組み合わせだったらイケそうな気がしない?」

己の得意分野となると饒舌になってテンションうなぎ登りになるのが技術者というもので、
それをキラという男から苦い思い出で悟っている青年は「はやくザク届かないかなー。それか天津風かプリンツ来てくれないかなー」と聞き流す姿勢に移る。
少なくとも訊きたいことは聞けたのだ。これ以上実現しそうにない夢想に想いを馳せたところでどうなるというのか。とりあえず、さっさと冷め切ったうどんを平らげて食器を返そうと決める。
だが残念ながら、気に入られてしまったのか、その後5分近く北上の蘊蓄や妄言を聞き続けるハメになってしまった。
救いの手は、11月14日の、11時27分。
それは、その時になってようやく呉鎮守府全体に知れ渡った、キラ・ヒビキら四人のMIAと福江基地放棄の報だった。
0319通常の名無しさんの3倍 (アンパン Sda2-LjUm)
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2019/04/04(木) 09:46:22.51ID:aWdjh1m3d0404
深海棲艦にはニコイチネタがけっこうあるけどまさか?
0321ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:13:10.90ID:3fhSH5Hu0
――艦これSEED 響応の星海――


私は。
わたしは。
死にたくはないんだ。死は怖いんだ。でも、わたしなんか生まれてこなきゃよかったって、思うんだ。
だってそうだろう。
死ぬべきところで誰かに助けられ、その誰かが代わりに沈んで、その繰り返しで、結果残されたのが【不沈艦】などと持て囃されるわたし。【不死鳥】の二つ名を持ち、旧日本海軍に運用された艦として最後まで生きた、
かつての駆逐艦の響。
そんなわたしが、みんなの為にできたことはなんだ? 鋼鉄の艦艇であったわたしは確かに戦った。確かに何隻か敵を沈めて、生き抜いた。
戦わずして沈んだ艦も多くいることを考えれば、それは確かに誇りだ。けどそれが何になった?
戦って、何になった。
AL作戦の一環として参加したキスカ島攻略作戦でわたしは艦首を失い、暁に守ってもらいながらの帰投を余儀なくされた。
一時的に占領できたキスカ島とアッツ島は最終的に奪い返され、そもそもMI作戦の陽動だったのに、当のMI作戦は日本国の敗退で終わってしまった。
船体修理中に、暁と夕立がソロモン海戦に散った。
雷が対潜任務中に消息を絶ち、電がわたしと持ち場を交代した直後に、敵潜水艦にやられた。仇は討てなかった。
マリアナ沖海戦に補給部隊護衛として参加し、主力機動部隊が壊滅し、敗走して。
損傷した輸送船救助の任を受けたが、不意の魚雷でまた大破し、更に不運が重なって一旦修理に帰投したら救助予定だった船を沈められ。日本艦隊の総力を挙げたレイテ沖海戦敗退の報を、修理中に聞いた。
後に大和水上特攻と呼ばれる、艦隊最後の戦いであった坊ノ岬沖海戦に招集されたものの、移動中に触雷して脱落。その際に呉まで護衛してくれた朝霜が帰ってくることはなかった。
そして8月15日の早朝に、海軍最後の射撃をして、終戦。
以後、復員輸送艦として行動して、賠償艦としてロシアに渡って。結果わたしは生き残って、1970年代まで――誰よりも長く生きた。
否。なんてことのない所で損傷し、大事な作戦にばかり参加せず、無為に生き存えた。
さして大きな戦果を挙げたわけでもなく。
さして大きな役割を担ったわけでもなく。
雷や電みたく誰かを助けたわけでもなく。
最後まで生き残って結局、なにも成せず。
わたしが生き残って、なにが好転した? 乗組員達には申し訳ないが、死に損なっただけだ。
なにが不沈艦だ。
なにが不死鳥だ。
わたしは死神だ! 同じ過ちを繰り返して、親しい人ばかりを死に追いやる死神だ! ふざけるな、不死鳥なんて言葉で飾るな!!
そんなもの欲しくない。死は怖いけど、それ以上に、みんなと一緒にいたかった。独りでいることのほうがずっとずっと恐ろしい。いっそみんなと一緒に沈みたかった。戦って沈みたかった。それが成せぬのなら。
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2019/04/22(月) 19:15:40.07ID:3fhSH5Hu0
わたしなんか生まれてこなきゃよかったんだ!


でもわたしは生まれた。
大日本帝国海軍特型駆逐艦22番艦の【響】として、後に艦娘の暁型駆逐艦二番艦の響として、わたしが生まれた事実は覆らない。例に漏れずわたしの魂も生まれ変わった。
生まれ変わって、弱くなった。艦艇としての記憶に囚われ、戦場で脚が震えて動けなくなるぐらい、艦娘としてのわたしはいっそ笑えるぐらい弱かった。
だって死神だから。
わたしが動けば、また繰り返すかもしれない。誰かが巻き込まれて、自分の代わりに沈むかもしれない。みんなと一緒に戦えば、また自分だけが取り残されてしまうかもしれない。
守りたいものがあるのに、まだこの手にチャンスがあるのに、わたしこそが台無しにしてしまうかもしれない。そう考えたらもう戦えなかった。
こんな己が憎い。憎らしい。それでも浅ましく生を求めてしまう己が嫌い。大っ嫌い。


ごめんなさい。生き残ってしまって、生きていて、ごめんなさい。


それでも海に出なければならない。戦力に乏しい人類側なのだから、出撃を命じられたら従事するしかない。
弱いわたしは後方支援隊に組み込まれた。提督の采配には感謝している。一緒に戦いたいという潜在的な願いと、戦ってはならないという現実的な畏れを同時に叶えてくれて、それに、
人見知りなわたしの周囲を姉妹達と瑞鳳達で固めてくれたのだから。尤も、その気遣いに応えられたとは思えないけれど。
そんなわたしだったから、艦娘としての夕立に憧れたのは必然だったのかもしれない。
憧れた。
己と同じく駆逐艦の身でありながら、単騎でありながら敵艦隊と互角以上に渡り合う、自由奔放勝手気ままなその姿に憧れた。横須賀の夕立、金髪黒衣の【狂犬】。
その様は天啓に等しかった。あんな風に自由でいれば、しがらみを全て振りほどけるのではないか。みんなと同じ海で、みんなに頼らず敵を圧倒できれば、もう誰も巻き込まなくなるんじゃないか。
なにも為し得ないまま死に損なった者の責任として義務として、強くあれるのではないか。
そう願って、夕立を師匠と呼ぶことにした。
横須賀へ渡る際に、氷の仮面を被って、あえて自らを【不死鳥】と称することにした。
決め台詞のように「不死鳥は伊達じゃない」と唱えれば、自己嫌悪で心がすり減った。そう、心を殺すのだ。文字通り心を殺して、入れ替えるのだ。新天地で、最後まで戦い抜いた栄光の不沈艦・響を演じるために。
そうすると不思議と、呪いのような不死鳥も死神も出てこなくなった。何故かと考えて、心を殺したからだと結論付けた。
そして【私】は強くなった。あの時雨と雪風を、後続の高性能駆逐艦娘を差し置いて、最強と謳われる夕立に匹敵するぐらい強くなって、不沈艦の名に恥じない数々の戦果を挙げた。
嬉しかった。私が【私】であれば【わたし】が畏れた全てを超えられるのだ。
けど本質は変わらなかった。
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2019/04/22(月) 19:18:20.04ID:3fhSH5Hu0
クールで飄々とした態度を気取っていても、心の底にこびりついた畏れと怯えは消えず、いつまでも弱い【わたし】はちょっとしたパニックで顔を出して前後不覚になって、死神を呼び寄せてしまう。
だからか、自傷のような、浅はかな接近戦嗜好は私に一種の存在意義を与えてくれた。無意識の内に、接近戦に拘ることで何かが赦されると思っていた。誰かを守るなら一番確実な手段だからと、自分の事を勘定に入れず。


これでいい。私はこれでいい。


でも。
なんでだろう。
キラ・ヒビキという男に逢って、何故か、どこかの歯車がズレた。一緒といるとなんでか少し安心してしまうようになった。思えばあの時から【私】という仮面は砕けつつあったのかもしれない。
そしたらいつの間にかキラと、いつしか疎遠になっていた瑞鳳と行動を共にするようになっていた。
ナスカ争奪戦でなにかが芽生えようとしていると感じて、もっと前に進めると思って、瑞鳳ともちゃんと仲直りできて、もうこれからは絶対大丈夫だと根拠なく信じられた。
そして、それからの日々がとてもとても、酷く楽しかったから。
仮面が外れかかっていることに、気づけなかった。無自覚にわたしが表に出ていた。
不死鳥が、死神が来た。
瑞鳳が、夕立が、キラがいなくなった。
つまりそういうことだ。またわたしだけ一人で助かった。
本質は変わらない。
そうだ。
そうだったのだ。
何も変わっていない。全てが幻、勘違い、無駄だったのだ。前提からして間違っていたのだ。心がどうこうなんて、そう思い込みたかっただけなのだ。
響という存在そのものがこの世界の害悪だったのだ。いてはいけないものだったのだ。
そういう運命なら。みんなの事を真に想うなら、生まれてこなきゃよかったと思うなら。
消えるしかない。完全に消滅するしかない。今すぐに。死にたくないとかいう、甘ったれたわたしの意思なんてゴミ屑同然なのだから――


(――違う!!!!)


――・・・・・・?
・・・・・・、・・・・・・誰・・・・・・?

(そんなの絶対に間違ってるもん!! 響がそんなの、違うんだからぁ!!)

誰かの声。
内側から響く誰かの声が、懐かしくて涙が出そうになる声が、突然、わたしを否定してきた。
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2019/04/22(月) 19:20:10.83ID:3fhSH5Hu0
なんなんだ、一体? ・・・・・・否定してくれるのは嬉しいけど、嬉しいと思うわたし自身が世界の癌なんだ。放っておいてくれないか。

(嫌!!)

いやって・・・・・・
そりゃわたしだって嫌だよ。でも仕方ないじゃないか。死神はこの世界にいちゃいけないんだ。

(響が死神だなんて、誰が決めたの!?)

・・・・・・それは。

(あーもう、もしかしたらって思ってたら本当にこの子は・・・・・・、・・・・・・こうしてても埒があかないわね。変に頑固なのは知ってるから強行手段でいくわよ)

なにを、と思った時には、わたしの意識がふわりと浮かび上がるのを感じた。
本当に一体なんなんだ。ヒトがせっかく死ぬ為の準備をしていたのに、最後に覚悟を決めようとしていたのに、いきなり割り込んで台無しにして。なんなんだ、これ以上わたしに生きろと言うのか。
やめてくれ。もうたくさんなんだ。
ねぇそこの誰か、もしわたしのことを想うなら私の代わりに暁達に、祥鳳達にごめんと伝えてくれないか。それだけが心残りなんだ。そうしてくれれば満足だから。

(ううん、大丈夫よ響。貴女は大丈夫なの。・・・・・・だから瞳を開けて? 私達はそんな貴女が好きで、受け止めたいって思ってるんだから。たとえ死神だって、私達は貴女を、響を救う為にここにいるんだから)

――だから、生きて。
その言葉を最後に、誰かの声は聞こえなくなった。同時に、光がわたしを包んだ。
暖かい光。
あっけなく、わたしが頑張って固めようとしていた覚悟を粉砕した光。抵抗しようとしても、できない光。どこか懐かしい、躰をぎゅっと抱きしめてくれるような光。勝手だ、そんなの望んでないのに。
導かれるようにして、わたしは、二度と目覚めまいと思っていたセカイに目覚めた。
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2019/04/22(月) 19:21:30.76ID:3fhSH5Hu0
《第18話:シュレデンガーの翼たち》



「・・・・・・生き、てる・・・・・・」

まどろみから醒め、重く閉ざされていた瞳をこじ開けて、第一声。しわがれた声が、知らない空間に虚しく消えた。
視界が霞む。耳鳴りが酷い。身体が重くて熱っぽい。しかし残念ながら思考はクリアという、なんとも最低最悪のコンディション。
生きている証。
夢の中で己の絶対的な消滅を願って、お節介な誰かに邪魔されて、目覚めて。わたしは生きていると、響は絶望と共に認識した。

「なんで・・・・・・?」

戦士としての本能が、少女に状況の把握を迫る。なにがどうしてこうなったと、理路整然とした理屈を構築しなければならないと迫る。生きているから、生きろと言われたから、生きる為の努力をしなくてはならないと。
生きるということは死者の上に立っているということで、死者を想うのなら、よほどの覚悟が無い限りは生き続けなければならないのだ。その覚悟を壊されたわたしの運命は、まだ続いていく。
これもまた運命か。
仕方なく、響は今感じているモノの分析を始めた。
感覚。仰向けに寝ている。身体は満足に動かせず、首を動かそうとするだけで痛みが走る。
視覚。薄暗い部屋。見たことのない白い天井に、裸電球がぶら下がっている。なんとなくテレビで見た一般住宅のソレに似ている。
触覚。柔らかい布の感覚。よくわからないけど多分、布団の上。
聴覚。耳鳴り、心臓の音、呼吸の音。
味覚。鉄の味。
嗅覚。埃の匂い。
総合して、ここはどこかの民家なのではないかと推測する。
何故?
ウィンダムと戦って、瑞鳳がやられて、わけがわからなくなって海に飛び込んで、瑞鳳の後を追ったのまでは覚えている。
そうしなきゃならないという使命感と、これで自分も逝けるという仄暗い安堵感で、彼女の遺体を抱いた。わたしは死んじゃったはずだと内心首を捻る少女。
いくら不死鳥といっても、あそこから蘇るどころか陸で目覚めるなんて。それこそワープかなにかじゃなきゃ説明がつかない。艤装単体ならともかく、わたしにそんな機能はない。
それに。

(左腕が・・・・・・脚も。修理、されてるの?)
0327ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:23:20.20ID:3fhSH5Hu0
幻肢痛の類いでなければどうも、先の戦闘で欠損したはずの四肢がちゃんとあるように感じられる。艦娘といえど艤装を直さないと復活しないはずで、自然治癒はありえないのに。これもまた不可解だ。
今の己を取り巻く環境は謎でしかない。
ただ、それでも一つ明確に解ることがあった。結局また死に損なった。一人だけ生き残って、かつて鎮守府で目覚めたキラとまるで同じような恰好で、一人で目覚めたのだ。あの時の彼の気分がよくわかった。
こんなことなら、なんであの声はわたしの邪魔をしたのだと思う。こんな世界に生きていたって仕方がないのに、余計なことを。
そもそも、

「あの声、なんだったの・・・・・・」
(あ、起きた? おはよう響)
「・・・・・・、・・・・・・んん?」

幻聴。
鼓膜に何の刺激もないのに、何かが聞こえるように感じること。
おかしい、今確かになんか馴れ馴れしい感じでなんか聞こえた。具体的には、さっきの夢で聞こえたお節介さんの声が、己の内側から聞こえてきた。・・・・・・ここは地獄のような現実世界なのではないのか?
幻聴は疲れてる時に聞こえることもあるとかなんとか。
疲れてるのかな・・・・・・いや、うん、わたしは疲れている。あんな戦いで疲れないほど超人じゃない、身も心もへとへとだ。生き残ってしまったのなら仕方ない、よし寝よう。

(ちょ、ちょー!? 待って待って寝るの待って!? っていうかさっきまで悲壮感バリバリだったのに図太すぎない!!??)
「わたし、仲間を喪うの慣れてるもん・・・・・・、・・・・・・こういう切り替えの早さも不死鳥の秘訣。私には休息が必要だからдо свиданияだ幻聴さん」
(わー!? さっそく心を殺そうとしないの!! 目を開けてー!?)

なんて騒がしい幻聴だろう。さっきまで悲壮感バリバリだった? あの声と光で悲壮感をまるっと潰してくれた張本人がなにを言う。おかげで沈んでいた気持ちが何処かへ飛んでいってしまった。
だんだんムカっ腹が立ってきた響である。
そうだ。そもそもこの幻聴は一体なんなんだ。
遅まきに気付いたが、この、懐かしくて涙が出そうになる声で、わたしの大切な人の声で。趣味が悪い、吐き気がする。

「・・・・・・わかったよ。でも幻聴ならせめて、瑞鳳姉さんの声だけはやめてよ」
(だって私、瑞鳳だもん! 私は私の声しか出せないわよぅ!)
「・・・・・・は?」
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2019/04/22(月) 19:25:26.05ID:3fhSH5Hu0
こいつ、なんて言った?

(はいなんだコイツとか思わない! いい響、まずは何も考えないで右を見る! 首が痛くてもここが我慢のしどころファイトー!!)

あまりの衝撃発言に頭が真っ白になった少女はハイテンションな幻聴(?)に逆らえなくて、うっかり言われるまま顔を右に向けてしまう。首筋が痛んだが、気にならなかった。
そこには。


鼻先が触れる距離に、キラの穏やかな寝顔。


えっ・・・・・・と思考が硬直する、その直前。

(はい次、左!!)

新たな指示。
ギギギ、と出来の悪いブリキ人形のように180度反転。


吐息がかかる距離に、夕立のまぬけな寝顔。


いなくなったはずの、大切な人達が、響を両側から抱きしめて眠っている。
クラリと目眩がして、バキンという音がして、意識は一旦そこで途切れた。



0329ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:28:20.51ID:3fhSH5Hu0
「――ッハ!?」
「あ・・・・・・良かった、目が覚めたんだね。Доброе утро、響」
「起きたっぽい? ・・・・・・もう瑞鳳さん強引過ぎっ。すごくショックだろうからゆっくり説明しなきゃってキラさん言ったっぽい」
<うぅ、だってぇ。ああでもしなきゃまた響ネガティブになっちゃいそうだったし・・・・・・>

起きたら全てが夢でした、と言わんばかりの光景がそこにあった。
見慣れない民家の天井をバックに、心配そうに覗き込んでくるキラと夕立の姿。何処かからノイズ混じりのスピーカーで聞こえてくるような瑞鳳の声。少女がとうに諦めていたものが、
あまりに呆気なく軽々しく、そこにあった。
同時にその光景は、今までが夢でないことも物語っていたが。
夕立の上半身は包帯でグルグル巻き、右頬に大きな裂傷が痛々しく残っていて、あの【姫】との戦いが現実のものだったと主張している。
キラには外傷こそなさそうだが、紫晶色の瞳の下に色濃い隈があって、酷くやつれているように見えた。

「・・・・・・、・・・・・・っ」

でも間違いなく生きている。
海に消えたとばかり思っていた人達が、生きている。
理屈も理由もどうでもいい。嬉しくてじんわりと涙が溢れてきて、ぽろりと流れて、止めどなく枕を濡らして。やっと見えた二人の姿が滲んでしまって、哀しくなって、涙が止まらない。

「どう響。僕達のこと、見えてる? 覚えてる?」
「・・・・・・う、うん。見えてる、と思う・・・・・・、・・・・・・わたしっ・・・・・・みんな、死んじゃった、って・・・・・・」
「大丈夫だよ。君も、ちゃんと生きてるって。幽霊とかじゃないんだよ」
「天国に行くにはまだ早いっぽい。すぐ元気になってアイツにリベンジかましましょ」

見ていて安心感を覚える優しい微笑みと、戦友としての激励の言葉。弱々しく呟く響の右手をキラが、左手を夕立が握ってくれた。

<こーら急かさないの夕立。まずいろいろ教えてあげなきゃ>
「躊躇いなく患者を気絶させたヒトが言うこととは思えないっぽい」
<うぐぅ>
「まぁまぁ。実際のとこ響のバイタル落ち着いてるし、有効だったと思うよ僕は」

そして、スピーカーから聞こえてくるような声。間違いなく瑞鳳の声だ。彼女もここにいる。
・・・・・・いや、でも、さっきは幻聴のように、自身の内側から響いてこなかったか? 夢に介入してきたような気がするが?
どういうことだろう、彼女はどこにいるのだろうと響は視線を彷徨わせる。身体は依然として重くて熱くて痛くて、起き上がれそうになかった。
会いたい。
瑞鳳はどうして声しか聞かせてくれないのだろうと、悲しくなってまた涙がこみ上げてきた。
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2019/04/22(月) 19:30:32.91ID:3fhSH5Hu0
(ごめんね響。本当は私も抱きしめてあげたいのに・・・・・・ちゃんと全部、説明してあげるからね)
「・・・・・・瑞鳳、姉さん?」
<・・・・・・よし。じゃあキラさんお願いします>

内側から外側から、交互から響いてくる声に目を白黒させていよいよ混乱の極みに達する寸前に、少女の涙を拭う青年。

「キラ。瑞鳳姉さんは・・・・・・?」
「落ち着いて聞いて、大丈夫だから。・・・・・・えっとね、もう感づいてるかもだけど・・・・・・君の中にいるんだよ」
「?」
「響と瑞鳳。君達二人を助けるには、これしか・・・・・・艤装をニコイチしたんだ。二人で一つの命って感じで・・・・・・夕立ちゃん」
「実際に見てみるのが一番いいっぽい」

手鏡。
この民家にあったものだろうか、薄汚れひび割れたソレが突き出される。
憔悴しきった、見たことのない顔が鏡の中にいた。


髪型と顔つきは響のもの。けれども髪は亜麻色で、瞳は金糸雀色と、それは見慣れた瑞鳳のものだった。


二人を雑に足して割ったような塩梅の少女が、わたしを見つめていると響は思って、それが自分なのだと気付くまでに数秒の時間を要した。
――これがわたし?
キラは艤装をニコイチしたと言った。艦娘の魂であり心臓たる艤装を掛け合わせ、二人で一つの命にしたと。この容姿と瑞鳳の声こそが証明で、彼女は響の中にいるという。
艦娘ニコイチ修理論というものを聞いたことがある。戦争初期に論争があって結局実験することなく流れたと明石が言っていたが、まさかコレが、そうなのだろうか。
ともあれ今の響の中には、もう一つの魂が存在していることは確かのようで、すんなり納得できた。思いがけない同居人としばらく主観と肉体を共有していくことになる。なんだかこそばゆい心地だった。

(えと、突然だけど、ふつつか者ですがよろしくお願いします、響)
(ふつつか者なんて。こっちこそ狭い思いさせてごめんね)
(こう言っちゃアレだけど意外と快適なのよ? ・・・・・・、・・・・・・あー、それとね? 最初に一つ、謝らなきゃいけないことがあるんだけど・・・・・・)
(わたしの過去とか気持ちとかが筒抜けだってことなら、いいよ。むしろ知ってくれて嬉しいぐらい)
(そ、そう? ・・・・・・でも、そうね。さっきは夢に割り込んじゃったケド、なるべく干渉しないようにするね)
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2019/04/22(月) 19:31:51.55ID:3fhSH5Hu0
まるでテレパシーのような脳内会話も、ヒミツの内緒話のようで愉快だ。
するとキラが二階堂提督お古の携帯端末を、響の枕元に置きながら言う。

「君達を回収できた時にはもう融合しかかってて、そのまま応急処置で・・・・・・僕にはこうするのが限界だった。でもちゃんと修理すれば、明石さんなら分離できる、と思う。たぶん」
「ホント、こんなことになっちゃうなんて思わなかったっぽい。事実は小説・・・・・・なんだっけ?」
<事実は小説よりも奇なり、ね・・・・・・とにかく、私達はみんなで生き残れたのよ。改めてありがとうキラさんっ、私達を助けてくれて>

夕立がとぼけて、携帯端末から瑞鳳の声。なるほどと合点がいった。どうやら彼女の意志は、響にしか聞こえない内なる声と、外部出力用の携帯とで使い分けられるらしい。
スピーカーが若干音割れしているのはガラパゴスと揶揄されている旧式携帯端末のスペック不足が所以だろうか。
それにしても。これまでの話を総合すると、自分達を取り巻く状況は思っていた以上に少女の常識の遙か上をいくものであるようで。
どうしよう、と響は思った。


カタチはどうあれ皆で生き残ったという実感がだんだんと湧いてきて、どうすれば、この恩を返せるのだろうと思った。


不死鳥も死神もやってこなかった。一人で早合点して絶望してバカみたいだけど、それもこれもこの素晴らしい仲間達のおかげで、こんなに嬉しいことってない。
その上こんな自分なんかを肯定して、救ってくれようとしている人がいる。変な話だけれど、もう死んだっていいぐらい心が満たされる。勿体ないぐらいだ。

(あらら、すっかり泣きむし響に戻っちゃったわね)
(だって・・・・・・)
(うん、たくさん泣いて。私達はそんな貴女が好きで、受け止めたいって思ってるんだから、ね?)

もう絶対に手放したくない、喪いたくない。
その想いを世界に表明するかように、産声のように、響は声を上げて泣いた。



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2019/04/22(月) 19:35:06.51ID:3fhSH5Hu0
福江島南西部にあった、廃れに廃れた無人の町。都会を除き、世界中の海沿いの町がこのように荒れ果てているといい、元より田舎だったここら一帯も例外なくボロボロのゴーストタウンと化している。
その一角に佇む家屋に、キラは傷ついた響達を連れて逃げ込んだ。エネルギー枯渇寸前のデュエルでは基地に戻れず、
みんなで生き延びるにはこの高台の家――高波などの影響が少なく割と綺麗なまま残っていて、結構レアでラッキーっぽいと夕立が言った――に勝手に隠れるほか選択肢がなかった。
そしてあの戦いから、あの敗走から丸一日以上が経って、目覚めた響にここに至るまでの経緯を説明してから一時間が経った今、11月15日の14時03分。
改めて振り返ってみると本当によくここに辿り着けたものだと、踊る炎をぼうっと見つめながら思うキラである。

「・・・・・・」

かつてアラスカを目指して旅をしていた頃、オーブを発ってアスラン達と本気の殺し合いをした頃と似ているなと感じる。
全てが全て、予定調和のように良くない方向へ連鎖していくあの感じ。最善を尽くしても絶対に最善に届かない、あの嫌な感じ。破滅の予兆。
こうなることが運命に決められていた戦いだったというのは流石に過言だろうか。脳裏にある男の呪詛と、昨夜の夕立の言葉が蘇る。

『逃れられないもの、それが自分・・・・・・そして取り戻せないもの、それが過去だ!!』
『あたし達艦娘の過去というか、因子? 運命? そういうのって割と再現されちゃうのかもって提督さん言ってた。夕立はいつも意図的に顕わして戦ってるケド・・・・・・今回は四人分のそれが悪い方に絡まったっぽい?』

此度の敗走、敗北に繋がった因子。
かつて囮として散った瑞鳳と、混乱の中へ消えた夕立。悪運の末に生き残ってしまう響とキラ。それらの因子が運命という螺旋になって、この結果を呼び寄せたのかもしれない。
デュエルとグーン、夕立と【軽巡棲姫】の戦いは正に、連鎖して破滅していくシナリオの一部だったのかもしれない。
あの時。
一時は負けるかもしれないとすら思ったグーンからの攻撃を、咄嗟にOSを書き換え実現した、スラスターと人類の泳法を組み合わせたマニューバで掻い潜って九死に一生を得て。
それは夕立が【姫】相手に大博打を仕掛けたタイミングで、6本の魚雷の爆発は丁度海面近くまで浮上していたグーンの体勢をも崩したのだ。最初で最後のチャンスを見逃さなかったキラはすかさず懐に飛び込み、
レールガン・シヴァをコクピットに突きつけて接射、撃破に成功する。
しかし今度はグーンの爆発のせいで、王手をかけていた夕立の体勢が崩れて【姫】と相打ちになってしまった。
被弾して海中に引きずり込まれた夕立はそれでも【姫】を羽交い締めで道連れにしようとし、そこをキラが慌てて救出した。
そして間もなく瑞鳳がやられて、響が潜って。【姫】へのトドメを断念し、融合しながら沈みゆく二人を確保して、我武者羅に戦闘海域から離脱したのだ。
不幸中の幸いだったのは、三人の少女達の総質量がデュエルでも運べる程度のものであったことだ。質量制御でギリギリまで艦艇としての重量を抑え、かつ損傷していたからこそ、
辛くも奇跡的にこの廃墟まで逃げることができた。逃げて、一夜かけて響達の修理に没頭できた。
確かに言われてみれば運命という単語がピッタリ当て嵌まるような気がした。
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2019/04/22(月) 19:37:45.05ID:3fhSH5Hu0
ならば響と瑞鳳の今も、運命なのだろうか?


無我夢中でどうやったか覚えてないしもう一回やれと言われても無理としか返せないが、なんとか少女二人を無理矢理つなぎ止めた。
容姿はかなり混じってしまったものの、二人の意識総体が変質しなかったのは奇跡としか言い様がなく、明石に艤装修理の方法を教えてもらっていて、それを実践できるポテンシャルがあって本当によかったと心底思った。
なにせ自身の存在が変質していなければニコイチ修理なんて不可能だったし、よしんば形だけ修理できたとしても二人の意識は目覚めなかっただろうから。
果たしてこれは必死に掴み取ったものなのか、予定調和なのか。沈む運命に逆らい命を救ったのか、生き延びる運命のまま響の心を折らせてしまったのか、どちらなのだろう。
でも、どちらにせよ。
彼女達をこんな辛い目に遭わせてしまった現実だけがここにあるのに、現実逃避に他ならない己の思考にキラは自己嫌悪する。
どんな理由があったとしても、なにをどう言い訳しても、護れなかったのだ。

(誰かのせいにしたいってのか。本当、スペックだけは無駄にあるくせに人を護れない奴だな、僕は)

響の雰囲気というか性格に、変化が見られた。
瑞鳳曰くこれが元々の素だそうで、つまりは気持ちを制限していた仮面とやらが外れた状態なのだろう。それだけ心身共に受けたダメージが大きく、折れて、瓦解してしまったということだ。
瑞鳳を姉さんと呼んでいたのは昔の名残か、心の防衛反応か。
無防備に露出した彼女の有り様は、痛ましかった。いっそ泣いてる顔も綺麗だと見蕩れてしまうぐらい、悲惨そのものだった。
出逢った時から既に仮面をつけていて、それでも尚感じられた彼女の脆さと罪悪感が剥きだしになっている。瑞鳳が望んだ優しいカタチとはまったく逆の、酷く乱暴なカタチでだ。
なんでも自分のせいだって思ってるような彼女の心は、危ういを通り越し、今や自壊寸前の薄氷である。


それこそが、己が守りたいと、救いたいと、支えたいと思った少女の現実だ。


こんな酷い現実ってない。本来ならこんなことにならないようにするのが、自分の役目だったのに。
一言で言えば、最低の男なのだろう。グーンなんかに苦戦して護れず、未熟な腕で事後処理だけをして胸を撫下ろしているこの自分は。
己が想像するよりもずっと辛いだろうに、あえて明るく振舞ってくれている瑞鳳と夕立の強さに甘えている、この自分は。
つくづく痛感する。
フレイ・アルスターに正統に詰られた頃から全然変わっていないと。己という存在は誰かの心を救うのに向いていないと。こんな体たらくでよく人様を守るだの救うだの支えるだの言えたものだ。
何度同じような過ちを繰り返すつもりだ。
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2019/04/22(月) 19:40:26.51ID:3fhSH5Hu0
彼女を守ろうと思ったのは本心。救おうと思ったのは本心。支えようと思ったのも、紛れもなく本心。恩義として望みとしてそれを成そうと決めて、彼女達と共に在ることを決めた。その為の努力を惜しまなかった。
しかしこの世は結果こそが全て。
瑞鳳は助けてくれてありがとうと言ってくれた。でも自分には少女達に感謝される権利なんて一欠片もないのだ。
傷ついた少女達の支えになりたいと未だ薄っぺらい微笑みを貼りつけているだけの薄っぺらい男に、何も知らない彼女の感謝は重たすぎる。
不甲斐ない。
運命がどうこう因子がどうこうなんてのは所詮言葉遊びで、つまるところ、この現実にキラは打ちのめされていた。
打ちのめされ、理由をとってつけて廃墟の庭へと逃げて、ぼんやり焚火を眺めている自分の姿に、失望する。

(・・・・・・わかってるよそれぐらい・・・・・・今更自嘲したって自己満足にしかならないってのもわかってる。でも、それでも、まだ生きている僕はこれから何ができるのかを考えて、前へ進まなくちゃいけないんだ・・・・・・)

この持ち前の傲慢さだけが頼りだった。
良心の呵責を、理想論を、押し殺す。そんなものにいちいち囚われていたら生き残れないと、生きなくてはならないと問題を先送りにする。
兎にも角にも、ここからみんなと一緒に生還しなくては。
一刻も早く彼女達を治療して元に戻してあげたいし、なにより休息と安心を与えてあげたい。それを最低限として、もっと彼女達にしてあげたいことが沢山ある。
それに佐世保の仲間達にも心配をかけているはずなのだ。おそらく自分達四人はMIAと、死んだと見なされているだろうから、どうにか健在であることを伝えなければ。
あの気の良い仲間達は響達が死んでしまったと深く悲しんでいるに違いない。
基地に帰れれば、きっと大丈夫。
そういえばキラとしては他人に死んだと思われるのはこれで三度目、もしかしたら四度目になるが・・・・・・こんな変な経験ばかり豊富でなんになるのだろうと虚しくなった。
なんて徒然考えていると、いつの間にか雨音が随分と大きくなっていることに気付いた。轟々と降りしきる大粒の雫が、屋根代わりにしたデュエルのシールドを容赦なく打ち据えている。

「っと、ホントもう。なんでこんなタイミングで嵐かなぁ」

天を仰いで、泣きたいのはこっちだよと愚痴りたい。
追い打ちのように昨夜から降り出した雨は弱まることを知らず、これでもかとキラ達を孤立させる。身動きを封じて、しばらくここでの生活を強要してくる。
本当になんてタイミングの悪い。神様なんか信じていないけど、完全に見捨てられたかのよう。
つまり。


精神的にも肉体的にも物資的にも問題を抱えたままのサバイバルが、キラ達四人にして三人を待ち受けていた。
0336ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:43:13.67ID:3fhSH5Hu0
帰れない。
頼みの綱だったデュエルの稼働時間はあと5分ぐらいしか残されておらず、そしてその5分では基地に帰れない事実が、既に判明している。
昨日のうちに夕立が町名を調べてくれて、所持していた地図と照らし合わせた結果だ。ここから基地まではどうやっても届かないぐらいの距離があるので、デュエルはこの町に一時放置することにした。
しかし代用にできそうな車両等は見つからず、自力で基地へ帰ろうとすれば響と夕立を背負って歩くという非現実的な選択肢しかなく。嵐の最中にそれはあまりにもリスクが高く、下手すれば遭難してしまうかもしれない。
かといっておおっぴらに救難信号なんか出したら深海棲艦に見つかりそうで、嵐が去った直後に砲撃されかねない。
現実的に考えると基地に放置されているであろうストライク宛てにレーザー通信を送るしかなく、定期的に試みているとはいえ誰かに気付いてもらえるかは運だ。ついさっきもやってみたが応答はなかった。
お膳立てされたかのように、この廃墟に閉じこもるしか道がないのである。
幸い手元にデュエルに積んでいたサバイバルキットがあるので、約二日ぐらいなら食糧に困ることはないが、
逆に言えばたった二日分だけだ。いざとなったら周辺の廃墟に押入ってでも食物を探すつもりだが、言うまでも無く望み薄だろう。
問題と不安しかない。

「けど、だからって食べないわけには・・・・・・嵐がさっさといなくなるのを祈るしかない、のかな」

ここでピピピッというアラーム音。
視線を下げれば目前の小さな鍋から湯気がもうもう上がっていて、お粥なるレトルト食糧が食べ時であることを告げていた。もうそんな時間だったかとタイマーを止める。
人間は常にお腹が減るもので、どんな危機的状況であってもそれは変わらない。腹が減っては戦は出来ぬ。軍隊は胃袋で動く。世界は美味いご飯で廻っている。
個人も組織も状況も古今東西も問わず、気力体力共に充実してなければ良い仕事なぞ到底不可能。
とってつけた理由であったが、臨時主計課だけど動けなくなった響と瑞鳳に代わって唯一キラにしかできない、かつ絶対必要な役割を熟すべく煮えたぎったお湯からパウチを取り出す。

「ぅアッつ!? ・・・・・・そ、そうか。この時代のはまだ・・・・・・コストの問題なのかな」

C.E.のレトルトパウチは取っ手が断熱仕様だったのになんてどうでもいいことを愚痴りながら、おっかなびっくり中身をマグカップへ。
ついでビスケットタイプの固形食糧入りパック、ミネラルウォーター入りボトル三本と一緒にお盆に載せて、ちっとも美味しくなさそうな食事ができた。
はやくも瑞鳳達が作ってくれた美味しい食事が恋しくなったが、それらは破壊された艤装と共に海の藻屑である。
こんなんで気力体力が充実するわけないが、しかし、無いよりマシだ。14日の朝食以来の食べ物に、今更思い出したように腹の虫がぐぅと鳴いた。
そうだ。
ものは考えようで、展望はないけど、たった二日分で美味しくなさそうだけど食糧はある、命運が尽きたわけじゃない。自分達が置かれた状況は所詮一時的なもので、嵐さえ去ってしまえば、基地との連絡手段だってきっと色々見つかる。なんなら本当に歩いて帰ってもいい。
0337通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 12ad-PDN5)
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2019/04/22(月) 19:43:57.11ID:3fhSH5Hu0
回避
0338ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:44:41.84ID:3fhSH5Hu0
絶望には程遠い。それにシンもアスランもカガリも遭難経験があるんだからきっと大丈夫! と空元気で心の内にある濁りを隠すキラだった。
あの少女らが一緒にいるのに弱音なんてありえない、唯一怪我をしてない己が不安でいてどうする。
焚火を始末してから右手にお盆、左手にタオルを投入した鍋を掴み、響達のいる部屋へと戻ろうと立ち上がる。

(・・・・・・それに、希望的観測だってあるにはあるんだ。夕立ちゃんが言ったことを本気で考察するなら、この状況はまだ、どっちつかずなはずだから)

そうあって欲しい、そうだったら良いなと思えるだけの根拠ならあると、土足のまま廃墟に上がり込みながら考える。昨夜の夕立との会話は実に興味深かった。
何事も、ものは考えよう。サバイバルを強いられている今こそが、希望的観測の根拠になる。無理矢理にでも希望を見出すことが、可能なのだ。
話がまた随分と戻るが。
正直なところ自分でも意味不明と思ってしまう話だが。いっそ無意味な言葉遊びのようなものかもしれないが。

(我ながら突飛すぎる発想だけど・・・・・・もしも本当に運命ってやつがあるのなら、僕達の因子がこの状況を呼び寄せたのなら。
・・・・・・つまり新しい因子が、運命が生まれてるかもしれないこの状況なら、未来は誰にもわからないってこと、だよね)

その身の由来、過去、因子、運命といったものを再現してしまうかもしれない、艦娘の性質。
其の性質は、生還する為の希望へと転じることもあるのではないか。
無理矢理見出した希望は、瑞鳳の意志総体を取り込んだ響そのもの。
ニコイチ修理して、二人の魂を崩さぬよう、そういう存在としてこの世につなぎ止めた少女は。別の見方をすれば、窺知のものに当て嵌まらない新しい存在であると言える。
便宜上、航空駆逐艦・響鳳(きょうほう)とでも名付けようか。
瑞鳳を内に宿した響という一人の少女であり、響鳳という一人の少女であり。
シュレデンガーの猫のように、数多の可能性が同時に重なりあった非確定的量子存在。量子力学的に、そういう風に観測して確定させることが、できる。なにせそう仕上げたのはキラ本人だから。


例えば。響鳳という未知の因子が生まれたから、自分達が無事にこの廃墟に辿り着けたと考えることはできないだろうか?


海中で既に融合しかかっていた彼女(因子)だから、これからの運命(因果)すら超えて生還できると考えることは?
発想を180度逆転させた、結果ありきで身勝手で他人任せの馬鹿らしい、響達の心を一切合切無視する残酷な、しかしこの上なくバカらしいポジティブな仮定である。
そう、このクオリアを以て可能性を収束させれば、彼女こそがこの八方塞がりを打開する光になるかもしれないのなら、そんな突飛な仮定だって信じられる。
いっそ開き直って、傲慢の極地たる人間原理のように信じたいものを信じればいいのだ。
0339ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:47:13.51ID:3fhSH5Hu0
この以上なく不誠実なダブルスタンダード。でも他に展望がないのだから。

「・・・・・・なんてね。こんな妄想、僕のキャラじゃないでしょ」

肩を竦めて苦笑を一つ。
こういう気分の人が怪しい宗教とかにコロッと騙されちゃうのかもしれない。
いつだったか「未来を創るのは運命じゃない」と語った口で、ありもしない運命に綴って。とんでもない仮定をでっちあげてちょっとポジティブな可能性を幻視して。思ってたより参ってるんだなと自己分析。
一蹴。ちょっと小難しいコト考えて現実逃避したかっただけだ。
しかし益体ない妄想も気分転換にはなったようで、なんだかスッキリした気分なものだから反省会は終いにしようと踏ん切りがついた。
どん底まで落ちたのなら、あとはひたすら這い上がるのみ。どうしようのない日々ならせめて、いつか笑い話に変えられるように。
よし! と小さく呟いて気合い充填、改めて全力で少女達の助けになることを心に誓う。さっき確認した通り、自分達が置かれた状況は所詮一時的なものなのだから、なんとでもなれるのだ。
さしあたっては、まず響と夕立に食事を。瑞鳳には・・・・・・どうしよう? 自慢の爆笑ネタでも披露しようか。
キラはいつもの笑みを浮かべて、ようやっと少女らの待つ寝室へと戻る。

「お待たせ、とりあえずだけどご飯できたよ。食べれそう?」
<え、っあ!? キラさん今入っちゃダメぇ!?>
「へ?」

そうして出迎えてくれたものは、素っ頓狂な瑞鳳の悲鳴と、素っ裸な夕立の姿だった。
0340ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 12ad-ZG7F)
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2019/04/22(月) 19:52:21.78ID:3fhSH5Hu0
以上です。
キラ達を徹底的に隔離するまでこんなに掛かってしまったのはかなりの誤算でした。

>>319
そのまさかでした。いっそ深海堕ちさせようかとも悩みましたが、こんな感じになりました。
0341通常の名無しさんの3倍 (アウアウクー MM39-/PfY)
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2019/04/23(火) 03:50:01.67ID:v6YzFfcaM
てす
0343通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 12ad-PDN5)
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2019/04/24(水) 00:03:33.42ID:SdR8R+lh0
ガンダム界で死神といえばそのバーバリー中尉と08小隊サンダース軍曹とデュオがパッと出てきますね
他にも沢山いそうですけど、まぁ史実創作問わずしぶとく生き残る人が死神呼ばわりされるのはよくあることですね

そういえば史実に【幸運艦】【奇跡の駆逐艦】【超機敏艦】と呼ばれた陽炎型駆逐艦八番艦の雪風という、
主要の激戦のほとんどに参加して戦果を挙げつつも最後までほぼ無傷で生き残ったリアル異能生存体な艦がいるのですけど、この雪風すらも味方から疫病神呼ばわりされてたことも(成否は別として)ありました
0344ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:11:27.46ID:7hYZcA4L0
半年ぶりに。誰もいないのだとしても投下です


――艦これSEED 響応の星海――


『Bitte entschuldigen mich――っじゃなくて、ごめんくださいっ! マスターさんはいらっしゃいますか!?』
『あ、プリンツちゃんいらっしゃい・・・・・・、どうしたの? さっき出前に行っちゃったとこだけど』
『そんな・・・・・・、・・・・・・あのっ! その、突然ごめんなさい、実は私達マスターさんにお願いしたいことがあって・・・・・・すっごく身勝手なのはわかってます。今度お店の手伝いでもなんでもやりますっ。だから・・・・・・!』
『うん、わかった。とっても大変な、大事なこと、なんだね? 今呼んでみるからちょっと待っててね』
『・・・・・・Besten Dank』



0345ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:13:42.98ID:7hYZcA4L0
なんということでしょう。

「お待たせ、とりあえずだけどご飯できたよ。食べれそう?」
<え、っあ!? キラさん今入っちゃダメぇ!?>
「へ?」

いつもの笑みを浮かべて、ようやっと少女らの待つ寝室へと戻ったキラを出迎えてくれたものは、素っ頓狂な瑞鳳の悲鳴と、素っ裸な夕立だった。
薄暗い部屋の中、傷だらけだけれども尚美しい白い肢体、戸惑いに揺れる紅い瞳が浮かび上がっている。
夕立は全駆逐艦娘の中でも上位に食い込むほどの、スタイルの良い少女だ。推定14歳相当と熟成には程遠いものの、神懸かったバランスでスレンダーとグラマラスを両立しているような、
もう少し背が高ければモデルとして紙面を飾れそうな、つまるところ男受けの良さそうな躰の持ち主なのである。
そんな少女が、局部を一切隠すことなく無防備に、そこにいた。
元々包帯をぐるぐる巻いただけでほぼ裸みたいな恰好だった彼女だが、何故にこんな。
Why? 意味がわからないデース。

「・・・・・・え、ちょ、なん・・・・・・?」

間の抜けた声で大気を震わせ、ついで「ごめん」と言いかけ、しかして男の悲しい性か思わず剥きだしの大きな乳房に目を奪われて。右手にお盆、左手に鍋を持っている男はそこでフリーズ、それ以上のリアクションを起こせず。
彼だって歴とした、同性愛者でなければ童貞でもない20代前半の男なのだ。
不能となり性的欲求が失せて久しいものの元来女体への興味は人並ぐらいにある。またこの世界に来てからは努めて異性というものを意識しないよう、意識させないよう生きていた男が、
油断していたところに突如襲撃してきた艶姿を注目してしまうのも致し方ないことだと思いたい。思わせてほしい。自称非ロリコンだとしてもだ。
そんなキラと目と目がバッチリ合ってしまった夕立も、戦場での機敏俊敏な雄姿から程遠く、時が止まったかのようにピッタリ停止して。
そんな二人を呆然と交互に見やる響と、絶句する瑞鳳。
凍った空気。
あまりに古典的、いやもはや神話的ですらあるハプニングシチュエーション。アツアツなはずのレトルト食糧と鍋から冷気が立ちのぼっているような気さえして、青年はゴクリと喉を鳴らす。
感じたものはほんの少しの昂ぶりと、身を引き裂かんばかりの悪寒。
走馬燈のようにある事件が脳裏を過ぎる。
実は以前、福江基地で生活した頃、鈴谷がキラと衝突してちょっとオトナな下着を晒してしまった事案があったのだ。
あの時でさえ、天に誓ってキラは何も視ていなかったにも関わらず大きな騒動になりかけたというのに、今回は完全無欠な直視、満場一致でアウト以外の判定は有り得ない。
これは非常に、マズいのでは?
0346通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:16:05.14ID:7hYZcA4L0
新地球統合政府直属宇宙軍第一機動部隊隊長、C.E.の英雄【蒼天の翼】キラ・ヒビキ、覗きの容疑で逮捕。


世が世ならそういった見出しのニュースが速報として、面白おかしくあるいは悪意をたっぷり上乗せして全人類に周知されることだろう。
不条理。
理不尽。
いつの世どの世においても、男が女の裸を見ることを起因とする騒動では、男の立場は著しく低くなるものだ。またそれがたとえ誤解、冤罪だとしても一度貼られた悪いイメージを払拭するには大変な苦労を要するもので。
ましてや相手が艦娘ともなれば。
艦娘達はその特殊な出自故に、羞恥心の程は人それぞれなれど、裸を見る見られることの意味をちゃんと教育されている。
そしてキラは異世界からの客人であり強力貴重な戦力であり、かつ艦娘達の信頼を勝ち取って素行にも問題がないと判断されたからこそ、提督同様の制限付きで共同生活を「許されている」立場なのだ。
即座に直接的な沙汰になることはないが、事と次第によっては居場所を失ってしまう可能性も充分ある。
四面楚歌。
裸の夕立とのエンゲージによって始まったこの状況、もしもけんもほろろで取り付く島なく問題視され悪い方向へ転がれば、最悪のエンディングを迎えることも覚悟せねばならなくなるだろう。
そんな危惧が一瞬で駆け巡り、あまりの急展開に頭がパニックになりそうだった。
おかしい、こういうラッキースケベ展開はシン・アスカの専売特許だったはずなのに――

(――・・・・・・、・・・・・・いや裸の子を前にして思い浮かべるのがシンとか嫌すぎるでしょ!?)

しかしどんな幸運か因果か、えらく風評被害な偏見のおかげですっごいテンション下がって若干の冷静さを取り戻せたキラである。
キラ・ヤマトの宿敵兼相棒なだけあって、アンタにラッキースケベなんかさせねーぜとばかりに脳裏に出没してきやがった。
まぁシンは夕立とそっくりな紅い瞳だしわりと子どもっぽいし、おまけに実は戦闘スタイルも結構似通っているものだから、咄嗟に連想するものとして妥当なのだが。
そう、シンの存在そのものが希望だ。現に彼はこれまで数多のラッキースケベに遭遇しながらも生き残っているし、聞けば天津風とのファーストコンタクトもお互い全裸だったらしいじゃないか。
あの男にできて自分にできないはずがない!
よし落ち着くんだ。考えろ、まずどうすればいい。
そうだ! 冷静に、理由を訊こう!


Q.夕立さん。見たところ裸のようなのですが、何故なのでせう。
A.ごはんの匂いがして立ち上がったらなんか解けちゃった。


時が動き出し、暴かれるは不幸な真相。
そっか。不慮の事故だネ、うん、不慮の事故。
0347通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:18:25.98ID:7hYZcA4L0
よくよく見てみれば足下に包帯が落ちている。結びが甘かったのか立ち上がった途端にとのことで、そのタイミングに帰ってきてしまったのだ。あぁ、これは全面的に僕に非があるね?

「ごめんね」

頭を下げて心から謝れば、耳まで真っ赤にして立ちすくんでいた夕立が小さくコクリと頷いて、なんとか事なきを得たと確信する。
よかった、これで解決ですね。
取り付く島はありそうで、これからの交渉次第で和解可能だと内心胸を撫下ろし――

<って、いやいやいや。キラさん!? なんでずっとガン見してるのよぉ!? そこしっかり目を逸らさなきゃダメなとこ!! 夕立もいい加減隠しなさいッ!?>

この瞬間、遂に、これまで沈黙を貫いていた瑞鳳が噴火した。古ぼけた折畳み式携帯端末が飛び跳ねんばかりの怒濤のツッコミ。
なんということでしょう。男キラ、まさかの裸をガン見しっぱなしである。
全然そんな気はなかった。っていうか無自覚だった。なるべく真摯的かつ紳士的たらんと心掛けたつもりが、目を逸らすことさえ忘れていたとか不覚・・・・・・ッ!! いやこれ弁明の余地ないわマジで。
あれ、これホントにヤバくない?
嗚呼。
遠い記憶、いつだったかマリュー・ラミアス艦長に銃殺刑を告げられたことがあったが、それと同じかそれ以上のプレッシャーを彼女からありありと感じられる。結果的に不問にしてくれたとはいえ、
あの時は本気で死を覚悟したものだ。

<ッ!! ・・・・・・キラさんの、すけべぇー!!!!>
「うぐ!!」

そして瑞鳳がいつもよりずっとずっと甲高い声で叫んだ、その正統な糾弾に人生初のジャパニーズ・ドゲザでもって誠心誠意お詫び申し上げるキラ。
敗走後のサバイバル中とはまったく思えない、実に平和的なやりとりだった。



《第19話:おはなしをするおはなし》



『へぇ・・・・・・北上、これが?』
『そうだよ〜夕張、シンの世界で使われてたってゆーモビルスーツと装備一式。霊子金属化したこの子達の研究と修理と複製が、天津風から託された私らの仕事だねぇ。これ、明石センセの報告書』
『キラ・ヒビキによる通常兵器からのコンバート、霊子金属化かぁ。私達が血眼になっても届かなかったモンがこうもポンっと実現されるなんてね。・・・・・・、・・・・・・ねぇ北上、一つ疑問なんだけど』
0348通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:21:34.63ID:7hYZcA4L0
『んー?』
『元はフツーの人間なんでしょ、キラって人? コンバートとか同化とか、ましてや戦闘とか、どうしてそんなことできるのかしら』
『ああ、それねー。みんなスルーしちゃってるけど、なんでだろね?』
『そういうものだからって思考停止してるからよ。元々わかりっこないものを考える必要ないから、当たり前なんだけどさ。それに佐世保には考えてる余裕なんて無いだろうし』
『だね。球磨ねぇ達もよく持ちこたえてくれるけど・・・・・・ま、あのキラって人が本当に謎だらけなのは間違いないね〜。一回挨拶したことあるけど、正直不気味だったし』
『ふぅん?』
『完全な異物の筈なのに、あまりに自然体で馴染み過ぎててさ、本当に異世界からやってきた普通の人間なのかと疑ったわけよ。それにこの世界で偽名使い続けてる意味もわかんないしさー』
『アンタにそこまで言わせるとなると相当ね』
『佐世保のキラ・ヒビキって、本当にC.E.のキラ・ヤマト本人なの? なんて、思わず問い質したくなるぐらいには変な人だったわー。・・・・・・それに』
『それに?』
『コンバートとか同化とかってさぁ、まるで――みたいだよねぇ?』







「・・・・・・なんか複雑な気持ちっていうか、割とショックっぽい・・・・・・」
<げ、元気出して夕立。そう、犬に噛まれたようなものだと思えば良いのよっ>
「瑞鳳姉さん、流石に失礼じゃ・・・・・・それによくよく考えればわたし達ってもう見られちゃってるんだよ、裸。治療したり包帯巻いたりしたのってキラなんだし・・・・・・」
<いやいやいや、そういう問題じゃないでしょ響? 現に夕立は裸見られて傷ついて――>
「すッッッッごい恥ずかしかったのに、キラさん割とノーリアクションってなんか悔しい!!」
<――え、そっちなの?>

濡れタオルで全身を拭い、しっかり包帯を巻き直して、毛布にくるまって。キラが用意したレトルト食糧をモリモリ食べながらの夕立の発言が、この廃墟にまた新たなるカオスを生みだそうとしていた。

「夕立、これでも躰にはケッコー自信あったの。白露型で一番ないすばでぃかもって由良が褒めてくれたし、密かな自慢だったっぽい。でも・・・・・・でも!
由良以外の誰にも見せる気なかったけどっ!! もっとこう、見たからには派手なリアクションとってくれないとって思うっぽいッ!!!!」
「えぇ・・・・・・」

フクザツな乙女心、というやつだろうか。
0350通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:24:24.76ID:7hYZcA4L0
なにやら由良なる人物とただならぬ、懇ろな関係を匂わせる訴えに、黙々と動けない響の口におかゆを運ぶだけの作業を続けていたキラはなんとも微妙な顔になった。これは、それこそどんな反応をすれば良いのだろう? 
どうリアクションしても地雷にしかならない気がする。
っていうか由良って誰だっけと内心首を傾げるキラ。ゆら、その名前は確かに聞き覚えがあるのだが、どうしても双子のきょうだいであるカガリ・ユラ・アスハを連想してしまう。
すると、

「座礁したわたし達を救助してくれた人だよ。防衛戦の最後で、ポニーテールの」
「あ、あぁ・・・・・・あの人。ありがとう響」

助け船は響より。察してくれたのかボソリと小さな声で教えてくれた少女にお礼を伝えると、そんなこともあったなぁと懐かしい気分になった。呉所属の軽巡艦娘だったか。
後に聞いた話だが、半年前までは佐世保の第一艦隊所属で、夕立ととても仲良しだったらしく何かと一緒に行動していたとか。・・・・・・いや、仲良しってレベルじゃないと思うよそれ絶対。
艦娘も恋をする。
話には聞いていた。唯一の対深海棲艦戦力であり国の所有物である彼女らも人間と同じように恋愛するし、軍令部による厳しい審査付きとはいえ交際の自由は保証されていて、
なんなら艦娘同士でカップルになることもそう珍しくないと。たとえば鈴谷は熊野とお付き合いをされているそうで、例の件で鈴谷が激怒したのはやはり熊野への愛が所以なのかもと榛名が言っていた。
だからこそなのだろう。

「師匠的にはガン見ってノーカウントなの?」
「驚いてフリーズしてただけだもん。真顔だったし。ぜったいに別のこと考えてて上の空だっただけだもん!!」
<あの状況でなんでそんな冷静に観察できてるのよぅ・・・・・・。てか派手なリアクションされたらされたでもっと恥ずかしくなったと思うわよ?>
「それはそれ、これはこれっぽい!」

恥ずかしさは別として、その由良に認められた躰をただの裸としてしか認識されなかったというのは、彼女的には我慢ならないことのようだった。羞恥と怒りに加え、己に魅力がないのかもという不安が綯い交ぜになった貌で夕立がプイとそっぽを向く。
藪から棒にまったく意外な一面に面食らうが、つまりこの普段ぽいぽい言ってる天真爛漫でうっかり屋な娘かと思えば、戦場では無敵と謳われ無類の格闘センスを発揮する夕立は、実は恋する乙女でもあったらしい。
本当に、どうリアクションしても地雷にしかならない気がする。が、ここでスルーすると更に厄介なことになる予感に襲われて、一応のフォローをいれるべくキラは覚悟を固めた。

「えっと、大丈夫(?)だよ夕立ちゃん。その・・・・・・すっごく魅力的だと思う。ホントにビックリするぐらい・・・・・・ってか本当にビックリしちゃったから僕は・・・・・・」
<・・・・・・>
「ほんと?」
「う、うん。本当に。誓って。きっとモデルとしても働けると思うよ、うん。いや由良さんって人は見る目あるなぁ」
0351通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:25:57.39ID:7hYZcA4L0
沈黙と目線が痛かったが思ったことを正直に、どもりながらも早口に告白。普段だったら絶対に口にしない歯の浮くような台詞っていうか恋人持ち相手には不適切すぎる口説き文句に顔から火が出る思いになったが、
背に腹は代えられない。
そもそも全面的に悪いのはキラなのだし。えぇいなんて罰ゲームだ。
だがその甲斐あってか、

「よかったぁ」

ふわりと花開くような笑顔を見せてくれたものだから、現金にも言って良かったなどと思ってしまうのであった。
ご立腹な少女の機嫌を良くできたから、予想していた地雷によるダメージが最小限だったから、ではなく。

「・・・・・・大好きなんだね、そのヒトのこと」
「うん。大好き」

紛うことなく、愛だったから。

<あーはいはい、ごちそうさま。ってか単純すぎない?>
「愛の為せる所業っぽい! んふふ、やっぱり夕立がナンバーワン!」
「白露が聞いたら悔しがるんじゃないかな、それって」

コロコロ表情を変える少女がなんだか本当に魅力的に思えてきて、それ以上に羨ましく思えてキラは参ったな頬を掻いた。
こんな風に無邪気で一途な気持ちを目の当たりにしたのは、生涯で初めてで。好きだ好かれた惚れた腫れたの恋バナは端から聞いていて気恥ずかしくすらあったけど、存外心地よいもので。

「・・・・・・いいな」
「? キラ?」

振り返ってみれば、キラという男は、先天的な遺伝子改造を施された人工子宮生まれの自分は、それでも他の誰とも変わらないただの人間だと信じている自分は、ついぞ誰かを本気で好きになったことがなかった。
確かに、かつて憧れを抱いたフレイと肉体を重ねたことはある。己の心を解してくれたカガリに親愛の情を感じたこともある。でもあれは愛でなく、己の弱さに起因する依存に他ならなかった。
彼女達には自分なりの愛情をもって接したのは確かだが、その彼女達を護る自分という構図によって己の精神を安定させていた側面も確かにあったのだから。
唯一自分と対等であるシンを除き、他の誰にもそれらと同等並の感情を持てたことすらなく・・・・・・、・・・・・・? なんだろう、何か大事なものを忘れている気がする。まったくこれだから記憶喪失は。
ともあれ。
己という人間はまともに人を愛したことがないばかりか、好きになったことがないのだ。ただの人間と自認しているというのに聞いて呆れる。
だから素直に愛を表現できる夕立がとても眩しかった。その点で言えば瑞鳳にも同種のものを感じていたが、こう改まって熱烈にストレートに伝わってくるとむしろ尊敬の念さえ沸いてきて。
0352通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:27:40.27ID:7hYZcA4L0
「どうしたの、キラ?」
「突然シリアスな顔して、どうかしたっぽい?」
「え、あ・・・・・・や、できれば聞かせてほしいなって思って。夕立達のこと」
<興味あるの? 意外・・・・・・>

だからか、ついついこんな提案をしてしまった。

「まぁね。夕立みたいに誰かに恋したことなんてなかったからさ、いいなって思って」

それは本音混じりだったが夕立へのフォローの、最後の一押しのつもりの希求だった。元々が彼女の裸を見てしまってから始まったこの状況で、これで全てを水に流してくれるだろうと期待しての言葉だった。
後悔した。

「キラさん、恋したことないっぽい!?」
<嘘!? だってすっごくモテそうなのに>
「姉さん、モテるのと好きになるのって違うんじゃ・・・・・・? ・・・・・・え、キラってモテそうなの?」
<そりゃそうでしょ。間違いなく優良物件だし、私だって・・・・・・げふんげふん! とにかく! キラさんみたいな人なら恋人の一人や二人いるほうが当たり前だと思うわよ>
「勿体ないっぽい! 好きな人がいるってとっても素敵なことで、すっごく力と元気が沸いてくるっぽい。それに命短し恋せよ乙女――命短しって由良も言ってたし!」
「強調する所そっちなんだ」
<あ。もしかして女の人の裸を見たのってさっきが初めてだったの? それであんなマジマジと・・・・・・>
「むむ、なら夕立のカラダは毒だったっぽい? えぇと、なんだっけ・・・・・・そう! そーいう人って、どーてーさんって言うんだっけ?」
「Что это?」
<それはちょっと意味が違うわよぅ夕立ってか誰から聞いたのそんなの。えっとね、ど、どーてーさんってのは・・・・・・えー、まぁうん。でもキラさんは、そう、なのかな・・・・・・?>
「ねぇ、どーてーさんってなに?」

迂闊だった。好きだ好かれた惚れた腫れたの恋バナは女性の栄養素である。
艦娘も例外でなく、しかも普段女の園である鎮守府で生活している彼女達には、劇物にも等しい話題だった。
なによりこれまで誰もが聞こうとして聞けなかったキラの「その手の話」が遂に解禁され、
それも漫然と「恋の経験があるだろう」と思っていたのになんと経験なしと発覚したのだから、普通に男女間の恋愛に理解がある瑞鳳と恋人持ちの夕立が爆発した。
それにね、今ってばめっちゃ暇だしね、時間だけならタップリあるのに他にやれることがないなら、そこに食いつくのも当たり前だよね。気持ちはわかる。
なお響は置いてきぼりの模様。
故に嵐のような、外の本物の嵐にも負けない唐突怒濤なマシンガンガールズトークで恋愛を勧められ、誤解され、童貞扱いされかけ、

「ちがっ・・・・・・! 童貞違うし!」
<ほう>
0353通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:29:34.44ID:7hYZcA4L0
「ぽい?」
「?」
「あ」

あろうことか、無意識にいらん意地を張った挙げ句の、自爆である。


地雷の炸裂であった。


空気が「マジ」なやつになった。
意図せず猛獣に餌を与えてしまったかのような気分。冗談やネタでは済まされないぐらいにリアルな男女間の営みを想像させる単語が現実感を伴って、一連の会話を生々しいものに変貌させた。
瑞鳳の声色が一段低くなり、夕立の瞳が興味本位に輝き、響は首を傾げ。3秒後に尋問される未来がありありと見える。
この自爆による開示は、キラ・ヒビキは人を好きになったことはないが女性との「経験」はあるという意味を示唆して。嗚呼、概ねその通りであるのが非常に痛い。
今この瞬間に、この事実よりも彼女らの興味を持たせるものは果たして存在するだろうか、いやない。
つい先程に瑞鳳から頂戴したスケベの烙印が更に重くなった気がする。

<その話>
「詳しくっぽい!!」

対極的な姿勢から同一の意図をもって発せられた要望に、無言で後じさるキラ。
ちゃんと詳しく説明するにはキラとフレイの関係はあまりにも複雑で不明瞭で淫靡で憎愛と打算と裏切りに満ちていて、そして当時の自分の弱さ浅はかさ全てを曝け出すことになってしまうから、
正直なところかなりの抵抗がある。アレをこの娘らに話すとか冗談じゃないよ?
しかしこれを退けることは到底できそうになかった。
なにせ時間だけはタップリあって、暇だから。全てを話すのと彼女達の興味が尽きるのと、どちらが先だろう?
長く苦しい戦いになりそうだった。







『うーん良い夜だねぇ。月明かりを覆い隠すブ厚い雲、漆黒の空。夜戦にも隠密にもピッタリな良い夜♪』
『ッ・・・・・・お前、いつから俺の背後に・・・・・・?』
『川内参上! お兄さんが今日のお客さん? どうする、さっそくイケないことしちゃう?』
『誤解を招くような言い方すんなよ! ・・・・・・はぁ、アンタが天津風が言ってたエキスパートってやつ?』
『如何にも。軽巡だけど大船に乗ったつもりでまっかせて! さっそく日帰りデートと洒落込もうよ!』
0354通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:31:14.99ID:7hYZcA4L0
『アンタ、軽いなぁ』
『こんぐらいのテンションのほうが都合良いんだってイロイロ。そんな眉間に皺寄せてばっかだとハゲるよ? ほぉらリラックスリラックス』
『・・・・・・まぁ、俺が思い詰めてても仕方ないか、確かにさ。人混みに紛れるならデート装ったほうがバレないのかもな』
『そーいうこと。・・・・・・で、あまつんは? お兄さんの保護者なんでしょ?』
『留守番。アイツがここにいなきゃ偽装工作の意味が無くなる』
『相変わらず健気で献身的だねぇあの娘は。んじゃ、そういうことなら時間ないし行こっか』
『ああ。よろしく頼む』
『頼まれたよ。さぁ、いざ佐世保! 夜の川内の本気見せてあげよーじゃん!』
『だから誤解されるような言い方すんなって!!』







フレイ・アルスターという少女を語ることは、生半可でなく。
これまで二階堂提督以外に自らの世界について語ってこなかったツケが遂に回ってきたわけだ。
二人の関係をさわりだけ簡単に説明してお茶を濁そうとしても結局、三人からの相次ぐ質問によってC.E.の成り立ちやナチュラルとコーディネーターの対立からキッチリ説明することになるとは
正直苦笑するしかなかった。それも根掘り葉掘り重箱の隅をつつくような質問ではなく、純粋な「どうして」という疑問の積み重ねによるものなのだから、あの世界がどれだけ歪んでいたのか改めてよく分かる。
そう、それだけ歪だったのだ。コーディネイターを忌むナチュラルの少女と、コーディネイターでありながらナチュラルの為にコーディネイターと戦う少年が、
鐚一文の愛もなく肉体を重ねるまでに至ってしまったあの状況は。ラブロマンスの欠片もなく唯々哀しいばかりだった、あの復讐物語は。
そんなわけでお堅く真面目に始まったキラの女性遍歴暴露大会だが、しかしそれは意外にも開始数分、フレイとの出逢いからコロニー・ヘリオポリス崩壊を経て
地球連合軍第八艦隊先遣隊が全滅――フレイの父が死んだ戦闘である――したところで中断されることになった。
突如、瑞鳳の携帯端末からピロリロリン♪ という軽快軽薄な電子音が鳴り響いたのだ。


それはデュエルがストライクからの通信を受け取った合図。
福江基地の誰かがキラ達の救助要請に気付いてくれた証明。


サバイバルとは名ばかりの短すぎる四人の共同生活が終わりを告げる音だった。
寝室の空気がまた一変し、キラはデュエルの元へと走る。
0356通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:32:11.51ID:7hYZcA4L0
「こちらデュエル、キラです! 明石さんですか!?」
<うわっ!? ホントに出た!!>
「明石さん! 良かった・・・・・・そっちはどうなってますか、大丈夫なんですか!?」
<こっちの台詞だから!! ちゃんと生きてる!? 響達は!?>

コクピットに乗り込み通信回線を開いて、しばし二人して噛み合わない問答をした末にようやくお互いの状況を把握すれば、二人とも絶句するしかなかった。
キラは、己が置かれた状況の全容を知って。
明石は、響と瑞鳳が融合した容態を知って。
二人して想定を遙かに超えた現実に、頭が追いつくまで少しの時間が必要だった。

<結論から言うと>
「はい」
<直接診てみないことには何も言えないわ、響と瑞鳳については>
「そう・・・・・・ですか・・・・・・」
<そりゃそうよ! ニコイチなんて有り得ないって思ってたのに、それを分離するとか考えたこともなかったですよ! 
それに二人を分離するにしても響鳳として修理するにしても基地の施設じゃ無理だろうし、勘だけど時間が経てば経つほど分離は難しくなるでしょうね。急がなきゃ>
「でも沖にはレ級が待ち構えてるんですよね? どうすれば・・・・・・」
<響達はともかく、夕立はどれぐらい動けそうです?>
「航行不能です。そこまでしか直せませんでした」
<ならそっちの四人は【いぶき丸】で輸送するしかなさそうね>

情報を交換した結果、問題が生じていることが発覚した。
前提として。
まず響と瑞鳳についてだがこれは明石が述べた通り、早急に彼女に診てもらって鎮守府工廠で処置しなければならないことがわかって、為すには当然すぐにでも響達を移送せねばならない。
キラが逃げ込んだ廃墟、福江島南西部にあった廃れに廃れた無人の町は現在、嵐に見舞われている。海路と空路を塞がれて車両等が発見できず、すぐに発つなら徒歩で陸路を行くしかない。
これを阻害する問題が山積みだったことが、発覚したのだ。
まず一つ。
この地区は既に土砂崩れ等の影響により道路が寸断され、陸の孤島になっていたということ。徒歩での脱出は不可能だ。おさらいだが、ここはNジャマー影響下である為に既存の通常航空機が使えず、海路しか選択肢がない。
次、二つ目。
この町の近海に、戦艦レ級率いる敵艦隊が陣取っている。福江基地守備隊の【阿賀野組】曰く、嵐の直前に偵察機が発見したとのことで、航路はまっすぐキラ達がいる町を目指していたと。
今なら解るが、間違いなく追撃戦力だろう。嵐が去って、夜が明ければすぐに攻撃してくる可能性が極めて高い。
三つ目。
福江基地の戦力は、阿賀野ら第三艦隊三番隊しかおらず、他はヴァルファウ追撃戦の為に出払っている。主力部隊の帰還がいつになるかは、まだ連絡がつかないらしい。
0357通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:33:57.42ID:7hYZcA4L0
道は一つしかなかった。

<嵐は夜中に通り過ぎる見込みなの。レ級に阿賀野達をぶつけて時間稼ぐから、その間に強行突破しかないでしょうね>
「そんな!?」

明日の夜明け前に、脱出戦を敢行するしか。
戦力は直接的な艦隊戦に向いてない【阿賀野組】のみ。言うまでもなく響と夕立は戦えず、キラの力であるデュエルもエネルギー切れで動けず、深海棲艦にとっては大きい的でしかない通常艦艇を用いての救助作戦。
勝てる見込みのない賭けだ。
いやそもそも救助が、強行突破が成功したとしてレ級艦隊はどうなる?
こう言っては失礼だが事実として、阿賀野達が敵を退けられるとはとても思えず、下手したらやられてしまう。そのまま福江基地や佐世保鎮守府だって襲われてしまえば元も子もないじゃないか。
無理だ、危険過ぎる。別の方法を探そうと提案しようとしたところで、

<キラ、ストライクの修理は8割までならいけるわ>
「えっ!?」

思いも寄らない明石の言葉に、キラは驚きとも歓喜ともつかない素っ頓狂な声をあげた。
ストライク。キラの本来の力。
8割までの修理ということは、最初の防衛戦参戦時よりかは幾らかマシな性能だ。それで敵を追い払うことができれば、できなくても囮として動けば、そうすれば全員の生存率はかなり上がる。
自分とストライクこそが作戦成功の鍵なのだと理解して、久方ぶりに全身が引き締まる思いになる。
しかし。

「いけるんですか?」
<ギリ。ちょっちこっちで面白いことがありましてね、おかげで修理を進められそうなの>
「? それってどういう・・・・・・?」
<細かいことは気にしない! とにかく動力回りとフレームはバッチシ仕上げてみせるから、輸送船に乗せて洋上待機させますよ。全員の命、預けます>
「・・・・・・! はい、今度こそ必ず!」

キラが最後に確認した限り、愛機の修理は6割までしか終わっていなかったはずで、キラが指揮しなければ彼女達は修理を進められないはずなのだが。いったいどんな魔法を使えば8割までも進められるのか。
その面白いこととやらこそ知りたいが、これ以上聞いてもはぐらかされるだけだろうし、なにより時間が勿体ない。ともあれ喜ばしいことに違いはないのだから言及は後回しでなんら問題ない。
方針が決まったのなら走るだけだ。そして今度こそ自分が皆を護るのだ。護って、無事に鎮守府まで帰るのだ。
自分達の救助にかなり危険な賭けにでてくれること、それだけ自分達に価値を感じてくれていることに感謝した。
ならば今の自分にできることはなんだろう?
そう考えてキラはふと、ある可能性を鑑みて明石と相談しながら組んだ計画を思い出して、もしかしたら必要になるかもと思った。幸い、起動実験こそしてないものの理論上は、完成している。
0358通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-MZfN)
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2019/10/30(水) 23:35:15.33ID:7hYZcA4L0
「そうだ、明石さん。もしもに備えて、L計画の実装も進めてください」
<もしもって・・・・・・>
「有り得るかもじゃないですか。だから、使える手は全部用意しとかないとです」
<・・・・・・そうね、確かに。了解。データは例のディスクに?>
「インストールさえしてくれれば。中身は完成してますし、切り替えはボタン一つでできるようになるはずなので」

その後も阿賀野を交えて作戦会議をして、秒単位のスケジュールを詰めていって。絶望的な状況からの脱出を少しでも確かなモノにする為に、やるべきことは全てやった。
あとは明石達を、彼女達が決行する作戦を信じて今は待つしかない。

<絶対助けるかんね。もうちょっとの辛抱よ>
「響と瑞鳳と夕立は僕が必ず連れて帰るから。明石さんも阿賀野さんも、気をつけて」

決行は約14時間後、11月16日の4時30分。
通信を切ったキラはそのまま、デュエルのコクピット内で機体の最終調整を行った。もう動けないと思っていたコイツにも最後の最後まで頑張って貰わなければ。
絶対に成功させる。その為ならなんでもやる。
それにしても、いきなりこんなに状況が変わるとは。明石が通信に気付いてくれたことも含めて、運が回ってきたのかもしれない。
廃墟で待たせている響達に知らせたら喜んでくれるだろうかと、気付かぬ内に笑みを浮かべていたキラだった。







「・・・・・・さて、言い切っちゃったですよ。8割までいけるって。今更だけど確証はあるんです?」
「俺達はアイツがやろうとしたプランをなぞるだけでいい。こんだけ機材とデータがあるんだ、やってやれないことはないだろ。あとは根性だな」
「簡単に言ってくれちゃってまぁ、なら指揮をよろしくお願いします。わたし達にはやっぱりまだモビルスーツは手に余る存在で、貴方達の知識が必要不可欠なの」
「わかってるよ。だから作業が止まってたんだろ? それと指揮するのはいいとして、今の俺は呉の喫茶・シャングリラのマスターで、それ以上でもそれ以下でもないってのを忘れんな」
「そのサングラスは変装の一環?」
「似合うだろ?」
「似合ってないです。ぶっちゃけ」
「・・・・・・川内あの野郎!」
0364通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイWW e289-1d3L)
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2019/12/14(土) 18:43:41.32ID:zZrGe5Z60
 .|        ::|                 プーン    人  。⊃
 .|        ::|    ______        ⊂゚ (;;;;;;)    プーン
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 .|        ::|    | 隔離病棟  |.     リ | |l;;;;;;:::;;;:.::;;*::;;r;;::;;*:;;;)
 .|        ::|    |        .|.    川川‖(;:;;;;::;;;( *;;*);:;;:)
 .|        ::|     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    川川;;;〈;::;;;;;;:::;:)3(:;;;;;:;〉 
 .|____......|.                 川川:;:;;''*::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;ノ
 ||:| :| ::| ::::|::|:||                 川川\;;;;;ヽ;;::;;,;;,,,.;;::;,;ノー、
 ||:| :| ::| ::::|::|:||    ヾMM/        rー―__―.'    .-''   々i
 ||:| :| ::| ::::|::|:||   / / ヽ \       ! メ            .ノ
 ||:| :| ::| ::::|::|:|| ./  /     \      '- 、   >>363   「 , '
 ||:| :| ::| ::::|::|:|| i            i       | :。::   メ :。:: ! i
 ||:| :| ::| ::::|::|:|| .!    手足     !       ノ #    メ   ヽ、
※ネトウヨ死ね
0367ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:13:55.54ID:5Dl/6pTn0
――艦これSEED 響応の星海――


『無理だと思ったら躊躇いなく福江基地は放棄しろ』

予めそう木曾達に言われていた明石としては当初、まさしくそうするつもりだった。
なにせ超弩級重雷装航空巡洋戦艦レ級率いる精鋭水上打撃部隊が、五島列島福江島の南南西70kmに位置する島嶼群であるところの男女群島周辺に停泊しているのだから。
嵐の直前に観測できたその随伴は、空母ヲ級1、重巡ネ級1、軽巡ツ級2、駆逐ハ級2とかなり強力。
深海棲艦ですら強引に航行できない嵐が弱まり次第に連中は北上し、福江基地を攻撃してくるに違いなかった。
現状基地唯一の戦力であり、直接的な艦隊戦に向いてない【阿賀野組】ではあまりに荷が重すぎる敵が侵略してくるのならば、逃げる他ありえない。
正面から立ち向かっても蹂躙されるだけ、完全無欠にキャパオーバー。だから最初は、福江島から脱出するつもりだったのだ。
とはいえ無計画に、闇雲に逃げるわけにもいかず。
福江基地は佐世保鎮守府防衛の要衝。だがこれまでの戦闘で有線通信を失い、NJのせいで無線通信も、嵐のせいで伝書鳩代わりの艦載機も封じられている現状で、
誰も知らないうちに基地が消滅しましたなんてことになったら今度こそ佐世保はお終いだ。
防衛力のない鎮守府も、沖縄へヴァルファウ追撃に赴いた主力艦隊もやられてしまう。
そこで明石達は、こういった事態を想定してあえて【阿賀野組】を残した木曽達の言う通りに、佐世保艦隊では二人しかいない潜水艦娘の伊13(ヒトミ)を佐世保方面へ、伊14(イヨ)を沖縄方面へ先行させることにした。
嵐のせいで海面がどんなに荒れていようとも海中はいつも穏やかで、潜行時と浮上時にさえ注意すれば、潜水艦はこの環境下でも長距離航行ができる。
ヒトミとイヨが直接、二階堂提督と主力艦隊達にメッセージを伝えるのだ。
提督に危機が伝われば、もしもの為にと五島列島と九州本土の間にありったけ敷設した、対深海棲艦用の纏繞機雷や音響探査式自走機雷をアクティブにしてもらえる。
その上で明石達は嵐が弱まり次第に、燃料弾薬資材をしこたま積んだコンテナ船と共に沖縄方面へ脱出、きっと凱旋してくれる主力艦隊と合流する作戦だ。
さしものレ級艦隊といえども機雷原の突破には時間が掛かるはず。そこを全力で叩ければ、ギリギリ全てを守り切ることができる。
そう考えて、彼女達は作戦を実行に移した。
ヒトミとイヨを送り出し、脱出の準備を進めようとした。


その直後だった。
呉から川内と、喫茶シャングリラのマスターを名乗る黒髪紅目の男が基地へやって来たのは。
工廠奥で鎮座していたストライクに、キラからの救難信号が入っていることに気づけたのは。


呉の青年の助言もあって、脱出プランは一転、救出プランへと変わった。
レ級艦隊はキラ達を追跡してきたのかもしれない。明石達が脱出したら、キラ達は死んでしまう。敵の攻撃開始よりも前に速やかに、彼らこそを脱出させなければならなかった。
0368ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:16:09.88ID:5Dl/6pTn0
彼ら四人が潜伏している町から福江基地へは直線距離で10km、阿賀野と酒匂と春雨なら15分程度でたどり着くことができる。単純に考えれば往復で約30分。
30分。
長すぎる。
これまでの戦争で蓄積してきた敵艦の推定スペックが正しければ、レ級の最大射程はおおよそ25マイル(約40km)、艦隊としての速力は最低30ノット(時速約55km)。
男女群島を発ってから砲撃開始までの猶予は約30分しかないのだ。救助してから敵攻撃圏外まで離脱することは、できない。
レ級艦隊との戦いは避けられない。
しかし当然、真っ正面から戦うことはできない。既にヒトミとイヨが離脱しているのだから、残った阿賀野と酒匂と春雨の三人だけでは最早、まともな戦闘に持ち込むことさえ不可能。
時間をかかればかかる程に撃沈される危険性は高まる。
勝算は一つ、キラのストライクが早期参戦して初めて、レ級撃退の可能性が1%以上になる。


となれば、勝利条件はいっそ単純明快。こうも絶望的状況で切り札が一つだけならば、考える手間も省けるというものだ。


【阿賀野組】の残存三人だけで、軽巡と駆逐が本領発揮できる夜間に奇襲奇策に徹して、レ級艦隊を足止めして。
その間に、人間達が操る小型高速哨戒艦【いぶき丸】が明石と共に町近くまで急行して。
また、救助される側であるキラはデュエルで響達を【いぶき丸】に移送した後、ついで哨戒艦に遅れて航行するコンテナ船に合流、積載されたストライクに搭乗して対レ級戦に参加する。
さらにコンテナ船が金剛達との合流を果たせれば、そこまでの全てが繋がれば、今にも千切れそうな縄をダッシュで渡りきれれば、なんとかなる。
これが明石と青年が考えた唯一無二。か細い道だった。不確定要素が現れた瞬間に完全破綻してしまう、最善という名の過酷だった。
これを実現する為に、大半が更地になった福江基地の全リソースを集中して、明石達はストライクの修理に奔走した。

「本当なら、俺がストライクで戦えればいいんだけどな」
「んー? 滞在延長する? いっそこのまま逃避行しちゃおうか?」
「バカ言え、せっかくの工作が無駄になる。昼までに呉に戻らなきゃ責任を問われるのは天津風なんだよ」

11月16日、4時34分。予測通りに嵐が弱まり、明石達が出航した救出作戦決行の刻。
そんな彼女達を見送って福江基地から去らねばならない黒髪の男――いや、もうボカす必要もないだろう、似合わないサングラスを胸ポケットに差したシン・アスカは悔しげな声を滲ませた。
そう、シン・アスカ。
本来ならば彼は、ここには居られない筈の、公式には「いない者」として扱われ行動範囲を著しく制限された人間である。
けれど現実に今、彼はここにいた。
0369ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:19:02.20ID:5Dl/6pTn0
キラがMIAになったと聞いていてもたってもいられなかった。何か行動したかった。キラのことなんて嫌いだけど、大嫌いだけど、絶対に赦せないけど、こんなところで死んでいい奴じゃないから。

『俺が殺せなかった奴だぞ。アイツがこんなんで・・・・・・くたばるわけないだろ!』

それにまだ、キラにはシンと共にやらねばならない使命があるのだ。
勝手に記憶喪失なんかになった挙げ句、勝手にそれを投げ出すなんて、認めない。奴の死をこの目で直接確認しない限りは絶対に認めてやるもんかと叫んだ。
故の、軍令部に感づかれてはならない、ハイリスク・ノーリターン覚悟のお忍び日帰り強行軍。
かなりの無理を押して、ここにいる。
呉の提督を再度説得し、本物の喫茶シャングリラのマスターに影武者を頼みこんで、隠密のエキスパートと噂される川内を案内人として雇い、さながら忍者のように福江基地への潜入に成功して、ここにいる。
生死も定かでないのに感情任せに突っ走って、ここに来たところで何ができるかも考えずに突っ走って、ワガママを貫き通したおかげで、ここにいた。
結果シンは状況を打破する原動力となった。キラが生きていれば必ずストライク宛てにSOSを出すという読みが当たって、あの男の無事も確認できた。
ミッドウェー包囲網の時と同じように全てが好転し、絶望の運命を切り拓くことができたのである。
ただ、これでシンの言う通りに、彼がストライクでレ級艦隊と戦えたら一番安心確実なのだが・・・・・・残念ながらそこまで干渉することは不可能だった。彼は万能なデウス・エクス・マキナではないのだ。

「それに。だいたい川内、アンタだって舞鶴に戻んなきゃなんないだろ」
「ま、そうなんだけどさ。じゃー予定通り、あとは成功を祈るだけ祈って、お暇させていただきますかね私達は」
「・・・・・・アンタ、本当にノリ軽いよな。キラの奴と一緒にいる夕立っての、アンタの弟子なんだろ? 心配じゃないのかよ」
「ぜんぜん」
「はぁ?」

かくして状況は確定した。
あとは明石達とキラの頑張りと幸運が、未来を紡ぐのだ。
魔法の時間は終わり、シンがここで出来ることは無くなった。もう呉に帰らなければならない。
もどかしくないと言えば嘘になる。
あとほんの少しの猶予があれば、自分だって戦えるのに。
でも今すぐここを発たねば、天津風とプリンツと提督の偽装工作が無駄になってしまう。この世界で「これからも続いていく日々」の為に、それだけは避けなければ。
ここでシンが戦ってキラ達を無事救出できたとしても、願う未来には届かないのだ。
本来短気なシンにとって、この状況下でおとなしく帰るなんて行為はかなりのストレスだけれど。同じような立場にいるはずの川内が飄々としてるのも癇に障ったけれど。
だが。シンが願う未来と、キラが掴む未来が、希望ある未来として交わる為ならば。

「あの子らがこんなんでくたばるわけがない。そりゃイザとなりゃ全部ほっぽり出して仇討ってやるって思ってたケド、お兄さんのおかげでまだ生きてるってわかって、生きていく為の命綱も作れた。それだけでもう十分なのよ」
0370通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:21:14.30ID:5Dl/6pTn0
「・・・・・・俺はそこまで割り切れない」
「割り切れないから、ここまで来ようと思ったんでしょ。なんでも割り切ればいいってもんじゃないって」
「そういうもんか?」
「そういうもん。さ、行くよ。帰るまでがデートって言うし、気を抜くにはまだ早いかんね」
「お前その設定いい加減やめねーか」

その来るかどうかも解らない、不確定な明日の為に、シンはあえて戦場を背に去る覚悟を固めた。
想い人の仇であるキラと、その周囲に在る人達を信じると決めた。
そうして愚痴と軽口を叩きあいながら、二人の姿は人知れず闇へ融けて。表舞台は「元々そこにいた者」達だけのものに戻って。
これが合図だったかのように。
福江島の海は、戦場となった。




《第20話:求める未来のために》




おさらいをしよう。
艦娘と深海棲艦との戦闘の基本は、有視界戦闘である。
航空機やレーダーを利用しないかぎり、その戦闘距離は約5km以内に収まってしまう。少女達の身長で見える水平線までの距離と直結しているのだ。
また共通して、夜目が利かない。普通の人間よりは幾分かマシだが、ヒトデナシだからといって暗視能力を持っているわけではなく、意外なことに闇夜の海では味方との衝突事故という危険性とも隣り合わせだ。
そういう制限が存在する。
だが現実に、艦娘達は水平線越しの砲撃戦をするし、闇夜でも一糸乱れぬ統制でもって艦隊戦を演じることができる。そうして五年も戦争をしてきている。
そう、航空機やレーダーだ。それらを利用すれば、制限を悠々と超えることができる。
逆に言えば、この広すぎる大海原で艦隊戦をするには高度な索敵能力が必要不可欠である。まず敵を捕捉できなければ話にならない。
戦闘能力とは高い索敵能力があって初めて発揮されるもので、彼我の索敵能力に大きな差があった場合、戦闘が一方的な展開になることはわざわざ想像するまでもないだろう。


その要であるところの航空機やレーダーすらも制限してしまうのが、この九州の夜の海だ。


まず単純に、夜間では航空機の運用が困難となる。特別な訓練を積んだ艦と機体でなければ、発着艦も偵察も満足にできない。
0372通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:22:26.03ID:5Dl/6pTn0
これは夜目が利かない両者に共通する基本事項であり、夜間航空機運用能力を備えている者は一握りのエリートだった。
これに加えて、何度でも飽きるぐらい繰り返すが、ここはニュートロンジャマー影響下。従来のレーダーは全て封じられている。この場で使用できるものはNJ環境下前提で造られたMS用高出力短距離レーダーだけだ。
つまり一律に、艦娘も深海棲艦も無差別に、索敵能力の殆どを喪失してしまうのがこの九州の海なのである。
そうした状況下での艦隊戦とはいわば、目隠しをしたまま砂漠で一本の針を探すようなものだろう。


これから【阿賀野組】が挑む戦いとは本来、そういう戦いだ。


敵は強大な射程と索敵能力を備えたレ級艦隊。恐らく、随伴の空母ヲ級は夜間航空機運用能力を備えているだろう。
其奴らを相手に奇襲を仕掛けなければならない。
逆に【阿賀野組】は航空機を使用することができない。
いや、正確に言えば、阿賀野は夜間偵察機を操ることはできるのだが、しかし航空機はどうしたって音が出てしまう。飛行音のせいで己が「存在する」ことを敵に教えてしまうリスクがあった。
奇襲とは当然、敵に己の存在を知られてはならない。敵を先に捕捉して、その懐に飛び込んで先制攻撃しなければならない。そして足止めしなければならない。
一見して誰もが不可能と思うだろう。
阿賀野達がレ級艦隊を発見できるかも怪しいし、発見できる可能性があるとしたらレ級艦隊による砲撃音を聞いてようやく、町への先制攻撃を許してようやくといったところか。
むしろ先に阿賀野達が発見されてしまう可能性のほうが大きい。


だが、この状況でなら可能と判断した。可能だからこそ奇襲という手段を採る。


そのサポートをするのが、いや、その成否の鍵を握るのが、キラの最初の役割だった。
11月16日、4時53分。
嵐は去って波風落ち着けども、まだまだ明ける気配を見せない漆黒の空、漆黒の海をモニター越しに睨んでいたキラは静かにフットペダルを踏み込んだ。
エネルギー節約のためにレーダーは使わず、その時、デュエルの光学カメラに敵影はおろか接近を知らせる予兆すら映っていなかったのに、機体に跳躍を命じた。残り少ないエネルギーの大半を脚部スラスターに集中、
満身創痍のデュエルが空高く舞い上がる。
ほぼ勘、いや、100%勘による判断だ。根拠なんて何もない。二度目のチャンスはない大博打に出た。
ただの、C.E.のエースパイロットの勘だった。

「・・・・・・いた!」

高度150m。
目視できる水平線までの距離は約45km。
0373通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:25:28.94ID:5Dl/6pTn0
アクティブセンサーの出力を上げてデュアルアイを煌めかせたデュエルが、漆黒の海を進む7つの熱源を捕捉する。倒すべき敵が、漆黒に融け込むように黒い敵が、豆粒よりも小さくモニターに表示される。
彼我の距離は約38km、今にも福江島を、キラ達が隠れていた町を砲撃しようとしているレ級艦隊である。
果たして、勘は見事的中していた。
このギリギリのタイミングを、左手に握ったレールガン・シヴァが届くギリギリの距離を、キラは勘だけで手中に収めた。
かつては宇宙空間を縦横無尽に飛び回る小型攻撃端末――ドラグーンの猛攻すら凌ぎつつも撃ち落としまくった彼だからこその直感といえよう。
その事実に安堵することなく全神経を集中させて、たった一瞬の滞空時間で照準を合わせ、躊躇いなくトリガーを引いた。

「間に合え!」

大事なのは誰よりも何よりも、デュエルからの先制攻撃である。
一度レ級達が攻撃を始まれば、奴らだって警戒を厳とする。その砲撃音で位置を割り出せたとしても、阿賀野達が奇襲できる隙はなくなる。そうなる前に敵を混乱させるのだ。
レールガンが紫電を迸らせて3発の弾丸を射出する。
ソレはただの弾丸ではない。
というか、通常弾頭は先の戦闘で使い切っていた。今レールガンに装填されているものは、射出したものは、攻撃力なんて微塵も持ち合わせていない。それでも、いや、だからこそソレは状況を打開する鍵となる。
もう遠い過去のようにも感じるが、そもそもキラ達がこのような危機に至った原因を思い出そう。たった2日前の早朝のことだった。
響と演習する為に、数々の試作兵装を実戦形式でテストする為にたった三人で海へ出てしまったことこそが、あの敗戦の原因だった。
つまりだ。
今、レールガン・シヴァには演習用の模擬弾と、試作の新型戦闘補助弾が装填されたままなのだ。まさかソレがこんな風に使われるだなんて、誰が想像しただろうか。

「後はお願い・・・・・・!」

【阿賀野組】の奇襲を成功に導くべく放たれた鍵、弾丸は三種類。
その名を演習用蛍光ペイント弾と閃光弾とジャミング弾といった。







「ッ!? 弾着確認! 敵艦隊を発見しました!!」
「ひゃぁ、すごい・・・・・・!! ほんとにあの距離で当てるなんて!!」
「よぉーし酒匂、春雨、全速前進ー!! 追加でじゃんじゃん撃ちまくるよぉ! 阿賀野に続いてぇ!!」
0374通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:27:26.81ID:5Dl/6pTn0




神業としか言いようのないキラの長距離狙撃。
これによりレ級艦隊は一時行動不能に陥っただけでなく、漆黒色のマントを纏ってこっそり航行していた【阿賀野組】にその位置を晒した。
絶対的な強敵を相手取る際は、いかにして敵の行動を封じられるかが重要となる。
例えるならコンピュータゲームでいうところのデバフだ。敵の攻撃力や防御力や素早さなんかを低下させるアレだ。古今東西、敵の行動を制限することこそが戦闘の鉄則、理想である。
それを現実に可能としたのものこそ先ほどキラが撃った、そして現在進行形で少女達が撃ちまくっている戦闘補助弾頭であった。
他にも、対象を絡め取る粘着性ネットガンや拡散式焼夷弾まで用意している。相手が艦艇ではなく、人間と同等のサイズで、四肢を持つ人型だからこそ有効な装備の数々だ。
ぶっつけ本番の実戦投入だったが上手く機能してくれたようで、敵は五感の殆どを奪われた状態である。
通常弾頭と補助弾頭を織り交ぜた波状攻撃で、たった三人の【阿賀野組】はレ級艦隊を翻弄し、かつ削っていった。
最適射程まで近づけば魚雷を放ち、早速ヲ級とツ級を1隻ずつ大破させる。ついで、ワイヤーに触れた対象に絡みつく性質を有した纏繞機雷を複数連結したうえで設置し、敵艦隊の進路を狭めていく。
普通の艦隊相手ならこれだけで決着が付く。
だけどそれでも、一方的な展開にはならない。
ここまで徹底的に用意してもそもそもが3対7、光と炎と網に蝕まれようとも戦意の衰えない敵を完全に封じるまでには至らない。や
はりレ級旗艦の艦隊は、有象無象とは練度が違う。姫級旗艦艦隊に匹敵する奮闘が、阿賀野達の優位性を崩していく。
時が経つにつれ、目に見えて【阿賀野組】の命中率が、攻撃頻度が下がっていった。
だがこれも明石達にとっては最初からわかっていたこと。だからこそ足止め第一。尋常な砲撃戦になれば瞬殺されてしまうから、少女達は時間を稼ぐべく必死に戦う。
全ては、キラ・ヒビキがストライクに乗るまでの時間稼ぎなのだ。
では現在、当のキラがどうしているかといえば。

「くッ・・・・・・! エネルギーが足りない・・・・・・!?」
<と、届かないってことっ?>
「届かないと――どうなるっぽい!?」

アラート鳴り止まぬ喧しいばかりのコクピット内にて、顔を青くしていた。
その膝の上、抱きかかえられた瑞鳳色の響がビクリと震え、夕立が泡食って叫ぶ。
このままでは、ストライクに届かない。
このままでは、沈む。

「キラ・・・・・・!」
「!! くそ・・・・・・!」
0375通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:29:24.93ID:5Dl/6pTn0
レ級艦隊への先制攻撃を成した後、響と夕立を収容したデュエルで滑るように海上を爆走していた。哨戒艦【いぶき丸】に少女達を預けるためだ。しかし、その中途。
敵の砲撃がデュエルを襲った。駆逐ハ級が所々を蛍光ペイント弾で仄かに光らせながらも、弾幕を突破して【阿賀野組】をも置き去りにして単艦、デュエルへ向け一直線に突進しながら砲撃してきたのだ。
結果としてその砲撃そのものは、虚しく海に消えたけれども。機体には当たらなかったけれども。
当たらなかったけれど、確かにキラに回避行動を選択させた。スラスターを噴射して躱した。
更にハ級が砲撃。その弾道は、デュエルが回避すればその先にいる哨戒艦にも命中するコースであると直感、これをも狙った位置取りだったのかと驚愕しつつビームサーベルで砲弾を切り払い、
勢いそのままサーベルを投擲してハ級を撃破した。
だから予定よりも早く、エネルギーが尽きた。
此方に向かって航行している【いぶき丸】を見ることも叶わず、推力を失ってしまう。このままではコクピットに収まったキラ達は、デュエル諸共海底に沈む。
そんなことは。
けど、どうすれば――

「ハンモックを張るとか、なんとかなんないっぽい!?」
「帆船じゃないんだから・・・・・・、・・・・・・いや、そうか!」

――夕立の突飛な提案に、閃くものがあった。
彼女としてはかつての第三次ソロモン海戦の夜に、ハンモックを帆代わりにしてでも戦闘続行しようとした経験からの発言だったのだろう。諦めるな、なんでも使えと。確かにそうだ、デュエルの装備を思い出せ。
機能停止まで10秒もない。モタモタしてられない。
キラは素早く幾つかのスイッチとレバーを操作して、素早くシートベルトを取っ払いながら叫ぶ。

「三人とも飛ぶよ。しっかり捕まって!!」
「え、飛ぶって・・・・・・ひゃわ!?」
「ぽいぃ!?」
<キラさんそれってまさか――きゃあー!!??>

両脇に少女二人を抱えて、コクピットハッチを開放したかと思えばなんの躊躇いもなく闇夜に躍り出た。
高度約10m。直下は当然、海。
建物なら大凡3階から4階相当な高さからの跳躍。いくらキラが特別なコーディネイターとはいえ、少女二人分の質量を抱えたままでは自殺行為に等しい蛮行。
三人分の悲鳴と共に、キラは暗闇へと落ちていく。
0376通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:31:32.84ID:5Dl/6pTn0




墜ちる、溺れる! とすぐに到来するであろう衝撃を覚悟して、響は力一杯目を瞑って息を止めた。
直後。

「・・・・・・?」

たたん、と軽い着地の感覚。ついで再度の浮遊感、そして着地。
どれも覚悟していたものよりもずっと軽々しく、溺れそうな雰囲気もまるでなく。恐る恐るゆっくり目を開ければ自分たちが、自分たちを抱えているキラが暗闇の上に、海の上に立っていることを知った。
まるで艦娘のようだと思った。この世界でこのように在れる者は、艦娘と深海棲艦だけ。ヒトデナシとはいえいつのまに自分たちと同じ能力を得たのだろうと少女は首を捻るが、その疑問はすぐに解消された。

<び、びっくりしたぁ・・・・・・。もう、そうするならそうするって言ってよっ!!>
「危うくショックで死んじゃうところだったっぽい・・・・・・」
「ごめんね。でも急いでて」

海上に揺蕩う、デュエルのシールドの上だった。
砲弾やビームを防ぐ機動兵器用大型シールドは、その面積のおかげで浮力も充分。簡易的な浮島としたそれに、キラは機体のマニピュレーターを経由して飛び移ったのだ。
抱っこされたままの響と夕立から、瑞鳳の意思を表出する携帯端末から、大きなおおきな安堵の溜息が吐き出されては闇色の波に融けていく。ともあれ、なんとか当面の危機からは脱したようだ。
振り返れば、周囲にはもう何もない。
ハッチを閉じたデュエルだけが、海底へと沈んだ。
本当なら、あの機体は自分たちを【いぶき丸】に預けた後に、コンテナ船までキラを連れていくはずだったのに。仕方の無いことだけどこうなった以上、戦闘終了後に回収するしかないだろう。

(・・・・・・ありがとう。後でまた会おうね)

それまで敵潜水艦に発見されることのないよう祈り、また、これまで自分たちを守ってくれたキラの第二の愛機に敬意を込めて、響は心の中で敬礼した。
やはり身体は動かないから、せめてとばかりに瞠目する。
相手はモノ言わぬ鋼鉄の機械人形だけど、かつて自分たちもモノ言わぬ鋼鉄の艦艇だったからこそ、いつか心が通じると信じて。
しかし、ここからどうしたものか。
確かに自身の危機は脱したが、作戦は継続中だ。はやくキラがストライクに乗って対レ級戦に参加しなくてはならないのに、浮島と化したシールドでは身動きできない。
響には解決策なんてなにも思い浮かばなかった。

「・・・・・・今度こそハンモックの出番っぽい?」
0378通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:32:13.07ID:5Dl/6pTn0
「はは、あれば良かったんだけどね。・・・・・・懐中電灯ならあるから、なんとかしてみる。見つけてもらうしかない」
<発光信号? 明石さん哨戒艦でこっちに来てくれてるのよね。それなら・・・・・・って、あれって!?>

だからこれは、ただただ恵まれていたのだろう。キラが懐からマグライトを取り出す前に、それは来た。
勢いよく波を掻き分けながら此方に向かってくる影を、響は目にする。一瞬深海棲艦かと戦慄したが、なんてことはなく、それはただの小型ボートだった。
【いぶき丸】に積載されていた、明石の操る最新鋭軍用高速ボートである。

「キラ、響、瑞鳳、夕立!! よくぞご無事で・・・・・・!」
「明石さんっ!! すいません、デュエルが!!」
「わかってます! こうなったらコイツでコンテナ船まで行きます!! 急いでください、思ったより早く阿賀野達が押されはじめちゃって!!」

感動の再会とはいかなかった。
二日ぶりに見ることになった明石はすっかりやつれ果てていて、目の下には大きく色濃い隈を作っていた。髪もボサボサで、きっと肌もボロボロだろう。そうさせてしまうほど、自分たちは心配と苦労をかけてしまったのだ。
でも、それでも気力で魂を奮い立たせ、ギラギラ光る眼光で状況を覆すべく頑張っている。
どうしてここにと問えば【いぶき丸】甲板上からでもデュエルが攻撃されたのが見えたらしく、エネルギー枯渇を危惧した明石が単独で迎えに行かなければと判断したらしい。
「大当たりでしたね」と、明石は無理矢理ドヤ顔を見せてくれた。
また【いぶき丸】は戦域から離脱するよう要請したようだ。元々あの艦に寄る必要性があったのは、工作艦明石が一刻も早く響と瑞鳳と夕立を診るためであって、こうして合流したからには省けるプロセスなのだ。
今はともかくストライクを積載したコンテナ船への合流が急務。
そんな彼女の意を組んだキラは素早くボートに乗り込むと、明石に代わって操縦席へ。一目で操縦方法を把握すればアクセル全開、五人にして四人を乗せた小型艇は一気に最高速45ノットまで加速する。
すると後部座席へ来た明石は無言のまま、今にも泣き出しそうな貌で、瑞鳳色の響を抱きしめた。
頼もしいキラとはまた違う、暖かくて柔らかい抱擁。
もう大丈夫だよと、言われた気がした。

「明石、先生・・・・・・」

あの朝の出撃から今までのことが、改めて走馬灯のように脳裏に蘇る。
事ここに至ってようやく「帰れるかもしれない」という実感が追いついた響がまず感じたものは、思ったものは、恐怖と後悔と寂しさが綯い交ぜになったもので。それがたまらなく嫌で、一気に視界がぼやける。

「明石っ、せんせいぃ・・・・・・! わたし、わたしは・・・・・・!」

そこから先は言葉にできなかった。
この二日で色々なものが変わってしまった。【強い私】ではなく【弱いわたし】として初めて接する明石に、なんて言えばいいのか解らなかった。
0379通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:34:50.94ID:5Dl/6pTn0
<ごめんなさい明石さん。心配しないでって私、言ったのに・・・・・・>
「響、瑞鳳・・・・・・よく頑張ったね。ちゃんと、絶対、直してあげるからね!」
「瑞鳳さんが謝ることなんて何もないっぽい。それだったら夕立だって・・・・・・、・・・・・・ねぇ先生、あたしは少しなら動けるから、響の修理お手伝いするっぽい!」
「ありがと夕立。それにしても響、話には聞いてたけど本当に貴女達・・・・・・てか二人とも裸みたいな格好じゃないの!? ああもう、とりあえずこれ羽織って!」

とはいえ、感傷に浸れる時間はつかの間。
二人して包帯をぐるぐる巻いただけでほぼ裸みたいな恰好であることに気づいた明石が素っ頓狂な叫びを上げると、慌てて取り出した毛布を強引に被せられた。
その途中に彼女が操縦席の方をキッと睨付けたのが、それに察知したのかキラもビクッと震えたのが妙に印象に残った。
いや、彼もちゃんと着られる服を探してはくれたんだよと擁護しようとしたが、明石は「カーテンかなにかで外套ぐらい作れたでしょうに」と聞く耳なしで。
まったくもって「それどころじゃない」間抜けな会話に、なんだかこそばゆい気持ちになった。

「・・・・・・コホン。えーっと、じゃあ響。さっそく診させてくれる? 転送できる?」
「うん大丈夫。ちょっと待ってて。・・・・・・瑞鳳姉さん?」
<せーのでやるよ響。タイミング合わせてぇ・・・・・・!>

目尻を拭ってもらいながら響は深呼吸を繰り返し、精神を整える。
コンテナ船までは、まだ少し時間が掛かる。その間にやるべきをやろうということだ。
明石がここまで来てくれたのは、手ひどく損傷した響達を修理する為。異邦人キラにより前代未聞のニコイチ修理された響鳳を分離できるか診断する為。工作艦明石が持参した工具類を傍目に、響は集中する。
今ここに、修理すべき二人の艤装はない。
デュエルに積めなかったから、あの隠れ住んでいた廃墟に置いていたのだ。
だから艦娘が生まれつき持っている超常能力、日常的に行使している不思議を顕現させる。

「来い!」
<来て!>

艤装転送。
艦娘の本体――魂であり心臓である艤装――を、意思総体を司る肉体のもとへ、どんなに離れていようとも意思一つで召喚する不思議。
いや本体たる艤装が、自由移動できる肉体を媒体に空間跳躍しているといったほうが正確か。
そういった仕組みで以て、青い光の粒子を伴って、ボート後部座席に歪な鉄塊が突如現れた。
響と瑞鳳の艤装を合体させた、響鳳としての艤装だ。
これに驚くことなく、明石は早速診断に取りかかる。そのサポートとして夕立は毛布で簡易テントを作り、光が外に漏れないようにしてから懐中電灯で明石の手元を照らす。
数分ほど、ボートの上でガチャガチャと作業音が響いた。
0380通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:37:16.33ID:5Dl/6pTn0
「どれどれぇ・・・・・・うは、なんつー無茶苦茶な・・・・・・、いやでも? んん? っあーなるほど。嘘でしょ、一見ぐっちゃぐちゃスパゲッティなのに見れば見るほど合理的って・・・・・・
でも不安定、ちょっとしたことで崩壊するかもじゃないこれってば。・・・・・・ひとまず響鳳として安定させなきゃ危険か」
「なんとかなるっぽい?」
「っぽい。ここをこうして・・・・・・よし、これなら鎮守府工廠でちゃんと分離可能! んで今は響鳳として身体を動かせるようにしてみたよ、動けないってのはマズイからね。どう響?」

工作艦として【先生】として面目躍如。あっという間かつ正確な処置だった。
バチンとスイッチが切り替わったかのように指先に、四肢に、身体に意思が漲る感覚。歪だった鉄塊もほんの少しだけ艦艇のようなシルエットになって、これまで不安定だった響鳳という存在が確定した瞬間だった。

「・・・・・・動く。動くよ! ありがとう先生」
「ん? スパシーバ(Спасибо)じゃなくて? まぁいいけど。んじゃ次は夕立ね」
「ぽい!!」
<良かったね響。もう少しの辛抱だよ>

そして。
機を同じくして。

「・・・・・・? あれって・・・・・・【いぶき丸】!? なんでこっちに!」

キラが驚愕の声を上げた。
見れば、南東へ向かい走るボートの9時方向、北の水平線に、本来キラ達が合流するはずだった――そして明石から離脱するよう言われていたはずの小型高速哨戒艦の影が見えた。
艦首を此方に向けて、みるみるうちに大きくなるシルエット。間違いなく全速力で戦闘海域に突入しようとしている。
何故?
答えは、響達が予想もしなかったところから飛来してきた。

「くぅ!?」

まるで此方を嘲笑うかのように、後方から、二発の砲弾。
戸惑う少女達に警告を放つ暇すらなく、キラはボートを急旋回させ危ういところで回避した。

「ッきゃあ!?」
<至近弾!?>
「この音、小口径砲っぽい! 5inch砲!!」

更に大きな水柱が連続で上がり、余波で船体がぐらぐらぐらりと傾ぐ。
やっと自由になった身体全身でとっさにボートの縁のしがみつき、耐える。もしも明石が覆い被さってくれていなかったら海へ放り出されていたかもしれないほどの酷い揺れだ。
0381通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:39:21.21ID:5Dl/6pTn0
それ以前に、もしもキラが操縦者じゃなかったら転覆、いや撃沈していたかもしれない。
最高速で蛇行するボードに容赦なく降り注ぐ艦砲。
とても片手間とは思えない砲撃精度に、全員が目を剥いた。

「敵の砲撃? まさかもう立て直されたんですか・・・・・・!? どんだけ無茶苦茶なんですか、レ級艦隊ってのは!」

まさか、もう【阿賀野組】は瓦解してしまったのか? 振り向けば南西へと走るボートの遙か後方で、縺れあうように戦っている影達から突出するものがあった。

「あの艦影・・・・・・ハ級!!」
<阿賀野達は!?>
「三人ともまだ健在っぽい!! やられてない! でもあれじゃ!!」

駆逐ハ級。
先ほどデュエルで撃沈した敵と同種の艦が、またしても【阿賀野組】を躱してボートを追ってきている。
後方の戦闘をよく見てみれば、敵艦隊の残存はレ級、ネ級、ツ級のみと3隻までに減っていたが、むしろその残存艦隊のほうが逆に、阿賀野達を足止めするような格好になっている。
此方にとっては対レ級だけでも命がけなのだから、その隙を突かれた。
敵は最優先目標を理解しているのだ。
状況は加速的に悪くなる。流れはレ級艦隊に傾いている。


それを妨害するように、此方に突入してくる【いぶき丸】の艦砲が火を噴いた。


自衛用にと申し訳程度に装備していた小口径速射砲と機銃での弾幕が、迫る駆逐ハ級を猛然と襲う。
【いぶき丸】には最初から見えていたのだろう、あのハ級が単身突撃してくる様を。
当たり前な話だが肉眼に限れば、通常艦艇のほうが艦娘よりも遠くを視ることができるのだ。だから非戦闘用にも関わらず、ボートを援護すべくやってきてくれたのだ。
しかし当たらない。回避される。
ハ級の大きさは大体ボートと同じ程度で、通常艦艇で狙うにはあまりに小さすぎる。ましてや夜間、ドリフトするように波を蹴立てる敵駆逐艦は易々と弾幕を躱して、哨戒艦へ反撃しながらボートを追跡してきた。
なんという執念か。
その様に響は怖気を覚え、また瑞鳳は違和感を覚えた。

<まさか・・・・・・敵はこっちが見えてるの?>
「っぽい。この精度、そうとしか思えない。じゃなきゃこんなのあり得ないもん」
「マズイですよ!? これじゃコンテナ船と合流できたとしても!」

夕立が同意し、明石が危惧し、キラが唇を噛む。
レ級艦隊は確かに精強で、そのうえ阿賀野達より数が多いが、それにしたって動きが良すぎる。
0382通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:42:36.02ID:5Dl/6pTn0
なにせ敵艦隊は何も見えない夜ではなく、まるで太陽の下でなにもかもを見通しているかのように、易々と此方の狙いの上を征くのだ。他の要因があるとしか思えない。
深海棲艦は夜目が利かないという基本事項がある。でも、もしそれを克服していたら? もしC.E.の技術を、例えばMS用センサーだとかを巨人【Titan】を通じて取り入れていたら? そう考えれば辻褄が合う。
先ほどキラが実演してみせたように、先制の長距離狙撃をしてみせたように、モビルスーツにとって夜の暗闇は「暗闇」ではないのだから。同じく閃光弾とジャミング弾の効果も半減してるだろう。
だから戦闘補助弾頭をもってしても、新型の機雷を仕掛けても敵艦隊の動きを封じきれなかったし、デュエルやボートがほぼ正確に攻撃されたのではないだろうか。
敵の増援として【Titan】やモビルスーツ、スカイグラスパーが来るかもしれないと覚悟していたが、まさか敵全体が強化されていようとは。
人類側はまだ響一人を中途半端に強化して、ささやかな特殊兵装を製造するだけでも手一杯だったというのに。
ならば台湾の深海棲艦は全て、特装試作型改式艤装と同等以上の性能を持っていると認識を改めなければならない。
人類側のC.E.技術担当の二人は悔しげに顔を顰める。
侮っていたつもりはないが、最大限警戒していたが、敵は予想以上に強く、賢い。

「チィ、どうする!?」

キラが迷うように吐き捨てる。
このまま【いぶき丸】に全てを任せて離脱するか、まずハ級を撃退すべく協力するかという逡巡が響にも伝わってきた。
佐世保側の誰かが一人でもやられてしまう前に、キラがストライクに乗らなければならない。それが今作戦の前提。だが、かといって。
ハ級と正面から戦えば【いぶき丸】は確実に沈む。
通常艦艇ならば乗組員がいる。面識こそないもののアレには人間達が乗っている。そして通常艦艇といえども、まだ認識されていないだけで、もしかしたら艦娘と同じように魂が宿ってるかもしれないのに。
見捨てることができない気持ちは痛いほど共有できた。
その時、艦首に直撃を受けた哨戒艦【いぶき丸】艦橋から光が瞬いた。
発光信号。
ススメ。ココハマカセロ。

「!! ・・・・・・ごめん!」

ハ級とボートの中間に、まるで壁になるように滑り込んだ哨戒艦に鼓舞されてボートは進む。前方には遂にコンテナ船の巨大なシルエットが見えていた。
あそこに辿り着けさえすれば。速く、早く。誰もが一心に願う。
はやる気持ちが伝わったかのように、ボートのエンジンが甲高く咆哮を響かせて。
45ノットは伊達じゃない。決死の激闘を背にたったの3分弱でコンテナ船への横付けに成功した。

「こうして見ると大きい!」
「キラ、あのクレーンへ!! あれで甲板上まで引揚げてもらう手筈です!」
0384通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 62ad-zfCe)
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2020/04/12(日) 18:43:08.21ID:5Dl/6pTn0
ボートごと籠付きクレーンに突っ込んで、引っ張り上げてもらうこと十数秒。
久々に立ち上がることができた響は、その足で広々とした甲板を踏みしめた。普段は何十何百というコンテナを積んでいるというのに今はガランとしていて、中央に佇む大きな人型を強調しているように思えた。
ここまで来るまでに、一体どれだけのモノを費やしたのか。【阿賀野組】と【いぶき丸】のおかげで、みんなのおかげで、ようやくだ。
【GAT-X105 ストライク】。明石達が8割まで修理してくれたキラの愛機が、かつてデュエルと戦ったという機体が、ここにいる。
同じ場所まで、やっと来ることができた。

「行ってきます。明石さん、みんなを頼みます!!」
「頼まれましたよ! ご武運を!!」

まだ【阿賀野組】と【いぶき丸】は健在。まだ間に合う。彼が救える。
交わす言葉も少なく、キラ・ヒビキが走り出す。
残された少女達は皆、戦場へ戻る彼を見送った。


そうなる、はずだったのに。


「――・・・・・・え?」

何故?
何故だろう?
思わぬ光景に、想像していなかった展開に頭が真っ白になった響は、ただただ現実に問うばかりな無意味な疑問に、思考を占拠された。
わからない。どうして?
何故、彼はわたし達のところに戻ってきたのだろう?
何故、彼はわたし達を突き飛ばすのだろう?
何故そんな、さっきまでよりずっと怖い顔をして――


――そこで、響の意識は一旦途絶えた。


最後に彼女が視たものは、現実味のないスローモーションのなかで。
砲弾の直撃でめくり上がった甲板や様々な残骸の数々に、呆気なく呑込まれていくキラの姿だった。
0385ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 62ad-zfCe)
垢版 |
2020/04/12(日) 18:45:27.39ID:5Dl/6pTn0
以上です。
ようやく書きたいシーンまでの繋ぐことができました。ライブ感()で書いてるものですから、どうにも矛盾のない状況の構築に手間取ってしまいました
0387ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ 9fad-xa8R)
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2020/04/15(水) 03:40:39.16ID:7jg8hWAi0
楽しみと言っていただき、ありがとうございます。
ですがすいません、今回投下した話の最後を、以下のものに差し替えさせてください・・・
うっかり修正前のものを投下してしまいました。

----

何故、彼はわたし達のところに戻ってきたのだろう?
何故、彼はわたし達を突き飛ばすのだろう?
何故そんな、さっきまでよりずっと怖い顔をして――


――そして、響はソレを視た。視てしまった。


現実味のないスローモーションのなかで。
砲弾の直撃でめくり上がった甲板や様々な残骸の数々に、呆気なく呑込まれていくキラの姿を。

----

今度こそ、以上です。
また次回の投下から、文章形式を変更します。
0389通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
垢版 |
2020/06/16(火) 14:09:55.74ID:zXqOza4K0
――艦これSEED 響応の星海――


 ついさっきの、一瞬の出来事だった。
 今や哨戒艦【いぶき丸】と相打ちになって沈んだ駆逐ハ級、その最後の砲撃がコンテナ船を射貫き、大量の破片を伴ってわたし達を襲った。
キラにしてみれば迫り来る鉄の雪崩から護るか、見捨ててストライクに乗るかの二者択一、二律背反の出来事だった。
 結果、彼はわたしと明石を突き飛ばして、夕立を抱きしめて、残骸に呆気なく呑込まれた。
 それを視てしまった。
 わたしはもう、何も考えることが出来なくなった。
だってどう見たって致命傷で、またわたしなんかを庇って。一体何度、同じ過ちを繰り返すのか?
 カチカチと口元から音がする。ドクンドクンと耳元から音がする。脚が生まれたての子鹿みたいに震え、股座が生暖かく濡れて気持ち悪い。
この世界に生まれ落ちてから何度も目にした光景が、先日にも目にした惨劇がフラッシュバックする。瑞鳳のおかげで辛うじて繋ぎ止めていた【わたし】の魂が壊れるには、充分過ぎる――
 頭が真っ白になった。
 なにも考えることが出来なくなった。
 けれど……いや、だからこそ、なのかもしれない。
 その声は、まるで世界を満たすようにして、わたしに刻まれた。
 

「響。君が、君達だけが、頼りだ。お願いだ……僕に出来ないことを、託させて」


 本当に言葉だったのかは、わからない。不思議な感覚だった。
 彼の言葉だったのか、声なき想いだったのか、もしかしたら幻聴や妄想の類いなのかもしれない。でも確かに声が聞こえたから、響いたから。
 真っ白になった【わたし】に、それだけが残った。自身の中で考えを纏める過程もなく、たった一つの道標が残った。
 現実を見据えるハリボテの勇気は、今この胸にある。
(――きっ――びき! ……響!! しっかりして!!)
「……大丈夫、だよ。大丈夫、わたしはもう止まらないから、瑞鳳姉さん」
(え……?)
 大きな深呼吸一つ、ゆっくり瞬き二つ。
 まるでテレパシーのように思考に響く瑞鳳の呼びかけに、自失から醒めたわたしは自分でも驚くぐらいの冷静さで応えた。
 次第に思考が定まり、焦点が定まり、視界がハッキリする。
 コンテナ船の甲板上だ。いつしか転がっていたわたしの視界に広がっている光景を、ハッキリ認識する。目の前には鉄屑の山があった。さっきまで自分たちがいた所に、コンテナ船の破片で築かれた山があった。
 これの下にキラがいる。
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2020/06/16(火) 14:12:03.91ID:zXqOza4K0
「ッ……ぅ、ぐぅ……!」
(響……!?)
 意味もなく叫びたくなる衝動を、胸元に巻かれている包帯をぎゅっと鷲掴んで堪えた。
 代わりに、軋んで痛む身体を、瑞鳳の声を支えにして立ち上がらせる。握りしめた拳からじわり溢れたものが包帯を紅色に染める。そして眼下にあるキラの姿を、改めて直視する。
 その姿はさっき見た時となんら変わっていない、地獄めいたものだ。
 倒れ伏した彼の下半身は完全に埋もれていて、露出している上半身の至る所に破片が突き刺さっている。脇腹から鉄管が飛び出している。死んでしまったかのように動かない彼が、そこにいる。
(酷い……こんな、はやく手当しなきゃ……!)
「……」
 けど。
 けれど。
 まったく別の視点で見れば。言ってしまえば。たったそれだけで、済んでいた。
 大丈夫、気絶しているだけだ。浅いけど呼吸もしている、死んではいない。キラは普通の人間じゃないんだから、わたし達と同類なのだから、これぐらいの傷じゃ死なない。
 そして彼の下敷きになっている夕立は気絶こそしているものの怪我はなさそうで、少し離れたところで倒れている明石も同様。わたし達も無傷……
 そうだ、彼は「今度こそ護りきれた」のだ。
 思い出す。
 昨夜、彼が語った昔話を思い出す。
『結局僕はさ、フレイを護れなかった。僕が傷つけて、彼女を孤独にした元凶のくせに……彼女を護らなきゃいけなかったのに、いっぱいいっぱい泣かせちゃったのに……
僕が全部悪いのに、殺してしまったようなものでさ。多分それが今の僕の……根っこになってるんだと思う』
 はじめて知った、彼の過去。
 戦いたくなんてないのに戦わなくちゃいけなくなって、沢山の罪を背負い、それでも戦うと決めた理由と想い。それでも護れなかった命の数々。それでも奪ってしまった命の数々。フレイ・アルスターという少女の存在。
 きっと彼がこの世界でも戦う道を選んだ、わたしを気にかけてくれるようになった、起源とでも言うべき半生、トラウマ。
『怖いんだ、誰かを護れないことが。怖くて恐くて仕方なくて、だからかな、戦う力が手放せなくなった。僕の戦う理由なんてそんなものだよ』
 そう締めくくった苦笑した彼の貌に、見覚えがあった。毎日鏡で見てきた顔だった。
 この男もまた、わたしと同じように、己のことが嫌いで赦せない人間だと確信した。
 経験も価値観も主義主張も何もかもが全然違うのに、どこか、君はわたしに似ていると思えた。


 だからわかる、共感できるんだ。彼の選択の全てを受け入れて、肯定できるんだ。


 彼に迷いなんか無かった。後先考えることなく身体が勝手に動いて、二者択一だとしても二律背反だとしても迷うことはなく咄嗟に……キラ自身が後で冷静に思い返すことがあったって、
絶対に同じ選択をするって言うんだろうなと想像できた。
わたしが死神だとか関係なく、彼は彼の為に選択したんだ。そこに後悔が介在する余地はない。
0391通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:14:21.19ID:zXqOza4K0
 ならば継がなければ嘘だ。託された意思を、力を、想いを、たった一つの道標へ乗せて征こう。
 ここからはわたし達の道だ。
「姉さん、キラの治療は先生に任せよう……、……わたし達には、やらなきゃいけないことがあるよね。手伝ってほしいんだ」
 目指す先はただ一つ、はじめの一歩を踏み出して。己の怯懦を、臆病を踏み潰すような一歩を、踏み出して。雲が晴れて暁色に照らされつつある甲板上をしかと進みながら、やるべきことを瑞鳳に語った。
(それは……、……だけど響、ねぇ響、本当に大丈夫なの……?)
「わたしはずっと護られてた。護ってくれてた。キラはわたし達を護って、託した。だったら今度はわたしの番なんだよ」
 そしてもう一つ、キラに護られて解ったことがあった。
 いや、ようやく気付けたというべきか。それはあまりにも身近過ぎて気付けなかったのか、それともただ単に呆れたくなるほど鈍感なだけだったのか、
それとも気付けたと思い込んでいるだけな恥ずかしい自意識過剰なのかは、わからないけど。
 ともあれ、わたしには一つの理解があった。
 つまりこの身は瑞鳳に愛され、夕立に育まれ、キラに護られたものなのだと。
 わたし自身にとって「生まれてこなければよかった。ここからいなくなりたい」という心境は変わっていないし、自分が赦せなくて大っ嫌いなままだけれど。
でも大切な人達に大切にされたこの身を、大っ嫌いの一言で片づけるのはあまりに悲しいことではないか、もう少し自分を好きになっても良いのではないかと、今になって初めて思えたのだ。
 だから、前へ進むと決めることができた。
 自分がこれからやろうとしていることに恐怖を感じているのは、紛れもない真実。【私】という仮面が砕けた今、わたしにとって戦うという行為は純粋に恐ろしいことだ。
 けれど、みんなを助けたいって気持ちのほうがどうしたって強いから。ここで戦えないほうが、ずっと辛いから。もう青臭いことを四の五の言っている段階じゃないんだ。
 わたしは【わたし】のまま戦う。その覚悟はある。死神め、来るなら来てみろ。
(……わかった、ならもう何も言わない。私達がやれることをやるしかないなら、全力でサポートするから)
「……ありがとう、ごめんね」
(謝らないで、こうなったら私も腹くくるわよっ)
 いつしか、わたしの隣には真っ赤に染まった瑞鳳の幻がいた。透明に澄んだ紅色、己の内側を巡る血のような姿。
でも悍ましさはなくて、己の内に彼女が在るという頼もしさを感じる姿だった。きっと身体を共有している彼女の「一緒に戦おう」という意思が、わたしに幻を見せてくれているのかもしれない。
 心配してくれる瑞鳳の労りが、意を汲んだうえでの気遣いが、涙が出るぐらい嬉しかった。彼女は本当にいつも優しくて、いくら感謝してもしたりない。
 絶対に生きて帰って、みんなに恩返ししよう。
 決意を新たにわたしは前を向く。そこには、目前には片膝ついて待機している鉄灰色の機械人形――ストライクの威容があった。
 さぁ、現実を見据えるハリボテの勇気で、精一杯の強がりで、キラが出来なくなったことをやろう。



《第21話:Follow me,Follow you》
0392通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:16:45.86ID:zXqOza4K0
 展開していた胸部中央装甲から垂れ下がった乗降用ケーブルを掴むと、響の小さな躰はあっという間に機体腹部のハッチまで導かれていった。目前にはキラが座るはずだった無人のコクピットがある。
 ここから西の海を見れば、すぐ近くに艦首からゆっくり沈んでいく【いぶき丸】の姿を確認できた。
 あの艦は、轡を並べて戦ったことは少ないけど確かに戦友と呼べる彼女は、奇跡と言っても過言ではない偉業を成してくれた。
相打ちになってしまったとはいえ、一対一で通常艦艇が、それも非戦闘用艦艇が深海棲艦を沈めるなんて人類史上初に違いない。
 艦の周囲には多数の救命ボートも確認できる。最新型だけあって少人数で操艦できる設計で、パッと見る限りクルーの殆どが退艦できているようだ。
とはいえ流石に死傷者0ではないだろう、二人で犠牲になった艦とクルーの冥福を祈る。
「はやく終わらせなきゃ、こんなことはもう」
(うん。私も同じ気持ち)
 ここからはわたし達の戦いだ――そう決意を新たにコクピットシートに身を預けた響はさっそく電源を入れて、朧気な記憶を頼りにボタンをたどたどしく押していく。
実は身長が足りるかと少し不安だったが、四肢はなんとかレバーやフットペダルに届いてくれた。瑞鳳と融合した副産物で少し身体が大きくなっているらしい。
 ストライクに乗るのは三度目になる。
 一度目は11月3日の防衛戦で、左腕を負傷したキラと共に機体を駆った。二度目は11月13日、瑞鳳と一緒に機体調整中のキラへお菓子を届けにいったら、
紆余曲折の末に三人ともストライクのコクピットに閉じ込められるというトラブルがあった。その前日12日に艦娘全員が操縦適性検査としてデュエルに乗ったことがあったから、
モビルスーツに乗るという意味ではこれで計五度目になるか。
「APU、CCU起動確認、ハッチ閉鎖……ええと、次は……」
(あっ響、それ違う。右隣の……そうそれ)
「ありがとう。こういうの得意なの?」
(まぁね、空母だからかも? 起動手順だけならちゃんと覚えてるから安心して。いい、私の言う通りに……)
 機体心臓部から発する駆動音が高まり、隣の瑞鳳の指示通りに機体制御システムを立ち上げるとメインディスプレイにシステム名が流れるように浮かび上がった。

 ――General
   Unilateral
   Neuro-Link
   Dispersive
   Autonomic
   Maneuver ――

「……ガン、ダム……?」
 五度目の搭乗になって、これまで気にも留めていなかった文字列の頭文字が縦読みできることに気付く。
意味はわからないし、だからなんだというわけでもないが、無意識に呟いた単語にはなんだか誂えたような厳つさがある。
 まったくもって場違いだけれど、現実逃避だけれど、ペットネームと合わさればストライク-ガンダムとなってちょっと格好いいかもと思った。
0394通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:17:51.80ID:zXqOza4K0
(? どうしたの?)
「あ、いや……なんでもないよ、準備急ごう。神経接続イニシャライズ、リンクスタート、操縦補助システム更新……」
 計器類に煌々とした光が灯り、モニターが夜明け近い空と海を映し出す。
 戦況はどうなっているのかと確認しようとすれば、搭乗者の視線を検知したのか頭部光学センサーが自動で【阿賀野組】をフォーカス、ズームアップ。
後退しつつもまだ粘ってくれている【阿賀野組】の奮戦を見て取れた。状況は3対3、数こそ互角だがいよいよ防戦一方になっていて、戦艦レ級と重巡ネ級と軽巡ツ級の飽和砲撃から危ういところで回避している有様だ。
いつ撃沈してもおかしくない。
 それでも彼女達はキラが、ストライクが来てくれること信じて立っている。
 一刻も早く戦闘に介入しなければ!
 逸る気持ちを抑え、響はキラに教えてもらったショートカットを実行して機体制御OSを初診者(ナチュラル)用のものへと切り替える。
これで一応、以前少しだけ試させてもらったことがあるキラ用OSのままよりかは多少マシに、自分でも走って銃を撃つことができるように、なるはず。
 戦場を甘く見ているわけでも、己の実力を過信しているわけでもなく、少女は知っていた。走れて銃を撃てさえすれば戦えるのだ、どんなに不格好でも、不慣れでも、不利でも。
モビルスーツは人類が開発した汎用兵器、ならば戦えない道理はない。
 とにかく必殺のビーム兵器さえ当てれば。それだけを一縷の望みに、最後のボタンを押した。
「主動力コンタクト、パワーフロー正常。全システム……オールグリーン!」
(ストライク、戦闘ステータスでシステム起動! フェイズシフト装甲展開!)


 果たして、遂にストライクが蘇る。


 鉄灰色の巨人の瞳に光が灯り、装甲全体が鮮やかなトリコロールに色づいた。
 ここで響は外部連絡用スピーカーを有効化し、マイクを通じて明石へ語りかけた。まだ鉄屑の山の近くで気絶している彼女を起こすために、滅多に出さない大声で。
「先生、明石先生! お願い、起きて……!」
<――ぅ? ……ぁ……あっ! 響!? なにがどうなって……てか何処!?>
 幸いにもすぐに目を覚ましてくれた明石はバネ仕掛けみたいに飛び起き、声の主を探して周囲を見渡した。
 そんな彼女にたたみ掛けるようにして言葉を重ねる。一語一句ハッキリと、重く強く、意思をぶつける。響が【わたし】としてここまで語意を強めたのは、かつて提督に横須賀に行きたいと我儘を言った時以来だった。
「明石先生。ストライクには、わたし達が乗る」
<……は?>
「キラが怪我したんだっ。瓦礫に埋もれて! 救出と治療を、早く!」
 聴覚センサーが律儀に拾った明石の呆けた声がコクピット内に反響するが、構わず言いたいことだけ言い放つと問答無用でスピーカーを切る。話し合って説得したり納得したりするだけの猶予はない。
 懸念事項は消えた。
(響、もう限界みたい!)
0395通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:20:18.06ID:zXqOza4K0
「わかってるっ……アクティブセンサー出力最大、全兵装セーフティ解除。長距離射撃で注意をひく! 姉さん、撃ったらすぐに距離を詰めるよ。姿勢制御マネージャの呼び出しを!」
(了解!)
 シート背後からせり出した精密照準用スコープを覗きこみ、機体は片膝立ちのまま右手のビームライフルを西へ向けさせた。とにかく存在感を示せればいい。
初撃命中なんてありえないし、万が一にも阿賀野達に当ててしまうわけにはいかない。照準を敵艦隊上空辺りに定め、一拍おいてコントロールスティックのトリガーを引き絞る。
 発砲。
 大雑把に放たれた荷電粒子の矢が大気を虚しく灼いた。両艦隊の動きが一瞬ピタリと止まったかと思えば、いち早く【阿賀野組】が全力逃走の姿勢をとる。
それでいい、阿賀野達に逃げろとデュアルアイを瞬かせた発光信号で伝えてもう一射、次は手前の海面へ。レ級達がこちらをターゲットした気配が伝わってきた。
 間に合ったか。
 あとは【阿賀野組】を安全圏まで逃がしつつ、敵を殲滅する。一度目にストライクに乗った時とは似たようでまったく逆の任務内容に心臓が早鐘を打つが、やると決めたからには。
 ――やってやる!!
 気合い新たにスティックを軽く捻り、スロットルレバーを最大まで押し上げて、ペダルを力強く踏み込む。


 片膝立ち姿勢からの跳躍を命じられたストライクが、響の入力通りに、響の意図したものから外れた角度と速度でコンテナ船甲板上から飛び出した。


「……え!?」
 操縦系が、少女らが想定していたものよりもずっと敏感だった。そのうえ速度が出ていない、遅い。マズイと悠長に考える間にも機体はどんどん傾いでいく。
高度40m、跳躍の頂点に達した時には既に、モニターは天地真逆な東の海を映していた。機体が縦半回転している。
(リカバリー! 体勢立て直して!)
「ぐッ!? こんな……これは!?」
 落下。
 このままでは頭から海に突っ込んでしまう。真っ逆さまな重力に混乱しながらも背部スラスターと膝部スラスターを噴かせて更に縦半回転、危ういところで海面に両足から着水させ――
 警告音。
 敵からの一斉砲撃にアラートが喧しく喚き、あっという間に響の判断力を奪っていった。
「!?」
(ダメ、響!!)
 反射的に踏み込まれたペダルにより、今度はほぼ垂直に打ち上がるストライク。
 やはり加速力は記憶にあったものより鈍っているが、それでもGに備えていなかった響の身体はあまりに乱暴な機動のショックに耐えられず、
無意識に四肢で踏ん張ろうとして――結果両手のスティックが滅茶苦茶に動かされ、その追加入力を機体は忠実に実行。呆気なく制御を失った機体が、空中で軸のズレた独楽のように回転した。
0396通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:22:23.59ID:zXqOza4K0
「わぁあぁああぁああああああ!?」
(きゃぁあああああああああぁ!?)
 以前の響ならしなかったような初歩的なミスに、コクピットはさながらシェイカーのような有様。とはいえノンキに絶叫していれば解決するものでもない。
幸いにも敵の砲弾は当たらなかったが、これではただの的どころかピエロだ。
 すっかり混乱しきってしまったパイロットをフォローすべく、コ・パイロット役になった瑞鳳が叫ぶ。流石にこれまで数多の艦載機を操っていただけあって、こういう時でも冷静だった。
(一旦力を抜いて!)
「……!」
(よぉし……! カウントスリーで背部メインスラスター全開! さん、にぃー、いち……今!!)
 そして響も響でこれまで重ねた経験そのものは紛れもなく本物であり、自身の躰をコントロールする達人であり、強引なブーストで制御を取り戻してからの順応と学習は早かった。
 ただしその代償にメインスラスターはオーバーヒート、冷却しきるまで使用不可能。再び警告音、脚部スラスターを噴かし着水したストライクめがけて砲弾が殺到する。
 被弾。身を捻らせて弾幕の殆どをやり過ごしたが、レ級の16inch砲弾が右肩に命中、右腕が付け根から千切れ飛んだ。
「しまった!?」
(嘘! フェイズシフト装甲なのに!?)
「他に武器は……!」
 一定のエネルギーを消費することにより物理的な衝撃を無効化するPS装甲だが、流石に戦艦の大口径砲相手ではフレームが保たなかった。
たった2発撃っただけのビームライフル諸共に虚空へと消えた右腕を尻目に、鎖骨が軋むようなGに耐えて海面との激突を避ける。
 最大の攻撃手段が潰えた。
 スロットルを絞ってホバー走行モードに切り替え、敵の追撃をぎこちなくとも必死に回避しながらコンソールを弄って使える武器を探す。ここで響は先ほどから抱いていた違和感の正体を知った。
「ッ!? そうか、エールストライカーパックが……!」
(本体内蔵スラスター出力も7割下回ってる! こんなんじゃ……!)
 失念していた。この機体はあくまで、明石曰く8割までしか修理されていないのだと。偶然見つけた本来のスペックと現在のスペックの比較数値に二人は息を呑む。
 ストライクの機動力の要、空戦を可能にさせるエールストライカーパックが装備されていなかった。
 間抜けもいいところだ、搭乗する前に気付いて然るべきだった。しかもスラスター出力も若干制限され、機動性はかつての防衛戦時よりも低下している。
速度が出なかったのもあっという間にオーバーヒートしたのもこの為だったのだ。
 不備は防御力も同様だった。生産が間に合わなかったのだろう、PS装甲は機体前面部にしか装着されておらず、後面部は艦娘用装甲材である汎用霊子金属で代用しているらしい。
本来なら無重力空間でしか精製できないというPSマテリアルをこの短期間で復元・複製できているだけでも驚嘆に値するが、なんにせよ心許ないことに変わりはない。
 代わりにフレームと動力系は万全に仕上げてあるようだが、こんな仕様で戦場を戦い抜くにはきっと未来予知能力が必要不可欠だろう。
「くぁ……!? クソ、これ以上好き勝手されてたまるか!」
0397通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:25:25.67ID:zXqOza4K0
 またも被弾、中口径砲が腹部に命中。いつしかレ級ら3隻は秩序だった絶え間ない速射で圧倒してきており、
ギクシャク不格好に走るしかないストライクでは回避が一層困難になってきて、立て続けの被弾でエネルギーを半分以下にまで減らされた。フレームの負荷も相当だ。
 反撃に、後腰部にマウントされていた76mmアサルトライフルを撃つ。しかし距離があるうえに、お互いが目まぐるしく動いている。
おまけに敵が小さすぎるものだからまともに照準を定められやしない――18mの巨人が人間大の的を狙うとはどういう意味かを、肌で理解した。これでは牽制にもなりやしない。
 でも泣き言は吐かない。走れて銃を撃てさえすれば戦える、どんなに怖くてもキラの代わりに戦うと決めたのは自分自身の意思だ。
 賭けに出るか。
 残る武装は三つ。基本装備の75mm対空自動バルカン砲塔システム・イーゲルシュテルンに、折り畳み式戦闘ナイフ・アーマーシュナイダー。そして、
「サーベルさえ当てられれば、あんなヤツら……!!」
 左側腰部には高エネルギービームサーベルがマウントされてある。以前ウィンダムに切り刻まれた光景と恐怖が蘇って吐き気がするが、コイツなら敵を倒せる。この剣一本だけが最後の希望だった。
 しかし。
 しかしどうやって間合いに入ればいい? こうも集中砲火に晒されて、キラならきっとストライクの運動性を活かして近接戦に持込めるのだろうが、響の操縦技量では到底不可能だと思えた。
 ――駆逐艦娘の響なら、簡単に懐に飛び込めるのに。今のわたしなんかにできるのか……?
 その逡巡を察知したのか瑞鳳が冷静になってと咎める。
(ダメだよ、一旦退こう! このままじゃやられるだけよ!)
「……ッ……確かにこのままじゃ、退かなきゃわたし達が死んじゃう、か」
(コンテナ船も阿賀野達も安全圏に離脱したよ。だから!)
 瑞鳳の言い分は正しい。ここで逃げ惑って拘泥していても状況は悪化する一方だ。
 丁度、真後ろには福江島海岸が、陸地が、つまり少しは身を隠せて落ち着けられる場所がある。そこへ一旦退いて体勢を整えるのがベストだろう。佐世保主力艦隊が帰還するまで時間稼ぎすることもできるかもしれない。
「けど、だめだ!!」
 それを解っていて、響は前進した。
(響!?)
「退かなきゃ死ぬけど、退けばもうここまで近づけなくなる。チャンスは今しかない。なら、掴むよ!」
 ストライクの機動性は、回避能力はもう敵に読まれているはずだ。敵はあのレ級なのだ。ここで退けば、二度と距離を詰めるどころか囮として回避に徹することもできなくなると、
これまでずっと近接格闘戦をしてきた経験と勘が叫んでいる。
 長引けば長引くだけ不利なのだ。
 既に彼我の距離は、ストライクのフルブーストで詰められるギリギリの間合い。勝機は初撃の一太刀のみ。ここで仕掛けるしかない。
 正念場だ。ならば今この場この瞬間で、不可能を可能にする!
「姉さん、メインスラスターの冷却は!」
(ッ……クールダウン完了! 確かに、ここでやんなきゃ意味ないわね!)
「いくよ!!」
 スロットル全開、推力最大。
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2020/06/16(火) 14:27:07.57ID:zXqOza4K0
 先程までよりかは熟れた操縦でほぼ一直線、アサルトライフルと頭部機銃をバラ捲いて強引な突撃を敢行。極限まで高まった集中力のせいか、遠くの敵艦隊が少し慌てたようにする様がいやに鮮明に見えた。
 とにかく致命的なレ級の攻撃だけはなんとしても避けなければならない。いや、ツ級とネ級の中口径砲でも当たれば機体は蹌踉ける、動きが鈍る、つまり一発たりとも被弾は許されない。
 回避しきる自信はない。そもそも此方は18mの巨人、近づけばそれだけ避けにくくなる。なら敵に攻撃させないようにするしかない。まったく当たる気配のない機銃では役に立たない。
 キラならこんな時どうする――閃くや否やアサルトライフルを放棄し、左側腰部装甲内に収納されたアーマーシュナイダーを手に取ると、神経接続型操縦補助システムが響の運動イメージをトレース、
感覚のままスティックを操れば機体がサイドスローの要領で投げつけた。当たらなくてもいい、MSにとっては小型のナイフでも人間大にとっては巨大な構造物、目眩ましになってくれれば。
 果たしてブーメランのように飛翔するナイフは、しかし敵艦隊にまでは届かずその手前で盛大な水飛沫を上げるだけだった。けれど数瞬だけ敵の動きが止まった。
 ――やれる。
 跳躍、高度100m、敵艦隊直上まで一息に舞い上がる。相手は此方を見失っている。左腰からサーベルを抜き放ち、急降下。直前で気付いたネ級の砲撃を紙一重で避けて敵に肉薄。
「ぅらぁあああああああ゙あ゙あ゙ッ!!」
 雄叫びを上げて縦一閃。荷電粒子の光刃がしなって加速し――
 ――戦艦レ級が、一歩、前に出た。
 何かがおかしいと、響は感じた。酷い違和感。徐々に停滞していく時間のなか、徐々に加速していく思考で、無意識に感じ取ったモノの正体を探る。なんだ、何かが、おかしい。
 相手はレ級、これまで何度か報告書で見たことのある量産型深海棲艦。龍の顎の如き凶悪な尻尾と、いっそ清々しいほど可愛らしい笑顔が特徴的な、黒いパーカーを羽織った少女のような姿をした悪魔。
そいつの出で立ちは報告書のものとまるっきり同じで……、……いや、これは……!?
 答えを知る直前になって違和感は途切れた。断絶していた時間と思考が合致し、等間隔を取り戻した世界は結果だけを提示する。


 振り下ろした必殺のビームサーベルが、レ級の掲げたシールドに止められた。


「――……なッ!?」
(アンチビーム、シールド!?)
 ヤツの左手に、見慣れぬ黒い大型楯。あんなもの他のレ級は装備していなかった。間違いなく対MSを意識した装備。否、既にストライクとデュエルに辛酸を嘗めさせられてきた敵なら装備していて当たり前の代物。
 この可能性に気付いてなきゃいけなかった……!
(避けて!!)
「くっそォ!!」
 レ級の尻尾の先端、誰が呼んだかドラゴントゥース(龍王の牙)の異名をとる砲架が蠢き、16inch三連装砲と12.5inch連装副砲二基が火を噴いた。
計7門の砲口、一斉射。これを咄嗟のバックステップで回避しきり、続けてのネ級とツ級の攻撃は逆に前進して躱す。
0400通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:28:24.09ID:zXqOza4K0
 前進して、今度は足下を刈り取るような格好でサーベルを振るうが、あえなくこれも受け止められる。MSの膂力をもってしてもアンチビームコーティングされたシールドはビクともせず、どころか弾き返されてしまった。
予想もしていなかった事態と反動にストライクの体勢を崩しそうになるがなんとか堪え、勘だけで全力の垂直上昇、追撃を躱して再び敵艦隊の直上へ。
 ここにきて響は、目の前が暗闇に覆われるような気分になった。
 まずい。打つ手がない。
 先の一太刀は、これ以上ない渾身の一撃だった。敵の不意を突けたからこその。けどもう手の内を全て晒してしまった、同じ手は通用しない。
またあの濃密な砲火を掻い潜り、レ級のシールドをも掻い潜って一撃を入れられる未来が、見えない。
 いや違う、そもそも防がれたのは、レ級が此方の行動を想定していたからだ。
 どうしよう、どうすればいい、失敗してしまった。瑞鳳でさえ貌を硬直させて戦慄くばかりで、どうするのが正解なのか解らなくなった。
「ぅ、ぁ」
 ハリボテの勇気が砕け、精一杯の強がりが砂塵と化す、その一歩手前まで戦意が萎縮する。
 その時。
 またも時間が止まるような感じがして。
 何故か。
『……ねぇ、響。ストライクもね、不死鳥って渾名を持ってるんだ』
 何故か、響は脈絡なくかつてキラが言ってたことを思い出していた。
 ああ、最早懐かしい。
 あの時もどうしようもない暗闇の中で溺れてるような感覚に襲われて、彼は【私】の決まり文句とストライクの経歴にかこつけて根拠のないジンクスを嘯き、精一杯強がったのだ。
 不死鳥だから、きっと大丈夫なのだと。
 不死鳥。
 あぁ知ってるかい、キラ。わたしは大っ嫌いなんだ、その渾名は。そんな、己の過去の象徴するものは。大っ嫌いなんだよ。
 ――でも。
 でも、だ。
 初めて、でもと思う。
 大っ嫌いだけど、でも不死鳥は、不死鳥とは不屈だ。何度やられても立ち上がる、勇気ではないかと、これもまた今になって初めて思えた。それがなんだと言われたら、なんだろうねと苦笑するしかないけれど。
 本当に、戦ってる最中になにを思い出しているんだろうなと、響は困ったように微笑んだ。
 モニターは敵が此方に照準を定める様を鮮明に映していて、とても笑っていられる場合じゃないのに。走馬灯か、あまりに困窮した状況に現実逃避したいだけなのかもしれない。
 そうぼんやり結論づけても、回想は、声は続く。
『響。ちゃんと君は、僕が守る。絶対にやらせはしないよ』
 それはあの日から一度も忘れたことのなかった、一度も耳から離れなかった、彼の誓いの言葉。
0401通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:30:43.59ID:zXqOza4K0
 それが鮮明に蘇った瞬間、今この瞬間。天からの贈り物であるかの如く。バチンとスイッチが切り替わったかのように指先に、四肢に、身体に意思と力が漲る感覚が、来た。


 少し前に感じたものと同種の、けれどもっと大きなもの。何ができるのか、何をすべきかという理解が稲妻のように煌めく。これは――
「…………!!!!」
(!! これって!)
 ――これは、力だ。
 何もかもがクリアに感じられるような万能感。響と瑞鳳は互いに見つめ合ってから頷くと、いきなり脳裏にインプットされた知識に従って、知らないはずの操作を素早く実行する。
 ハッチ解放。
 空中にいるストライクの腹部装甲が展開し、目の前にはモニター越しじゃない雄大な蒼穹、そして嗅ぎ慣れた潮風の息吹。響と瑞鳳が、いるべき世界。
 そこへ二人にして一人の少女は躊躇いなく、予定調和の如く飛び出した。
「やろう、姉さん。二人で」
(違うよ響。きっとみんな、なんだよ)
「そうだね。うん、きっとそうだ」
 艤装転送。


 艦娘が生まれつき持っている超常能力、日常的に行使している不思議を顕現。
 艦娘の魂であり心臓である艤装が、青い光の粒子を伴って背中に装着される。


 同じくして左手に顕れた和弓に『矢』を番え、キリリと弦を鳴らし。
 矢の先端に青い光が灯り、背後のストライクもまた青い光に包まれ。


 下方、海面に向けて、射る。
 勢いよく放たれた矢は一拍置いて火焔に包まれ、凝縮のちに膨張、レ級達をも巻き込んで世界が青に染まり――


「特装航空駆逐艦、響鳳――推参つかまつる……!!」
<私達とストライクの本気! 見せてあげるんだから!!>
 キラの操縦に勝るとも劣らない優美な飛行を披露する、人間大にまで小さくなった【GAT-X105 ストライク】を伴って。
 右手に大型斬機刀グランドスラム改を握った瑞鳳色の響、響鳳は、いざ新たなる力を以てしてレ級艦隊へ躍りかかった。
0402通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:33:08.35ID:zXqOza4K0




 L計画。
 LはLeave、立ち去ることを表わす。即ち、いつか何らかの事情でキラだけがいなくなった場合に備えて、残されたストライクやデュエルを艦娘達だけで運用するためのプランだ。
 戦闘の申し子と言える艦娘達だが、意外にもモビルスーツの操縦は不得手だった。元艦艇という出自があるからだろう、自身の手で巨大な人型が動くということが上手くイメージできないのか、
初心者(ナチュラル)用OSでも少女達にとっては難度が高いのだと11月12日の操縦適性検査でわかったのだ。例によって夕立と響は一応適応できたのだが、それでも他人よりはまだ良いというレベルだった。
 無論ちゃんと訓練すれば相応の戦力になれるだろうが、この状況下で訓練時間を確保できるか怪しいし、そもそも自力で戦える艦娘がパイロット役も担うのは現実的じゃない。
かといって【キラの艤装】として登録することで人間社会の厄介ごとを免れているストライクとデュエルに、普通の人間を乗らせるわけにもいかない。
 そして少女らが操縦法を習熟しないうちに、キラがいなくなってしまう可能性も0ではない。そうでなくてもキラは二機を同時に操ることはできないのだから、貴重な戦力を遊ばせないという意味でも対策が必要だ。
 そうした問題を解決し、艦隊が独力でモビルスーツの力を行使するための鍵がL計画なのである。それはキラと明石が徹夜で考え抜いたことで、起動実験こそしてないものの13日にはストライク用のものが完成していた。


 結論を言えば、これの実装によりストライクを航空母艦級艦娘の艦載機として使役することが可能となる。


 理論上では、他のレトロなレシプロ機と同じように矢や式神を媒介として、小型化した機体を召喚、艦娘の思考だけで遠隔操作することができる。
 問題は艦娘側のMS操縦技量だが、そもそも今まで艦載機として使役されてきたレシプロ機だって空母級艦娘が実際の操縦法をマスターしてるわけではないのに意のまま操っているのだから、
MSも例外ではないだろう。発艦さえすればすぐに熟練パイロット顔負けな機動ができるようになるはずだ。
 もちろん、これを実装するには艦娘側にも専用の大規模改装が必要になる。これまで通りに無数の艦載機を操れなくなる代わりに、たった一機のMSを操れるようになるための改装が。
故にこの力を誰に託すかは、今この時までキラも明石も決めあぐねていた。
 そう、今この時までは。
「……なんとか、間に合った……のかな?」
「ええ、きっと……いや絶対。間に合いましたよ、キラ!」
「そっか……なら、よかっ――」
 他に選択肢はなかったし、これこそがベストだった。だから無我夢中にやった。


 モビルスーツ搭載型特装空母への改装作業。コンテナ船甲板上に置き去りになっていた響鳳の艤装を、キラと明石はたった数分で特装航空駆逐艦として仕上げたのである。


 その艤装が転送される様を見届けると、なんとか鉄屑の山から脱したものの全身に刺さった破片や鉄管をそのままに作業を強行したキラは、プツンと糸が切れたようにして意識を手放した。
「キラ!?」
「明石先生、あったよ治療キット! 早く治してあげなきゃ!」
「夕立! ここで施術する、手伝って!」
「言われるまでもないっぽい……!」
 その時丁度コンテナ船内に治療器具を探しに行っていた夕立が戻ってきて、明石は休む間もなくキラを助けるべく緊急手術に取りかかった。
 彼自身が望んだこととはいえ、こんな心臓に悪いことはもう二度としたくないと素直に思う。二度と御免だ、目の前の重傷者の治療を後回しにした挙げ句、その重傷者と共同作業をするなんてことは。
そう、鉄屑の山から引っ張り出されてすぐ目を覚ましたキラは、自分なんかよりも響鳳の艤装を戦えるようにしてくれ、ストライクを使えるようにしなきゃ、と叫んだのだ。
 実際、話し合って説得したり納得したりするだけの猶予も、他の選択肢もなかった。二人がかりで作業しないと間に合わないと直感が告げていた。結果、明石はキラと艤装の修理に臨み、
同じく救出された夕立は激痛を堪えながらも船内へ走った。
 そうして今に至る。
 ここまでしたのだ、これで大団円にならなきゃ嘘というものだ。
「キラ、もう少しの辛抱ですからね! みんなで佐世保に帰りますよ!!」
「響も瑞鳳も頑張ってる! だからこんなとこで死んじゃったらダメっぽい、キラさん!!」
 戦いの音はまだ続いている。みんなの命運はまだ終わってない。
 明石と夕立は響達の勝利を信じて、キラの治療に没頭した。
0404通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:34:39.81ID:zXqOza4K0




<ネ級とツ級は私がやるから、響は!>
「任せて……! うぉおおおおお!!」
 みんなの願いを、その身に背負って。
 丁度1/10サイズ、1.8mにまで小型化したストライクから響く瑞鳳の声を、力として。
 響は大太刀を正眼に構えて、倒すべき敵へまっすぐ突進した。これを迎え撃つは左手にシールド、右手に無骨な大剣を握った戦艦レ級。凶悪な尻尾と相俟って並の艦娘ならすくみ上がりそうになる威容を前に、
しかし臆せず正面からぶつかっていく。
「はぁ!」
「!?」
 ――深海棲艦の付け焼き刃なんかに負けるものか!
 近接格闘戦はこれまで研鑽してきた響の領分だ。いかに超弩級重雷装航空巡洋戦艦(ワン・マン・フリート)と恐れられているレ級といえども剣術の腕そのものは驚異にならない。尻尾の砲架からの連射を、
戦艦の膂力で振り回される大剣を鋭い機動で躱し、小柄な躰を活かして懐に飛び込んでは渾身の一撃を振るう。
「……くっ、流石に硬い……!」
 グランドスラムの刃がレ級の腹を裂いた。しかし手応えのわりに損傷は浅く、一刀のもとに切り伏せることはできなかった。生半可な中口径砲よりも威力のある斬撃だが、さすがに大戦艦の装甲は伊達じゃない。
 ならば重ねるまで。回避行動と一体化した体裁きで袈裟斬り、横薙ぎ、回転斬りと着実にダメージを与えていけば、遂にレ級が砲架兼魚雷発射管のドラゴントゥース(龍王の牙)から魚雷をバラまきつつ後退した。
 雷撃、数10、二集五散々布帯。広範囲に射出された魚雷は壁となって迫ってくるが、これを響は大太刀の代わりに手にした弓矢で迎撃、
切り拓いた僅かな隙間を駆け抜けて、暴風のような砲撃さえ掻き分けてレ級へと急迫する。本来は艦載機召喚用の媒介としての矢である故に威力はないが、こういう使い方もあるのだ。
 経過だけを見てれば誰もが驚愕するだろう、響があのレ級を単独で圧倒していた。
 しかしそれでも与えられたダメージは致命傷に遠く、逆に響は何かを一発まともに喰らえばほぼ即死、緊張感に胃がひっくり返りそうだ。せめて魚雷があれば、と思ってしまうのは贅沢だろうか。
響鳳の武装は対ビーム戦を想定した大型斬機刀グランドスラム改と、瑞鳳のものである弓矢のみ、どうにも決定打に欠ける。
 やはり頼みの綱はビームサーベルだ。
 チラリと様子を見れば、瑞鳳が操るストライクが軽巡ツ級を一刀両断したところだった。あの恐るべき切れ味は健在、シールドを持っていない重巡ネ級もすぐに片付けられるだろう。
 ならば採るべき行動は。
「ストライクが――姉さんが来るまではわたしに付き合ってもらうよ、レ級!」
「……ナァメェルナヨォ……クチクカン、フゼイガァ!!!!」
 喋った!? と動揺する間もなくここでレ級はまたも驚くべき行動を採る。
0405通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:36:12.20ID:zXqOza4K0
 砲を連射してきたかと思えば、あの厄介なシールドを投げたのだ。今にもサーベルで灼き裂かれそうになっていたネ級に、投げ渡したのだ。
<え!?>
「まさか!? 姉さん、交代――ちィ!!」
「ヨソミィ、デキルトオモッテンノカァ!!??」
 迫る大剣、縦一閃。虚を突かれた響は辛うじてこれを大太刀で打ち払って距離をとろうとするが、執拗な連続剣に追われて鍔迫り合いを余儀なくされる。弾き飛ばされないよう圧力を逃がしつつ、
かつ敵を動かさないようにする高等技術で膠着状態を作らざるを得なかった。
 シールドを交代されたのなら此方もポジションを交代したかったのだが、させないつもりだ。生存時間が延びたネ級は受け取ったシールドを起点に、ストライクとレ級の間に割り込むように立ち回りはじめた。
 やはり敵は賢く強い。簡単にはいかない。
 しかし、だからといって時間をかけるわけにもいかない。響は空を仰ぎ見た。
 間もなく、太陽が昇る。
 レ級の武装は7門の砲と魚雷と大剣だけじゃない、正規空母と真っ正面からやりあえる艦載機も保有しているのだ。朝になって艦載機が使われれば勝ち目はない、ストライクとの合流を待てるほどの猶予はなかった。
 ここで勝負を決める!
「ツキアッテモラオーカァ? ナァ!?」
「……上等! 勝つのはわたし達だ!!」
 意趣返しのような台詞に強気で応えれば、ジャコン、と不吉な作動音が尻尾あたりから響いた。龍の顎だ。ほぼ密着した状態で敵の魚雷が射出されようとしている――そう判断するよりも先に身体が動き、
レ級の腹を蹴っては後方宙返り、空中で大太刀を上空へ放り投げては弓を引絞り、射る。
 放たれた矢は射出されたばかりの魚雷を貫き、凄まじい大爆発がレ級を吹き飛ばした。
「どうだ!?」
 あの至近距離での爆発だ、規模からして残りの魚雷も誘爆したのだろう。いくらなんでも耐えられる艦は存在しないと思える爆発に、思わず喝采と疑念をミックスさせた声を上げる。
 しかしそんな甘い希望に縋れるほど脳天気ではない。着水してすぐさま落下してきた大太刀をキャッチすれば、
爆炎を割って突撃してきたレ級をすれ違いざまに撫で斬り、千切れかけていた尻尾諸共にドラゴントゥース(龍王の牙)が海に没する。
 ――これで敵の武器は大剣だけ!
 その思い込みが、ほんの一欠片の油断が仇となった。
 レ級は見るからに満身創痍だったが、あと一撃でも与えれば沈みそうな佇まいだったが、いつの間にかその左手には連装砲が装備されていて――砲架に付いていたはずの12.5inch連装副砲から放たれた砲弾に、
回避し損なった響の両脚がねじ切られたのだ。
「が、ぁ!?」
 艦尾に被弾、両舷スクリュー喪失、大破相当、戦闘続行困難――通常艦艇で例えても惨たらしい被害に、両脚切断というあまりの衝撃と痛みに、響は受け身をとることもできずに海面に突っ伏した。
脳裏にあのウィンダムの姿が蘇って、背筋が震える。
 だが、それでも。
 それでも彼女は、即死じゃなかったから運が良かったと思うことにした。今回ばかりはもう止まることは許されない、同じ過ちはもう繰り返さない。
0406通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:38:05.53ID:zXqOza4K0
 まだ戦える、戦う。
 一撃だ。あと一撃与えれば、あの悪魔に勝てる。両脚がなければ手にしたグランドスラムを振るうことも、うまく投擲することもできないけど。
彼女の身一つではどうしたって一撃を入れることなんて不可能だけど。だけど、戦うのだ。
 震えるばかりの両腕に力を込めて上体を起こす。そうすれば視界の中央に、大剣を振り上げて走ってくるレ級の姿があった。
<響!!>
「ナ、ニッ……!?」
 やられる、なんて思うことはなかった。なにせ自分は瑞鳳と一緒なのだから。瑞鳳と共にいる己の勝利を確信しているから。
 ネ級を沈め、鉄灰色になったストライクが投擲したビームサーベルが光の円盤となって、レ級の右手首を切り飛ばした。銘も知らない大剣が宙へ舞った。
 あとはレ級にトドメを刺すのみ。
 勝敗は決した。終わってみれば呆気ない幕切れだったのかもしれない。
「――これで、終わりだね。……До свидания」
 静かに呟き、響は、左手の連装砲を構えようともせず呆然としたレ級を見つめて。 


 和弓にグランドスラムを番え、射った。


 そして、太陽が昇った。朝を迎えたこの海には、ただ穏やかな風だけが吹き渡っていた。
0407ミート ◆ylCNb/NVSE (ワッチョイ ffad-+Do1)
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2020/06/16(火) 14:40:23.17ID:zXqOza4K0
以上です
この展開がやりたくて14話以降ずっとライブ感と後付け設定で書いてました。反省はしてます
これでナスカ級編は完となります
0408カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:27:08.00ID:qPmFtBjZd
ミートさん乙です。
こんばんは。カイと言います。
pixivで書いてる者なのですが、そこにいる他の作者さんや、以前このスレでお見掛けした彰吾さんの影響でガンダム00のマリナがガンダムファイターになる小説をここでアップします。
彼らの影響で多少文章に似通った部分があるかもしれませんが。
0409カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:29:07.47ID:qPmFtBjZd
『マリナ 闘いの始まり』

戦いを知らぬ皇女が闘士になる決意をしたあの日から……


アザディスタンのガンダムファイト推進委員会の前で、弓と槍の卓越した技術で同国の候補に勝ち、代表選手になったマリナ・イスマイール。
その日から槍と弓は勿論、ファイターとしての格闘や身体能力を高める訓練を続け、他国には負けるが格闘家として十分な基礎能力を身に付けていった。

そんなある日、彼女自身の訓練と同時進行で行われていたMF製造が遂に完成した。
その名はガンダムファーラ。
彼女に合わせ、弓と槍による遠距離・中距離に長けた機体だ。
それを操縦するためのファイティングスーツ装着訓練が始まった。これに成功しなければファイターとしての闘いは始まらない。

「それでは皆さん、今から始めます。」

開発陣やマリナの秘書など、大勢の関係者が見守る中マリナはワイヤーでファーラの中に入っていった。
今の彼女はシンプルな白い訓練用の制服姿。上は長袖、下はズボンというオーソドックスな出で立ちだ。

「これがMFの中……ここが私の戦場なのね……」

一人が入るには広く、大勢が入るには狭い、そんなコクピットで拳を握りしめるマリナ……

天井と床に設置されたリング。
0410カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:30:49.65ID:qPmFtBjZd
衣服を丁寧に脱ぎ、畳むとそれは収納ボックスに入れると、リングの中央に立ち祈るように手を握り目を閉じた。
全裸の彼女は生来の華奢で均整がとれた体型に加え、程よく引き締まっていた。
控えめな美乳はもう少し小さくなり、小振りな尻は上向きに、肉付きの薄い腹部は更に括れて縦に筋肉のラインが入っていた。

「モビルトレースシステム、起動。」

その声を認識したコンピューターによって、上のリングから清涼感ある彩りの布がマリナを包みながら降りてきた。
全身を圧迫する苦しみに捕らわれるマリナ。

「ぐっ、これは……」

柔らかい見た目に反して凄まじい力で拘束する布製スーツ。
胸も、胴も、尻も圧迫され身動きが容易に取れない。

「キ……、キツイ…………!!
でも、わ、私は、ファイターだから……!」

歯を食い縛りながら手足を力一杯動かせば布が伸びていく。しかし、中々千切れない。
ファイターならば誰もが通る道だが、非力な彼女にとっては尚更至難だった……

「……あれは……!」

その時、偶然目についたのは一本の鉄棒だった。
長さは彼女より頭一つ短い程。
どうやら作業員が最終点検で使ったものを置き忘れていたらしい。

「……あれを……!」

一旦屈んでそれを手にするマリナ。[newpage]
床に立てたロッドを軸にすがるような体勢で全身を少しずつ回していくマリナ。
幸い体が他のファイターより柔軟な彼女はそれを頼りに全身に布を巻き込んでいった。
0411カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:32:19.15ID:qPmFtBjZd
「い、いやぁぁぁ……!で、でも、ここを……乗りきれば……」

胸は尚も締め付けられ、小刻みにプルんと震える。
胴体にもグイグイと音を立てながら拘束する。

「ぐっ、このぉぉぉ……!は、早く、しないと……!!」

性器には恐ろしい程食い込み、痛みにも似た衝撃に腰が卑猥に震える。
アナルにはより深く侵入していく布。
女性特有の恥ずかしさを身に染ませて悲鳴のように声を上げる


「く、このぉぉぉ……!!」

これ以上ないくらいに布に包まれると、軸代わりに抱きついていたロッドから全身に力を込め、勢い良く離れた!!


「きゃああぁぁぁぁ…………!!」

ロッドはコクピットの隅に投げられ、布はブチブチと甚だしい音を響かせ破れていく。

「うぐっ……!」

自分もリング外に尻餅をついて、臀部を擦りながらリング内に戻るマリナ。

「…………これって……?」

全身の感覚がやけに軽やかだ。
身体にあの布が完全にフィットしている。
装着は成功
0412カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:33:47.57ID:qPmFtBjZd
自分の手を見つめるマリナの動きをガンダムファーラもトレースしている。
見守る関係者からも歓声が上がっている。

「わ、私、ついに……!」

嬉しさで顔を綻ばせるマリナ。

スーツは胴体は雪のような純白、腕と下半身は彼女の正装宛らの青紫。
そして、股部分には濃い紫のV字型切れ込みが堂々と入っている。細い下腹部とスラリとした脚の境界線が強調された形になっている。
しかも、尻の真上からアナルにかけても同色の切れ込みが入っているので上向きの小さなヒップも目立つ。
普段のマリナにとっては恥ずかしいがそれを感じる暇もないくらい喜びに溢れていた。


あれから2週間、生身での戦闘訓練とスーツ装着・MFに乗っての戦闘訓練を繰返した結果、装着時間短縮を果たしたマリナは遂にサバイバルイレブンに臨むことになった。
しかも、筋力アップしたことでロッドに頼らずとも装着できるようになっていた。

誰もいないアザディスタンの砂漠に立つ二人のファイター。
一人はマリナ。相手はギリシャ代表ディノス・サマラス。直々にファイトを申し込んできた男だ。
日に焼けた肌、ギザギザの黒みがかった紅い長髪を縛っている。
搭乗機はガンダムアレキサンダー。
古代の王のような豪奢な外観の機体だ。
金色の王冠に、彫刻のように筋肉を象った白銀のボディ。
深紅のマントは滑らかかつ強靭な盾代わりになる。
右手には大剣を構えている。

両者示し合わせたようにワイヤーでコクピットに入り込む。

「とても威勢の良い人だったけど負けられない……!」
0413カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:36:46.80ID:qPmFtBjZd
衣服を収納ボックスに入れ、全裸になる。
初のファイトで緊張しながらもリングの中央に立つ。
両手を握り締め、脚を内向きに開き、目を閉じる。
だがそれは最初の時のような、ただ祈るだけの姿とは違い、もっと強い意思を秘めたものだった。
ただ手を握っただけではなく、丁度あのロッド一本が入る程の余裕を設けている。
一言で言うと、見えないロッドを持っているかのようなポーズだった。

(ただ祈るだけじゃだめ、もっと自分を信じて、力を込めて……!!)

そんな思いからくるものだった。[newpage]
上からくる布の圧迫に負けぬよう、全身の力を入れたり抜いたりを繰返す。
それでも、いつもの癖でアナルには常に力が入ってしまう。
やがて身体は布に包まれ、ギュ……と締め付けていく。

「や、やっぱり……キ、キツイ……!!
でも、負けない……ッ!!」

口を閉め歯を食い縛るマリナ。

見えないロッドを軸にまるでポールダンスをするような動きでゆっくり回転するマリナ。

小振りなヒップを突きだし、足元をメインに回り布を身体に巻き付けていく。
鍛えた甲斐があり、その衝撃にも耐えられ何とか動きを取れるようになった。

「このっ…………あつい……!」

腕をしなやかに動かし、これ以上ない程布が摩擦する。
擦れた熱に苦悶の色を滲ませるが、それに負けず腕を振るう。

ブチッ!バチッ…………!!

鼓膜に強い刺激を残すような音と共に布は千切れ、両腕にスーツが定着する。
0414カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:37:34.76ID:qPmFtBjZd
「まだ、まだキツイ……キ、キツイ…………!!」

腰を突き出したまま上体を反らし、細いウエストを捻る。
強烈な摩擦に襲われながら程良くフィットしていく。
綺麗なお碗型の美乳が白いスーツに浮かび上がり、引き締まってより細くなった胴体も包まれていく。

最後の難関は局部……
性器とアナルを同時に締め付けられ、頬を赤らめながら苦悶する。

「う、うぐっ……!いやっ……!!」

脚を大きく開き、下腹部に力を入れて耐え抜く。
やがて程よくフィットしたのを見計らい、長い脚を片方ずつハイキックして、布を身体から切り離す。

ブチッ、ブチチッ……!!

「ふう…………!はあ、はあ……!!」

遂に皇女はファイターの衣を身に纏い敵を見据え、両者の声が重なり合う。

「ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」
0415カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:38:19.14ID:qPmFtBjZd
「皇女様の実力、見てみたかったんだ。楽しませてもらうぜ!!」

大剣を掲げ意気揚々と挑むディノス。
邪気のない好青年といった面持ちだ。
マリナは槍を斜め上に構えて走っていく。

「はあっ……!」

ぶつかる刃同士。
弾かれそうになったのはマリナの方だ。
痺れる腕に耐え、ぐらつきそうな足を踏みしめ、スライディングしながら相手の背後に回る。

「危ないところだったわ……!」

「すばしっこいな、こりゃ楽しめそうだ!」

「はあっ……!」

姿勢を屈めて突撃しようとするが、ヒラリと視界を軽やかに遮るアレキサンダーのマント。
貫こうにも柔らかいそれは刃を通さない。

「これは……一体……?」

「これは柔軟な繊維でできてるんだ!簡単には破れないぜ!」

そのまま大剣がファーラの胸を斬る。
真昼の砂漠に鋼の白い欠片が舞い散っていく。

「きゃぁぁぁ…………!」

倒れつつも得物は離さず持ちながら、相手のモーションの一つ一つに隙を探しながら槍を突き出す。
しかし、マントに守られていない場所にかすり傷を付けるのが精一杯で中々決め手が見つからない。

「駄目だわ、これじゃあ……」
0416カイ ◆c12wmZgb8g (スプッッ Sd5a-aw7/)
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2020/06/20(土) 20:38:59.53ID:qPmFtBjZd
「こうなったら……」

少し距離を置いて、槍を弓モードに変形させ大量の矢を放つ。
夥しい鋼の矢をマントで防ぐディノスのアレキサンダー。
マリナは自分の姿勢や方向を変えながら打ち続ける。
目を素早く動かし探しているのだ、マントに守られない箇所ができるのを……

「このっ……こんな機能があったなんて!」

しかし、胴体や頭部が防御されている以上どれも決定打にはならずディノスの突進を許してしまう。

「これで止めだ!!」

「こうなったら……!!」

マリナは諦めなかった。まっすぐ弓を構えた状態で立ち上がり、相手を見つめる。

迫る剣が触れる間際、紙一重でジャンプ。
雲一つない青空に舞うファーラ。
瞬時に相手を見下ろし、矢を乱れ打つ!!

「ぐっ、ぐわああぁぁぁ……!!」

土砂降りのようなそれらにマントによる防御モーションはできず、頭部を始めとした幾つかの箇所に傷ができる。

すぐに着地するファーラ。

「終わりよ!!」

咄嗟に槍に変形させた得物を振り上げ、アレキサンダーの頭部を攻撃。
そこを破壊され、砂の山に倒れていく。

数分後、コクピットから出てくるディノス。
頭を擦っているが鍛えているためかダメージはそれほどでもないらしい。

「いやあ、あんた強いな、想像以上だぜ。」

「いえ、私もかなり苦戦したんですよ?」

負けても屈託ない彼の態度に緊張が綻ぶマリナ。

「あなたにファイトの厳しさを教えてもらったんですから。」

そう言って皇女はこれからの闘いに希望を持ち、アザディスタンの空を見上げた。
0418通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 1aad-Epcz)
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2020/06/22(月) 09:30:32.53ID:yEFLEgvT0
乙です
まさか同じ題材がダブルで来るとは
しかしこう言っちゃなんだが既に壊滅してるこの板で新規にやりはじめるとか勇者だな
0419通常の名無しさんの3倍 (スププ Sdba-f3e5)
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2020/06/22(月) 12:45:58.56ID:1diOz/SLd
>>415
台詞ばかりで全く状況が読めん
自分だけがわかる文章書きたいならオンラインに公開しないほうがいい
そうでないならもっと状況についての補足を心がけたほうがええで
0420通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 3b5f-IXeA)
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2020/06/22(月) 17:16:40.73ID:OJ3QHbfJ0
ミートさんにカイさん乙です!

キラ昏倒、とはいえスパコディぶりがいかんなく発揮されていますね

カイさん、マリナのファイター設定を引き継いでSSを書かれるとは

設定が面白いけど、続きどうなたっけな、読みたいな
という作品は沢山ありますよね

このスレではマリナ様のも、あとfateクロス、∀も実は続きが気になっています
お二人の力でスレが活気づくと嬉しいです
0421通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 4e10-f3e5)
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2020/06/22(月) 19:59:34.58ID:GV5A4jaq0
つーかミートは何年もいるくせに表現力うまくならんね…
0424通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 4e10-f3e5)
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2020/06/22(月) 21:28:28.11ID:GV5A4jaq0
というか才能もない
0425通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 0b01-7NwC)
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2020/06/22(月) 21:33:55.09ID:85j7/nxN0
ゴミ分別すら出来ない非常識KBデブガイジの才能()とかちゃんちゃらおかしいんスけどー?
人に嫉妬こく前にまず分別表見たらー?まーたBBAにボコられん様にさ(ギャハハ
0427通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ e7ad-QR+y)
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2020/06/23(火) 06:24:42.53ID:8JJNhKkp0
お前の発狂芸は何年経っても同じだもんなwwwwwwwwwwwwwww
どんだけ成長しない汚豚ガイジなんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwww
0428通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ e7ad-QR+y)
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2020/06/23(火) 06:25:15.07ID:8JJNhKkp0
お前は何の才能もない汚豚ガイジやん定期
どんだけ役立たずな無能なんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
0429通常の名無しさんの3倍 (スププ Sdba-f3e5)
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2020/06/23(火) 10:05:30.91ID:qRjWLtGTd
というかもう何年もいるなら新人ですらないだろ
出て行けよ
0430通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sr3b-7NwC)
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2020/06/23(火) 12:05:16.61ID:1/w2mr3ar
出て行ったとしてクソ雑魚KBデブガイジが団地でボコられ放題の現状はなーんか変わるんスかー?
全くゴミ分別のルールすら守れない知恵遅れの僻みってやあねえ(ギャハハ
0432通常の名無しさんの3倍 (スププ Sdba-f3e5)
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2020/06/23(火) 15:18:27.04ID:qRjWLtGTd
お前こそ荒らしのスルーくらいしろ
0433通常の名無しさんの3倍 (スププ Sdba-f3e5)
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2020/06/23(火) 15:19:35.06ID:qRjWLtGTd
1も読めないバカ「2くらい読もうや」

もーうこのブーメラーンンンンンwwww

SS作者には敬意を忘れずに、煽り荒らしはスルー。
本編および外伝、SS作者の叩きは厳禁。
スレ違いの話はほどほどに。
0434通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sr3b-7NwC)
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2020/06/23(火) 16:11:17.53ID:1/w2mr3ar
はいはい、クソ雑魚KBデブガイジによるワンパボコられて悔しい宣言ッスねわかります
テメエがスルー出来なくてイッライラ不快になりまくりなのにダッセーな、いつもながらさー(ギャハハ
0435通常の名無しさんの3倍 (スププ Sdba-f3e5)
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2020/06/23(火) 19:07:30.48ID:qRjWLtGTd
才能ないなあ
0441カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:43:37.69ID:+rF+HTtKd
『マリナ 淑やかな闘士』

「すごい、ガンダムめっちゃデカイ!」
「負けるな、皇女さま!」

ここは、中東のアザディスタンのとある町にある孤児院ーーー
子供達はこぞってテレビに釘付けになっているが、アニメではなくスポーツの特集。
それも、先日ノルウェーで行われたガンダムファイトの映像だ。
まだサバイバルイレブンの段階だがこの手の番組の視聴率は高い。

司会者はテンション高く実況を続けている。

「さあ、始まりました!我れらがノルウェーと中東のアザディスタンとの試合!
我らが代表、広大な炭鉱を有するキルステン・バルグの駈るガンダムブラース
対するはアザディスタンのファイターにして皇女でもある……マリナ・イスマイールの駈るガンダムファーラ!!
一体勝利の女神はどちらに微笑むのか!
ガンダムファイト!レディ……ゴー!!」

ノルウェー代表はハンマーを持つガッシリとした神話のドワーフのようなガンダムブラース……
キルステンは立派な髭を生やした大男。
青銅のような暗いスーツに身を包んだ筋肉質な姿。

対するアザディスタンは、細身の青紫のガンダムファーラ。女性的なしなやかなラインは正に皇女専用と言った趣だ。
画面に映ったその乗り手に子供達は目を奪われた。
皇女にしてファイター……マリナ・イスマイールは長く豊かな黒髪、白い肌、澄んだ水色の目の女性だ。
普段から国の安定や貧困に喘ぐ各地の慰問に力を入れているので、今は眼前の敵を厳しく睨んでいてもその優しいイメージは国民から消えることはない。
格闘家らしからぬのは顔だけではない。
スラリと伸びた手足、ほっそりした胴体。
しかし鍛えられているので程好く引き締まったシルエットと筋肉の切れ込みが青紫のスーツから見える。

テレビの前の女子はその雰囲気に、そして男子は美貌とスタイルに各々釘付けになっていた。
特に、このアクバルという少年は一番目を輝かせている……
彼はやんちゃで孤児院の職員が手を焼いていた。

「行け!皇女さま!!」
「おい、アクバル。落ち着けよ!」

振り上げた腕を友達に退かされても画面に魅入るアクバル。


マリナは右手には槍を構え、走ってくる相手を静かに待ち構えている。

「一撃で勝つ!」

ドワーフ宛らに体格の良いファイターの力強いモーションから繰り出される攻撃。
次の瞬間には皇女の機体の小さな頭部は破損するだろうと思われたが……
0442カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:45:18.86ID:+rF+HTtKd
「なに?!」

すんでのところで相手を見失い戸惑う。
……次の瞬間

「どこだ!いきなり……あ……」

突如感じる腹部の痛みに仰け反るファイター。
マリナのファーラが持つMFサイズの槍が機体に命中していた。
倒れるキルステン。
瞬時にしゃがみこみ素早い一突きを食らわせたのだ。

「勝者、マリナ・イスマイール選手!」

圧倒的な勝利に驚きと興奮を隠せない子供達。

「すげえ、細いお姉さんが一発で相手を!」
「女性ファイターいるって聞いてたけど、ホントに勝てちゃうなんて、あたしも自信持っちゃったぁ。」
「おまえ、ファイターにはならないだろ。でも速攻で勝っちゃうんだから凄いよなあ!」

口々に感心を表す中、いつもは賑やかなアクバルは興奮のあまり何も語らず、笑みを浮かべて画面のマリナを見つめるだけ。

(す、すげえ……あんなに綺麗で強いなんて……
それに、あのスーツテカっててハッキリとスタイルがわかってそそるよな……)
10歳程の少年の関心事はやはりそこだった。

そこへやってくるシスター達。

「みんなー、今日はお客様が来ておりますよ!さあ、どうぞ。」
0443カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:46:58.80ID:+rF+HTtKd
「皆さん、こんにちは。マリナ・イスマイールです。」

子供達は呆気に取られた。さっきまでテレビに出ていた姫がここに立っている。
控えめながら雅な佇まい。そしてフランクで優しい笑顔に誰もが目を丸くした。
身に纏うのは流石にあのピッチリスーツではなく、白い上着に紺色の膝丈スカートというシンプルな姿。
職員が企画した子供達への一大サプライズで、話を聞いたマリナはファイトのテレビ放送とタイミングを合わせるというアイディアに戸惑っていたが、子供達の励みになりたいと承諾した。
今日も他の国でファイトをした帰りに寄ったのだ。
孤児院から少し離れた場所に今日だけ置かせてもらっているガンダムを後で子供達に見せるサプライズも用意している。


「え、えーすごい!ホントにマリナ様?」

「信じられない!今テレビ見てたとこだよ?」

皆沸き立って彼女を取り囲む。

「ええ、前回の闘いよね?何だか恥ずかしいわ。でも、皆に元気を少しでも分けられたみたいで良かった……」

はにかみながら談笑を続けるマリナ。
やがて彼女は皆が戦争や犯罪が原因で家族を失っていた話を聞いて慰めたり、得意のピアノ演奏で楽しませたりしていた。
そんな時……

「ターッチ!」

「キャッ……!」

小さな手がマリナの胸を豪快に触った。
やったのはいたずらっ子のアクバル。

「ちょっとアクバルー、皇女様になんてことをー!」
「全くホントにこの子は…!こういう時に……!」

赤面しながらアクバルを戸惑いの目で見続けるマリナ。

「……んーテレビで見たけど、思ってた以上に小さめだなー
ここのシスターさんの方がでかかったぞ?」

「……わ、私は鍛えてるからそんなに大きくならないだけで」

初めて触れられた驚きでスムーズに話せないマリナの代わりにシスターが捕らえようとするが、少年らしい俊敏さで建物を出ていくアクバル。

「小さいけど、柔らかくていい感じ……
鍛えててもやっぱり女の人だな。」

掌を見つめながら広い空地に行くと、彼は一気に目を丸くした。

「これは……あの、マリナ様のガンダム!?」
0444カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:48:05.19ID:+rF+HTtKd
大木や簡素な滑り台やジャングルジムという日常的な光景の中に一際目立つ鋼の塊が片膝を着いてそこにあった。
さっき皆でテレビで見て盛り上がっていた自国の守り神・ガンダムファーラ。
頭部や腕部、脚部は殆どのガンダム同様に純白。
胴体と肩はマリナが演説や国内各地への訪問時に着ている正装宛らの鮮やかな青紫。
新聞等で見た他国のガンダムよりずっと華奢で格闘用機体というイメージはかなり薄れるが、やはり巨大人型マシンなので間近で見た迫力はかなりのもの。あんぐりと口を開けてしまう。


「……マジか?信じられねえ……あのMFがここにあるなんて……」

グルリと回り様々な角度から機体を鑑賞していくと、男特有のメカへの憧れが刺激される。

「実際に見るとでけえな……ん?」

背中から入る方式なのだろうが、肝心の背中ハッチが少し空いている。まるで入ってくれと言わんばかりの様子。
しかもそこから太いワイヤーが垂れ下がっている。いつもこれで乗り降りしているが、今日は仕舞い忘れたのだろう。
それを見て好奇心と悪戯心に溢れた彼に大人しくするのは無理だ。

「……やってみっか。」

グリップに付いたボタンを押すと背中の位置にスルスルと上がっていく。

「この高さ、何か不思議な感じだな……遊具の上に上がるのとは何か違う。
しかしマリナ様、意外と不用心だな。そこが可愛いか、フフッ。」
0445カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:49:21.78ID:+rF+HTtKd
綺麗な皇女の「一人部屋」に侵入するようなスリルを持ってにやけながらコクピットに入ると、そこにはテレビで見たのと同様殆ど何もない、しかし真っ暗な空間が広がっていた。
手探りで探し当てた壁のライトを付けると無機質な壁に周囲の見慣れた町の風景が写し出され、天井と床に一つずつ設置されたリングが見えた。

「おー、テレビと同じだ!よく映ってるじゃん!
この高さだと色々イメージ違うなー。絶景かな、ってな。
取り合えずマリナ様ビックリさせたいから待ってるか!」

コクピットの隅にドカッと座る。[newpage]
それとほぼ時を同じくして、上空には一体の剛健な外観のガンダムが飛んでいた。
メキシコ代表のガンダムスティンガー。手足に付いた複数の棘、サイズは大小様々。
乗っているのは荒れくれ者のバイス・アリアス。元野盗・名うてファイターの一人だ。
180強の身長のガッチリした身体。日に焼けた肌に僅かな顎髭を蓄えている。

「ここか、アザディスタンの姫が来ている場所は。腕が立つようだが叩きのめしてやるぜ!」

掌に拳を当てて意気込む。彼は元野盗だけあり、手段を選ばず卑怯で荒っぽい戦術を好むファイター。
自国からも色々問題視されているが一番の適任者ということで御上が目を瞑っているのが現実。

何人かの柄の悪い男達が町の至る場所から出て来て旗を振っている。

「バイスの兄貴ー待ってましたぜ!」

「よお、お前ら!ん、あそこにあるじゃねえか。ターゲットのガンダム。暢気なものだぜ。」

ファーラを見つけると重々しい音を立てて降り立つ機体。
駆け寄ってくる柄の悪い男達。
彼らはバイスの盗賊時代の手下で、彼の為に暗躍する時がある。正にどこまでもダーティーなファイターだ。

「おい!皇女のファイターはあんただな!俺はメキシコのバイス・アリアスだ。
ファイトを始めようぜ!」

アクバルはその大声に驚きスクリーンに映る仁王立ちするガンダムに度肝を抜かれる。
しかも手下達がライフルを持ってこちらや近隣の建物を脅すような素振りを見せている。
やんちゃなアクバルも普通の子供。犯罪者や荒くれ者には耐性なんてなく、出るに出られない。

「やばい、どうしよう……てかここで降りても危ねえし。
そういや、あの機体前に中継で見たけど、結構おっかない奴だったような……手下も従えてるし……
早く帰ってきてくれーマリナ様……」

しゃがみこんで怯えるのも無理はない。勝つために民間人を盾にしようとしたこともある極悪非道な相手だ。
近隣の住民も震えて黙り混んだり隠れたりしている。

「私に何か用かしら!?」
0446カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:50:54.32ID:+rF+HTtKd
そこに聞き覚えのある女性の声がして顔を上げる。
周りの連中も一斉にその方向を向いた[newpage]
「え……本当に来た……?」
「随分騒がしいわ。あなたの相手は私だけでいいでしょう。場所を変えましょう、ここにいる皆さんの迷惑になるし。」

そこにいたのは誰もが待っていたマリナ・イスマイールだ。服はあの時と全く同じだがファイトの時に見せた厳しい表情で強靭なガンダムと周りの犯罪者を睨んでいる。

「よく来たな、姫さん。でも、俺は人に従いたくねえんだ。俺が態々来たんだし、どうしてもってんなら上空でやり合おうぜ?
……その前にこいつらでウォーミングアップだ!やっちまえ、お前ら!!」

彼の一声で一斉にライフルをぶっぱなす男達。

「あぶね、マリナ様……って……アレ?」

アクバルの心配は無用だった。しなやかな動きで銃弾のパレードを避けると、男達を一人ずつ殴り、蹴り、投げ飛ばし全員をのしてしまった。

「いいぞ、姫!やっぱり、生身でも凄いんだ!……」

「……あっさり倒すとは……あいつらファイター程じゃねえが相当強いってのに……
やっぱ本物のファイターには勝てねえのか……」

「あなた、国の代表として恥ずかしくないの?」

「勝てりゃいいのさ!早く始めなきゃ町の奴らどうなるかわからねえぞ!」

ワイヤーを掴むと背中のハッチを開けっぱなしにしているのに気付いて頬を染めるマリナ。

「私のミスだわ……気を付けなきゃ……」
0447カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:52:15.82ID:+rF+HTtKd
ハッチを開けると皇女とご対面。苦笑いしながら出迎える少年。

「ど、どうもマリナ様。凄かったぜさっきの闘い……」

「アクバル!ここにいたの!」

怒りながら近付く彼女の迫力に圧倒され俯くが……

「……本当に心配してたのよ。あそこにいる皆も何かあったら悲しむわ……」

格闘家とは思えない優しい力で頭を撫でられ、赤面するアクバル。

「ごめん、俺面白そうだからここに入っちゃって……
邪魔にならないように下りるよ……」

「……だめ!あいつは有名な悪漢よ。いきなり出てきたあなたを人質にするかも知れないし……」

「じゃあどうすりゃ……」

事実過去の大戦で使われていた緊急脱出用戦闘機は配備されていない。こうなれば……

「……そうね、壁にあるバーに掴まっていて。大丈夫、必ず勝つわ。
皇女の誇りにかけてあなたを無事に皆の元に帰すわ……
……だから、目を瞑っていてもらえる?」

「……わかった。」

口を閉めて覚悟を決めるアクバル。しかしこの年の少年特有の高揚が生まれて、いてもたってもいられなくなる。

(でも、あの姿になるってことだよな……
おい、ヤバイって……!)

興奮する彼をよそに静かかつ素早い動作で衣服を脱ぐ音が聞こえる。
それらを手慣れた動きで畳むと、床リングの中央に立つマリナ。

「バイス、今から始めるわ。モビルトレースシステム起動。」

(マジで始まるのかよ……あのスーツを着るのか……)

(……うーん、我慢できねえ、許してくれよ。姫様。)

恐る恐る目を僅かに開けるとその光景に息を飲んだ……
0448カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:53:10.55ID:+rF+HTtKd
幸いにもというべきか?目を閉じながら少し脚を広げ、祈るように両手をそっと握るマリナ。
これから闘うには相応しくない、寧ろ神を無垢に信じる聖女のよう。
柔らかさと優しさに溢れていた。

(ひめさま……邪魔しちゃいけない雰囲気だな
でも見ちゃう、ごめんな)

大人だろうと子供だろうと男であるのに変わりない。視線はその人並外れた美貌だけでなく、体にも注がれていた。

想像通りのスラリとして、同性の中でも華奢な体つき。
しなやかに伸びた長い手足。
どう見ても格闘には似合わない、寧ろ一流の女優やモデルのような姿。……但しシルエットだけなら。
手足は細い形を保ちながらも、程よい深さの切れ込みがあった。肉付きの薄い腹部にも腹筋のうっすらとした横ラインがいくつか走っており、縦ラインは比較的深々と主張している。
正に女性らしさと格闘家らしさの融合と言うに相応しい完璧なバランスだった。

……とは言えまだ子供のアクバルにはこの状況でここまで深く見る余裕はなく、全身の素晴らしさに驚愕し、男心を揺さぶられるしかなかった。

(すごい、マリナ様……
見ちゃった……姫様の裸を見ちゃった……
俺もしかして重罪?)

様々な考えが頭の中にとっちらかって、眼前の光景を目に焼き付けるしかない。

そして天井のリングから薄い布が力強い勢いで降ってくる。
彼女が王宮にいる時と同様、鮮やかで品のある青紫と、雪のような純白の二色に彩られたスーツ。
一気にマリナの肩から足元まで降り立つと、彼女は無表情から一転、目を閉じたまま苦しみ始める。
0449カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:55:56.59ID:+rF+HTtKd
「う、ああ、……うう……!」

伸びやかな手を重々しく揺らし、激しくスイングすると両腕は一気にスーツに包まれる。

「が、頑張れ。マリナ様。」

初めて見る、皇女の苦労に思わず呟いてしまう。[newpage]
「う、ああああぁぁぁ……」

小振りな胸や細い鎖骨を覆うスーツ。
細く引き締まった胴体を大胆に反らして、体を柔らかいモーションで捻り続ける。

しかし、次が色んな意味で問題だった……

控え目な毛で守られた秘所に当然の如くスーツが食い込む。すると……

「お、おおお……や、く、くす……」

(……?お、おい何を……)

いきなりそそるような声を出すマリナ。しかも、今度は体を反らす代わりに尻を突き出している。
アクバルも反応してこれまで以上の視線を注いでしまう。

「く、くすぐったい……あ、あ……」

男の好奇心が煽られたのかマリナの背後に回るとやはり、小さくも美しく引き締まった上向きの尻がスーツに包まれながらこちらに突きだされている。
尻を振って何とかスーツを体にフィットさせようとしているのを知って尚興奮するアクバル。
前後の秘所に与えられるスーツの摩擦と闘うマリナ。
0450カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:57:17.26ID:+rF+HTtKd
「……!」

(マリナ様、くすぐったいって……てかこのポーズ相当ヤバイんじゃ……
俺ケツ触っちゃいそう……いや、ダメだ。んなことしたら処刑もんだ!)

子供なりに理性を働かせ、伸ばした手を慌てて引っ込める。

「……ふー、はあああぁぁぁ……!」

脚を含め下半身を激しく動かして全身にスーツを纏うマリナ。

一回のファイトや訓練毎にスーツは入れ換えられるので、前後の秘所は新品の冷たさが与える心地よい刺激に少しの間耐えることになる。

「色々、大変なんだな……ファイターって……」

背後のバーに掴まりながら呟く少年に対し、ニコリと笑顔で首を横に振る皇女。

「ひめ……」

もはや彼はマリナのことしか考えられない。

「さあ、やりましょう。」

互いに上空に浮かび上がる両雄の機体。

「ガンダムファイト! レディ……ゴー!!」
0451カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:58:32.44ID:+rF+HTtKd
向かい合う二人のガンダム。
「俺が倒すのはあんたで10人目だな!」

鋭い棘の付いた肩を向けショルダーアタックを仕掛けるバイスのスティンガー。

「ハッ!」

マリナはファーラのリアアーマーに付いた、特殊金属製の伸縮式ランスを手にするとそれを伸ばし、鋭い刃で棘を粉々にしてしまう。

「何だと!」

咄嗟のことに驚く相手に構わず肩、手足、胴体に次々と槍の刃を突き刺し、時にはロッド部分で殴打しダメージを与えていく。
スティンガーの全身の棘は見る見る内に砕けて落ちていく。
悔しがるバイス。

「おのれ……甘く見ていたか……!」

「すげえ……マジでできるんだな……」

関心のあまり唖然とするアクバル。
槍を直に盛っているのはガンダムだが、それを操るマリナの構え・全身の動きを直で見て高揚する。
背後から彼女の様子・モーションが全て丸わかりだ。興奮しない方がおかしい。
真後ろから見る皇女の華奢な肩、手足はしなやかに動く。
長く豊かな黒髪は活発に靡く。
スーツ装着に必死になっていた小振りな尻の穴を戦闘開始からギュッと締めているのもアクバルを熱くさせた。

「力、入ってる……」

思わず呟いた声と視線に一瞬振り返った皇女の頬は紅かった。

「見ないで、癖なの……」

「ああ、失礼しやした……(試合中ずっと締めてたのか。やべえ、ドキドキするじゃん。)」
0452カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 20:59:18.64ID:+rF+HTtKd
バイスは歯軋りしつつコクピット内のとあるボタンを押すと、スティンガーのバクパック(コアランダー式ではない)が開き、チェーン付きの鉄球が飛び出してきた。
慣れた構えで手に持つバイスのスティンガー。
更にグリップ部のボタンを押すと、幾つかの棘が鉄球から顔を出す。

「こいつは避けられねえぞ?」

豪快なスイングによって、巨大な蛇の如く宙を舞うチェーン。何度もマリナを襲い来る鉄球。

「ごめんなさい、さっきより揺れるわよ?」

「またか!?」

激しいモーションで避け続けるマリナのファーラ。
必死さの為か、子供の握力で耐えられるのが不思議な程、バーに掴まり続けられるアクバル。

「ホラホラ、どうした!この武器じゃ手も足も出ねえか!?」

「はぁはぁ、正直、不利だわ。ああいう重い武器は……」
0453カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:00:24.47ID:+rF+HTtKd
何とか背後に回ると、あの鉄球が入っていたバックパックを思い切り蹴って距離を置くマリナ。

「はあはあ、きついな……このスピードで毎回闘ってるのか、マリナ様……」

「ええ……私は慣れてるけど、あなたには堪えるわよね、ごめんね……」

憂いを帯びた顔で言われて言葉に詰まりながらも「いや、んなことねえよ。俺は大丈夫だからさっ。」

無理矢理笑顔でガッツポーズを取って見せる。

「諦めな!姫さん!?」

意気揚々と飛んでくるルの機体。

「どうする!このままじゃ……!」

「いえ、この距離ならいけるわ……!」

微笑みながらランスの小型スイッチを押すと、刃パーツが収納され、ロッドが真っ二つに割れてアーチ状に変形した。
サイドアーマーに複数収納されていた矢をセットするマリナ。
彼女のもう一つの戦術だ。


「これって……」

「弓よ。これで決めるから、ね。」

ニッコリするマリナに素直な笑顔で笑い返すアクバル。
0454カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:02:30.39ID:+rF+HTtKd
アクバルはマリナの左側に移動してその横顔を覗き込む。
いつもは柔和な水色の瞳は鋭く敵を狙う射手そのもの。
スラッとした脚を凛として開き、右腕を一点の緩みもなく、後方に力一杯引く。

「ハッ!」

細く優しい声は低い叫びに変えて、一本の矢を放つ。
回避を試みたバイスはギリギリで肩に刺さってしまう。

「このっ……!」

鋭い痛みに顔を歪めるバイス。

「よし!」

拳を握り興奮する少年。

手慣れた動きで複数の矢をセットすると目にも止まらぬ速さで撃ち抜いていく。

「町の人達を脅かしたこと、反省して……っ
これで終わりよ、ハッ!」

真空波のように飛び掛かる矢の雨。

「手こずらせやがって……って、何だありゃあ!?」

矢を引き抜いた直後のバイスは鉄球を持った腕で頭部を庇うが、当然のように腕、腹、脚に刺さっていく。

「うわあああ!!こ、この、小娘にぃぃぃ……!!!」

比較的頑丈な装甲だったが一定のダメージが至るところ刺さり、悲鳴を上げる悪漢。
ガッシリした機体はバイス本人と共にワナワナと揺れている。

「やりぃ!!姫さますごいじゃん!!」

はしゃぐアクバルに静かな声で諌めるマリナ。

「ありがとう……でも前に出てきちゃだめでしょう?
お願いだから下がっていて。
それに……まだ終わってないわ。」

「?」
0455カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:05:51.59ID:+rF+HTtKd
実際スティンガーの頭部は無傷だった。そして、そこを守った鉄球も……
ガンダムファイトは頭部を攻撃され破壊されない限り敗北扱いにはならない。
そしてこの闘いで最も厄介なのはあの強靭な鉄の塊だ……

「……姫さん、やってくれんじゃねえか……
こうなりゃ本当の怖さを教えるしかねえな……」

ニヤリとすると鉄球を支えるチェーングリップのボタンを押すバイス。
瞬時にその塊はチェーンから離れ、まるで意思を持ったかのようにマリナ目掛けて飛んでいく。

「そんな!?」

驚きながらも矢を放つマリナ。
しかし、流石スティンガー本体以上の防御力を誇るだけありビクともせず、進んでいく。
「まさかあんな機能があるなんて!」

「ど、どうしよ。マリナ様!?」

「怖がらないで……勝って見せるわ……皇女だもの。」

優しく微笑みながらも激しい射撃を繰り返すがビクともせず突き進む鉄球。

「ハハハ!どこまで耐えられるかな!!」

まるでバイスの嘲りに呼応するようにそれはマリナの腹部に当たる。

「きゃああああ!!」

棘と鉄の重量、そしてかつてないスピードを一気に受けて、マリナのスーツと体に鈍く重い痛みが走り、細く高い声を上げる……
ファイターと言うよりは暴漢に教われる乙女のようだ。
0456カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:07:06.92ID:+rF+HTtKd
ただヒットしただけではなく、腹部に接触したまま、マリナを後方へと押しやるように飛行し続ける鉄球。
もはや永続的に続く拷問のようなもの。

「うわあ!いてえ!」

勿論彼女の背後にいたアクバルも安全バーを握ったまま、壁とスーツ姿の皇女にサンドイッチされた状態になってしまった……

(姫様、やばいんじゃあ……あのトゲボールやり過ぎだろ……ルールよくわかんないけど
……にしても姫様とこんなに密着できるなんて……オレまじでラッキーじゃねえ?)

不謹慎だが年頃の少年なので仕方ない。
マリナのしなやかな筋肉に覆われた体(それも全身ピッチリスーツ)に押し付けられているのだ。
興奮しないのは至難の技というもの……
お陰で年相応のアレが逞しくなってマリナのお尻に当たっている。

(もう少しこうしてもいいかも……あのファイタームカつくけど今は感謝だな……アハハ……)

「ア、アクバル……ごめんなさい……ケガはない?……」

「お、おれだったら平気だよ……」
(姫様、オレのアレに気付いてねえのかな……でもその方がいい)

痛みを押さえて向き直るマリナ。

(この鉄球……どうにかしないと……どこかに策はあるはず……)

自分を押しやる鉄球を苦しみながらも見つめると一ヶ所に細く深い穴が見つかった。

(そうか……あの時連続で射撃したからなのね……)

「どんなに硬くても勝機はあるわ!」

「えっ!?」

突然の言葉に思わず自分の股間を触ってしまうアクバル。

(おいおい、硬くてもって……
やっぱりオレのことに気付いて……なわけないか。)

「随分苦戦してるな!俺が引導を渡してやる!挟み撃ちだ!」
0457カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:08:19.95ID:+rF+HTtKd
後ろからいつの間にかやってきたバイスのガンダムスティンガー。
辛うじて残っていたトゲの付いたナックルをマリナの背中に向けて迫ってくる!

しかし、皇女は苦しみに汗を流しながらも珍しく強気に笑った。

「イチかバチかよ……!」

腹部は鉄球の摩擦と硬度を食らい、背中はスティンガーのニードルに狙われている。

「ど、どうすんのさ、マリナ様!?」

心配するアクバルをよそにマリナは刻が来るのを待った。

「覚悟しろ!」

迫るバイス。しかし……

「ハッ!!」

ギリギリのタイミングでバイス機の肩を踵で蹴り上げ上空に飛んだ!
その衝撃で彼女から離れた鉄球はその主であるスティンガーの腹部に激突した!!

「ぐああああ!!」

凄まじい叫びを上げるバイス。

「すげえ……マリナ様、こんなことできるんだ!」
0458カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:09:50.18ID:+rF+HTtKd
はしゃぐアクバル。
一方自由落下で誰もいない山に落ちていく鉄球に目にも止まらぬ連続射撃を浴びせるマリナ。
あれ程彼女を苦しめた鋼の怪物は無惨に粉々に砕け散った。

「ちくしょう……マリナ、てめえ……!!」

悪漢は腹部を押さえて歯を食い縛り皇女の機体を見上げながら、相手と同じ高度まで飛翔する。
同じ目線で睨み合う両者。
マリナに数発矢を放たれ勢いを徐々になくすバイス。

「バイス、ここで終わりにするわ。
町の人達を脅かした罪、反省しなさい……」

弓を凛々しく構えるマリナ。しかし……腹を押さえて膝を着く。
やはり短時間とは言えダメージの蓄積はかなりのものだった……
鋼による圧迫と猛スピードの為に全身に疲労も溜まり、狙いを定めるのが難しいのだろう……

「うぐっ!……」

「マリナ様?!」

「……はあ、はぁ……ねえ、アクバル。
お願い、聞いてくれる……?」

「うん!何でも聞くよ!」

「それじゃあ……」
0459カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:11:45.24ID:+rF+HTtKd
彼女の求めに少し頬を赤らめるがすぐに頷く。
片膝を着いて狙いを定めるマリナ。
後ろ側で何と彼女を羽交い締めにするアクバル。
上体を安定させる為とは言え、彼女の背中とお尻にイヤでも密着して動揺を抑えられない。
このまま胸を触りたい衝動に駈られるがグッと堪える。

「これで終わりだ!」

「いえ、あなたの方よ!」

光の速さで射たれた矢がスティンガーの頭を撃っていく。

「ぐわああああ!!俺が、小娘に……やられるだと……!!」

無人の山に落ちていく悪漢とスティンガー。
0460カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:12:10.96ID:+rF+HTtKd
「ねえ、皇女様……」

「なにかしら?」

「今日は、色々と……ごめんなさい……」

「いいわ、謝らないで。私はこの国が、あなた達が好きだから闘ってるの。ただそれだけよ。」

頭を撫でる皇女はとても優しかった。

その後、孤児院に無事帰還するマリナのガンダムファーラ。

ワイヤーで降り立ち、ファイティングスーツ姿の皇女と手を繋ぎながら歩むアクバル。

「もう!本当に心配したのよ!!」

「やんちゃだからってまさかここまでとはな……」

真剣に怒ってくれる孤児院のシスター。呆れながらも帰宅を喜んでくれる友達。

「ごめんごめん。でもマリナ様凄かったんだぜ!!
テレビで見るのとは比べ物になんねえよ!
やっぱ本物は違うよな!」

拳を振り上げて皆に自慢するアクバル。
それをクスクスと微笑みながら見守るマリナ。

「今日は本当に申し訳ありませんでした!!家の子がとんでもないご迷惑を……!」

「いえ、気にしないで下さい。アクバルは立派に私を助けてくれましたから。
あんな子がいるんですから私は絶対勝って見せます。」

「マリナ様……」

憧れの目で見つめるアクバルの耳元に語りかけるマリナ。

「ねえ、アクバル……?」

「何?」

「あなたあの時……熱くなってたでしょ?」

「そ、そんなことないよ!」

「ねえ、何?何なのー!?」

アクバルは他の子達に聞かれて頬を赤らめながら苦笑いするしかなかった。
0461カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd5a-aw7/)
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2020/06/23(火) 21:14:03.40ID:+rF+HTtKd
以上です。

戦闘やスポーツとは無縁そうなマリナを細マッチョにしてしまったのには、最初は自分でも戸惑ったものですw
0462通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/24(水) 00:51:48.05ID:OucYA6n+0
お前も日本から出て行っていいんだぞ?
誰も悲しむ人はいないしなwwwwwwwwwwwwwwwwww
0463通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/24(水) 00:52:59.50ID:OucYA6n+0
お前は自分の言われた悪口をスルーできずに発狂しているやん定期
いつになったらスルーするんだよwwwwwwwwwwwwwwwwww
0464通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/24(水) 00:53:43.75ID:OucYA6n+0
スレ違いなのはお前の書き込みだろ定期
どんだけブーメランを投げまくれば気が済むんだよwwwwwwwwwwwwwwww
0465通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
垢版 |
2020/06/24(水) 00:54:43.75ID:OucYA6n+0
お前は何の才能もない汚豚ガイジやん定期
小説も読書感想文も書けないような無能ガイジが他人を批判するなよとwwwwwwwwwwwwwww
0466通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
垢版 |
2020/06/24(水) 11:56:28.47ID:K9CTO6DRd
>>460
なるべく表現を記号に頼るのはやめましょう
稚拙な文章に見えますよ
0467通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sra3-tABK)
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2020/06/24(水) 12:03:40.37ID:OFXA5LTqr
おや、簡単な漢字やらスペルすら読み書き出来ないクソ雑魚KBデブガイジがまーた嫉妬ッスかー?
今度はどんな知恵遅れっぷりで団地住民と揉めたんスかー?ダッセー(ギャハハ
0468通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 12:13:58.66ID:K9CTO6DRd
職人を伸ばすために上からアドバイスをしてあげてます
0469通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sra3-tABK)
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2020/06/24(水) 12:17:00.98ID:OFXA5LTqr
上って何なんスかー?んじゃ記号とやらに頼らない君の作品上げて下さいよ、嫉妬塗れのド底辺知恵遅れKBデブガイジ
今日も周りと揉めてムシャクシャ、惨めッスよねー(ギャハハ
0470通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 12:20:30.18ID:K9CTO6DRd
上の目線からってことだよ
どんだけ解読力ないの…
0471通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sra3-tABK)
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2020/06/24(水) 12:24:26.31ID:OFXA5LTqr
なーんだ、やっぱテメエで書けもしないクソ雑魚KBデブガイジが顔真っ赤涙目嫉妬こいてるだけっスよねえ?
ホラホラー、今日はあれかな?ゴミ捨て場締め出しでも食らったからそんなイッライラこいてんスかー?ダッセーッスね、いつもながらさ(ギャハハ
0472通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 12:28:15.59ID:K9CTO6DRd
ファイナルアルティメットガンダム

連合軍が対ドミニオン用に日本の国家予算の8倍の資金と
過去全てのあらゆるデータを元に設計したものを
ザフトが強奪し全勢力をかけて改良、進化させた究極のガンダム

全長200メートル
重量80トン

新型の動力炉PC(パーフェクトクリスタル)を4つ搭載する事により無限に動けることは勿論
超光速(光の8倍のスピード)での戦闘が可能となった。

さらにHMRS(ハイマルチロックオンシステム)により1度に100機までのロックオンが可能となり
フリーダムの倍近いスピードで攻撃可能となる。

そしてOSの他に人工知能も搭載されており、
これには最近発掘されたアムロ・レイという人物の過去のデータを元に忠実に再現した物で、
パイロットの思考とは別にアルティメットドラグーンを全自動で操作して戦闘をサポートする。
そしてキラ・ヤマトのデータもオリジナルを完全再現しており、
こちらは戦局によって瞬時にOSを書き直してくれる機能を持つ。

さらにデスメテオシステムを搭載して相手の動きを完全に読む事が出来る

武装には最大出力で撃つとプラントが跡形も無く消滅するギガスキュラ5門
ドラグーンの3倍近いスピードで相手を攻撃できるアルティメットドラグーン×180
核12発
携帯用ジェネシス×6
ダークガンバレル×400(ガンバレルの10倍精密で威力は4倍)
人工知能搭載型ストライクフリーダム×8(人工知能はキラ)
ID:??
0473通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 12:30:01.86ID:K9CTO6DRd
んおのれえええええ
0474通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sra3-tABK)
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2020/06/24(水) 12:31:22.41ID:OFXA5LTqr
もしもしー、クソ雑魚KBデブガイジさー
設定と文章の区別付いてまちゅかー?ホラホラー、ゴミ関係じゃなきゃ下のヤンキーからまったボッコボコにでもされたんスかー?
赤子いるんだからちっとは気い付けえや常識無し(ギャハハ
0475通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 15:00:10.67ID:K9CTO6DRd
荒らすな
0476通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd5f-PKxn)
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2020/06/24(水) 15:01:40.10ID:K9CTO6DRd
指定ゴミ袋ってなに?
そんなんどこで手に入れるねん
0480通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/25(木) 01:00:35.51ID:7msl6Sp20
お前は借金返済を親に頼りまくった恥知らずな汚豚ガイジやん定期
自分で作った借金くらい自分で返せよとwwwwwwwwwwwwwwwwww
0481通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/25(木) 01:01:24.37ID:7msl6Sp20
そうやって普段から上から目線だから嫌われているのになwwwwwwwwwwwww
お前はパシリ奴隷なんだから立場は下じゃねーかwwwwwwwwwwwwwwww
0482通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/25(木) 01:01:59.73ID:7msl6Sp20
荒らしているのはお前だろ定期
自己紹介しなくていいからwwwwwwwwwwwwwwwww
0483通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 4fad-eHHN)
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2020/06/25(木) 01:03:23.73ID:7msl6Sp20
ゴミ袋なんてスーパーでもコンビニでもホームセンターでも
どこにでも売ってるじゃねーかwwwwwwwwwwwwwwww
どんだけ世間知らずな汚豚ガイジなんだよwwwwwwwwwwwwwwww
0485カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd4a-gcun)
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2020/07/06(月) 23:44:10.84ID:a2Hbh/JBd
マリナ 新たなる戦術 第1話

アザディスタン代表のガンダムファイター、マリナ・イスマイールは都市から離れた荒野に敵ファイターと向かい合っていた。
相手はエジプト代表、レザー・クルスーム。185センチの大男でいかにもパワーのありそうな風体をしている。

「闘いにゃ似つかわしくねえ姉ちゃんだ。皇女様がよくやるぜ。
楽しめるんだろうな?」

どこかサディスティックな笑みを見せるレザーにマリナは静かに、だが毅然と答えた。

「……私にとっては楽しむものではありません。ただ、国の為に闘うだけです。」

「まあいいさ、精々泣かないようにな。ガンダム!」

レザーの大声と共に大地は割れ、ガンダムグレイブは姿を表した。
マッシブな人型ではあるものの、ピラミッドの頂点を思わせる尖ったパーツが複数付いている。

「ガンダム。」

対して静かに呟くマリナに答え、大地から現れるガンダムファーラ。弓と槍の闘いに適した純白の機体だ。
二人のファイターの声が重なる。

「ガンダムファイト!レディーゴー!!」
0486カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd4a-gcun)
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2020/07/06(月) 23:46:16.66ID:a2Hbh/JBd
「喰らいな!」

「なんの!」

グレイブの全身に付いた突起から繰り出される大きな砲弾を得意の弓術で破壊していくマリナ。

「この調子で勝てれば……」

冷静に素早く近付くマリナ。しかし……

「どうかな!?」

突如猛スピードで迫るグレイブ。砂を掻き分けスムーズに走るその様に驚くマリナ。

「これは……!」

「この機体は様々なフィールドに対応できるように換装式になってんだ!
アマゾンなら湿地、海なら水中、砂漠ならホバータイプだ!」

瞬時に接近を許してしまい、弓を叩き落とされるマリナ。

「そんな!」

「非力な姫様には勝機はねえぞ!」

片腕を捕まれ抵抗できなくなるマリナ。
必死で外そうとするも相手は動じない。
それもそのはず。グレイブはパワーに長けているのもあるが、そもそもマリナは他のファイターに比べ非力。
よってパワータイプを操るのは負担になる。
それを補う為の槍と弓だったが落とされ身動きできなくなったとあれば勝ち目はない……。
皇女の戦況は絶望的だ……!

「まだ、諦めない……」
0487カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd4a-gcun)
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2020/07/06(月) 23:47:28.31ID:a2Hbh/JBd
サイドスカートから取り出したスペアアロー……
しかしそれさえも叩き伏せられてしまう。
やはり遠距離でこそ輝く武器。至近距離ではどうしようもない……

「ほら、喰らいな!姉ちゃん!」

「きゃああぁぁ!!」

肩、腰、脚に砲撃を受ける。ファイトのルール上、コクピットを狙うわけにはいかないので必然的に食らうのはそれらの場所になる。

「さあて、頭を狙わせてもらおうか……」

「……!」

ファイターとしての本能とでも言おうか、瞬間的に精神がクリアになったマリナ。
恐れも焦りも心の奥に沈み、反射的に片足を上げて思いきり敵の片目にキックを直撃させた!

「ぎゃぁぁぁ!!」

一瞬の強い攻撃に悲鳴を上げファーラを離すグレイブ。
砂の上に尻餅を着いて何とか距離を取るマリナ。
0488カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd4a-gcun)
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2020/07/06(月) 23:48:02.90ID:a2Hbh/JBd
「やろう、目を……ファイトはお預けだ。また一週間後に来るぜ!」

飛び去っていくグレイブ。

「はぁ、はぁ…………私の武器が通じない……」

汗を拭いながら飛んでいく巨体を見つめるマリナ。
そこに一体の小型飛行機が降り立った。
中から現れた女性を見てマリナは驚いた。
ウェーブのかかった短いブルネット。眼鏡の奥に光るクールな瞳。年はマリナより少し上だろうか。

「あなたは……シーリン?」

「久しぶりね。マリナ。」

マリナは機体から出ると飛行機にいる彼女に駆け寄った。
マリナの秘書をしていた女性、シーリン・バフティヤール……
外交の為、暫く国を留守にしていたのだ今日戻ってきたのだ。
皇女は頬を染めながら……

「あの……今のファイトは……」

「ええ、見ていたわ。一国の代表としては少し酷いわね……」

「言い訳はできないわね。でも、後一週間しかリミットが……」

「そう、それなら私に良い提案があるわ。ここで挽回できなければ……わかるわね?」

「…………」

マリナは首を縦に振った。
0490カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
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2020/07/07(火) 19:53:03.44ID:QPAZOiCHd0707
マリナ 新たなる戦術 第2話

「きゃっ!」

床の上に倒れ込むマリナ。シーリンはいつも通りの冷静な顔で彼女を見下ろしていた。

「いたた……あなた、いつの間にこんな技を……」

立ち上がる彼女にシーリンは告げる。

「外交中に日本で教わった合気道というものよ。殴らずに相手の勢いを活かして倒す、古くから伝わる武術よ。」

「そんな武術があったの……空手や柔道しか知らなかったから……」

驚くマリナの前にしゃがむシーリンは側近と言うよりは家庭教師という顔だった。
そう……昔彼女に教えていた時のように、政治に携わる今よりは幾分親しみやすい雰囲気だった。
そっと手に触れる。

「私も始めて知ったけど、マスターすればかなり有効な武術。
あなたは努力を重ねてここまで成長した。それでも唯一他のファイターに届かないのはフィジカル……
器用に武器を使いこなしても腕力では敵わないでしょう。
でも、合気道ならその差を埋められる。あのパワーやスピードを兼ね備えた敵にもね。」

「…………期限は一週間だものね。わかったわ。私に教えて頂戴。」

シーリンは首を静かに縦に振った。
0491カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
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2020/07/07(火) 19:53:49.72ID:QPAZOiCHd0707
そして数時間後……

「私の動きを少し見切れるようになったみたいね。」

「はあ、はあ……!それにしても、シーリンの、手捌き、すごいわ……
対応……精一杯だもの……」

フラフラになりつつ汗を流すマリナ。
彼女が立っている場所を中心に汗が滴り落ちている。

「MF用の訓練室に行きましょう。見せたいものがあるわ。」

「?……」

不思議に思いながらも付いていくと、応急修理を終えたガンダムファーラにワイヤーを使い入っていくシーリン。
前方には、各国のMFを元にした無人の訓練用ダミー機が複数待機している。

「まさか……」

「ええ、今から合気道のファイトを見せるわ。よく見ていて。」
0492カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
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2020/07/07(火) 19:54:52.98ID:QPAZOiCHd0707
コクピットに入ったシーリンは慣れないその場所を見回す。
旧友にして皇女、そしてファイターであるマリナの居場所。
ファイトにかける想い、焦り、不安、そして勝利の喜び。
マリナが持っているありとあらゆるものがこの戦場にひしめき合っているような気がして、普段冷静な彼女も息を飲む。

「最初会った時は少し危なっかしい所もあると思っていたけど、ここまで強くなるなんてね……」

緑の外交スーツから布製のケースを取りだし、服と下着をパサッと脱ぐと、それは粒子となり消えていく。
マリナより数センチ背の高いシーリンはパッと見彼女より威圧感を与えるかも知れないが、身体は同じくらい細かった。
一言で言うと、適度に軽い運動を嗜む女性と言った趣の体型。
皇女より少し大きい平均サイズの胸。
ファイターでないのでマリナ程でないが、一般人の女性より幾らか引き締まった身体。
艶のある肌は色気を引き立てるのに充分だろう。
流れるような線を描くシルエットも男を昂らせるだろう。
0493カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
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2020/07/07(火) 19:56:01.81ID:QPAZOiCHd0707
リングに立ち脚を閉じて、両腕をスーっと広げる。

「デミモビルトレースシステム機動!」

叫んだ瞬間にケースから取り出したのはサイズの違う二つの半透明の布。
その内大きい楕円形のものを胸にピタリと吸着させる。

「く、うううぅぅぅ…………!いやぁぁぁ……!!」

いつもの凛とした揺るがない態度からは想像できないあられもない声。まるで痴漢や強姦に遭ったような悲鳴と共に身体を反らす。
布は大きく広がり、見る見る内に胸から鎖骨、腹、背中と両腕を包んでいく。

デミモビルトレースシステムとは、最近開発されたモビルトレースシステムの簡易版である。
必要以上に負担のある正規版に比べ1/3の疲労で済むもの。
巨大なスーツが上から降りてくるのではなく、二つの伸縮式布で上半身と下半身に纏う。
云わば訓練生とファイターに憧れた一般人のためのもの。
その分、人間の動きをガンダムにトレースさせる効果は正規の1/3程。特定の武術やスムーズな動きに長けていれば、性能以上のトレースができる者もいるが稀である。

「マリナの、苦しみに、比べれば……!!」

正規程手はないにしろ、全身にかかる圧迫を跳ね退けるように握り拳を作り、両腕を広げる。

そして、シーリンはもう一つ、小型カプセル状の布を性器である谷間に差し込んだ。
0494カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
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2020/07/07(火) 19:56:54.91ID:QPAZOiCHd0707
「い、いやぁぁぁ……!!」

いつもの凛としたものとは違う声色を上げてしまうシーリン。
布はやはり性器の比較的奥まで吸着する刺激を与えながら、下腹部、性器周り、尻、脚を包んでいく。

「キ、キツイ……!!」

深いアナルにも行き渡るスーツに腰を揺らしながら、全身に力を込める。

「時間が、ないわ!!マリナの、為に……」

吸着に耐えながら正面にいるダミー達を見据えるクールな瞳。
衝撃は徐々に消えていく。一般人に取っては有り難いシステム。

半透明の美しい、だがどことなくぼやかした色のスーツに包まれたシーリン。
通信機を作動させマリナに呼び掛けるシーリン。

「よく見ていてね。これが合気道よ。」

首を縦に振り旧友が乗ったガンダムを見つめるマリナ。
0495カイ ◆c12wmZgb8g (タナボタ Sdaa-gcun)
垢版 |
2020/07/07(火) 19:57:29.89ID:QPAZOiCHd0707
「はあっ!!」

簡易版とは言え、走り込みと合気道に慣れたシーリンはスムーズに、正確に自分の動きを反映させている。
ファイターではないが一般人としてはかなりのものだ。

ダミーの振り降ろす腕を掴み、瞬く間に投げていく。
バランスを崩した機体は次から次えと間接を初めとするパーツを破壊されて倒れていく。

「凄いわ……こんな戦い方があったなんて……」

その鮮やかさに魅入るマリナ。
皇女は友によって新たな希望を感じていた。
0497カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:38:26.92ID:LwGg08IGd
マリナ 新たなる戦術EP3

訓練開始から三日経ち、マリナは苦労しながらも生来の才能ゆえに合気道の技を身に付けていった。
今は晴天の昼下がり、気晴らしに街を歩く。道行く人に挨拶をして、時には軽く談笑すると、人通りのない原っぱに出た。
街の治安が守られていることを皇女として嬉しく思う。
およそ十年前には考えられなかったことだ。

「これも国のみんなが協力してくれたお陰ね……」

(絶対にあんな人に負けはしないわ……シーリンの為、みんなの為にも……!
…………!?)

上空から自分目掛けて何か大きなものが勢いを付けて降ってくるのを感じ、ファイター故の反射神経で素早く身構える。
棍棒を持った長身の男。

「ハッ!……」

瞬時に相手の腕を掴んで捻り、投げ飛ばした。

「いてて……てめえ、避けやがったな……」
0499カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:40:14.17ID:LwGg08IGd
背中を強かに地面に打ち付けた男はダメージに痙攣している。
この近くの土は柔らかいとは言え、マリナの今までの訓練で培った腕力と合気道の訓練成果によって、相当の痛みがあるらしい。

棍棒を奪って槍の構えのように突きつけるマリナ。

「エジプトのファイター・レザーの命令?


「けっ、誰の命令だろうが関係ねえ!」

男が痛みに耐えながら指を鳴らすと、複数の男達が茂みや木から姿を現す。
殆どは嫌らしい顔でマリナを見ている。
相手を痛め付けたいだけでなく、性的なことを考えてもいるのだろう。それは対面している皇女自身にも伝わっており、ファイターになってからある程度の覚悟はしていた。
皆腕利きの格闘家や元軍人……レザーが雇った相手だろう。
シーリンが言った通り、マリナの弱点は筋力。武器の扱いやスピードはともかく、純粋なパワーだけなら彼女を越える者も二、三人は混じっているかも知れない。

「マリナよ、悪いがここでシメさせてもらうぜ。」

一斉に襲いかかる男達。
戦闘体勢に入ったマリナは次々と相手を殴り、蹴り飛ばしていく。ガンダムファイターとして非力でも、それ以外の格闘家や軍人を圧倒的に凌ぐパワーと格闘センスを持っている彼女は純粋にパワーだけで片付けられる。
そして敵は残り僅かになったのだが……

向かってくる一人の男は凄まじい腕力でマリナのパンチを弾き返す。
一気に原っぱに倒れ込むマリナだがすぐに立ち上がる。ファイターにしては小さい拳は痛みにジンジンとしている。

「キャッ……!」

「フッ、応えたらしいな。俺は腕力に関しちゃ自信があってな。」

その男はテクはイマイチだったのでガンダムファイターの適正はなかったが、パワーはかなりのものだった。
この世界の格闘家の中ではトップクラスまでいかずともかなりのものだろう。
0500カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:41:07.37ID:LwGg08IGd
「くらえ!」

更に何発もキック、パンチをマリナの腹、腕、脚等に入れていく。
乱れ内に少しずつ赤くなる皇女の皮膚。

「うぐっ……!(もっと冷静に……敵の動きを読まなきゃ……)」

ふらっよろめくマリナ。周りの男達は手を出さずにいやらしく囃し立てる。
金で雇われたであろうそいつらは暴力に飽きたらず性欲まで強く持っている。
今マリナにダメージを与えた男も同類の表情だった。

「いい格好だな、皇女さまっ!これが終わったら俺達楽しめるな!!」

「はぁ……はぁ……誰があなた達に……
(ここで負けては国を救えないわ……
怖い敵なんて、誰もいない……!)」
0501カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:42:16.88ID:LwGg08IGd
心を鎮めて雑音をシャットアウトすると、どこか精神が白く透き通ったような心持ちになる。
自ずと今握った拳は開かれて、身体全体にかかる力は抜けて軽くなったような心境だ。
彼女には怪力の男しか見えていない。
大きな拳が見せる軌道……それを鋭く見つめると、痛む身体を押して腕を掴み、捻り混んだ!!

「ハッ!」

「うわぁぁぁぁ!!」

そのまま更に捻ると、男の腕の間接が脆くも外れる音がした。

「ひいぃぃぃ!!」

男はそのまま痛みに苦しみながら汗をドッと流していた。
皇女はそれを冷静に見下ろすだけ……
0502カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:46:15.65ID:LwGg08IGd
EP4

そして他の男達もマリナに投げられ、間接を捻られた。
全員が彼女の通報で逮捕されたが、敵ファイターの住むエジプトと問題を起こしては国の安全に関わると言うマリナの判断で密かに独房行きになった。
マリナはあの頭が冴え渡るような感覚から元の状態に戻っていたが、何分初めての体験なので混乱しつつ帰路に着いた。
街の人達や通報を受けた警官からは軽い土汚れや痣を心配されたが、本人は笑って心配をかけないように努めた。

ここはアザディスタンの城の皇女専用の個室。少し脚の長いベッドには皇女の純白の下着が丁寧に畳まれて置かれている。
マリナは椅子に座って一糸纏わぬ姿でシーリンのお世話になっていた。
両手を膝に置き真っ直ぐに姿勢良く座っているが、桃色の薄い唇を少し強ばらせている。
控え目な美乳・括れていながらも引き締まった腹・しなやかな手足……痣のできた体の各部に塗り薬が染み渡る。

「いっ、いたい……」

「全く無理をするんだから。たまにそういうところがあるわよね、昔から。」

シーリンは呆れながら出来るだけ優しく薬を塗ってくれていた。

「ありがとう、シーリン。でも不思議なのよ。冷静になろうとしたら頭が冴えたような、余計なものが消えちゃった状態になって……」

シーリンは少しの間考えていたが直に顔を上げると

「それはもしかすると、明鏡止水というものではないかしら……」

「め、明鏡止水……?」

聞き慣れない言葉に首を傾げる皇女に旧友は続けた。
0503カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:47:04.41ID:LwGg08IGd
「一切心が荒まずに、澄み渡った……そうね、とても落ち着いた安定状態というのかしらね。日本で聞いた言葉よ。」

「私が、その状態に……?」

「ただ、誰でもいきなりなれるわけではないわ。もしかしたら……その前段階かも知れないわね……」

「じゃあ、いつもその状態を保っていられれば……」

「そう、だけど決着までに後四日しかないわ。確かに大切な言葉だけど、新しい概念に心を奪われていたらそれこそ元も子もないわ……
言い出した私が言うのも何だけど、忘れて訓練に励みましょう。ただ冷静さだけを心掛けるしかないわ。」

「そうね、ありがとう。シーリン……」

それでも、その言葉はマリナの心を掴んで離さないのを自身が一番わかっていた。
望みと不安を同時に見せる澄んだ水色の瞳……それは旧友に親愛の微笑みをさせてしまうものだった。

「マリナ、あなたって人は……
……所で何か感じない?」

「何って?」

「この部屋、私達だけじゃないわよ?」

「……!?」

敵の襲撃後なので、立ち上がり構えるマリナ。
シーリンはベッドの脚に触れると諭すように「出てきなさい。」

「な、何?」

「あちゃー、ばれちゃったかー、ハハハ。」

ベッドのやや長い脚と床の間から這うように出てきたのは見覚えのある少年……アクバルだった。
前に孤児院で出会い、コクピットのはいりマリナの戦いを目の当たりにしたあの少年……

「アクバル!あなた、いつからそこに……
ずっと、見てたの!?ひどい……」
0504カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:47:58.46ID:LwGg08IGd
マリナは立ち上がり、胸と局部を両手で隠す。
子供とは言えスケベな男子。女としては反射的に防御せざるを得ない。
スラリとしつつ引き締まった、つまり二重の意味で美しさを兼ね備えた女体を震わせる。
少し衝撃を与えればすぐに体制を崩して大事なところを公開しかねない危うさ。
普段ファイトで落ち着いた構えを見せる彼女とは別人のようだ。ただ、それはファイトの訓練と経験によって積み上げられたもの。
今の姿は生来の彼女らしさかも知れない。

実は彼に裸を見られたのはこれで二回目。最初の時は目を瞑るよう頼んでから、脱衣してスーツを装着したので恥はあまりなかった。
…………と思ってるのはマリナだけで、アクバルは(ある意味では)勇気を振り絞ってこっそり目を開け、皇女の裸体とスーツの装着に苦しむ様をまざまざと脳裏に焼き付けたのだ。
まだ小さい彼には相当の刺激と高揚を教えてくれたので、それを一人アソビの助けにしているのは秘密だ。
その思い出を孤児院の男子達に語れば相当の反響を呼び、女子達はそれに対し所謂「男子サイテー!」というリアクションを見せ、従業員は青ざめながら説教をしていた。
この孤児院始まって以来の大騒ぎだった……

「いや遊びに来たんだよ。マリナ様にあったことあるって言ったら城の警備の人が入れてくれてさ。
でも、酷いな、今回ヤバいやつらだったんだろ!?
ファイターにも色んなタイプがいるんだな……」
0505カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sdfa-G3uh)
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2020/07/20(月) 14:48:40.70ID:LwGg08IGd
アクバルが心配そうに手を触れようとするのを反射的に武道宛らのモーションで避けるマリナ。

「もう、酷いのはあなたよ……
……でも、ここまで来てくれて嬉しい……ありがとう……」

マリナは呆れながらも険悪な感じはなかった。寧ろチラリと向けた水色の瞳には喜びが見えるので、少年は素直に笑った。

「気付かないなんてまだまだね……皇女様も形無しね……」

「シーリン、からかわないで!
……あっ」

言った拍子に手を広げて、股間を見せてしまうマリナ。

「…………」

時が止まったようなムード。鳩が豆鉄砲食らったような顔になるアクバル。

「いやっ……!!」

「うわぁぁぁ!」

少年は目にも止まらぬ速さで腕を捕まれ床に転んだが悪びれる様子もなく背中を擦る。

「いてて、流石、マリナ様か……」

「ほら、行くわよ。」「はい……」

シーリンに連れられて部屋を後にするアクバル。

着替えたマリナはまた二人を部屋に入れてお茶を人数分淹れた。

「院のみんなは元気?」

「うん、みんなマリナ様が来てからもっと元気になったよ!」

「そう、良かった……私が少しでもみんなの力になれるなら……」

少年の言葉には二重の意味があったのを彼女は知らない……
シーリンだけは何かを察したのか黙ってお茶を啜っていた。
0507カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:19:51.31ID:hfZJ7rayd
少しストーリーは横道に逸れますが、アザディスタンの内輪揉めです。
昔流行ったビキニアーマー的なのも出てきます

EP5

マリナがアクバルと和気藹々と過ごしている頃、城の別室では何人かの大臣が集まっていた。殆どは年輩で、中には中年も混ざっていた。

アザディスタンは元々女性に参政権のない国。
しかし、ガンダムファイトが制定されたことで戦争は終わり、政治家の尽力により国の経済力も少しずつ上がっている。
皇女となったマリナがガンダムファイターになり、二重の意味で国の代表になったことで、国内の女性の地位も上がり女性政治家も増えた。
それを快く思わないのがここにいる彼らである。

「しかし、参りましたね。ここ最近のマリナ皇女の活躍ってやつは。」

一人が皮肉っぽく告げる。

「全くだ。しかし、遂に完成したじゃないか。新型の《スーツ》が。
何も知らずに開発の話を喜んでいたな、皇女は。
これで彼女の信頼は終わりだろう。」

自信ありげに話す男は中心人物らしい。

すると、隣にいた男は手を上げた。

「しかし、そうなっては国民からの我々の評価も危ないのでは?」

メインの男は首を横に振り

「いや、大丈夫だ。優しい皇女とその直属の部下達なら甘い処罰を選んでくれるだろう。
今回の失敗を糧にこれからもお願いします……という言葉と共にな。」

「確かに。それにエジプトのファイターがこのタイミングに我が国に勝負を仕掛けたのもラッキーですね。
敵に感謝することがあるとはね……」
0508カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:20:57.77ID:hfZJ7rayd
個室で談笑するマリナ達の元に先程集まっていた大臣の何人かがメカニックスタッフ数人を連れてやってきた。

「マリナ皇女。実は新型のファイティングスーツが完成致しました。」

「本当ですか?それではすぐにテストしましょう。」

嬉しそうに立ち上がるマリナ。
少し不安げに男達を見つめるシーリン。アクバルは好奇心の目でマリナを見つめる。

シーリンとアクバルを連れ立ってガンダムの格納庫に行く一同。

「新しいスーツというのは?」

「これです。」

パッドに映ったデータのイラストを見たマリナは苦笑いして固まる。
脇から覗いたシーリンも絶句した。
そこには「リキッドメタルスーツ」という文字があった。

「こ、これですか……」

「ええ、以前のものとは違いますが軽量なのですよ。エジプトとの闘いも迫ってますし……」

例の一番メインの大臣が説得すると応じるマリナ。

「……そうですね。時間がありませんからね。」

「どれ、どんなの?」

パッドを奪おうとするアクバルを止めるシーリン。
彼女は男達に疑惑の目を向けたが、その視線はテストに臨むマリナの方を向けばすぐに心配の眼差しに変わった。

「あなたが見るものではないわ……
(しかし、こんなものを……彼らは一体何を……)」
0509カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:22:42.36ID:hfZJ7rayd
緊張しつつガンダムファーラのコクピットに入るマリナ。いつも通り全裸になるが新たなシステムに不安で内股になり、普段の祈るポーズもする余裕がない。

「大丈夫なのかしら……でも、闘えるのは私しかいないから……!
モビルトレースシステム起動!」

恥じらいを消すように発した声と共に天井から降りてきたのはスーツの布ではなく、掌サイズの銀色の液体だった。
それは液体金属……リキッドメタルスーツというものだった。[newpage]
「新型スーツの話は聞いていたけどこれはどういうこと?」

静かに、しかしそこはかとない厳しさを見せるシーリンにリーダー格の大臣は落ち着き払って応えた。

「その名の通り液体金属を使ったものですよ。軽量ですし、新技術を使えば他国への優位性のアピールにもなります。」

「…………」

「ねえ、ホントに大丈夫なのか?」

シーリンは不安がるアクバルの肩に手を置きながらも、大臣達への疑惑の目を向け続けた。

一方マリナは……
0510カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:23:30.12ID:hfZJ7rayd
「な、何?これが液体、金属?キャアッ!なに、これ……!」

重力や引力に逆らう技術が使われているのだろうか……銀色のそれは首や肩ではなく、いきなり形の整った胸元に圧迫するようにへばりついた。
更に胸を揉み解すようにモゾモゾと動きながらその面積を広げていく。

「い、いやぁぁ……!キ、キツイ……!!

それに、柔らかくて、ヒンヤリしてて、何だか、こわい……」

あっという間に肩甲骨まで包んでいくと、まるで生き物のようにそこと胸を前後からグイグイと圧迫していく。

「い、いやぁぁぁ!!い、いた、く、苦しいぃぃ……!!」

柔らかいが、同時に強靭な締め付けでマリナを苦しめるメタル。
何度も揉まれていく度にそこを中心に、真っ白かった肌が少しずつ紅くなっていく。
理不尽で未体験の衝撃と羞恥によって……
徐々に固まり、銀の硬質なブラジャーのような形になるメタル。
すると、新たにもう一つの掌サイズ液体金属が降ってきた……
シーリンとアクバルは心配そうにガンダムに目を向けていた。

「マリナ様……どうなるんだ……」

「今は信じましょう……」

少年の肩に置いた手は心なしか力が入っていた。

液体金属に戦くマリナ。

「また一つ?今度は何!? ……まさか……」
0511カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:24:39.30ID:hfZJ7rayd
「また一つ?今度は何!? ……まさか……」

予感は的中した。それはマリナの胸を通過し下腹部に触れるとジンワリと陰部、尻にその侵略を進めていく。

「いや、やめて、そこだけはぁぁぁ!!」

怯えて悲鳴をあげる姿は皇女ファイターとは思えず、寧ろ怪物に襲われる女性のようだ。
今までずっとスーツの与える羞恥と苦しみと戦い、耐性もかなり付いてきた。
しかし、新しく見たそれは生物のようにマリナに迫る。恐れない方が不自然。

冷たい質感と共に下腹部を全て覆われると、誰も誘い入れたことのない女の場所にグイッと入り込み、深いところまで入っていく……
バイブと圧迫を同時に与えて、マリナはあられもない声をあげる。
腰を上下に揺らす姿は見たものを驚きと邪な感情に駆り立てるかも知れない。

「いやぁぁぁ……何だか、くっつかれてる、みたい……」

下半身をメインにガタガタと震えるマリナをよそに、会陰を伝ってアナルにまで入っていく。

「ひゃ、だ、だめよ、そこは!そんな!」

実際に清潔なのだが場所が場所なので、自分の秘密を見られたような気分になってアナルに手を伸ばそうとするが既に遅い。
深々と入ったそれの与える冷たさに尻を突き出して背中を反らし、天井を仰ぎ見る。

「いやぁぁぁ……!!わたしの、そんなところ、やめて……!!
国の、みんなに、見られたら……」

なぜかふとアクバルの悪戯そうな顔を思いだし赤面する。
アナルに入ったそれは更に小振りな美尻を入念に包んでいく。
腰全体を苦しめるように揺れながらプレッシャーをかける液体金属。
やがて固まり、銀色のパンツになった。

同時にマリナの体にかかる苦しみも少しずつ軽減していく。
0512カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-8cPe)
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2020/07/24(金) 22:25:08.05ID:hfZJ7rayd
「はぁ、はぁ……!……これが……スーツ……!?」

金属が包んだのは全身ではなく、胸と腰だけ。下着のようなアーマーといった方が正しいかも知れない。
データを先に見ていたが、いざ着ると衝撃と恥ずかしさは並みではない。

「あの人達は何を考えているのかしら……!?」

決着まで後僅か。皇女は漠然とした不安を募らせていた。
0514カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:03:00.60ID:ymo9AxGPd
マリナ 新たなる戦術 第6話

「はぁぁぁ!」

訓練場で無数のダミー機体を蹴散らしていくマリナ。
あるものは槍と弓で、あるものは合気道の投げ技で次々と破壊されていく。
一見格闘とは無縁そうなビキニ状スーツはマリナのモーションを見事機体にリンクさせて滑らかなモーションを実現させてくれる。

「すごい、前のスーツを格段に進歩させてる。」

あまりの成果に自身が纏っている金属の胸当てとパンツを繁々と見つめる。

大臣達の求めにそのままの姿でゆっくりとワイヤーで降りるマリナ。
その場にいる誰もが息を飲んだ。
元々持つ雅な美貌。訓練によりスレンダーさが増した抜群のスタイル。
そこに際どい場所だけをメタルに守られている。注目を集めるのは無理もなかった。

「むう、素晴らしいですな、マリナ皇女。」

「スーツを使いこなしていますね。」

大臣達は口々に誉めるがそれは半分おだて。それを知った上ではにかむ皇女。

「いえ、皆さんの力あってですから……
…………何をしているの、アクバル?」

「……え、これは……?……うわぁぁ!」

お尻に手を伸ばそうとするアクバルの腕をさっと掴んで軽く投げるマリナ。尤も、手加減していたから大丈夫だったが。

「ホントに困った子……」

「いてて、流石だな。マリナ様。」
0515カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:04:07.38ID:ymo9AxGPd
シーリンはフフっと笑い

「段々勘が鋭くなっていったみたいね、マリナ。」

それ日から三日間、新型スーツでのガンダムの操作と、スーツを着ながらの生身の訓練に力を注いだ。
アクバルもそれを見学したいからという名目で城に泊り、マリナの姿を脳裏に焼き付けるのに注力した。
決着は明後日となったこの日、いつも通りシーリンから合気道を教わった。

「中々の性能ね、そのスーツ。見た目通りかなり身軽になってるわ。」

「ええ、姿は恥ずかしいけど動きやすいし、次の戦いが終わったらデザインを変えてもらわなきゃね……」

その語尾は相当強いものだった……

「全身金属というのも中々斬新よね。他のファイターからの視線が凄そう、色んな意味で……」

「ちょっとやめて、シーリン。全部金属は困り者よね……もっと目立たないようになれば良いんだけど?」

その後、マリナはシーリンと自室に戻ると訝しい顔をした。

「あれ?ない、ないわ。」

「どうしたの?」

「ビキニスーツの解除用リキッドがないの。」

解除用リキッドは、その名の通り金属でできたスーツを溶かす液体。
但し純粋に溶かすだけなので、人間の皮膚には何ら影響はない。

不思議がる二人。
そしてマリナは人差し指を口元に触れて…

「それに、アクバルもずっと帰って来ないのよね…」

「こんな時に人の心配?でも確かに気掛かりね。やんちゃな子だから…」
0516カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:05:12.21ID:ymo9AxGPd
一方アクバルはまた戻ると言い残し長い間城の近くをブラブラしていた。
20人程客がいる酒場に行くと、早くも皇女のスーツの話を自慢げに切り出した。
様々な年齢の男達が目を輝かせて話に聞き入った。女達は苦笑いしたり、眼前の男達に不快感を示したりして正に十人十色だった。

「……というわけなんだ、すげえだろ!?」


「まじですげえ、ボウズ、いいもん見たな!」

「こぉの、幸福者ぉ!」

しかし、中には無法者もいた……
スキンヘッドの男は王宮の警備員として相当の強者だったが飲酒や暴力などの素行不良でクビになって荒れた生活をしていた。
逆恨みで何をするかわからない……!
彼は近付いてくると、好色な顔をズイッと寄せた。

「おい、姫様は今でも城にいるか?何なら今からでも会いに行きてえと思ってな。」


悪い予感がしたアクバルは自分の軽率さを悔いながら首を横に振った。

「いや、今はもういないと思う。……他に用事があるらしいから……」

「どうだろうな。まあ行ってみるさ……」

(この荒くれたやつ、マリナ様になにするかわからない。今大事な時だし……!
絶対に会わせちゃいけない!!)

「やめなよ!今姫様は大変なんだ!国の未来がかかってんだ!……あんたも国の一員なんだからわかるだろ?」

少年にとって精一杯の説得だった。しかし、元々血の気が多くて最近はそれが酷くなった男は聞くわけがなくアクバルの胸ぐらを掴む。
酒場の店員や他の客は何もできずじっとしていた。
0517カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:06:34.65ID:ymo9AxGPd
「ガキが何言ってやがる!こっちはクビになってから毎日悲惨なんだ!一泡吹かせなきゃ腹の虫が収まらねえ!!」

「こいつ……!!」

「私に一泡吹かせたいならその子を離して。」

向かい合う二人が振り向くとそこには当の本人、マリナが白いコートを着て立っていた。
馴染みの少年を脅す男に怒りの炎を燃やす水色の目は、宛ら蒼い炎のようだ。

「マリナ様……」

「アクバル、中々帰ってこないから探してたわ。」

「そっちから来てくれるなんて丁度いい……まずはこれを喰らえ!」

襲いかかる男の猛烈なパンチ。それに動じず腕を掴むとそのまま相手を床に倒してしまう。

「この野郎……」男はタフなのか立ち上がってくる。

「ここでは皆さんの迷惑になるわ。どうしてもと言うなら誰もいない場所で…… アクバル、あなたは早く帰りなさい。」

「ありがとう、マリナ様……」
少し離れた空き地に向かい合う二人。

「ファイターになったからって自惚れんじゃねえ!!」

「あなたのような人、クビではなく警察に渡すべきでした。今終わりにします!」

(感情に流されちゃだめ。落ち着いて……今ここには誰もいない、存分に戦えるわ。)

自分に言い聞かせると、原っぱの時のように頭が冴え渡ってくる。
この数日であの冷静さをマスターしつつあった。それでもまだ明鏡止水まではいかないが……

「さっきは油断したがこれで終わりだ!」

男の方も少し落ち着いてきたのだろう。あくら腕っぷしが人並外れて強いとは言え相手はガンダムファイター。一筋縄ではいかないのを実感していた。
0518カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:07:43.03ID:ymo9AxGPd
ナイフで襲いかかる男、その手はマリナに払われ地面に落ちる。
それからも男の攻撃を受け流し、地面に倒し続けるマリナ。
時にはパンチとキックを交えて柔軟に戦うが、何回も攻撃の応酬を繰り返す度に少しずつ疲れが出てきた。
時が経つ毎にそれは顕著になっていく。

(はあ、はあ……おかしいわ。こんなに早く疲れるなんて……訓練より激しく動いているから……?)

疑問と疲労を頭の中で振り払おうとするが、一瞬のモーションの鈍さを男は見逃さなかった。

「もらったぁぁ!!」

「しまった!」

男は逆にマリナを投げ飛ばすとナイフを拾い、コートを縦一閃に切り裂いた!

「いやぁぁ!」

「ほお、皇女、いいもん着てるじゃねえか。」

コートの下にはあのビキニ状スーツを来た姿。アクバルが心配で急いでコートを羽織ってきた。

「どれ、どんなかんじなのかねえ、マリナ様の素肌……」

「いや、やめて!」

震えている様は普通の女だった。もはやあの冷静さは吹き飛んでいる。
体力の減少も止まらず、息が激しくなっている一方だ。

「はぁ、はぁ……」(さっきより疲労が酷くなってきてる……)

「やめろ!マリナ様に酷いことするな!」

そこにやってきたのはアクバルだった。
0519カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:10:55.14ID:ymo9AxGPd
「アクバル、なぜここに!?」

「俺を、助けようとして戦いになったから気になって……お前、やめろよ!」

「ほお、ガキがいい度胸だな、まずはお前からだ!」

アクバルに襲いかかる男。
咄嗟に少年の前に出るマリナ。勢いで放ったキックが相手を吹っ飛ばすが、体力の消耗は誤魔化せず、フラフラしている。細い肩を揺らして息をする。
疲労を現すように何滴もの汗が大地に滴り落ちる。

「はぁ、はぁ、負けるわけには……」

(これではアクバルを守りきれない。もっと冷静に……
明鏡止水は……)

疲労と焦燥を無視し、あの原っぱでの戦いを思い出し、再び頭が冴え渡る皇女。
全身に意識を集中させ、頭に幸せな思い出を浮かべる。
今は亡き家族との日々、シーリン達友人との思い出、ファイターに合格した日、喜んでくれる国民の顔。
その全てが彼女を落ち着かせ、穏やかにしてくれる。
そして、身軽さのためにコートを脱ぎ捨てたその体は少しだけ淡い色に輝いていた。
日の光に照らされた麦のような薄い金色……
銀色だったビキニまでも同じ色に変わり輝きを放つ。
0520カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:12:35.87ID:ymo9AxGPd
「お前……一体……?」

「マリナ、様……?」

他の二人はただ驚き目を見張るしかない。

「この、早く倒れろ!」

飛んでくる拳を俊敏な鳥のように軽々と避けて、腹に凄まじいパンチをぶつける。

「うわぁぁぁ!!」

そしてよろめく相手の肩を掴み、大地に投げ飛ばす。
その音に木々に止まっていた鳥達は逃げ出す。見守るアクバルは茫然とする。

男は強かに打ち付けて気絶してしまった。

「あの、マリナ様!!ついにやったね!!」

「……アクバル。」

駆けて寄ったアクバルが手を伸ばした時、マリナの全身から光は消えて、力なく少年の上に倒れていった。

「うわ、マリナ様!ちょっと……!!」

金属のビキニに包まれた肢体は汗を大量に流しながら少年の真上で眠りについた。
どこか苦しみを見せる表情で……
0521カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:14:23.24ID:ymo9AxGPd
第7話

「マ、マリナ様……」

いきなりのことに驚くアクバル。
彼より背が高いとは言えマリナは軽かった。重みは感じない。

(な、なんか前にコクピットに入った時も思ったけど、肌柔らかいな……
でも体型は締まってるし……
元々いい匂いがするし、今は汗かいてるけど嫌な感じはしないし。ドキドキする……)

「いけね、なに考えてんだ俺は。」

不謹慎さに気付いて首を横に振ると、彼女を肩に担いでさっきの酒場に入り、そこの電話で王宮と警察署に報告した。これで敵の男は逮捕され、気絶したマリナはアクバルと共に王宮に運ばれた。
王宮の医務室にあるベッドに横たえられるマリナ。医師はメタルのスーツを外そうとするが
0522カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:22:34.29ID:ymo9AxGPd
書く順番少し間違ったw
プチ訂正。

シーリンは解除用リキッドがなくなったのを医師達に告げると、メタルスーツを開発推進した大臣達を電話で呼んだ。
その間、念の為医師はメタルのスーツを外そうとするが

「取れないっ……並大抵の人間の力では無理か……ファイターでなければ。
……もしかして、皇女の疲労はこれが原因なのでは?」

心配するアクバルの隣にいたシーリンは不穏な表情で頷く。

程なくして、スーツ装着テストにマリナを読んだ大臣とメカニック達を連れてくるシーリン。
彼女は疑惑と嫌悪に満ちた目を彼らに向けていた。

中心的な大臣は普段の落ち着いたムードを崩さないながらも申し訳なさそうに

「いや、このようなことになるとは。
メタルスーツの開発は完璧だった筈ですが……
危険性に気付かず我が皇女にこんな苦しみを……
本当に面目ない。」

彼の目配せでメカニックがマリナのビキニ部分に液体を垂らした。
皮膚を傷付けずに少しずつ溶けていく液体。いざという時のスーツ解除用のリキッドだった。

「マリナの部屋にあった解除リキッドがなくなっていたんですよ。
心当たりありません?」

それとなく尋ねるシーリンを見て首を横に振る大臣達。

「皇女を初めとした皆さんに御迷惑を御掛けしました。私達は一旦引き上げます。」

帰っていく一同をシーリンは厳しい目で見つめていたが、直属の部下に目配せする。彼は大臣達とは距離を取りながら後を着けていった。
0523カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:23:50.65ID:ymo9AxGPd
部屋の内側と廊下にはボディーガードを数名付けてある。
そしてシーリンは医師からマリナの着替えを受け取ると、静かな声でアクバルに

「あなたも一旦借りている部屋に戻って。」

「うん……」

脱力したように戻るアクバル。
やがて全て溶けて消えてしまうと、一糸纏わぬ姿になったマリナの汗を冷たいタオルで拭き服を丁寧に着せた。

「ごめんね、マリナ……」

横たわる彼女の手に自分の額を重ねた。その目には雫が……

「シーリンさん、わかりました。やはりあいつら仕組んでいました!」

一時間程してシーリンの部下がRCレコーダーを持って戻ってきた。
いつになくガタッと立ち上がるシーリン。マリナを起こしたかと思い、まだ寝ている彼女を見て安心すると部下に向き直ると、ボディーガード達にその場を任せて部屋を後にした。

「そう、それでは私の部屋に行きましょう。」

二人は録音を真剣に聞いていた。
あの大臣達とメカニックの声が聞こえてくる。
彼女は部下に命じて、彼らの仕事部屋のドアに盗聴機を付けさせた。
例え外側に付けても部屋の内側の音声を録音できる性能だった。
0524カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:25:09.55ID:ymo9AxGPd
『極度の感情の昂りにより疲労を与える金属。メカニックさんは目の付け所が違いますな。』

『しかし、上手くいきましたな。皇女の汗のかきよう。あのスーツかなりのものですね。
目の保養にもなりますし。メカニックのあなた方のお陰ですよ。』

『お褒めに預り光栄です。それにしてもあなた達はそんなに女性の王様がお嫌いなのですね。
私は報酬をもらえば良いですし、男女どちらでも気にしないのですが。』

『ええ、ずっとアザディスタンは男が強い力を持っていた。それをあの娘が皇女になっただけでなく、ガンダムファイターにも……
男の立つ瀬がないと思いましてな。あのシーリン達の一派からは保守派などと言われ嫌われてますがね、ハハ。』

『まあ、そのお陰で新しいスーツの研究費も頂きましたしウィンウィンですがね。
そう言えば、彼女が次のファイトに負けても新しい男性のファイターを用意していると聞きましたが、その時は是非とも私を頼ってください。
私が彼に新しい装備を作りますから。』

『お願いします。』

シーリンは腕を震わせた。
国のためにずっと歯を食い縛ってきたのに、男のプライドの為に国の足を引っ張るばかりかマリナを苦しめたのだ。

「こいつら……本当に……」

部下はその様子を見守っていたが、そこにもう一人部下が現れUSBメモリを出した。

「ここには、あのスーツのハッキングデータがあります。保守派大臣の差し金でしょうが、とんでもないカラクリがありました。」

「……どんな?」

PCに接続すると、詳細データが表示された。

「……シーリンさん、落ち着いて聞いてください。
このスーツはユーザーの極度の闘争心を関知すると、その体力を減少させるスチール効果があるのです。
0525カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:26:50.52ID:ymo9AxGPd
……だからその、冷静さや明鏡止水の状態になっても闘う意思が強過ぎれば危険なことになります。
訓練では問題なくても、いざ実戦になるとスチール効果が発動するというものです。」

「……あいつら、よくも……」

ガタッ……!
その時、ドアの向こうに音がした。用心深く開けると……

「誰……マリナ?」

服を着た皇女がボディーガード数名と共にそこにいた。まだ疲労は完全に取れたわけではないが、顔色は少し良くなっている。
彼女の顔は悲しさと悔しさで溢れていた。

「シーリン……全部聞いたわ……あの人達、私を陥れようと……」

「シーリンさん、マリナ様がどうしても言うので……」

「ええ、私も大臣達が怪しいと思って、シーリン達が調べてくれていると聞いて、無理を言ってボディーガードの人達に連れてきてもらったの。」

シーリンは全員を部屋にいれると、旧友をそっと抱き締める。
0526カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd73-K7Yf)
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2020/08/10(月) 16:27:54.08ID:ymo9AxGPd
「……今回のことはスーツテストを止められなかった私にも責任があるわ。
ごめんなさい。」

「いいのよ……私も気付かなかったし……あなたはいつも通りでいて、お願い。」

そのやさしい声に鉄の女と一部から噂されたシーリンは唇を噛み締めて、重く頷いた。
涙が流れるのを止められず顔を反らす。
泣いているのを見られるのに慣れていないのだ。

マリナは旧友のブルネットを優しく撫でて頭に顎をそっと乗せていたが、やがて上げた顔は「指導者」のそれになっていた。
シーリンも雰囲気の僅かな変化を察知してマリナを見つめる。

「皆さん、お願いがあります。録音テープにあった新しいファイターの存在、もしかしたら新型のMFも用意されているかも知れません。
だから……」

その願いを否定するものはいなかった。
0528カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:26:03.85ID:Dj3Dq3/2d
第8話

マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。

「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」

メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて

「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」

トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。

「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」

ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。
背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると


「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。但し、ガンダムは使うな。
今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」

「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」

「まあ、君の父上のことは残念だった……」

トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。
0529カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:27:57.11ID:Dj3Dq3/2d
マリナが医務室に運ばれた翌日、大臣達一行は首都の外れにある中型の研究施設、そこの格納庫に集まっていた。
誰も住むものがいない寂しい場所にある。
彼らの前にはマリナと同い年ほどの体格の良い青年が立っていた。その隣には数人の男達。殆どがメカニックらしき男達、そして格闘のトレーナーという感じの男が一人。
更にその背後には巨大な何かが布に被せられていた。

「どうも視察に来ました。機体とファイターの調子はどうですか?」

メインの大臣に尋ねられると、トレーナーとチーフメカニックは声を合わせて

「両方順調ですとも。それに彼もとても腕を上げましたから。」

トレーナーに視線を向けられた体格の良い青年はコクリと自信ありげに頷き、声を発した。

「俺は早く闘いたい。今の皇女様ともな。」

ワインレッドのストレートヘア、黒い切れ長の瞳。背はマリナより10センチ高い程であり男性ファイターとしては大きくはないが、筋肉と体から発する闘志は彼を大きく見せていた。
大臣のリーダーは手を上げると


「マリナ皇女は体力を消耗して昨日から休養だ。明日のエジプト代表との決着は怪しいものだね。しかし、念には念をだ。
彼女は今までも強敵との闘いに勝利してきたタフな女だ。
最後の一押しといこうか。切り札は君だよ。但し、ガンダムは使うな。
今の段階では目立ちすぎる。
生身で暗殺……という形にするしかないな。」

「そうだな、残念だがそうするか。それに、あんたらと同じなのさ。……今の国には不満がある……」

「まあ、君の父上のことは残念だった……」

トレーナーは青年を心配そうに見つめ、メカニックチーフはスッと手を上げる。
0530カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:30:43.51ID:Dj3Dq3/2d
「事情は全て聞かせてもらったわ。」

もう一つの声はシーリンだった。彼女と数人のボディーガードは銃を構えてこちらを睨んでいる。
彼女はRCレコーダーを再生させると、先程の会話が流れていく。
リーダーの大臣は悔しげに拳を握る。

「調べられていたか……」

次の瞬間、マリナはしなやかな動きで大臣の腕を掴み、一瞬の内に地面に叩き伏せた。

「ぐわぁ!!」

皇女の水色の瞳は落ち着きと共にどこか哀しげに見つめる。

「残念でした……みんなの力で国をされない発展させてきたのに……
あなた達が歓迎してくれないなんて……」

「当然だ、ずっと男が国をまとめてきたんだ。最近現れた小娘に……ぐぅぅ……」

マリナは冷然とした態度で腕を捻った。

「私は国のみんなが好きです。
それに、女性も含めて社会で活躍できるようになった現在(いま)も……
でも、このように邪魔をする人達には断固戦います……ファイターである前に皇女として。」

「ほう、いいねえ。その気合い。何も恐れてない瞳。倒し甲斐があるぜ。」

前に出てきたのはワインレッドの髪をした青年だった。

「……あなたですね、新しくファイターになるのは。」

「ああ……ギルガメッシュ・サムーンだ。覚えておけ。」

両者の間に冷たい熱気のようなものが走った。
0531カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:31:55.38ID:Dj3Dq3/2d
次の瞬間、二人の拳がぶつかり合う。
そして、猛スピードで戦いを始める二人。
ギルガメッシュのパンチが飛んでくるが、マリナはそれを受け流し投げ飛ばす。
次の瞬間、ギルのキックが目にめ止まらぬ速さでマリナを蹴る。
技の応酬だった。

一方、こっそり逃げようとする他のメカニックや大臣達。

「逃がさないわ。」

シーリンは敵のボディーガードの銃弾を素早く避けて、急所を避けつつ射撃をして攻撃。
大臣達に素早い動きで追い付くと、彼らを合気道の投げで叩き伏せていく。

「ぐわぁっ」

「……マリナの痛みはこんなものではないわ。しっかり感じなさい……」

更に腕を捻り上げると、ギルガメッシュのトレーナーが襲いかかる。
しかし、その動きを避けて倉庫の壁に向かって投げ飛ばす。

「このっ、女に負けるとは……」

「女を甘く見るからでしょう。私も一応トレーナーよ……!」

そして、マリナを見つめるシーリン。

(きっとあなたなら勝てるわ……!私たちの希望だもの……)
そして、マリナとギルガメッシュは互いに力をぶつけ合い少し息が荒くなっていた。
0532カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:34:55.15ID:Dj3Dq3/2d
「中々だな。でもあんた、昨日もっと疲れてたんだろ?回復が早いなんて恐れ入るぜ。」

「……ええ、あれくらい簡単に復活できなければファイターの資格はないわ。
あなたも相当タフね……」

男は演技ががった喋り方で挑発的に続けた。

「疲労が溜まるビキニスーツならもっといやらしい息づかいが聞けただろうな。おしいぜ。」

一瞬怒りが湧きそうになるが瞬時に冷静になり、キックを繰り出す。よろめいて後方に下がるギルガメッシュ。

「……っ、あのシステムは外したわ。」

「そうかい、それじゃあ皇女がいつもの調子に戻った祝いに始めるとしよう。メインディッシュをな。」

ギルガメッシュが携帯型起動スイッチを押すと、自動的に倉庫から飛んできたガンダムオーレス。

「ええ、終わらせるわ。」

マリナもガンダムファーラに乗り込む。
身に付けていたものを全て脱ぎ、全裸になるマリナ。

(シーリンも、みんなも私のために力を尽くしてくれている。
国がまた男性中心になれば、誰もが輝ける社会ではなくなってしまう……
絶対に、あんな人達に負けない……)

ってところ次の瞬間、心を落ち着かせ目を閉じる。今胸の内にあるのは闘いだけ。それ故に冴え渡る心。

胸に手を添えて、ほんのりと脚を開いてコクピット中央に立つ。

「モビルトレースシステム起動。」

布が凄まじい勢いを伴い降ってくる。
0533カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:36:43.94ID:Dj3Dq3/2d
肩から腕、胸、脚……ありとあらゆる場所を瞬時に覆い尽くす巨大な布。
冷静な顔は圧迫に対し悩ましいものになり、豊かな黒髪を柳の葉のように揺らす。

「キィ、キツイ……でも、みんなのためを思えば……」

亡き家族、守るべき国民達、慕ってくれるアクバル、支えてくれるシーリンと家臣達……みんなのことを思い浮かべると自然と身体に力が入り、両腕を鶴のように広げる。

「う、うぐっ……このぉぉ……!」

布を千切り纏わせる。

「はぁぁぁぁ!」

身体を反らし、まるで空気椅子でもしているかのように腰と膝を曲げて力を込める。

「いやぁぁぁ!!」

尻を突きだしアナルにグイッと遠慮なく入っていく布。

「はぁぁぁぁ……!!」

膣にも入り込む布。前後からぐいぐいと刺激されるが、下半身に力を集中させ、目をカッと見開くと両足を股が割けると思わせるほど、交互にハイキックをして布を千切る。
こうしてスーツなら装着を完成させた。

「さあ、いきましょう。国のために絶対に負けないわ。」

「いいね、楽しませてくれよ。皇女さん。」

装着を終えた二人は機体越しに睨み合う。

「ガンダムファイト、レディゴー!!」
0534カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:47:19.85ID:Dj3Dq3/2d
第9話

「ハアァァッ!」

槍で襲いかかるマリナのファーラ。それを太い棍棒で受け止めるギルガメッシュのオーレス。

「甘い!!」

ギルの操作で棍棒のスイッチを押すと先端から斧の刃の形をしたビームが発生し、槍の先端を焦がす。
瞬時に後ろに下がるマリナ。

「斧……それがあなたの武器なのね。」

「そうだ、幾多のファイターに勝利するため。そしてお前に勝つためにな!!」

凄まじいギルの猛攻にも動じずに敵の刃を避け、槍と合気道の投げ技・捻り技を駆使して反撃するマリナ。
一連の体捌きに何とかついていけるギルの反射神経とスピード。
正に競り合いといった光景だった。

「やるじゃねえか!大臣達が見せてくれた映像で知ってたが、実物ともなると違うな!」

その声にどこか好戦と憎しみを感じずにはいられないマリナ。

「どうしてあなたはそこまで戦いを……
あなたのような人にはこの国を代表する資格は感じられない……」

「資格、あるさ。男であることと、力と目的があること。それだけで十分だ!!」

想像していた通りの言葉に嫌悪を感じながらも淡々と、しかし真剣に返すマリナ。

「男も女も関係ないわ。大切なのは国の未来よ。」

「関係ない、か……あるんだよ。おれにも、親父にも……」

「……?」

苦虫を噛み潰すような物言いに違和感を覚えながらも、素早く槍でオーレスの腕、脚、時には後ろに回って背中を攻撃するマリナ。
0535カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:48:16.06ID:Dj3Dq3/2d
「ぐはっ!……この……舐めるなよ!」

頭に血が登ったような物言いをすると、オーレスの肩、腕、胸、脛、それらの各部からミサイルが発射されファーラの全身を狙う。

「きゃぁぁぁ!!」

体にミサイルの与えた衝撃と熱さを禁じるマリナ。

「はぁ、はぁ、……危険だわ。距離を取らなきゃ……」

弓矢でオーレスに激しい攻撃を加えてから一旦一キロ程離れるマリナ。心を落ち着かせ目を閉じる。冴え渡っていく感覚。
頭が澄んで白くなるようなあの状態になり弓を構える。

「この射撃武装にはこんな機能もある。もっと食らえ。」

再び発射される複数のミサイル。しかし今回は一つ一つが異なったベクトルに舵を切りながら向かっていく。
まるで群れを離れて巣立っていく鳥達のようだ。
あるものはマリナの右に、あるものは左に、背中や斜め上に移動して飛んでいくものもあった。

「囲むつもりね……」

あらゆるベクトルから狙う戦法。遠距離戦としてかなりの効果を持つものだ。
それでもマリナは表情一つ変えない。
寧ろ獲物を狙うハンターのように弓を携えたまま。

「ホーミング、タップリ味わえ、センパイ……」

目と鼻の先にあるミサイル達。
それらを素早く撃ち抜くマリナ。時に撃ち損ねるが、武器を持ったまま肘で払い落とした衝撃で破壊した。
合気道の訓練の傍ら、学んだ戦法だった。

「やるな……だが……」
0536カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:49:20.24ID:Dj3Dq3/2d
ギルは猛スピードで斧を振りかぶり突進する。荒々しいだけではなく、マリナの微細な動きを観察し予測している。

「……させない……」

すっと目を閉じて集中力を高めるマリナ。
心の底から真っ白に、クリアになると槍を脚目掛けて突き出そうとする。

「この!」

ギルがキックをする直前、マリナはすっとガゼルのようにジャンプして重火器が入った肩を槍の先端で突き刺した。

「ぐ、おのれ……!!」

そのまま敵の肩を勢い良くキックして頭上に飛ぶ。

「よくも、踏み台に……!!」

「覚悟しなさい!」

雨のようなアローの嵐。それを幾つかが降りかかるが傷付いたのは肩と腕大半。
失格を避けるためか他国以上に頑丈に作られた頭はほぼ無事だった。
そして、斧を回転させ矢の幾つかを弾き返すギルのオーレス。
パワフルさと繊細で柔軟なモーションが合わさった見事な斧捌き。

「きゃぁぁぁ!!」

ダメージ受けつつも体勢を立て直し弓を槍にチェンジさせ突撃するマリナ。
斧で受けとめるオーレス。互いに一歩も引かない鋼の攻防。

「なぜだ、お前はそこまでして闘う?女であるのに……!」

「関係ないわ。私は皇女として皆に幸せになって欲しくて……」

「その言葉、鼻につくな。俺には、国よりも、負けていった男の方が大事だ……!」
0537通常の名無しさんの3倍 (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:50:24.30ID:Dj3Dq3/2d
「負けていった男……」

次の瞬間、マリナは戦場の空気が一瞬で変わったのに気付いた。
何か鬼気迫るものが張り詰めて自分を捕らえるような気がした。
金縛りではないが、敵の男にはそれを感じる。

ギルの息は上がり、声はまるで地の底から出すような低いものになって……

「俺の親父は、ファイターの選考で女に負けた……
アザディスタンはずっと男が英雄視される国だったのに……!
怨みは俺が晴らす……!!」

「…………」

何も言えずに黙っているマリナ。
アザディスタンでのファイター選考は、国の発展のため女性の活躍を目指す改革派の力も大きかったので、候補者には女性も数人いた。
彼女は元々性別に拘らなかったので、男だけが持て囃される状況が哀しかった。
だからギルの言葉にも哀しみと呆れを覚えていた。

「はぁぁ!!」

「!?」

次の瞬間、一糸乱れぬ速さで猛禽類のように襲いかかるオーレス。
彼の言葉によって反応が遅れたマリナはギリギリで斧を受けとめるも、パワー不足が祟って押し返される。

「親父は、あれからも格闘家を続けながらも落ち込んだまま、だから俺が、屈辱を晴らす……!」

「……ずっと、そういう気持ちで戦ってきたのね……。でも、苦しいだけだわ……」

マリナは意識を集中させると目を閉じた。
0538カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-ZptA)
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2020/08/13(木) 20:51:02.45ID:Dj3Dq3/2d
(私が選考で勝ってきたファイター達も同じ気持ちだったのかしら……
悔しがっていたのは目にしたけど、ここまでだったなんて……
それなら私は絶対に……)

「終わりだ!!」

ギルの猛攻に身動ぎしないマリナの身体は少しずつ白金色に輝きを増して、ガンダムファーラも同じ色になっていく。

「何だ、これは!!」

突然の事態に驚くギルに構わず、凄まじいスピードで向かうファーラ。


地上で見守るシーリンも叫ばずにいられない。

「あれは、明鏡止水……!マリナ、貴女って人は……!」

「はぁぁぁ……」

「うぐっ!」

槍の攻撃に押され圧倒されるギル。
パワーもスピードも、精度も段違いだ。

「ギル、眠りなさい……」

どこか優しさを含んだ声で告げるマリナ。
槍はガンダムオーレスの頭部を貫き、その機体は誰もいない地上に落下していく。

「ぐわぁぁぁ!!」

悲鳴を上げるギル。遂に激痛と衝撃で意識を失う。
それを察知するとマリナとファーラから輝きは消え、元の状態に戻った。

ギルとそのトレーナーを含む保守派の大臣達は反逆罪で逮捕された。
こうしてマリナ達のファイトを邪魔する者はいなくなった。

「貴女、ああいう風になれるのね。マリナ。教えた側の私も驚いたわ。」

「……ギルガメッシュの気持ちを知った時、ああなったの。
シーリン、私明日もこれからも勝ち抜くわ。そうすれば皆が男女問わず前に進めるようになるわ、きっと……」

マリナの目元は穏やかだった。
0540カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:47:18.62ID:ifzAMxa2d
>>539
ども、励みになりますノ

第10話

決戦の日、砂漠で向かい合う二人。

眼帯をしたレザーはボキボキと拳を鳴らしているが、対するマリナは落ち着いた佇まいで相手を見ている。

「姉ちゃん、あれから疼くんだよ。あんたにやられたこの片目が。」

「……あなたをそうしたのは私です。しかし勝たなければいけません。」

二人ともガンダムを呼び出すとコクピットに入った。

レザーはニヤニヤと笑っている。

「あの姉ちゃん、今頃目茶苦茶驚いてるだろうな……」


一方マリナは素早く全裸になると、コクピット中央に立った。……その瞬間……

「きゃあっ!!」

真空刃のようなものがマリナを襲った。
程好く引き締まった腹から血が流れる……
不幸中の幸いか、ギリギリで頭への攻撃は避けられたが、傷付いたそこを押さえて見つめた先には細身の黒装束を身に付けた男が立っていた。
手には彼女の鮮血に染まった刃物が握られている。

「あなたは……」

「俺はエジプトの殺し屋。レザーに雇われたエジプシャン忍術の使い手
しかし美味しい仕事だ。皇女様の、それも素肌を拝めるなんてな……」
0541カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:48:21.10ID:ifzAMxa2d
「殺し屋……どこまでも卑劣ね……」

卑劣という言葉の意味には勿論、自分の産まれたままの姿を見られた恥辱も含まれていた。
胸と股間を隠し、白い肌を赤に染めて唇を噛んでいる。

「と言っても殺しはしない。レザーにもファイターとして止めを刺したいプライドがあるからな。
少しでも弱らせて欲しいって話だ。」

「そんなもの、プライドではないわ!」

珍しく語気を強める自分に気付き頭を冷やすマリナ。

(いけない……ここで怒っては相手の思う壺だわ……
私と、みんなの努力が水の泡になってしまう。)

少しずつ赤みが引いていく皇女の柔肌。
向かってくる相手の動きをかわして肘にチョップしてから投げ飛ばす。

「ぐはっ!」

衝撃で気絶する殺し屋。

「闘いを汚さないで……」

そのまま合気道の要領で相手を砂漠に放り投げると、完全にハッチを閉めた。

「……忘れなきゃ。モビルトレースシステム起動!」

凄まじいリングが下りてくる。

全身を覆うように張り付いていくスーツ。これがマリナの羞恥を忘れさせてくれる気がした。
しかし性的なことには潔癖で繊細な彼女。
見知らぬ暗殺者の視線に照らされた体はスーツの与えるいつものプレッシャーに一層ナイーブに反応してしまう。
控え目な美乳を布でホールドされて、小刻みにピクピク動く華奢な全身。
0542カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:49:11.93ID:ifzAMxa2d
「い、いやぁぁぁ!!」

乳首は自ずと激しく主張するのを自覚して頬を赤らめる。

「キ、キツイィィィ……!でも、負けない……!!」

既にいない暗殺者を殴るつもりで、握り拳を宙に振り上げて布を千切る。

「いたい、このぉぉ…………!!」

切られた腹部から出血が滲み、蒼系スーツと混ざり合い、赤みの強い紫色になる。

それでも耐え胴体を激しく動かし、布を上半身に定着させた。

見られた羞恥は未だ僅かに残り、スーツに股間とアナルを締められれば、脳と下腹部から熱が込み上げるような感覚を禁じ得ない。

「ここも、見られたのよねぇ…………!
でも、切り替えなきゃ……
ハッ……!」

グイグイと食い込み摩擦を無遠慮に与えるスーツ。
僅かに汁が漏れて、スーツを濡らしたのを知るが構っておれず両足を強かにスイングして布を千切る。

「ふぅ、何とか終わったわ……!
正直お腹の傷が少し気になるけどあの時に比べればどうということはないわ……」

彼女の頭を過ったのは、あのビキニスーツで苦しんだ記憶。
ファイターとしてあんなことになるとは思っても見なかったが、あれ程の疲労を思えば今のダメージをあれこれ言ってはいられない。

「さあ、いきましょう。」

二人の声が重なる……

「ガンダムファイト、レディゴー!!」
0543カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:50:35.46ID:ifzAMxa2d
第11話

時は少し遡り、マリナが砂漠に出撃した少し後……

アザディスタンの少年アクバルはマリナの王宮にある小さな部屋でパソコンを開いていた。
彼はマリナと会った以降プログラムやカメラ機能の勉強を少ししていた。
(皇女のスーツ装着を目の当たりにしてから……というのが正確だが。)
それを活かしてやはり個人的にファイトのサポートをしようとしていた……はずだった。

「俺もマリナ様の力になるからな。」

少年らしくエッチに笑う彼。実はマリナの乗ってきた小型飛行船とガンダムファーラに小型発信器と小型カメラを付けており、いつでもパソコンを通して彼女の様子を見れていた。

「一国民としてマリナ様の様子を見守らなきゃな。……とその前に……」

言い訳のように言うと、キーを操作してもう一人の女性ファイターの姿を拝み始めた。
実はマリナの機体だけでなく、彼女のものにも同じ装置を付けていたのだ。

「あの人のことだからマリナ様を気遣ってるはずだし。
それに……皇女様と甲乙着けがたいスタイルだからな。」


件の彼女は純白のイナクトに乗っていた。
それもモビルトレースシステムを搭載したタイプ。

「さて、行きましょうか。」

(今のマリナならきっと……
だけど敵はあの男……卑劣な罠があるに違いないわ……!)

マリナの秘書・シーリンはワイヤーで登っていった。
鋭く冷静な目にはマリナへの友情と心配の念が込められていた。
0544カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:51:37.10ID:ifzAMxa2d
いつもは滅多にその思いを口にすることはないが、今回の一連の出来事があったのだ。今回のような影のサポートに及ぶのも無理はない。


……で、それを知りつつも男子特有のエッチな気持ちに駈られて彼女の様子をパソコンで盗み見るアクバル。

「許してくれよシーリン。俺は皇女様のサポーターだから、秘書のサポートも必要だからさ。
……どれどれ?シーリンさんの勇姿は、と。何だこれ?」

アングルやズームを巧みに使いながら、画面に食い入るように迫る少年。
しかし彼女が持った薄いケースに首をかしげる。

「まあいいや。それはともかく始まった♪」

普段着ているグリーンのスーツ、白い下着をアッサリ脱ぐと、スマートな肢体が姿を見せた。
ファイターのマリナ程ではないが、僅かに引き締まった体。
モデルのような細いボディー。
軽いスポーツを嗜む女性といったスタイルだった。

「おお、流石シーリン♪抜群のスタイルだよな〜眼福眼福。
皇女様より胸大きくて背が高いから迫力あるな〜」

昂り始めるアクバル。アソコも大きくなりピクピクしている。
然程筋肉がないこと以外は、マリナよりいくらか迫力のあるボディーをしている。
(外交相手の政治家とは違った意味で)王宮と多少の縁を持ったことは年頃の少年にはかなりのメリットだろう。

そして例のケースから取り出したのは半透明の布二枚。
MFとトレースシステムに明るくない彼は不思議がる。

「あれは一体……?」

「デミモビルトレースシステム起動!」

コクピット中央に立つと凛とした低い声と共に布の一枚をその豊満な胸に貼り付けた。
0545カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:52:26.86ID:ifzAMxa2d
それは見る見る内に面積を拡大し、彼女の腹、腕に広がっていく。

「う、いやぁぁぁ……」

「な、どうしたんだ。呻いちゃって。
いつもはあんなにしっかりしてるのに。
……それにしても、あれがスーツ?」

広がるだけでなく、キュウキュウと彼女の上半身を締め付けながら纏われていく布。
下腹部を覆えば当然の如く女性器にも伸びて入り込んでいく。

デミモビルトレースシステムとは、いざという時の為に、ガンダムファイターに準ずる力を持つ者や装着に不馴れな軍人に用意されたシステム。
小型布製パッドにより、あまり大きな負担をかけずに纏えるものだ。
スーツはファイターの性器を守るため、そこに徹底して密着する必要がある。
しかしそれが偶然にも、苦しみと同時にある種の喜びを与えてもいるのは否めない。

「い、いやぁぁぁぁ!……ううう……!」

思わず内股になりワナワナと震える才女を見て、アクバルは興奮を禁じ得ない。
我慢の証がズボンにシミを作る。
そして思わず股間に手が延びる少年。

「あの冷静なシーリンがあんなに興奮してる……
シ、シーリン……俺もやばいよ……!」

今の彼女をガードするのは、両腕と胴体、女性の秘所。
素肌を晒している背中や下半身は心なしか震えている。
これからのことを思い羞恥しているのか期待しているのか……

負担の少ないスーツの性質上、すぐに苦しみは消えるともう一つのパッドを見つめるシーリン。

「はあ、はあ……!あとはこれね……」

それをゆっくりとアナルに嵌め込むと、キュウウウと音を立てて谷間に吸い込まれていく。

「き、きゃぁぁぁ!」

いつも動じない彼女の悲鳴に益々エキサイトするアクバル。

「す、すげえ。マリナ様も凄かったけど、シーリンも凄い……」
0546カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:53:23.09ID:ifzAMxa2d
アナルにピッタリ張り付いたそれは勝手に尻全体を覆い、しまいには背中と両脚に延びていく。
美しい肩甲骨も、スラリとした脚も覆われて装着を終えた。苦しみもなくなり汗を拭うと……

「アクバル、見てるんでしょ?」

「え、何でわかったのさ!?」

いきなり焦り出すのを尻目に彼女は淡々と続けて。

「小型のメカがあったから。あんなの簡単にわかるわよ。」

怒るでもなくクスッと笑う彼女にはマリナにはない余裕が見てとれた。
それがまたアクバルをこそばゆい気持ちにさせて頬を赤らめさせる。

「さあ、今から行くわ。」

既に表情を切り替えて勢い良く出撃するシーリン。
そこにはまだ見ぬ敵を探し求めるハンターの色があった。
0547カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:54:54.21ID:ifzAMxa2d
第12話

シーリンはイナクトのコクピット内のモニターからマリナの様子を見守っていた。
アクバルのサポートの下、ハッキリとした解像度だった。
ファイトの場所を目指す飛行船内のマリナの姿が見てとれた。
それはいつもの健気さだけでなく、今までのファイトに裏打ちされた自信が感じ取れて旧友としてフフッと笑みを漏らした。
そこには生来の淑やかさだけではない強さがあった。

「こんなに強くなって……」

「おっ、シーリンもそういう顔するんだね。」

アクバルの言葉に一瞬顔を強張らせて、どこか凄みのある笑顔を作ると……

「アクバル、ありがとう。あなたのお陰で助かるわ。
でも、彼女にあなたの覗きを知らせたら……」

「わ、わかったよ。」

黙り込むアクバル。

(スーツ装着を見られてもビクともしなかったのに、笑顔見られただけでこれだもんな……
よくわからないや……)

一見冷徹に見えるシーリンは自分の役目だけでなく、友人を助けるのにも全力を尽くし集中力を傾ける。
だからこそ、スーツ装着を見られても動じないのだが、普段の自分とは違うギャップを見られるのが恥ずかしいのだろう。

マリナを乗せた小型飛行船と並んで飛行する自動操縦モードのガンダムファーラ。
しかし、何か細いワイヤーがどこからともなくガンダムの胴体にマウントされると、細い人影がスルスルと内部に入っていった。

「あれは一体……? マリナ、聞こえる!?今あなたの……
…………何? 通信がジャックされてる……」
0548カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:56:24.52ID:ifzAMxa2d
急いで通信で声をかけようとするが、シーリン側の画面は砂嵐。一向に繋がらない。
マリナのガンダムコクピットにも通信しようとするがやはり繋がらない。

「どうしよ、シーリン……」

「落ち着きなさい、アクバル。今国の自衛隊に救援信号を送ったわ。」

(あの敵パイロット、やはり卑劣ね。
スパイを送ったのね……)

少し時は流れてマリナはエジプトのファイター、レザー・クルスームが駆るガンダムグレイブと対戦していた。

「どうだ!」

レザーが放つ大型の砲弾。それを時に交わし、時に手で払うマリナ。勿論弓矢で貫くのも忘れてはいない。
素早く近付き、ランスモードに変形させた武器を向ける。

(暗殺者にやられたお腹は痛むけど、今は大事になってないわ……)

傷付いた腹部に意識をある程度傾けながら闘うマリナ。

「この、噂には聞いていたがこの短期間に新しい武術をマスターするとは!」

「覚悟!」

「この!」

回転させた槍で突撃するが、交わされる。

「そんな!」

「強くなったのはお前だけじゃねえ!俺もお前にやられた片目を補うために動きを見切るテクを覚えたのさ!」

そして砂漠用のホバー機能を活かしてマリナの機体に突き進むレザーのガンダム。
ライトブラウンの砂塵をマリナに吹き掛けながら迫り行く鋼の巨人。
0549カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:57:38.71ID:ifzAMxa2d
しかしマリナも負けてはいない。
この一週間に身に付けた冷静さを発揮し、ホバーの駆動音から正確に位置を割り出し槍を突く。
だが、ダメージは少しだけ。固い装甲に手こずり中々決定打を与えられない。
防御力もアップしたのだろう。
短期間にあらゆる面をアップさせるのは至難。パワーやスピードよりも優先事項だったようだ。

「手応えが違う……なら、速さの源を!」

後退し距離を取ると、アローを放つ。
鋼の鳥のようにホバーの至る箇所に見える機械同士のジョイント部を撃ち抜くマリナ。
しかし、弾き飛ばされた無数のアローがマリナの元に飛んでいく。

「やはり全てタフなのね。」

手捌きで凪ぎ払った瞬間……

「喰らえ!」

「きゃあ!」

レザーのラリアットがマリナの腹部に決まった。
暗殺者にやられた腹部は少し開いて血が少しずつ流れていく。

「こんな時に……!」

しかし経験は裏切らない。すぐに頭をクリアにすると、迫るグレイブの腕を掴んで見事に投げ飛ばす。

「ぐわあ!!」

ホバー時とは比較にならない程の砂塵を四方に飛ばしながら熱砂に倒れるレザーのグレイブ。

「この……!」
0550カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/14(金) 19:59:41.76ID:ifzAMxa2d
何とか立ち上がり殴りかかるレザー。そこには最初に見せた見切りのテクはない。
更に腕を掴んでは投げ、倒れる直前にまた投げるマリナ。
砂漠に点在する岩場に当たった傷も手伝って、グレイブのホバー部分は破壊されていた。
脆くなったホバーを弓で跡形もなく撃ち抜くマリナ。

「もうすぐね……うっ、……」

弓を落としてしまうマリナ。
暗殺者にやられた傷はやはりファイトの妨害になっていた。

「あいつを雇って良かったぜ……」

ニヤリとするレザー。そして、巨大な鋼のケースを吊り下げたジエットがレザーの隣に降り立った。

「さて、換装型の本領発揮といくか……」
0552カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:13:56.93ID:SJ0Vzpghd
第13話

突如現れた箱に驚くマリナ。

「これは一体……?」

得意気に語るレザー。

「これはな、新しい戦場だよ。いや、あんたにお披露目するステージだ。」

「新しい?まさか……」

マリナは思い出した。レザーは初対戦で語った、ガンダムグレイブは様々なエリアでパーツを換装する特徴があるのを。
ホバーを破壊されたなら、それに替わる装備で対抗するということを悟った。
そして巨大な鋼のケースは砂漠の中にあって、砂漠ではない「ドコカ」……

レザーはグレイブの砂漠ホバーをパージすると、ファーラに掴みかかり怪力でケースに落としてしまった。

「きゃあ!ここは……水?」

ケースの底にはぶつからなかった。寧ろ冷たい水の中でプカプカ浮いている自分と機体。

「水中戦ね……」

「その通り、そしてこれがマリンタイプだ!」

ケースを運んだジェット機から射出されたパーツを装備したグレイブ。
背中にはエネルギータンクを内蔵したパックパック。
砂漠用に替わるパーツとして、水中用軽量エンジンを秘めた新たな手足。
薄いマリンブルーのモードだ。

勢い良く水中にダイブしてタックルするグレイブ。

「きゃぁぁぁ!!」
0553カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:18:18.42ID:SJ0Vzpghd
「きゃぁぁぁ!!」

(何て突進力なの!それに水中は初めて……)

生身では泳げるがガンダムを用いた水中行動は未経験。
地上や空中とは違い、水がスムーズな動きを妨げている。
腹の傷も痛む。
吹き飛ばされた勢いを利用して壁際を蹴り飛ばし、水中で体勢を建て直す。

(冷静に……)

頭をクリアにして冷静になるが、初めてのシチュエーション。
パーフェクトな冷静さではなく、明鏡止水には遠い。

(もっとメンタルトレーニングが必要ね……)

(このままでは外にある弓を拾えことも難しいわね。合気道だけでなんとかしないと……)

「あんた水中は慣れねえみたいだな。これがデビューにしてラストだ!」

「そうはいかないわ。ハッ!」

猛スピードで繰り出される砲弾をいなし、時にチョップやキックで破壊しながら接近するマリナ。
そして、腕を掴んで数回投げる。

「うわっ……!!」

と言っても壁や大地のある他のフィールドとは違い、ただ投げるだけでは意味がない。
できるだけ腕の捻りとベクトルを意識してケースの壁や床に叩きつける。
レザーとしては、ケースという鋼で囲われたフィールドを選んだのが裏目に出た。

マリナの技とケースの硬さが与える衝撃によりグレイブは所々傷付き、機体のシルエットは歪んでいく。
砲弾の発射口も幾つか破壊されていた。
0554カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:19:21.63ID:SJ0Vzpghd
「流石合気道をマスターしただけのことはあるな……!だが切り札があるぜ!」

グレイブが腰にマウントしていたライフルを構えると、放たれたのはビームでも砲弾でもなく、「水」だった。
今までの攻撃とは比較にならないスピードで鮫のように狙ってくる「水」。

「きゃぁぁぁ!」

ファーラの腹部にヒットすると、自身の腹の傷に応えて悲鳴を上げるマリナ。

「これは、一体……!!」

息を強めてフラッとする皇女。決して傷が広がったわけではないが、モビルトレースシステムは機体のダメージがファイターにも伝わる仕組み。
腹を押さえて傾けるしなやかな体。

「これはな、ウォーターガンだ。圧縮した海水を高速で打ち出す為のな。
皇女様にはキツいだろ。」

「本当に、卑怯ね……!」

沸き上がる怒りを押さえて何とか頭をクリアにしようとするマリナ。

一方シーリンのイナクトは確実に近付いていた。
0555カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:21:21.45ID:SJ0Vzpghd
第14話

暗殺者がマリナに倒されても、彼が仕掛けた通信妨害は解除されずに残っていた。
不安を抱えたままイナクトで飛んできたシーリン。

「マリナ!
レザー、相変わらず卑劣ね……!」

敵のやり口に怒りを燃やす彼女の近くに何体かのイナクトが現れた。
エジプト政府が雇った、ファイト開始以前に軍事や格闘に携わった者達が操る機体のグループ。
勿論、シーリン同様デミトレースシステムを使っている。

「やはりサポートがいたのね。来て正解だったわ。
しかし、ファイトに他人の手出しは御法度。
私はただ、レザーが用意しそうな邪魔物を倒してマリナを勝利に導きたいだけ。」

「あんたと皇女の関係は調べがついてる。
親しい間柄らしいからな、サポートに来ると思ってたぜ。
レザーのやり方は好きじゃないがこっちにも生活があるんでな。
サポーター同士のファイト、勝たせてもらう!」

「その言葉、そのまま返すわ。」

凄まじいスピードと合気道の洗練された技量で敵を倒していくシーリン。
鋼のオアシスに目を向ければマリナは苦しみながらも闘っている。
気付けば硬く手を握っている自分がいた。

(ファイターには手を貸すのはルール違反。でもあなたはきっと……!)
腹部に受けた海水の痛みに耐えている時、親友の機体を偶然目にするマリナ。

「シーリン!私のために……負けていられないわ!」
0556カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:22:36.92ID:SJ0Vzpghd
既に冷静さを意識し始めていた彼女のメンタルはポジティブさを増し、少しずつ生まれる余裕……
クールさを取り戻し、痛みを堪えてジャンプ!
咄嗟にグレイブの背後に回り、ウォーターガンを手刀で叩き落とす!
素早く構えるマリナにレザーは焦る。

「しまった!アジな真似を……!」

「お返しよ!」

「ぐわあぁぁぁ!」

弓と銃では僅かに勝手が違うが、普段のファイトで射撃はお手の物。
手足のパーツを装甲と手足に設置された銃口が破壊され、グレイブのモーションは鈍くなっていた。
マリナのような傷はないとは言え、圧縮・高速の海水に痛みと戸惑いを隠せないレザー。

「よくも……」

「エネルギー切れ?、仕方ないわ。」

心をクリアにしたとは言え偽れぬ息切れ。それでも力を振り絞り水槽の壁を蹴ってジャンプ。
それを背後から追うグレイブ。

「逃がすか……!!」

外に落ちた弓矢を拾うと水槽ごとグレイブを高速で撃ち抜いていった。

「ぎゃぁぁぁ!」

当たり一面金属と爆炎、そして水満たされた砂漠。

「はあ、はあ……!勝ったのかしら……明鏡止水になれなかったのが残念だわ。
……!」

爆炎からゆっくり立ち上がるグレイブ。
0557カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:25:01.62ID:SJ0Vzpghd
「まだまだだぜ。俺は終わっちゃいねえ……」

更に新たな飛行船がやってくる。
そこから射出されたのは、豪腕と両脚。
中破した水中装備をパージすると、新たなそれらを瞬時に装備したグレイブ。
その姿は最初の砂漠用装備とほぼ変わらない形状。
脚にホバーは付いているが、色はホワイトなので少し軽量なイメージを受ける。

「また同じ……」

「いや、一味違うぜ。野性動物の如く鋭いセンサーを備えたモードだ。
お前の明鏡止水とやらに対抗するためにな。」

「……いいわ。続けましょう。(ここまで来たら腹の傷なんて気にしていられないわ。)」

ゆっくり立ち上がり、今までの幸せな出来事を走馬灯のように素早く思い返すと、
次第に黒い髪は黄金色に、肌とスーツは薄い金色……所謂プラチナブロンドに染まっていた。
腹の痛みはあってないようなもの。

互いに迫っていく二体。
それを見つめるシーリン。

「マリナ、遂にやったわね……
あら?アクバル。通信接続直してくれたの?
ありがとう……助かったわ。」

シーリンのコクピットの右側スクリーンに映るアクバルの顔。

「ああ、俺もこれでもメカを多少は知ってるからね。あ、シーリンやばいよ!」
0558カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:27:25.37ID:SJ0Vzpghd
第15話

その声に反応すると、また数台のイナクトが飛んできた。
エジプトからの援軍だ。

「また何体も……いいわ、来なさい。ここはマリナの正念場。だから……」

果敢に向かっていくシーリンの機体。

「邪魔はさせないわ!」

華麗な合気道と射撃で敵を撃破しようとするシーリンのイナクト。

しかし、敵のモーションはかなり繊細かつ正確。
しかも、機体のパワーも少し以前のものより上がっている。

「きゃあ!」

「今度の敵は更にファイト慣れしてるわね。エジプトの代表候補だった格闘家達かしら……」

腹部を殴られて砂漠に落ちるシーリンの機体。
ファイターほどの筋力はないので痛みはかなりのものだ。
落ち着いた美貌を歪ませつつ救援信号を送るシーリン。
いざという時の二段構えだ。
その間、砂漠の地面に射撃して、砂塵を飛ばし敵を翻弄するシーリン。
当たりを逃げつつサポートが来るのを待って一分もしない内にもう一機のイナクトが来た。

「何だ。たったの一体じゃねえか。」

「その一体が侮れないわ。」

瞬時に今の機体を捨て、新たなイナクトに乗り込むシーリン。
自動操縦させた状態で遠くに飛ぶ新型イナクト。それを敵も追う。
0559カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:29:14.26ID:SJ0Vzpghd
アクバルは通信でその一部始終を息を飲んで見守った。

(シーリン、また……)

突如今まで来ていたスーツを破り生まれたままの姿になるシーリン。
先の戦闘で美しい華奢な身体は汗に濡れて、少年を一層興奮させた。

「き、今日は何て日だよ……」

一方少しふらつきながらコクピット中央に立つと凛とした声で……

「モビルトレースシステム起動!」[newpage]降りてきたのはスーツの布ではなく、銀色の無機質な物体……リキッドメタルスーツだった。
マリナが以前付けたそれをイナクトに装備したものだ。
より自分のモーションを機体に反映させる、謂わば切り札。
但し、感情が昂る程ファイターの体力が減少してしまう諸刃の剣。
マリナの苦しみを目にした彼女は覚悟を決めながら臨んだ。

(マリナが明鏡止水を会得した今、私も感情に振り回される訳にはいかない……
いつも通りに闘って、素早く勝つ。)

「うぐっ……!」

冷たい金属はシーリンの胸に張り付き、肩甲骨までその面積を拡大していく。
より良いフィットを実現するため、正規のスーツ同様圧迫が凄いのだが、これはシーリンの為にかなりマイルドな強度に設定されている。
従って傷や骨折の心配はないが、今まで素人や準ファイター用のデミスーツしか着ていない彼女にはやはり負担だった。

「ひ、冷える……それにキ、キツイ……!!」

歯を食い縛るシーリン。苦しさゆえに少しずつ赤みを差す肌。
金属特有の冷たさにより一時的にできる鳥肌。
0560カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:31:09.71ID:SJ0Vzpghd
胸を覆うと、シーリンは膝に手を着いて息切れしていた。

「だ、大丈夫か、シーリン!!」

「ええ、何てことはないわ……」

思わず声を出すアクバル。それに苦し気に微笑んで応えるシーリン。

そして第二波が来た。新たなリキッドがシーリンの会陰にフィットした。

「あああぁぁぁ……!」

その冷たさにナイーブなそこはピクンとして、霰もない声を上げる。

会陰をセンターにして、膣とアナルに延びるそれに女特有の高揚を隠せないシーリン。

爪先を伸ばし、尻を突きだし下半身全体を震わせる。

「ぐぐっ、ぐ、やはり、キツイ……
でも、マリナの苦しみに比べれば……」

下腹部と尻を覆って装着は完了した。
振り返って追ってくる敵を滑らかなモーションで翻弄し、時に投げ飛ばし、時に撃ち抜くシーリン。

「……流石ね、このスーツ。かなりの反映だわ。作った大臣達は酷い連中だったけど。」

残り三体になった敵。

彼等は相手のコクピット内をモニターで見ると目を輝かせた。

「うひょー、めっちゃ別嬪じゃねえか!」

「しかもあのスーツ、戦闘用とは思えねえ!」

「これは色々使えそうだな。」

口々に交わされる言葉を通信で聞いたシーリンは「やっぱり」という態度で呆れていた。

「終わらせるわ!」
0561カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:32:03.24ID:SJ0Vzpghd
しかし、今の敵は何れも熟練。ファイターの候補の中でも特に強いのだろう。
シーリンの攻撃を何度か受けつつも、基本的に隙のない攻撃で追い詰めていく。

「きゃぁぁぁ!」

ライフルによる射撃、パンチやキックを受け次第に消耗するシーリン。
凡そそれが10分程続くと、さしものクールな彼女も冷静さを欠いてくる。

「はあ、はあ……手強いわね。敵が送り込んだだけはあるわ。」

やはり準ファイターには敵わず、加えてビキニスーツはファイターの昂りによって体力を奪う仕様。
その弱点を科学技術で取り除く時間もない。
足元に滴り落ちる汗。疲労は徐々に、確実に溜まっていく。
このピンチは覚悟していたが……

通信で語りかけるアクバル。

「シーリン、無理だよ。こうなったらマリナ様の救援を」

「ダメよ!今は大事な時よ!
それに、今のアザディスタンには今の敵に敵いそうなファイター候補はいないわ……
誰も危険にさらす訳には……」

咄嗟に砂漠の砂にライフルを打ち込み砂塵を飛ばして逃げるシーリン。

「はあ、はあ……!
マリナからできるだけ離れた位置に逃げなければ……!
体力の回復も……」

スーツがかける負担、戦闘のダメージにより体力の消耗により、汗の水溜まりができた床。
呼吸は荒くなる一方だ。
0562カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:33:24.75ID:SJ0Vzpghd
大きな岩場に隠れると
コクピットに備えられたカプセルから出した液体。それを胸に塗るとビキニスーツの胸部分は溶けて大きな胸が露になる。

疲労が半減したので幾らか楽になったが体力はまだ戻らない。

「後はこれを……」

液体を股間に塗れば、パンツ部分も溶けて一糸纏わぬ姿になる。
モデルのようにスラリとした長身は、全身赤みが差し、汗に染みれている。
コクピットの壁ボタンを押せば、粒子かして消えていた彼女の私服が現れた。
いざという時の為に持ってきた服だが……

次の瞬間、イナクトはビームを受けてよろめいた。

「うぐっ……敵襲……?」

倒れるシーリンの前にコクピットハッチが轟音と共に歪んで破られていく。
疲労に包まれた彼女は抵抗できない。
そして入ってくる敵の男達。

「どうする、この女。ここで……」

「いや、お楽しみはちゃんと人質として利用してからだ。」

それが意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった。
0563カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:36:37.07ID:SJ0Vzpghd
最終話

いくつもの矢をグレイブに放つマリナ。
明鏡止水故のエネルギーにより、鋼のそれらは熱い光に包まれ凄まじいスピードを伴い遅い来る。
対する相手は持ち前の高精度センサーを活かして回避するが、半分は命中しダメージを負っていた。
それでもタフさがウリの名うてのファイターと、防御に長けた機体。
簡単には折れずにいた。

「明鏡止水……なんつうもんをマスターしやがった……」

機体をセンサーモードにしたことで明鏡止水状態のマリナに対応し、五分五分のファイトができるレザー。
しかし、彼本人は会得しておらず、感覚もマリナ程クリアではない。
よって機体とファイターのバランスが取れているのはマリナの方。どうしても疲れが出てしまう。

「はあ!」

「……はっ!」

いくつものミサイルを機体から発射するが、それらを槍で破壊しながら進むマリナ。

グレイブの腹に膝蹴りを食らわせ、よろめいたところを投げる。

「うわぁぁぁ!!」

砂の中に倒れ込みながらも起き上がるレザー。

(前よりもパワーが上がっている……!
明鏡止水が身体能力をアップさせるのは聞いていたが、非力なマリナをここまで強くするたあ……)

「ここでケリをつけるわ。シーリンを探さなきゃいけないし。
……この音は?」

上を向くと三体のエジプト用イナクトが飛んできた。
モニター操作でアップにすると黄金の皇女は我が目を疑った。
0564カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:38:03.66ID:SJ0Vzpghd
「シーリン……!!」

一体のイナクトの肩に設置された木製の十字架。そこに縛られているのは一糸纏わぬ姿のシーリンだった。
しかも先程の戦いで疲労して気絶しており、クールで知的な顔には苦しみが見える。
更にこの熱い砂漠によって大量の発汗、更に上空で飛んでいる機体に捕らわれている。
熱で体力を奪われているシーリンは危険な状態だ。

「あなた達、シーリンに何を……!?」

シーリンを捕まえているパイロットがモニター通信に顔を見せた。

「この女には人質になってもらったのさ。
お優しい皇女様には親友を無視できねえだろ?
それともファイト優先するか?」

「……どこまで卑劣なの……!」

今まで見せたことのない怒りの表情……空色の穏やかな瞳は宛ら青い炎のようにユラユラと……
マリナとファーラの黄金色は光をなくし元の色に戻っていく。
ファーラが握った弓を思わず壊しそうな程力を込める拳。

不自然に熱い汗が頬を、喉を、胸元を伝えば己の思いに気付く。

「…………」

(ここで感情に任せればシーリンは犠牲になってしまう……ならば私にできることは……)

汗に濡れながらも鎮める心、そこに浮かべるのは今シーリンと共に過ごした数えきれない日々。

二人で微笑んだこと、そして厳しい言葉をかけられながらも支えてくれたこと。
ずっと一緒だった時間……
0565カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:39:01.27ID:SJ0Vzpghd
「…………」

再び輝く彼女と機体。
さっきよりも眩しく、淡い金色に包まれると、レザー達の視界から一瞬姿を消した。

「……どうなって……!?」

全ての敵が驚いた次の瞬間、ファーラはイナクトの腕を優しく捻りシーリンは零れそうになる。[newpage]…………しかし、すぐに彼女を鋼の掌で掬い光のような速さで何処かに飛んでいった。
同時に凄まじい閃光がレザー達を襲い、それが治まった時には再び皇女は姿を消していた。

「……何だ、一体何が起きた!?」

あまりの早さにグレイブのセンサーも反応できなかった。

一方ここはある岩場。
マリナはそこに隠れると、シーリンを丁寧にコクピットまで運んだ。

悲しそうに、慈しむように親友の顔を撫でるマリナ。

「シーリン……私のために……ここまで傷付いて……
今、終わらせるからね。
そこで見守っていて……」

熱と疲労に包まれたその裸体に布をかけ、コクピットに設置された安全ベルトで固定した。

「漸く見つけたぜ!覚悟しろ、皇女。」

上空にいるのはレザー達。
相手を見据え飛んでいくマリナ。

「ハッ……」
0566カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:40:12.69ID:SJ0Vzpghd
呟いて放った矢によって打ち砕かれるイナクト達。
瞬時に落下して見えなくなる。
それらの内、シーリンを人質にしていた男が機体から投げ出されると、ファーラの手がスッとその体を叩いた。

「うわぁぁぁ!!」

男は凄まじい絶叫を上げて砂漠に激突した。
仇討ちとは言え、人殺しを望まないマリナは手加減を心得ている。
しかし、大きなダメージだ。

「この……やってくれるじゃねえか!!」

接近するレザー。しかし、内心後悔していた。
ガンダムグレイブをセンサーモードに切り替えたとは言え、自分の予想を上回るマリナは驚異。
明鏡止水を会得しないで、ほぼ機体性能に頼ったことを悔いるが後の祭。

(しかし、ここで俺も相手を見極めなきゃいけねえ!)

瞬時に冷静になり殴りかかるが、マリナは何食わぬ顔でその豪腕を受け止め、捻って投げる。

「ぐわぁぁぁ……!!」

青空に昇る大男の悲鳴。
しかし、上空からいくつもの矢が雨のように降り注ぐ。
敢えなくボロボロになるグレイブの装甲。

「ぎゃぁぁぁ!!」

光のような速さで降り立つファーラ。

「シーリンの痛みはこんなものではないわ……!」

更に投げ飛ばすと、あまりの衝撃にグレイブの頭部は歪んでいき、その動きを止めた。
0567カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:40:48.78ID:SJ0Vzpghd
「…………?……マリナ……?」

ゆっくりと開かれていくシーリンの視界。
そこには見慣れた華奢なシルエット、しかし見たことのない輝きを放つ友がいた。
ゆっくりと振り向いたその顔はいつもより柔らかく、喜びに満ちていた。

「シーリン……良かった、気が付いたのね……」

「マリナ、あなた、その姿……」

「みんなが、そしてあなたがいてくれたから勝てたのよ。
ありがとう、一緒に戻りましょう、シーリン……」

金色の皇女は友を優しく抱いた。
0568カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:54:52.59ID:SJ0Vzpghd
これで終わりです。

最後に個人的に考えたマリナのファイターとしてのスペックです。(機体の方ではないです)
ノーマル状態と明鏡止水状態の各ステータスを
10段階評価です。
因みに両方の状態共に、レベル10は全盛期のマスターアジアの強さです。

ノーマル状態
パワー 3
スピード 7
スタミナ 4
格闘 3⬅合気道を含めれば8
反射神経 9

明鏡止水状態
パワー 8
スピード 10
スタミナ 7
格闘 9⬅拳闘ではなく殆ど合気道による強さ
反射神経 9

以上です。
今までありがとうございました!
0569カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/15(土) 14:54:52.85ID:SJ0Vzpghd
これで終わりです。

最後に個人的に考えたマリナのファイターとしてのスペックです。(機体の方ではないです)
ノーマル状態と明鏡止水状態の各ステータスを
10段階評価です。
因みに両方の状態共に、レベル10は全盛期のマスターアジアの強さです。

ノーマル状態
パワー 3
スピード 7
スタミナ 4
格闘 3⬅合気道を含めれば8
反射神経 9

明鏡止水状態
パワー 8
スピード 10
スタミナ 7
格闘 9⬅拳闘ではなく殆ど合気道による強さ
反射神経 9

以上です。
今までありがとうございました!
0570新人スレ住人 ◆tOSpv3Q.fqF6 (ワッチョイ e95f-p5K4)
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2020/08/16(日) 16:42:22.99ID:9Q9xI0bq0
>>568
カイさん、完結乙であります!

まだ新規投下分を熟読&編集していないので
まとまった感想はまた後ほどとさせていただきますが

とりあえずちょっと一言

リョナ心を大変くすぐられる作品でした…後半はシーリンまでとは
いやはや
0571カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/17(月) 22:09:42.38ID:a4NnkMWDd
>>570
住人さん、今まで読んで頂いて光栄です。
ホントにありがとうございます!

リョナ……意識はしていませんでしたが、言われてみればそのタイプに入りますねw
真剣に戦う女戦士とそのピンチと勝利を描きたい目的で書きましたが、
それはリョナに通じるものがありますよねw
何て言うかな、書いてる時の自分を客観視したら、女子プロレスを見て興奮してる客と似たような感じだったかもw

住人さんのお陰で新しい発見がありましたw

後、これは書き忘れてたんですが元々一連の作品は自分がpixivに書いたのを新たに載せたものなんですよ。
予め書いておけば良かったですよね……失礼しました。

纏めて投下するより、反応を見て時間を空けて……という判断でしたが、(決して格好つけて勿体つけてたわけではないんですよw)
こうして読んで下さる方がいて嬉しいです。

ここに載せるに当たって足りない部分を付け加えるのができたのも個人的に良かったです。

長くなっちゃいましたが、ラストスパートをそちらのペースでごゆっくり読んで頂けたら嬉しいです。
それではノ
0572カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdc2-rR3l)
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2020/08/17(月) 22:15:05.25ID:a4NnkMWDd
今まで保守して下さった皆さん、ありがとうございました❗
お陰でスレが流れずに済みました。
&お礼書くの遅れちゃってごめんなさい💧
0573カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd9f-gw9l)
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2020/08/25(火) 20:05:07.35ID:nwINhvjxd
ども。
今度AGEのレイナを主役にした短編or中編を書こうと思ってます。
本編の彼女は殺伐としたハードな感じでしたが、今回は悲しいトラウマ要素を除いたライトな話です。
0574カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd22-B84l)
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2020/08/28(金) 16:33:28.56ID:mwFZWfInd
件の小説、頭の方だけできました。
短編になりそうですね。
原作では地球連邦の卑劣な保身に嫌気が差して敵のヴェイガンに寝返ったレイナでしたが、この話ではダークな要素は無くしました。

『とにかく明るいレイナ』

A.G.150年代……ヴェイガンとの戦いを制する為に地球連邦軍は最新鋭の機体を開発し、その実用化に励んでいた。
ここで描くのはその直前のステップ、つまり試験に力を傾けたテストパイロットの物語。

「はい!お疲れ様ー!」

高機動型の機体、Gバウンサーの発展型から降りてきたのは筋骨隆々の歴戦パイロットではなく、20代の女性パイロット。
凛とした高らか声で他のテストパイロットとスタッフ達に呼び掛ける。
ヘルメットを脱いで露になったのは、柔らかい植物をイメージさせる薄いグリーンのサラサラヘアー。
爽やかなブルーの瞳。
疲れを微塵も感じさせない健康的な表情。
連邦の中でも期待の星、レイナ・スプリガン。
パイロットとしてだけでなく、Xラウンダーとしても一際鋭い感覚を持っていた。
0575カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd22-B84l)
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2020/08/28(金) 16:34:57.24ID:mwFZWfInd
何人かの男性スタッフは涼しげな綺麗さに表情を綻ばせている。

「いやー、凄かったね。今日も。あんなに素早い機体を乗りこなせるなんて。」

スタッフの一人が誉めると彼女は自分の頭に手を当てて

「いえ、皆がいい機体を作ってくれたからよ。
それにチューンナップもバッチリだったし。」

他のスタッフやテストパイロット達にも挨拶して帰ろうとするが、こんな声が聞こえてきた。

「腕は凄いし美人だけどさ、何かデカいじゃん?男並みだし。」

「しっ!聞こえるぞ!」

「…………」

それは彼女が気にしていることだった。
何しろ身長182センチ。
体型は女性らしいスレンダーさがあるが、彼女にメロメロな男でも気後れしてしまうかもしれない。
これでも男装の麗人的なムードがあるらしく、女性からの告白も何度かあったが全て丁寧に断っている。
麗人よろしく澄まし顔で格納庫を後にする。

(あいつ……なんてことを……)
「…………あー、私だってもっと普通の背丈になりたかったよ!」

「おいおい、どうしたんだい?」

「…………え?」
0576カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd22-B84l)
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2020/08/28(金) 16:35:32.36ID:mwFZWfInd
清涼な声を珍しく荒げていると、反対に落ち着いた男性の声が聞こえたので振り返ると……
そこにいたのは茶髪の同年代の男性だった。
普段は余裕のある凛とした顔を赤らめて、蒼い目を左右にキョロキョロするレイナ。
薄い唇は微妙な三日月型を作って引きっている。

「え、あの……私ついついおっきな声だしちゃって……
あの……確かあなたは……」

「最近赴任したジラード・フォーネル。因みに少佐だよ。
君は確か……レイナ・スプリガン少尉だっけ?」

「しょ、少佐です……」
(あ、いけないまたキツい言い方になっちゃった……)

軍隊なので階級は重要だが、今の訂正の仕方はどこか子供っぽい不機嫌さがあるのに気付いて恥ずかしくなるレイナ。

「ああ、これは失礼。同格だね。
さっきの奴の言葉は気にすることないさ。
それじゃあ。」

爽やかに笑って去って行くジラードを私はポツンと見ているだけだった。
0578カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd7f-8I8Z)
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2020/09/02(水) 13:41:27.53ID:03ycde9Xd
支援サンキューです。

続き書きました。

「しかし、今日もレイナ凄かったな。」

「ケッ、あいつのこと誉めるなよ。コーヒーが不味くならぁ。」

同僚の言葉に不機嫌になる連邦のテストパイロット。彼の名はマイケル・バリス。
ギザギザした青空のような色の髪。鋭い金色の目。
前にレイナをデカ女扱いした男だ。

腕は確かだが態度は悪く、僻みが強い。それは勿論レイナにも向けられていた。
機体や装備の特徴を理解し活かすスキル、これが彼以上であるのが嫉妬の理由だった。
事故が起きない限りテスト操作は命の危険はないが、前述したスキルは前線にいるパイロットが実戦を難なく潜り抜けるには必要不可欠なものだった。
謂わば実戦の為の土台だった。

同僚は『やっちまったなー』と思いつつ苦笑いして。

「でもお前も凄いじゃん。かなりの高成績だし。」

「ああ……ありがとよ。でもレイナが来てから俺の影は薄くなっちまった……
しかも、しかもだぜ?最近来たジラードって奴も相当強いし。
ああ〜どうすりゃいんだ……」

「ああ、あの人か。割とフランクだしリラックスした感じだけど強いよな……
肩の力抜いた感じが強さの秘密なのかな……
でもそもそもXラウンダーだからな……」

「肩の力……どう抜きゃいんだか……」

「ま、俺らはあくまでもテスター。裏方さんだ。あんま競い合っても仕方ねえさ。」
0579カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd7f-8I8Z)
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2020/09/02(水) 13:42:59.49ID:03ycde9Xd
一時間後、テスト用の宙域で新装備を施したGバウンサーが2体並んでいる。
乗っているのは各々レイナとジラード。
最強クラスのテスター同士の模擬戦にスタッフ達は心を踊らせた。

今回の装備は両機共黒いアーマーを被せた防御モード。
機体本来の持ち味であるスピードを多少犠牲にしてはいるが、そのアーマー内に収納した多数のミサイル及び小型シグルブレイドを射出する機能を有している。
謂わば防御と射撃に重きを置いた拠点防衛型である。

レイナは初めてのことに柄にもなくドキドキしていた。
普段は余裕で臨んでいるが、今回は自分とあのジラードとの戦い。
彼のテスト中の光景を何度か見たが、流石流石Xラウンダーと言うべきか、機体を活かす能力は自分と互角と思える。
模擬とはいえ緊張するのが自然だった。
そしてスキル云々以前に彼の存在が頭から離れないのだ。

コクピット内でレバーを握り締めて唇を固く結んでいるが、喉は僅かに震えている。

(ジラード、あなたの力を身を持って体験することになるのね……)

「レイナ、ねえレイナ!?」

「……ハッ……」

物思いに耽っていたので呼び掛ける声に気付かなかったようだ。
慌ててモニターに映る彼に作り笑いをして見せる。

「アハ、ごめんなさい、聞き逃したみたいで……」

「はは、模擬戦よろしくね。」

「ええ、こちらこそ……」
0580カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd7f-8I8Z)
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2020/09/02(水) 13:43:49.72ID:03ycde9Xd
「テストスタート!」

監督の声と共に飛行し出す両者。
順調に操作して互いに距離を少しずつ詰める二人。

「…………」

(やはりいつもよりは機体が重いわね……
でも操作はしやすいわ。
それに、以外と私の手が軽くなったような気がする……
ジラードが声をかけてくれたから……?)

そう思うと気が軽くなりいつもの調子が瞬時に戻ってきた。
意識を集中すればいつも通り、Xラウンダーとしてのクリアでシャープな感覚が心を包む。

「ハッ……!(ジラード、避けられる?)」

凛とした掛け声で小型シグルブレイドを打ち出すレイナ。
それを紙一重で回避するジラード。
刃は背後の隕石を砕いていく。

「凄い威力だな。それじゃ俺も。」

余裕の態度でミサイルを3発連射するジラード。

「…………」

敢えて避けずに突き進むレイナ。
防御に徹したモードなので自信があったのだろう。
予想通りミサイルの爆発を受けても、傷一つ付かないアーマーにその場にいた誰もが感心する。

「ハッ……!」
0581カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd7f-8I8Z)
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2020/09/02(水) 13:44:53.29ID:03ycde9Xd
更にブレイドを発射するレイナ。
武器の発射スピードと飛行スピードは軽量なブレイドの方に分がある。
しかし、スピードだけで決まらないのが戦いであり……

ジラードの方はミサイルを更に打ち出す。

「そんな大きなミサイルじゃ……いえ、違う!」

レイナは自分の誤解と油断を瞬時に悟った。
大振りなミサイルだが、ジラードの射撃は正に正確無比そのもの。
鋭い感覚を持ったレイナの打ち出す小型刃……一見回避は難しそうだが、その弾道をクリティカルに瞬時に見極め打ったジラード。

「これは……」

Xラウンダー特有の繊細なセンスと操作で放ったミサイルはストレートにブレイドを破壊していく。

「凄い……こんな人がいたなんて……」

今まで卓越した操縦能力とXラウンダー能力で他の追随を許さなかったレイナ。
しかし、自分の発射弾道に沿った射撃ができるジラードに驚きを隠せない……

「よし、次は接近戦に移ってくれ!」

監督の指示で近付いていく二機。
機体の仕様通りスピードは多少犠牲になってはいるが、両者共美しいラインを描くかの如く互いに組付く。

「ハア!」

レイナが相手の肩を掴むと同時にジラードも肩を掴む。
機体のマニュピレーターと両脚を互いに素早くぶつけ合う格闘戦。
その後、(接触は避けているが)ビームサーベルの斬り合いを果たすが甲乙付けがたい戦い。
0582カイ ◆c12wmZgb8g (スッップ Sd7f-8I8Z)
垢版 |
2020/09/02(水) 13:46:29.56ID:03ycde9Xd
「よし、テストは終了!ありがとう!皆のお陰でいいデータが取れた!」

監督の一声でテストは終了。
格納庫に戻ると二人のパイロットは機体から降りてくる。

「レイナ!凄いな。流石君もXラウンダーだな。」

当の彼女はまだ驚きと興奮で声が出なかった。
……それにある種の気恥ずかしさがある。
顔は前を向いているが伏し目がちで。

「……ええ、あなたみたいな人初めて見たわ。
…………その、何て言うか、アリガトウ。
……いい、模擬戦ができて……」

「ハハッ。それは俺も同じだよ。ありがとう。」

屈託なく笑うジラードを見て高揚が高まるのを誤魔化せない……
0585ペコリーヌ (ワッチョイW e77c-HRVu)
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2020/09/06(日) 18:36:04.01ID:SVRiXDGG0



















  で
ブ  出             
 \  ま
   ッ  す 
    ブ っ
     ビ !
      ビ 
       ビ 
        ビ 
         ビ 
          ッ 
          !!! 
           ブ 
            チ 
             チ
              !!!
               モ
                リ
                 ッ
                  !!
0586通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 67ad-vnqX)
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2020/09/07(月) 01:18:28.60ID:R3thYSgh0
まーたハゲデブかよwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
どんだけ発狂すれば気が済むんだよwwwwwwwwwwwwwwwwww
0587カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:38:44.88ID:k2eCCuakd
『とにかく明るいレイナ』 ラストです。

「そんなこといわれても〜」

「レイナの涼しげな顔が落ち込むのを見てえんだよ。礼は弾むぜ、な?」

マイケルに頼まれたメカニックの男は少しにやけると頷いた。

時と場所は変わってここは地球……アメリカのとある広大な山岳地帯。
テストチームの戦艦は平たい場所に置かれ、多くのメンバーが出てきた。
夥しい山と森がこれでもかと広がり彼らを歓迎している。
その自然に目を輝かせるメンバー達。

「いやー、こういう場所に来るのも久し振りだな……!」

「ホントホント。私は家族からのビデオレターに映ってる地球の色んな環境見たりしてるけど、やっぱりホンモノは一味違うよね。」

「ほら、鳥も飛んでるし。あれは……鷹だな。」

「いや、隼でしょ。」

「宇宙じゃ味わえなかったものばかりだからな……
ずっと真っ黒なのが広がってるのって今思うと異常だよなー」

「おいおい、軍人がそれ言う?宇宙で戦うなんて常識だし。」

皆久々に見る自然に心の羽を伸ばしているという風情だ。
それは彼女も同じ。

「んーー気持ちいいわね……空気は美味しいし。空は青いし。
ここならいい成果出せそう。」

レイナは両腕を伸ばして辺りを見回すと、いつの間にか隣にいたのはジラード?
0588カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:39:37.96ID:k2eCCuakd
「ああ……どうも……」

はにかむレイナとは対照的にフランクに手を軽く上げて

「やあ。いやー、こういう場所でテストするのも新鮮だね。
久々に来たよ。無重力の戦艦での生活だけだと人間として寂しいからね。
それに君とまた一戦交えるかもと思うとテンション上がるし。」

「ええ、そうよね……
私は今の状態が寂しいけど……?」

「ん?何か言った?」

「いえ、何も!」

(そりゃ寂しいわよ。まだ全然気持ち伝えてないし……)

「……所でほら、何だか懐かしい田舎に帰ってきたみたいよね!
この緑とか!」

ジラードの不思議がる視線を察知して声を上げるレイナ。

「ああ、確かに。でもそんなに子供みたいにはしゃがなくても……」

困った笑い方をされて苦笑いするレイナ。

「所で君の田舎ってどんな場所なんだい?
ああ、僕の場所はカリフォルニアでね、豊かな緑が広がってるんだ。
実家は農園でね。」

「私はロンドンでね。所謂資産家。」

「凄いな、道理で気品があるわけだ。隠しようにも隠せない気品が……」

じーっとからかうように見つめるジラードに赤面するしかないレイナ。
0589カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:40:31.12ID:k2eCCuakd
「ちょっと止めてよ!またお世辞言って……」

「ハハッ、お世辞じゃないさ。」

一方レイナに嫉妬するマイケルはチーフメカニックにお札を渡していた。

「頼んだぜ?」

「ああ、わかった。しかしレイナの機体だけでいいのか?」

「ああ、ジラードのまでおかしくなったら流石に怪しまれるからな。」

それから一時間後、山岳地帯でのテストが始まった。

地上用に改修されたGバウンサーで山や平地を走り回るジラード。
Xラウンダーへの対応機能も強化されている。

「凄い、久々の地球で上手い操作できるかと不安だったけどかなりいいな。これ。
動かしやすいよ。
それに俺のセンスにもキッチリ対応してくれるし。」

メカニック達も誇らしげにそれを見ている。

「じゃあ、次は私との一戦ね。ジラード」

レイナが同じ機体に乗って対戦テストを始める。
それをニヤニヤと見つめるマイケル。

「見てろよレイナ。」

感覚を集中させ山での走り込みをするが、何故か上手くレスポンスが悪くレイナの操縦よりも機体の動作が遅れてしまう。

「え、何!今までこんなことなかったのに!きゃあっ!」

次に視界を襲ったのはビームではなくペイント弾。
とことんジラードに対し劣性を強いられる形になってしまう。
0590カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:41:15.49ID:k2eCCuakd
そして休憩中、涼しい森の下で横になるレイナ。
だが清涼な天気とは裏腹にその顔は冴えない。

「うーん、なんでこんなことに……」

無理もない、今までずっとパイロットとしてもXラウンダーとしてもトップの成績を取ってきたのだから。

「ひゃっ!何!?」

突然頬に冷たく固いものが当たり唖然とすれば、そこにはスポーツドリンクの缶を持ったジラードがいた。

「ジ、ジラード!何、いきなり。」

「ビックリした?まあ飲めよ。酒じゃないから問題ないだろ?」

「え、ええ。ありがとう……」

受け取ってゆっくり飲むレイナ。
少しすると、ジラードが長方形の機器……つまりレコーダーを差し出した。

「これは?」

「録音だよ。さっきの犯人達のね。
機体の不調は仕組まれていたんだ。
君のせいじゃない。」

「……そうなの? 一体誰が!」

彼がスイッチを押すと会話が流れてくる。

『いやー、さっきは助かったぜ。あのデカ女に恥をかかせてくれたからな。』

何度も聞いた声……
「マ、マイケル!?」
0591カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:42:29.38ID:k2eCCuakd
『いや、俺も謝礼受け取ったからね。給料分の働きをしたまでさ。』

『しかし、ああいう仕掛けをできるとは流石メカニック。俺が見込んだだけのことはあるぜ。』

『なあに、一流のメカニックは機体を強くすることも弱くすることもできるのさ。』

レイナの手は怒りで震えていた。

「どうする、チームリーダーに報告を……」

レイナはスッとレコーダーをポケットに仕舞うと首を横に振った。

「いいえ、それはまだ早いわ。
私のやり方でどうにかしたいと思うの。
他の人達にも協力してもらって……」


「何だ、いきなり俺が駆り出されるなんて……俺のテストはまだ先だろー」

ダルそうに頭をポリポリ掻きながらさっきの山岳地帯に戻ってくるマイケル。

テストのチームリーダーは神妙な顔で「予定が変わってな。お前とレイナのテスト対戦だ。どちらもGバウンサーを使う。」

「よろしく、マイケル。」

レイナはいつもと違い冷たい表情だ。

「(まさか、あのことがバレた?そういやあのメカニックチーフいねえな。)」

ジラードはレイナを見守っている。

「レイナ、君なら勝てる……」
0592カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:43:22.72ID:k2eCCuakd
「テストスタート!」

チームリーダーの一声で2体のGバウンサーがぶつかり合う。
マイケルのペイント弾を揚々と避けリーチを詰めるレイナ機。

「なんだ、さっきと違って調子がいいじゃねえか!?うわっ!」

そのままライフルを叩き落とされると肩を捕まれるマイケル機。

「再調整で機体を元に戻してもらったのよ。
……あんた、私をハメたでしょ。メカニックチーフと一緒に。」

「(やっぱりバレてる!)何のこった?知らねえなあ。」

「ちゃあんと証拠残ってんのよ。ジラードのお陰でね。」

レコーダーを再生すれば通信機越しに件の会話が流れてくる。

「いや、あれはその……」

いつもの強きはなりを潜め言葉煮詰まるマイケル。

「しかも私をデカ女だって……許さないよ……!」

「ひいぃっ!!」

凄まじい勢いで相手の機体を殴り蹴飛ばすレイナ機。

同じ頃あのメカニックチーフは他のテストメンバーから絞られて意気消沈していた。

復讐も終わり、今回の犯人二人は軍をクビになりレイナの評判は元に戻った。
0593カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd3f-J0p1)
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2020/09/18(金) 17:45:17.84ID:k2eCCuakd
そして、その日の夜レイナはジラードを夜の森に呼び出した。

少しモジモジしながら伏し目がちで

「ジラード……貴方のお陰で今回、とっても助かったわ。
……それから……」

「気にすることないよ。当然のことさ。それから……何?」

からかうように顔を覗くジラードに彼女は動揺を隠せない。

「も、もう!……それから……私、貴方のこと、ずっと好きだった!
出逢った時からずっと……!」

絞り出すように告げる声。彼は優しくレイナを抱き寄せ……

「俺もだよ、レイナ。君の力になれて良かった……」

「ジラード……ありがとう……!」

涙を浮かべて抱き締めるレイナ。
その後、二人はトップパイロットの夫婦として連邦で名を馳せていくのだった……



急いでたから最後いまいちになったw
0594通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ f7e6-lMKa)
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2020/09/20(日) 18:00:30.28ID:8snRmMqe0
九大出身でダイセルの久保田邦親博士はノーベル賞候補らしい。エンジンなどの摩擦
にかかわる重要な発見と理論化がパラダイムシフトを引き起こしているとのこと。
0595カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
垢版 |
2020/09/21(月) 18:33:56.54ID:V59QqLjed
前にpixivに書いたマリナの後日談を載せます。

『シーリン 過激なる復讐』

マリナがエジプトのファイターに勝利してからファイトの決勝で優勝。それにより、アザディスタンは四年間世界で中心的な役割を果たした。
皇女マリナとシーリンの力で世界全体の貧困問題を少しずつ解決し、そのノウハウは他国にも受け継がれていったので世界は改善の方向に向かっていった。
そして今年、新たなガンダムファイトが開催された……

アザディスタンに来たエジプトの新たな代表はガンダムで暴れていた。
スフィンクスのようなライオン宛らの強靭さと俊敏さを併せ持つガンダムブルート。
マニュピレーターに装備された爪でアザディスタンの街を攻撃している。

「エジプト?まさか、報復に……!」

城内で書類整理をしていたマリナは久々にファイター時代の緊張に溢れた表情になる。
今の彼女はファイターは引退し皇女の仕事に専念している。
相変わらず一般人及び殆どの格闘家を圧倒する戦闘力を持ってはいるが、ブランクがあるので現役のガンダムファイターには敵わないだろう。
しかし、彼女は希望を失わなかった。
望みを託した誰よりも頼れる後継者がいるのだから。

部下に住民に対する地下シェルターへの避難と誘導を指示すると、自身もそこに行き、人々を慰め快適に過ごす処置を行っていた。
ふと上を見上げる。心に思うのは友のこと。

(信じているわ。貴女ならきっと……!)


場面変わりここは街の中。暴れるブルートの中にはエジプトの新たな代表ファイターがいた。

「再び来たぞ!アザディスタン!さあ、今年の代表は誰だ!
マリナか?まさかあの側近ではないよな?」

「そのまさかよ。」

「何?」
0596カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:35:08.07ID:V59QqLjed
振り替えるとそこには一人の女性がいた。
茶色い癖毛。眼鏡の奥には相手を射抜くようなシャープな瞳。
スラリとした体。背はマリナより高い。

「お前、あの時の!ファイターになったのか?」

「ええ。マリナの意思を継いで闘うためにね。ガンダム!」

彼女の叫びと共に飛行船が表れ、中からあのガンダムファーラが地上に舞い降りた。

「皇女のお下がりか……いや、ただのお下がりじゃない。所々違う。」

マリナの機体フレームと装甲を少しマッシブに改造したものである。
背中にマウントした槍はマリナのものよりも太い。

「私のためにアザディスタンが手を加えてくれたのよ。
始めましょう。新しいファイトを。」

開いたハッチ。そこに飛び乗るシーリン。生来の気性故、物言い・立ち居振舞いはマリナよりも鋭く、スピーディーだった。

敵の男がコクピットの盗撮システムを作動させると、冷静かつ勇猛さを見せるシーリンが映る。
服を脱ぎ一糸纏わぬ姿になった時、男は絶句した。

「……あの時と違う……滅茶苦茶鍛えられてる……」

前に彼女を人質にした時は少し引き締まった一般女性的な体型だったが、今はスキなく鍛えられた筋肉質な体。
スマートさは相変わらずだが、筋肉の切れ込みと程よく割れた腹筋、巨乳を支える大胸筋。
強さと美しさを併せ持った女性ファイターの体。

シーリンは一瞬閉じた目をカット見開くと、両脚を内向きにしたまま開き両腕をスーっと広げて……

「モビルトレースシステム起動!」
0597カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:35:56.08ID:V59QqLjed
「遂にあの男との戦いが始まるのね……」

上から降りてくる黒いスーツ。シーリンは体の力を一瞬抜く。
膣とアナルも脱力させる。
しかし再び全身に力を込めると、息を大きく吸ってスーツのもたらす、しなやかかつ強かなプレッシャーに耐えた。

「う、あっ、あああ……!この……マリナの痛みに比べれば……」

本格的なトレーニングの結果、マリナ以上の筋力=ファイターとして平均的な筋力をゲットした彼女は、マリナ程負担を感じずに装着できるようになった。
旧友の苦労を思えば苦しみにも耐えられる……

美しい重量感のある胸は、スーツの冷たい質感にデリケートな反応をする。
ゾクゾクしながら乳首はピンと主張する。

「キ、キツイ……相変わらず、締め付けてくるわね……!
でも、マリナから受け継いだこのガンダムで……勝利してみせるわ……!」

クールな顔に熱い思いを秘めると、腰を少し落としスレンダーに引き締まった脚を広げる。
これが彼女が耐える時のポーズだ。

「はあぁぁぁ……!」

両腕を鷲のように広げて布を破り、アーム部分の装着を完了。

「はぁぁ……!」

剃らした胸と腹にもスーツを定着させると、

「…………んんん……!キ、キツイィィィ……!」

つま先立ちになり声を上げる。
センシティブな膣とアナルに遠慮なく侵入した布に快感と衝撃を禁じ得ない。

「はあ、はあ……でも、くせに、なりそう……」
0598カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:37:03.22ID:V59QqLjed
フッと笑みを浮かべて腰を前後にスイングさせる。
その度にスムーズに二つの局所に入ってしまうのが彼女にはオツな快楽だった。

「はあっ!」

両脚をハイキックのように上げてスーツの装着はフィニッシュした。

スーツは夜のような漆黒に染まり、所々にある紅い網が、黒衣に包まれた胸や尻を引き立たせている。
全身にスーツを纏わせなければファイターの動きをガンダムに反映させられない。
しかしこのスーツの網部分は最新で、特殊な電磁波を纏わせることで露出している裸部分にも防御力を与えている。
世界初の皮膚が(部分的に)見えているスーツだ。


「…………ハッ、いかん!」

シーリンのコクピットを盗撮していたファイターは我に返る。

「始めるわよ。」「お、おう!」


「ガンダムファイト、レディーゴー!」

男の方の声は少し遅れて発されていた。
0599カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:39:01.12ID:V59QqLjed
シーリン専用ファーラの槍がブルートの腹部を突く。

「ごはっ!こいつ、相当強くなってる……」

「当然よ。マリナの後だもの。成果を出さなければ格好が付かないわ。
……そしていつかあなたを倒す為にも鍛えていた。」

シーリンは国のためだけでなく、マリナにこれ以上の負担を掛けさせまいと志願した。
元々身体能力が高く、ファイターの才能にも恵まれていた彼女はメキメキと腕を上げていった。

四年前、エジプトの当時代表ファイターに雇われ、自分を熱砂の炎天下で張り付けにした敵がいたなら……
という淡い期待を抱いていた。それが当国の代表になり向こうから攻めてきた。
彼女にとってこれ以上のチャンスはない。

だからといってその国のファイターなら誰でも倒したい等という見境のない性格ではないのだが。

「このっ、どうだ!」

「させないわ!」

ブルートの長い爪が襲いかかるが隼のようにサッとかわし、左のパンチで爪を叩き折る。

「なっ、やはりパワーを上げてきたか。
それなら……」

ブルートの胸パーツがスライドし、熱風が吹き荒れる。
それはシーリンの肉体に疲労を、ファーラの機体に負担を、各々持たらしていく。

「こ、これは……!」

「どうだ。この暑さ。あの砂漠の時を思い出すだろう?」

苦し気に歪めた美顔はフッと笑みを浮かべ

「そう、そういう挑発……乗る価値もないわ……!」

槍をとんでもないスピードで投擲すれば胸にヒット。
0600カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:40:01.69ID:V59QqLjed
「ぐ、ぐわあぁぁ!」

忽ちブルートのファイターは肩膝を着き、胸パーツはダメージにより閉じてしまう。

「ハッ、お前……」

男が見上げればそこにファーラが立っていた。
槍を拾うとそこについたボタンを押し、形を変えていく。
強靭で真っ直ぐなそれはしなやかに揺れる鞭に早変わり。

「お前、それは一体……」

「特殊金属で作った武器よ。ランスとウィップを使い分けるもの。」

勢い良く振り回し、敵の胸・腕・脚に叩きつける。
ブルートの機体は様々なパーツが削れ、時に陥没していく。

「ぐっ、おい、お前。聞いてないぞ、こんなやり方!」

「もっと味わいなさい、ハッ!」

鞭を腕に巻き付け、腕力と遠心力を利用して鞭ごと持ち上げるファーラ。
敵はパニックになるだけ。

「止めろ!これでは……うわぁぁぁ!」

凄まじい轟音を立てて地面に激突するブルート。

「まだよ。フッ!」

更に何度も同様の攻撃を食らい痛みを蓄積する敵。
やっとそれを解除して自由になったと思いきや、頭部に鞭の凄まじいトドメを食らい倒れるブルート。

「勝負あったわね……」
0601カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:40:44.73ID:V59QqLjed
眼鏡の奥で妖しく笑う瞳。
敵は恐怖に駈られコクピットを脱出。

「もう沢山だ。こんなの……」

「逃がさないわ!」

シーリンもすぐに手持ちの鞭を片手にコクピットを出ると、それで相手を叩き始めた。

「ひぃ、ぎゃあ!」

胸、腹、尻を叩かれ痕が付く敵の男。

「これでトドメよ!」

最後の一撃で気絶する敵ファイター。
二度と暴れぬよう拘束され、エジプトに返された。
そして数日後にはエジプトは自国と他国の住民に一切手出ししないこと、真っ当な性格のファイターを選出することをアザディスタンに誓った。

そしてその調印式の帰り……マリナは苦笑いしながら今回の英雄と話していた。

「あ、ありがとう、シーリン。あなたのお蔭で解決したわ。
流石、ファイターね……」

引きてり笑いをするマリナにシーリンはいつもの冷然とした口調で。

「いえ、これくらいファイターとしての嗜みだもの……」

マリナはそんな旧友が頼もしくもあり怖くもあった。
0602カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sdbf-J0p1)
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2020/09/21(月) 18:44:10.00ID:V59QqLjed
以上です。

前に後で感想書くと言ってくれた人が中々レスしてくれないのが寂しいw

完全新作ではなくて、前にpixiv載せたのをアップしてると書いたんですがそれがまずかったかな?
(事前にpixiv作品だと書くのを忘れてた)
0603通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイ 435f-Kk5w)
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2020/10/02(金) 21:12:00.63ID:H/uyiOkt0
どうもすんません、その人です
仕事上コロナの諸々の件でしばらく更新もご無沙汰になっており…
手続きが済んだんでそろそろと思っております///

完全新作じゃないのとは関係ないですよ!
リョナ以外にまともな感想書かなきゃって思ってたら(ガンダムのではない)プレッシャーが・・・!
0604カイ ◆c12wmZgb8g (スップ Sd1f-g+5r)
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2020/10/04(日) 20:09:12.29ID:mkprEZ0Gd
>>603
どうもお久し振りです!

確かに……今大変な時ですからね……
そちらの事情を知らずに失礼しました。m(__)m
そうでしたか、緊張しなくても大丈夫ですよw


感想を丁寧に書こうと考えてもらえて、寧ろ僕の頭が下がる思いですm(__)m

落ち着いたら気軽に書き込んで下さいね。
それでは ノ
0605通常の名無しさんの3倍 (ワッチョイW 7f10-3tvF)
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2020/12/12(土) 11:19:52.13ID:K6iiKirs0
カイさんの作品、エロ同人脳みたいなの出されるの嫌だなあ
0606通常の名無しさんの3倍 (オッペケ Sr1b-W9VC)
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2020/12/12(土) 11:24:23.05ID:PANs1NrKr
>605
おやお供え窃盗犯スメハラデブやん
ヘイヘーイ、それでまーた岡本さんやら近藤君からボコられたんでイッライラこいてんでーちゅかぁー?
よっ施設の嫌われデブゾウブタエモン(ギャハハ
0607カイ ◇c12wmZgb8g (デーンチッ Sdff-3tvF)
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2020/12/12(土) 12:25:44.23ID:z6OiULDad1212
まぁ俺、中卒のヒキニートですからね
0608通常の名無しさんの3倍 (デーンチッ Sr1b-W9VC)
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2020/12/12(土) 12:32:22.94ID:PANs1NrKr1212
>607
ワッチョイでバッレバレなアッタマ悪いなりすましでボコられた憂さは晴れるんスか、スメハラデブよー?
ヘイヘーイ、元手下にも完全に見捨てられてざっこーい(ギャハハ
0610通常の名無しさんの3倍 (デーンチッ Sdff-3tvF)
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2020/12/12(土) 20:00:51.86ID:z6OiULDad1212
カイさんって常駐荒らしだったの?
0614カイ ◇c12wmZgb8g (スププ Sdff-3tvF)
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2020/12/13(日) 18:37:19.61ID:sdbwJnyid
トップリまでつけてるけどな
0618通常の名無しさんの3倍 (スププ Sd8a-WcWr)
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2020/12/19(土) 16:29:36.23ID:tV6qiimJd
カイ、荒らすな
0621通常の名無しさんの3倍 (スフッ Sd8a-Kp0h)
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2021/05/10(月) 10:02:41.40ID:Fnt8SWa7d
すいません此処でSSのせてもいいでしょうか
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