https://news.livedoor.com/article/detail/17128715/

この前のJT杯で不思議な感覚を体感したんですよ。
豊島さんとは、昔から研究会をやっていたこともあるし、話やすい間柄なんです。
豊島さんとの対局の前なのに「藤井聡太さんと対局する」って錯覚したんです。
ふっとして、「あれ?そうか、今日は豊島さんと対局だ」と。そこでこのふたりは似ているんだと気づいたんですよね。
普段から話しやすいからとか、雰囲気が似ているというだけじゃないと思うんですよね。
ということもあって、藤井さんに才能を感じるなら、豊島さんも外せないなと思ったんです。

才能というのはいろいろあると思うんですけど、物事に動じずに何があっても自分の力を出せるのが、
本当の才能だと思っているんです。

性格も才能のひとつかもしれないですね。藤井聡太さんも、豊島さんも、当然羽生さんも、ハプニングに強いですよね。
何か予期せぬことが起きても、カッカしない性格というのも含めて才能だと思っているんです。

-豊島先生とは以前、研究会をやられるなど、付き合いが長いですよね。
以前とタイトルを獲ってからと、どのあたりに変化を感じられますか?

名人になっても偉ぶらないというか、淡々と自分の実力を上げることに集中されているんだろうなというのが感じられます。
先日のJT杯のときも、ホテルのエレベーターで「開」ボタンをずっと押して、他の乗客が乗るまでずっと待ってくれていたりとか。
しかもしぐさがすごく自然なんですよね。
名人ですからこちらももちろん気をつかうんですけど、少しも嫌味を感じないというか…。

豊島さんにはいままでも痛いところでたくさん負けてきましたけど、少しも彼に対して嫌な思いを持ったことはないんですよね(笑)。
素直に好青年だなと思えます。そういう性格というのは、強さのひとつになっているんじゃないかなと思います。
-そして最後に藤井先生ですね。
藤井先生がプロになる前に、群馬合宿で三浦先生と指したエピソードは有名ですね。
そのときから、いまの活躍は予想できたのでしょうか?

4年ほど前の話になるのですが、じつは合宿の2ヶ月後にJT杯で名古屋に行った際に会ったことがあるんです。
レセプションから対局まで何日か空いたので、杉本さんと藤井さんと将棋を指したり詰将棋を解いたりしたんですよね。

そのときに詰将棋の早解き競争をしたんです。その時点で藤井さんは詰将棋選手権で優勝していたので、早いのはわかっていたんです。
でもどこか解き方に隙があるんじゃないかとか、早いけどミスがあるんじゃないか、とか思っていたんです。
でも正確さがちゃんと伴っているんですよね。
省略して本筋に行って詰みました、とかそういうのがなかったんですよね。

こっちは年寄りなので余分な変化を読むんです。読みの総量としては、それでいいんですけど、本筋を追及しないところを読んでいるんですね。
でも藤井さんは省略して良いところをしっかり省略して読んでいたので、早いのは知っていたけど、これはすごいなと感心しましたね。
これはプロになった後にさらに強くなる、というのも想像できました。
いちばん読みが早くなるのは10代後半だと思いますから、まだ早くなるということですよね。