転校生

 高校に入るときに買ったクロスバイクはギアの回りが悪くなってきていて、坂道を漕ぐのがきつい。しかしあの頃この辺りに来たときはもっとボロボロの自転車だったはずなのに、もっと速く漕げていた気がする。俺は道を思い出すのを諦めてふらふらと適当な脇道に入り、一息つくことにした。甘く湿った風だ。四月がもうそこまで来ている。