アンパンマンミュージアム [無断転載禁止]©2ch.net
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彼は到底、袍衣大冠して廟廊の上に周旋するの材にあらず、其政治家として失敗したる亦宜ならずとせむや。 寿永革命史中、経世的手腕ある建設的革命家としての標式は、吾人之を独り源兵衛佐頼朝に見る。 彼が朝家に処し、平氏に処し、諸国の豪族に処し、南都北嶺に処し、守護地頭の設置に処し、鎌倉幕府の建設に処するを見る、飽く迄も打算的に飽く迄も組織的に、天下の事を断ずる、誠に快刀を以て乱麻をたつの概ありしものの如し。 然れども義仲は成敗利鈍を顧みざりき、利害得失を計らざりき。 而して彼が一方に於て相たるの器にあらざると共に、他方に於て将たるの材を具へたるは、則ち義仲の義仲たる所以、彼が革命の健児中の革命の健児たる所以にあらずや。 彼が弓箭を帯して禁闕を守るや、時人は「色白うみめはよい男にてありけれど、起居振舞の無骨さ、物云ひたる言葉つきの片口なる事限りなし」 葡萄美酒夜光杯、珊瑚の鞭を揮つて青草をふみしキヤバリオルの眼よりして、此木曾山間のラウンドヘツドを見る、彼等が義仲を「袖のかゝり、指貫のりんに至るまでかたくななることかぎりなし」 彼は自ら甘ぜむが為には如何なる事をも忌避するものにはあらざりき。 然れども、彼が自我の流露に任せて得むと欲するを得、為さむと欲するを為せる、公々然として其間何等の粉黛の存するを許さざりき。 怒れば叫び、悲めば泣く、彼は実に善を知らざると共に悪をも亦知らざりし也。 猫間黄門の彼を訪ふや、彼左右を顧て「猫は人に対面するか」 彼は鼓判官知康の院宣を持して来れるに問ひて「わどのを鼓判官と云ふは、万の人に打たれたうたか、張られたうたか」 彼の牛車に乗ずるや、「いかで車ならむからに、何条素通りをばすべき」 彼は「田舎合子の、きはめて大に、くぼかりけるに飯うづたかくよそひて、御菜三種して平茸の汁にて」 而して黄門の之を食せざるを見るや、「猫殿は小食にておはすよ、聞ゆる猫おろしし給ひたり、掻き給へ/\や」 然りと雖も、彼は唯、直情径行、行雲の如く流水の如く欲するがまゝに動けるのみ。 換言すれば彼は唯、当代のキヤバリオルが、其玉杯緑酒と共に重じたる無意味なる礼儀三千を縦横に、蹂躙し去りたるに過ぎざる也。 彼は荒くれ男なれ共あどけなき優しき荒くれ男なりき。 彼は、群雄を駕御し長策をふるつて天下を治むるの隆準公にあらず。 敵軍を叱し、隻剣をかざして堅陣を突破するの重瞳将軍也。 彼は国家経綸の大綱を提げ、蒼生をして衆星の北斗に拱ふが如くならしむるカブールが大略あるにあらず。 辣快、雄敏、鬻拳の兵諫を敢てして顧みざる、石火の如きマヂニーの侠骨あるのみ。 而して其天下に馳鶩したるは木曾の挙兵より粟津の亡滅に至る、誠に四年の短日月のみ。 しかも彼は其炎々たる革命的精神と不屈不絆の野快とを以て、個性の自由を求め、新時代の光明を求め、人生に与ふるに新なる意義と新なる光栄とを以てしたり。 彼の燃したる革命の聖壇の霊火は煌々として消ゆることなけむ。 彼の鳴らしたる革命の角笛の響は嚠々として止むことなけむ。 彼が革命の健児たるの真骨頭は、千載の後猶残れる也。 春風秋雨七百歳、今や、聖朝の徳沢一代に光被し、新興の気運隆々として虹霓の如く、昇平の気象将に天地に満ちむとす。 蒼生鼓腹して治を楽む、また一の義仲をして革命の暁鐘をならさしむるの機なきは、昭代の幸也。 互に他人の着物を眺めては、勝手な品評を試みてゐる。 君の御召しの羽織は、全然心の動きが見えないぢやないか。」 「おや、君が落語家のやうな帯をしめるのには驚いた。」 「やつぱり君が大島を着てゐると、山の手の坊ちやんと云ふ格だね。」 その男は古風な漆紋のついた、如何はしい黄びらを着用してゐる。 この着物がどうもさつきから、散々槍玉に挙げられてゐるらしい。 その先生はどう云ふ気か、ドミニク派の僧侶じみた白い法服を着用してゐる。 何でもこんな着物はバルザックが、仕事をする時に着てゐたやうだ。 尤も着手はバルザック程、背も幅もないものだから、裾が大分余つてゐる。 が、痩せ男は苦笑したぎり、やはり黙然と坐つてゐる。 これは銘仙だか大島だか判然しない着物を着た、やはり年少の豪傑が抛りつけた評語である。 が、豪傑自身の着物も、余程長い間着てゐると見えて、襟垢がべつとり食附いてゐる。 それでも黄びらを着た男は、何とも言葉を返さずにゐる。 どうもその容子を見ると、よくよく意久地のない代物らしい。 所が三度目には肩幅の広い、縞の粗い背広を着た男が、にやりにやり笑ひながら、半ば同情のある評語を下した。 諸君この男も一度は着換へをして出て来た事を思ひ出してやり給へ。 さうして今後も着換へをするやうに、鞭撻の労を執つてくれ給へ。」 と声援を与へた向きもある、「もつと手厳しくやれ、仲間褒めをしてはいかん」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています