私は6歳位の時に死を認識して以来、死を片時も忘れる事が出来ず、40歳になるくらいまで夜は大声を出して飛び起きる事もしばしばあった。でも私はタナトフォビアとしては半端なのか、何とかこの状態から抜け出そうとあがいていた。

若い時分から宗教書や哲学書やよくある死が怖くなくなるとか書かれた本の部類等を読み漁ったが、全く効果は無かった。

変わることが出きたのは肉体的な修行と愛の愛の無い快楽だけのSEXだった。100kmを超すマラソンレースを走ったり、一歩踏み外せば谷底に転落死するような山を何日も歩いたり、一晩中走り通すトレイルランニングしたり、また四国八十八箇所を歩き通したり、そしてソーブで快楽を追究したSEXをしまくったり…

少なくともそれらをやっている間は死は全く考えられない。さらに生きている実感が身体にひしひしと伝わってくる。いつのまに死の恐怖より生の喜びが上回った。もちろん死の恐怖自体は変わることはないが。

今、50代後半になって感じる事は焦りだ。いよいよ死がはっきりと見えてきた。人生を楽しむことが出来る時間は多くない。少しでも濃厚な時を過ごしたい。そう思い私は数年前にアーリーリタイアをした。

死の恐怖も生の喜びもさほど感じず、相変わらず会社に通い、ルーチンワークをしている同世代を憐れむ気持ちになっているくらいだ。