朝から数回の空戦で列機もだいぶ疲れたらしく、戦闘飛行も、ともすればバラバラになりがちである。こんなときに無理な戦闘をすれば、戦果はあがらず、味方の犠牲は多くなる。まず敵状によって行動すべく、一応、安全地帯に避退する。

 約三十分ぐらいたってから、上空に高角砲弾のはじける煙が見えた。敵が来襲したのであろう。敵機の見えるところまで接近し、状況をさぐる。

午前十時から飛びつづけ、しかも昼食抜きで、疲れがひどく、高度をとると視力がきかず、頭がぼんやりしてくる。酸素もだいぶへったのであろう。

 地上から、さらに「後続敵編隊ラバウル地区侵入中、高度六千」の情報がはいる。

 私は依然、退避行動をつづけた。

爆撃機隊の引き揚げたあとで、敵の戦闘機は、約二十機くらい、低空に下りて銃撃をはじめた。基地戦闘機は上空にいないと思ったのであろう。攻撃するとすれば、いまがチャンスである。

 ただちに行動を開始する。まず二中隊を上空支援の位置において、私の中隊は、いまさかんに銃撃中の敵戦闘機に攻撃を開始した。

 突如、上空から降ってきた私たちの戦闘機に、敵機は不意をつかれてあわて、反撃する飛行機は一機もなく、われ先にと遁走した。そのために、私たちの攻撃は非常に容易になり、疲れている搭乗員も、最後の頑張りで攻撃を加え、F4F、F4U、合わせて五機を飛行場付近に撃墜した。