芝居は永久に過ぎ去り、僕等は遺されたスタンダアルという一俳優の演技で
満足しなければならないのであるが、こういう人の文学については、
文学史家の常識となっているところさえ、疑ってかかっても、
差支えないとまで思う。世の所謂彼の代表作も、案外見掛けだけのものかも
知れぬ。数頁のモオツアルト論も、数百頁の「赤と黒」に釣合っていないとも
限るまい。