ママ、俺は今42歳なんだけどさ、20代から30代の前半にかけてずっと職場に事務のパートで来てくれていたオバさんがいてさ、

その人と昨日偶然遭ったんだよ。10年振りくらいだったかな。駅の雑踏の中だったんだけどさ、俺は一目で分かったんだ。あまりの

懐かしさに駆け寄って 「小島さん?」 って声をかけたらさ、向こうは俺のことが最初分からなかったらしくてさ、キョトンと俺を

見ていてさ、3秒くらいしたら嬉しそうにニコッと笑って 「あらあ、久し振り」 なんて思い出してくれたんだよ。その人は俺よりも

15歳年上だったから、今はもう57歳のはずだけどさ、全然老けた感じがなくてさ、元々品のいい人で市内の高級住宅地に住んで

いてさ、純真でおっとりとしたなかなかの美人なんだよ。相変わらずイイ女だな、と思ったな。「すごい白髪が増えたし前よりも太っている

から最初は分からなかったわ」 なんて言われちゃったよ。「俺ももう42ですよ」 って言ったら 「大学を出たての若い頃はまだ子供

みたいだったのにねえ」 なんて言うんだよ。あまりの懐かしさにさ、駅の中にあるコーヒーショップで30分くらい喋ったんだよ。「結婚

はしたの?」 って言うからさ、「いやあ、俺には結婚は向かないよ。相変わらず一人モンで両親と同居しているよ」 って言ったんだ。

「お酒は相変わらずたくさん飲んでいるの?」 って言うからさ、「いや、もう年取って飲めなくなったね。週に1回くらい外でちょっと飲む

だけで家では全く飲まないよ」 って答えたんだ。「まあ、変われば変わるものね。昔は毎日二日酔いで出勤して来たのにね」 なんて笑うんだ。

そしてさ、いよいよなんだけどさ、意味深にニコッと笑ってさ、「じゃあ、ほら、アッチの方はどうなの。ソープランドが好きで毎週のように行って

いたじゃない。今でも行っているの?」 とか訊いて来たんだよ。