立ち上がって伸びをした時、須田はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがい る・・・?」
ホームのベンチから飛び出した須田が目にしたのは、ホームを埋めつくさんばかりの乗客だった
ホームには駅員の怒号が響き渡り、やってくる列車にはお構い無しに無数のフラッシュが焚かれていた
どういうことか分からずに呆然とする須田の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「須田、出発時刻だ、早く行くぞ」声の方に振り返った須田は目を疑った
「ゼ・・・0系新幹線?」  「なんだ須田、居眠りでもしてたのか?」
「キ・・・キハ82?リニア鉄道館に展示されてるはずでは?」  「なんだ須田、かってにキハ82を引退させやがって」
「381系・・・」  須田は半分パニックになりながら時刻表を見上げた
ひだ、のりくら、しなの、ちくま、南紀、かすが、しらさぎ、富士、さくら、はやぶさ、みずほ、銀河、大垣夜行
暫時、唖然としていた須田だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
杉浦国鉄総裁から赤旗を受け取り、高々と手を上げて出発進行の合図をする須田、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ホームのベンチで冷たくなっている須田が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った