――三つ目の事業部は。
「北海道新幹線事業部です。 柱は新幹線による貨物輸送。 
北海道新幹線は1日13往復しか走ってない。 
東海道新幹線は1時間に14往復もしていますよ。 高い金をかけて整備したのにもったいない。

さらに青函トンネルでは、貨物列車とのすれ違い時に時速140キロの減速運転をしています。
コンテナを在来線の貨物列車から新幹線車両に積み替えれば、本来の260キロで走れます。
コンテナ新幹線は200時速キロで十分。
フランスでは高速鉄道TGVの車両を使って貨物輸送を始めましたよ。
日本でも東海道新幹線の開業直前まで新幹線物流は検討されていた。建設費高騰でやめちゃったけど」

――JR北海道と、JR貨物にとってのメリットは何ですか。
「JR北海道は、線路の使用料が期待できます。
新幹線と在来線貨物列車が共用走行するための特殊なレール『三線軌条』もいらなくなるから保守費が安くなる。
北海道新幹線の札幌延伸時には、札幌〜新青森間が従来の7時間半から2時間半に短縮されます。
速達性の向上はJR貨物にとって利益になるでしょう。
食糧基地であり、海を挟んで国境と接する北海道の鉄道は守らないとだめですよ」

――道内でも勤務しましたね。
「最初は国鉄に入った直後の1956年、岩見沢駅の助役や小樽築港機関区の機関士の見習いをやりました。
馬そりが走っていた時代でしたよ。 
1971年からは苗穂工場の技術次長。 前任者が汚職でクビになった後だったから『元気を出そう』って励ましてね。
手稲山にもよくスキーに行きました」

――実習の頃は、まだ石炭輸送が盛んでしたね。北海道の鉄道は役割を終えたのでしょうか。
「あまりにお客さまの少ない路線はそうかもしれない。
でも、稚内とか網走とか根室とか国境に近い所の鉄道は、採算性が悪くても守らなきゃ。 
貨物や観光に活用するべきです。 

日本の鉄道には『土俵』と『行司』が必要だって言ってるんです。
土俵はみんなが一堂に会して旅客も貨物も議論する場。
行司は、鉄道の現場も経営も分かっていて議論を主導する人です。
交通を制する者は天下を制する。 今、日本の英知が問われています」