■意欲のある若者が集まらない
 現場人員の総数の不足もさることながら、意欲のある若者の不足がより深刻だとの指摘も多い。
工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)は「(電気設備会社に)能力のある人が十分に供給されていない。
入社する学生の知識の欠如もみられる」と話す。北関東にある専業会社の総務担当者はこうこぼす。
「従来なら資格試験に合格して管理職を目指すのが当たり前だったのだが、今は試験を受けようとすらしない者が増えている」

 変電所の点検業務を主管するのに必要な国家資格として「1級電気工事施工管理技士」があるが、この合格者数も低迷中だ。
試験を実施している建設業振興基金によると、合格者数が最も多かったのは1988年度の1万3008人。
バブル崩壊後から減少傾向が強まり、2014年度は5110人まで落ち込んだ。ここ数年は回復傾向にあり16年度は7336人だったが、それでもピークの4割減だ。

 電気工事施工管理技士だけではなく、電気保安関連の資格者の不足が今後顕在化するとの予測もある。
経済産業省が今年3月にまとめたリポートによると、シニア層の退職などにより20年ごろから電気工事士1種の資格者が約4万人、同2種は約1万人、不足するという。

 当の電気設備会社も危機感を募らせ、人材確保と育成に躍起だ。
JR東海グループの新生テクノス(東京・港)では新卒採用を増やすため「数日のインターンシップを開き、現場の社員から話をしてもらうなど、学生に魅力ある職場であることを伝えている」(総務部)。
リニア中央新幹線にかかわる先進的な仕事もあることも打ち出している。
東栄エンジニアリング(さいたま市)では「資格は不問。来てくれたら、当社で一生懸命育てます、という点を若い人たちにアピールしている」(担当者)という。

 ただ、人材争奪戦は業種間の壁を越えて激しくなっている。公共インフラの安全を守る現場力をどうしたら維持できるのか。
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)の活用など、人材に頼らない方法もフル活用すべき時期にきている。