田中は、金屏風の前で語り続けた。 「採算のとれないところの投資をしてはなら ないということは間違いと思う。(中略)

鉄道の制度の考え方でペイするとかしないとか 考えていたら、鉄道の持つ本当の意義は失われ ると思う。(中略)

ほんとうに深刻な立場で人口の分散化、大都市 の過当集中を排除するということを考えなけれ ばいかんと思うのである」(同書)

田中にとって鉄道は、地方に豊かな未来を約 束してくれる救世主、発展の象徴であった。 「私は、鉄道はやむを得ない事であるならば 赤字を出してもよいと考えている。(中略)

もうからないところでも定時の運行をして経済発 展という立場でこそ国有鉄道法の必要が私はあ ると思うのである」

(同書) 誰も反論する者はいなかった。