クシティガルバ棟
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頑駄無Thunderbolt鬼蓮 ~ 真空遠雷 ~
第5弾 狩衣で勝負 ~ 敵は乳兄弟 ~
~ U.C.0100 サイド3 7バンチ/クィズィル 岩の溜 ~
OPテーマ Okna Tsahan Zam - Eejin Duun
tps://youtu.be/3rPtuCvbUtw
「四つくれ!」
「二つで十分ですよ」
天然石の牢屋敷では食事量が制限されており
そこで音を上げる禿童や衆徒は少なくない。
定住先もなく体力の大量消費が見込まれる遊牧民には、尚更のことだった。
「足りないんだったら1コ譲ろうか?」
「よせよンガッパ、俺はガリから恵まれるほど乞食じゃない」
ナムバートルは紙カップで湯気立つポンテギ(蚕の塩ゆで)を、口に放り込んで忌々しげに噛み潰した。
「そういや、兎狩りは週末だっけ?」(ンガッパ)
「ハフッ そうだよ」(ナム)
「誰か溜の外に、出られるのかな」
ンガッパは体格の割に骨が浮いていた。
「他人の施しなんかアテにするな、モスクワは涙を」
「信じない」
「そうさ。渡る世間は何とやら、じゃないか。
神仏なんざアテにした時から負けてんだ。
お前こそ、1コどうだ?」
「いいよ、せっかく胃が小さくなってきたんだし」
~ 貴族連合 郡王の別業(旧農業プラント・ヘトゥアラ) ~
BGM Huun Huur Tu - Mountain Story
tps://youtu.be/jXL5tCU6HEw
「相も変わらず、壮麗なる見晴らし。
造園が薫りますな」
別業(なりどころ)は貴族の別荘で、狩猟や花見の基地にも使われていた。
屋上のテラスからは対する山城が見え、光の道モニュメントも立てられている。
「狩宿の設営も順調。
今年はどれほどの兎が、獲れるものか」
「兎を逃がしたことなどあったか?」
「これはしたり!」
岩の溜が手狭になると、ダルバール広場の蘇鉄の開花に合わせて「兎狩り」が行われる。
囚人たちには魔羅坊殿で回収した旧式の機体が宛てがわれ
バルク旗の戦士や各宗派の僧兵、神官から選ばれた勢子・射手が彼らを狙う。
山城の大松明が上がってから3時間生き残るか、指定の火除地まで逃れれば囚人の勝ち、
それまでに彼らを掃討できれば勢子・射手の勝ち。
尤も、過去10年の実施で囚人側が逃げ延びた記録は残されていない... ~ 7バンチ/クィズィル バルク旗 首長のユルタ ~
「兎狩りの射手には、スフ、お前を出す」
ナラギリ・バガテュルは言い放った。
「乳父上、私にナムを処せとの仰せですか?」(スフバートル)
「お前は判断が遅いと言われがちだが、それだけよく考えている。
自分で決めるんだ、弟を生かすか、斬るか」
スフバートルは日課の薪割りを終えると
自身のユルタに戻り、炉の奥の仏壇に手を合わせて逡巡する。
「私が、ナムを...」
ーーーーー
「ナラギリ首長は、スフバートルを出すと言われたか」
紫冠の郡王が反応する。
「先日に続いてブレッダ改も出るようです」(青冠)
「あれならコロニー内での機動力、申し分なし。
手抜きということでもなさそうですな」
赤冠は確信を得た、と扇を音を立てて閉じた。
「魔羅坊本山、操虫神党とも然と示し合わせよ。
手抜かりがないようにな」(紫冠の郡王)
「はッ!」(赤冠・青冠)
~ 岩の溜 ~
水琴窟の音は、囚人たちの雑談に消え入る。
「あんたぁ、くじに当たったんだって?」
メトク・ブシュカンはナムバートルの元同房で、親しい仲だった。
「お前もか、ブッシュ。
新たな友との船出とは、よく当たる富くじ売り場かな」
「おいおい、シャーリィ・ジャクスンじゃなくても当たらなくていいくじはあるさな」
「? これって間引きなのか」
「トホホ...おめでたい奴だなぁ。あんたぁ」
「ま、何にだって抜け穴はある。
一矢報いてみようじゃないか」
ナムバートルは強気に言ってみた。 ーーーーー
~ 郡王の別業(ヘトゥアラ、通常よりやや大きい農業プラント) ~
「火除地は基礎を抜き、崩れやすいようにしておけ」(黄冠)
「今、なんと...?」(青冠)
「一網打尽にするのだ、たまにはこんな趣向があってもよい」(黄冠)
「ハッ! 直ちに」(赤冠)
「こんなことをして、テングリに祟られでもしたら...」(青冠)
「神官に見させたが、神意には背かないようだぞ?
それにな、あの辺りはジオン独立戦争の頃から改修もされてない宇宙の化石よ。
供養塔でも立て、手早く復旧すれば我らの普請技術が示されもしよう」
黄冠(赤冠より高く紫冠より低い)は畳んだ扇を掌に当てた。
ーーーーー
「あんたぁ、ドムなんかでいいのか?」
ブシュカンはナムバートルの機体に目を止める。
彼ら囚人はジャンクヤードから機体を見繕い、自身で改修して乗り込む流れだ。
「よく見ろ。これはドムIII、見た目より上玉なんだ」
右にはブシュカンのグフ(サンダーボルト版)、左にはンガッパのザクII-F2型(連邦カラー)が並ぶ。
「懐古趣味って、そんなにいいものかねぇ」(ンガッパ)
「俺にも分からん」 ーーーーー
BGM Altai Kai - ОЙНО, ОЙНО, Алταй(甦れ、甦れ、アルタイ)
tps://youtu.be/3encA6KYQUI
「夏は終わり」
「天高く馬肥ゆる秋!」
香炉峰で解体した破れ寺を燃やす大松明に火が灯り
M.S.E.(ミノフスキー・サウンド・エフェクト)で増幅された
ヒキメ(大型の鏑矢)と法螺貝の音が大きく響くと、クィズィルの兎狩りが始まる。
「一番射手は、拙僧よっ!」
クーラル・モスムのゴブリンAが第一射を放つ。
「やられたっ!」
(禿童で編成された)勢子のズサ隊に追い立てられていたンガッパは、
ザクマシンガン改と右前腕を破壊されてしまった。
「ブシュカン、ンガッパを援護して下がってろ!
こっちは俺が対応する」
ホバリングで突撃するナムバートル。
「グーパンなぞっ!」
ゴブリンAに向かった握り拳は、そのまま前腕部ビームカノンとなってモスム機の頭を抉る。
「邪魔だッ!」
ゴブリンAは味方陣営へ投げ飛ばされる、飛火槍(ミサイルランチャー)を構えていたズサとゴブリン・タイプの勢子隊は将棋倒しになった。
ーーーーー
「勢子が活発だ、こっちに来るぞ」
スフバートル陣営が動き出す。
彼らは陸戦強襲型ガンタンク、ブレッダ改、シダーロゼット(ロゼット・ホバー強化型)の構成だ。
「スフ、あんたナムの首を獲る覚悟は出来たのか?」
バルク旗の狩人の一人、ガーダー・メイリンが尋ねる。
「やってみなきゃ分からん、正直怖い」
「俺だってそうさ」 ーーーーー
狩人たちを返り討ちにしていったナムバートル一行が次の陣地に突撃をかける。
「見えた、バルク旗!」
すかさずビームカノンを放つナムバートル。
「来たな...」(スフバートル)
ドムIIIは弓を模した上下対称のヒートソードを構えている。
(ブレッダ改はあるが...違うな)ヒートソードの複合弓はシダー・ロゼットに向けられる。
「行くぜ、スフ!」
「ナム、覚悟!!」
シダー・ロゼットはヒートパタを伸長して熱核ジェットエンジンを蒸かす、そしてホバー!
やはりホバリングしているドムIIIは複合弓から自己鍛造弾を発射、
ロゼットはロング・スカート・ユニットで受け流しながら
ヒートパタに励起させたビーム刃を発射、ドムIIIは横にした弓でビーム刃を引き裂き突撃、
大型ビームライフルを掻い潜って胸部にビームカノンを向ける。
が、ロゼットもヒートパタを捨ててビームサーベル(非励起)を胸部に当てていた。
「勝負あったな」(スフ)
「どっちが?」(ナム)
ドムIIIは岩の溜から集めた郎党たちに向き直る。
「紹介する、俺の兄弟たちだ!」 ~ 郡王の別業、ヘトゥアラ ~
BGM Altai Kai - Τуулу Алταй(アルタイの山)
tps://youtu.be/vPXP5uE39bs
「バルク旗が反旗を翻しただと?禿童は何をしていた」(黄冠)
「丸ごと寝返ったよあで...旗は狩人・勢子を次々に殲滅してコチラに向かってます」(青冠)
「魔羅坊のホジャ・ギジェット大司馬、操虫のアチャル・ファフライ大司空、我ら連合からはドフチャク・セメンチノ大司徒を派遣しています!」(赤冠)
「大事になった、折角の三日厨がこれで台無しぞ...」(紫冠の郡王)
~ バルク旗・囚人チーム、ヘトゥアラ ~
「火除け地に寄ったンガッパが落とし穴にハマった!」(ブシュカン)
「そこまでやるか...」(ナム)
「我々は桟橋のランチとシャトルを奪い脱出する、機体に不具合のある者は捨て他とタンデムせよ!」(スフ)
「何とかなるのか?」(ガーダー)
「心配するなよガディ、スフがこうすると決めたら大抵何とかなる」(ナム)
~ ドムIII(アーヴァネゲン・ナムバートル) VS ガブール・カメンカ式3型(ホジャ・ギジェット) ~
「一っっっ番めんどくさいオッサンじゃないかよ!」
「生きて帰れると思うな、小僧ッ!」
ヒートグレイブを振り回すカメンカ式に一か八か複合弓で突撃をかけるドムIII。
「ムッ」「おろっ」
互いの機体にサーベルの柄が触れ、励起した。
カメンカ式は左腕が吹き飛び、ドムIIIは胴から盛大に火を噴く。
「...小癪な」
ホジャはサーベル越しに手応えの無さを実感した。
全天周モニターの端にはイジェクション・ポッドから猛ダッシュで逃れるナムバートル、追う気も失せる。
「その甘さを後悔するぜ~!」
ナムバートルは舌を出してアッカンベーしながら走ってコケかけた。
「放っておけ、生身の人間は勢子と禿童の連中に任せる」
ホジャは追撃しようとするアッグジン隊を制止した。 ~ シダー・ロゼット(ホリネク・スフバートル) VS バイアラン"クズロルダ"(アチャル・ファフライ) ~
スフバートルとファフライは発着場から宇宙空間へ飛び出していた。
「機動力はこっちの方が出せる」
シダー・ロゼットは推進システムをロケットエンジンに切り換えて対応している。
「クズロルダの敵ではない!」
ファフライは止まらない、加速し翻弄するように舞う。
腕部、胸部、背部追加バインダーからビームを吹く。
スフバートルはコンソールを操作し、ロング・スカート・ユニットからIフィールドを発生させ受け流す。
「そんな微弱な力場で!」
サーベルを励起し迫るファフライ。
触れる刹那、カラリとヒートパタが蛇腹に別れ、クズロルダを絡め取る。
「何ぃ!」
「フンっ」
スイングで艦の残骸にぶつけられるクズロルダ。
「ごは...っ」
「ファフライ宮司!」
「皆で旅立て」
急変に支援に来た祝部たちのガザC改は、大型ビームライフルで一直線に、そして長射の広がりで掃討された。 ~ ブレッダ(ガーダー・メイリン) VS バウbis(ドフチャク・セメンチノ) ~
メイリンのブレッダは脚部ホバーユニットをパージし、
その裏からガーディアン・シールドを展開、構えてヘトゥアラの発着場にいた。
「プラントには入れん、この機体は
借り物、宇宙にも出すものか!」
バルカンショットマシンガンと盾バルカンでバウbisの動きを牽制する。
「効かぬ効かぬ効かぬ効かぬ!!!!」
ビームライフルから刃を形成し、全弾を紙一重に躱していくドフチャク、距離が詰まっていく。
「セイハーッ!!」
「!?」
刃の届く範囲に入った瞬間、ブレッダのスカートから2本のサーベルが展開されバウbisの両腕を奪い切った!
「隠し腕か! 小癪なぁ!」
バウbisは胸部バルカンで牽制しながら撤退しようとするが、機体パフォーマンスが崩れたところに弾幕で機体にダメージが広がる。
「覚えておれっ!」
ドフチャクはイジェクションポッドで脱出、残った機体が特攻をかけてくる。
「不味い、こっちの火力じゃ受けきれないぞ!」
迫るバウ。マシンガン、盾バルカン、胸部バルカンだけでは防ぎようがない。
「悪い、遅くなった!!」
そこに奪ったズサのナムバートル、そしてロゼットのスフバートルが合流する。
「これを使え!」
スフバートルは拾ったビームバズーカをブレッダに投げ渡す。
「一斉射でバウを仕留める...せーのッ!」(スフバートル)
ロゼットの大型ビームライフル、ブレッダのビームバズーカ、ズサの拡散ビーム砲が一点を目掛けて放たれ、辺りは光に包まれた...
EDテーマ Alash - For My Son
tps://youtu.be/lcK0SksqurA 第5弾、脱稿。
巻狩りを介してナムバートル脱出の巻
貴族連合の冠は琉球王国の位階に即したものを使っています
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/%E4%BD%8D%E9%9A%8E%E5%88%A5%E5%86%A0%28%EF%BE%8A%EF%BE%81%EF%BE%8F%EF%BE%81%29.JPG
阿衡(連合の最上位)が浮織冠を使うかは未定
M.S.E.(ミノフスキー・サウンド・エフェクト)は本作オリジナルです、他で見かけたら教えてください。
本作では新興宗教が積極的にミノ粉の特性を発見し、滅亡に合わせてオーパーツ化していく路線となります
バルク旗のガーダー・メイリンは「末子防衛隊長」という意味で、20世紀初頭の内モンゴルの戦士に由来します。
この名前なので盾がメイン武器、ナムバートル→弓の英雄、スフバートル→斧の英雄に符合させてます
今回スフバートルが乗ったシダー・ロゼットは実質的に強化陸戦形態で
ロングスカートユニットに実験段階のIフィールド発生装置を追加、角度が良ければノーダメージってところです。
メイン武器がヒート・パタで、有り体に言えば細長いジャマダハルです。
「シダー」というのはバラ状に広がるヒマラヤスギの松ぼっくり、シダーローズに由来しています
tps://lovegreen.net/lifestyle-interior/p69577/
各勢力の戦士が登場(ファフライは死にましたが...)、ナムとスフのそれぞれの話をやったところで
容量的なこともあるので、このスレのSS投稿は終わろうと思います。
おって次スレを用意、引き続き投稿予定です! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています