タナト患者の最大の不幸は、
この世のどんな酒池肉林や金銀財宝を手に入れても
決して心の底から幸福とは思えず、感じる事ができない事だ。
何しろ生きて死ぬという自然の摂理その物を地獄と思い
死という結果の前ではあらゆる人生は無意味、
過程がどんな波瀾万丈な生き様であろうが価値は無いという思想なのだから。

その場その場では小さな快楽に溺れる事はあっても
全体的大局において、己は良い人生だとか
生きてて楽しい、生まれて良かった等と思う事はない。
いつも心の片隅にいつか死ぬ、消滅したら全てが無意味という
決して解消されない汚れがこびり付いている。