将棋のプロ棋士のコンピュータ解析は2014年に山下論文として発表されている
しかしチェスソフトと違って、この当時の将棋ソフトのGPSfishの精度は信頼できるものではなかったことと、大量の棋譜を解析する必要から1手1秒でなされたため探索深度平均が10〜11手であった
したがって、最新のソフトで追検証しないのは不誠実というべきだが、学者ではないので、そうした甘さは許されなくもない
ところが、昨年、藤井聡太ブームに便乗して29連勝の藤井聡太の絶対レートは羽生七冠に匹敵すると発表した
わざわざ、2014年のGPSfishで藤井聡太の棋譜を解析したのだ
なぜ、この際、藤井聡太の棋譜と羽生七冠の棋譜を発表時点で最強のelmoで解析しようとしなかったのか
きわめて疑問に感じた
しかも結果の解釈には呆れてしまった
14歳の藤井聡太が羽生七冠に匹敵する棋力があったという解釈はできないからだ
なぜなら藤井聡太の解析に採用した棋譜は勝局だけだからだ
勝局と敗局では勝局のほうが平均悪手率は低くなる
一般的に敗局は勝局の2倍も3倍も平均悪手率が高いし、大悪手の棋譜が混じっているとさらに違ってくるのだ

こうしたことに疎い解析だったことが2014年時の解析にも見られていた
羽生のタイトル戦の棋譜は2014年までの全盛期だけのタイトル戦の棋譜で当然勝局の割合が多い
大山の棋譜は66歳までのタイトル戦の棋譜なので当然敗局の割合が増えている
これだけでも大山の平均悪手率が羽生の平均悪手率よりも悪く出るのは分かりきったことだった
しかも、チェスでなされたような局面の複雑さを考慮するということにも長けていなかった
将棋の場合は、局面の複雑さは相居飛車(定跡型)か対抗形(力戦型)かで大きく異なってくる
大山の将棋には対抗形や力戦の将棋が多かった
したがって、大山とタイトル戦での対局が多かった中原にも対抗形や力戦が多かった
そうしたことがまったく考慮されない解析だったため、羽生七冠だけが飛び抜けた絶対レートになってしまったのだ