皆無になる事を知りながら生きている。
皆霊やあの世や生まれ変わりが無い事を受け入れている。
宗教に入らずタナトにもなっていない一般人は皆そうだ。
そして皆、いつか訪れる無を考えないようにして生きている。

…本当にそうか?
考えないのでも受け入れているのでもなく、既に諦めているのではないか?
科学の粋を極めても医学の果てに至っても、物理法則には敵わないと匙を投げて
全ての人類が真剣に不老や不死を研究していないだけではないのか?

皆寿命を伸ばす事よりも、無を回避する事よりも
目先の利権や快楽ばかりを追っているから何も変わらないのではないか?
この世の全ての人類、全ての国家が総力を挙げて不老不死の医学を研究したら…?
少しは寿命が、命が、今よりも伸びていたのではないか?
と、初老にかかる年齢になると叶わぬ願いや想像ばかりをしてしまう。